C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話   作:QAAM_M1911

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大地の答は火を灯す

(君はまだ若いんだ。こっちに来るべきではないと思うがね?)

 

「た、隊長……?」

 

声が聞こえる。もう聞くはずのない、あの声が。

 

(それとも、私が託したものを託した気でいるのかね?)

 

そんな思い上がりはしていない。だから、書置きをした。遺書のようなもんだが、せめてミネルバの若造共が迷わんように。そう願って書いたものだ。

 

(それを思い上がりというのだ。行動に起こしても、言葉にせねば伝わらんよ。君とてよく知っているだろう?)

 

……アスラン。あぁ、あのバカのことだ。もしザフトに復帰したとて、どうせシンとは上手くいかんだろう。

そういや、アイツはアリーやシスターを逃がせたのだろうか。

どこに預けた?オーブか?

この世界の行く末は?

ミネルバの連中は傷心中だろうな。

あの赤服トリオはこの後どうするのだろう?

ラクス・クラインは何を考えている?

その影武者はどうなった?

ニコルは、ACESの奴らはどうなってる?

繧ェ繝ォ繝輔ぉ縺ッ荳頑焔縺上d繧後※繧九°?

俺の提案した兵器群はどうなった?

明日の見たかったテレビは?

食いたかったあの飯は?

 

 

 

 

……あぁ、そうだった。

 

俺は……生きたかった。

 

生きるために、世界をよくしたかった。

 

クソにも程があるコズミック・イラを、良いものにしたかった。

 

悲しみを抱えている奴らの、希望の灯になろうとした。

 

小さなやさしさを、守りたかった。

 

あの人が遺した、最後の希望を。

 

 

 

のうのうと寝てる暇じゃねぇ……

 

 

起きろ。まだ死に切れてるわけじゃないだろう。

 

起きろ。まだ生きる理由があるだろう。

 

起きろ。この目で未来を見たかったんだろう。

 

起きろ。キラ・ヤマトとアスランにぶら下がるわけにはいかないだろう。

 

 

最初に、二人をぶん殴りたかったんだから。

 

気持ちが変わったんなら、今度は世界の方をブン殴ってやれ。

 

そして謳歌しよう。澄み渡る世界で、生きる喜びを。

 


 

「……よく、やってくれた。」

「はい……」

「……やはりそういう雰囲気ではないな。」

 

騒ぎが落ち着き、撃墜されたレジェンドの捜索作業が難航してきたころ。シン、レイ、ハイネの3名はデュランダルに呼び出されていた。

 

「その……えぇと……」

「まず理由をお聞かせ願えますか?」

「そうだな。まず君たちは……彼がクーデターを企てていたということは知っていたかね?」

「え?」

 

皆一様に驚くことしかできず、それを見たデュランダルも首を振った。

 

「それもそうか。彼は相当に手堅く立ち回っていたよ。何せまだ証拠が掴めていないのだから。」

「証拠がないのに撃墜命令って……」

「ですが、あそこで撃ってきたことが何よりの証拠になる。」

「そうだ。そして行方知れずとなったメイリン・ホーク、そしてミネルバ整備班長“フリッツ・ホーキンス”。メイリンは彼のPCにハッキングを行っていたようだ。状況判断からして、誘拐されたと見ている。」

 

「だがホーキンスは71年、ヘキサの配属当初からの付き合いだ。共犯と見てまず間違いない。現在も捜索をしているが、情報が何も出てこないのが恐ろしい。レジェンドのコックピットブロックも見当たらないんだ。情報が漏れてしまう……と考えると恐ろしいよ。」

 

「おやっさんが……」

「……二人とも、相当に腹芸が上手なようだ。」

「違います。」

 

レイがきっぱりと言い放った。それにはデュランダルも驚いた。普段の冷静沈着な顔は、呆気に取られていた。

 

「ヘキサは確かに、クーデターを画策していたのでしょう。ですが、我々は彼から様々なことを学んできました。プラントを守る意思も、力も。私のような者が“普通”に生きる有難みも。」

「レイ……」

「教えてください、ギル。一体デスティニープランとは何なのですか?」

「……ヘキサが、言っていたのかね?」

「……はい。」

 

デュランダルは息を吸って、吐いた。その手はやや震えているようにも見えた。怒りか、嘆きか、それとも歓喜か。ともかく気分を落ち着かせようとしていることが感じ取れていた。

 

「……最高機密だ。気になっているのは確かにそうだろう。だが、話すわけにはいくまい。」

「議長……!」

「分かっている。君たちが反発することは。だが、まずは目の前のロゴスを討ってくれまいか。作戦が完了したら、話そう。」

「……わかりました。どうせ我々は軍人ですし、目の前の脅威をまずは始末しましょう。」

「ハイネさん!?」

「ありがとう。次の作戦、期待しているよ……」

 

 

 

「ハイネ隊長。どう言う事ですか?」

「俺だって同じ気持ちだ……これが“割り切る”ってことだ。腐っても軍人なんだ。お前らだってヘキサに教えられただろ。」

「ですが……!」

「……レイ。今は、やめておこう。」

「シン?」

「……隊長だって、俺たちと同じなんだ。割り切れないから、とにかく目の前の仕事に目を向けてるんだ。」

「良く分かるようになったな。上司の辛さってのが分かり始めたか?」

「まぁ……なんとなく。」

 

空気は重い。議長への不信感もそうだが、恩師であり、上官であり、戦友であり……数々の導きをくれたヘキサを、この手で撃ったという事実がそれに拍車を掛けていた。

 

レジェンドが行方不明であるということは、生きている可能性はあるが、それはそれで後味が悪い。もし今後戦場で対峙すると思うと、身も凍る思いだ。

 

「……なんにせよ、今はロゴスだ。よりによってあの大演説は各国にも聞かされてたはずだ。気張ってかないとな。」

 

今はハイネの指示に従うくらいの気力しか、なかった。

 


 

「……知らん天井だ。」

「起きて第一声がそれか?」

「本当に知らない天井だったんだからよ。一回くらい言ってみたいだろこういうの。」

「全く……真面目なんだか不真面目なんだか……」

 

左腕には点滴。包帯が数ヶ所に打撲痕に湿布一枚。割と軽傷だな。ベッドから起き上がると、椅子に腰かけていたアスランに質問する。

 

「ここはアークエンジェルか?」

「自分で墜としたのにか?」

「そのくらいのコントロールは出来る。」

「ま、そうだな。キラに向かっていかなかったのも本気じゃなかったって訳だろうしな。」

「そういう事だ。重要な局面と緊急事態には俺が出張った方がいいんだよ。」

 

置かれていたカルテを流し見するが……肋骨にヒビ、肩に打撲があったくらいだ。入隊以来初めての怪我だ。腕の一本や二本は覚悟していたから、想定外だが幸運だ。別にギプスしてりゃ歩くくらいは出来る。

 

「状況は?」

「ヘブンズベースが先制攻撃をしたらしい。」

「ザフトの空挺部隊はさすがに全滅したか?」

「それは知らないが……」

「先制攻撃をしたとなると、艦隊はイージスシステムを破壊出来なかっただろう。対空砲火で殆ど撃墜されるだろう。それを突破するとなると……シンとレイがカギだ。まぁだが遅かれ早かれ落ちる。多国籍軍をあまり舐めない方がいい。」

 

「次。シスターとかアリーは?」

「マルキオ導師のところに送った……が、暗殺部隊が来た。以前にもマルキオ導師のところにはゾノが送られてきたらしい……」

「議長は俺への枷を嵌めようとしてたわけだ。お前が助けてくれたのか?」

「今はオーブのMS隊と小隊が着いてる。潜伏場所は俺たちも分からないが……少なくとも襲撃されたなら何か反応が来るさ。」

「そうか……ありがとう。まさかマルキオ導師に伝手があったとは。」

「というより、キラの両親に感謝するんだ。子どもが増えても『賑やかだし、一緒に手伝ってくれる子が来てくれて助かった』とまで言ったんだぞ?」

「そりゃあ……すごいな。こんな世界でそこまで……」

 

次の質問をしようと思った時。病室の扉が開かれた。

 

「よぉ!起きたってからきてやったぞ!」

「おやっさん!まぁ無事だったか!」

「お前さんの引き揚げ作業大変だったんだぞ?レジェンドがいつ爆発するか気が気じゃなかったぜ。」

「あぁレジェンドか……どうだ?」

「まぁ修理は無理だ。が、ブラックボックスからデータの解析は出来る。最新技術が惜しみなく使われてるからな!」

「メイリンは?」

「その作業がさっき終わったところだ。」

「……早すぎねぇか?」

「いやバケモンだよ……あれを従えてたのかと思うとビビっちまう……」

「いやぁ、そうっすよねぇ。あれよあれよとブラックボックスの解析が進んで大活躍してるんで、何というか立つ瀬がないというか……」

 

開かれていた扉からトーレスが入ってくる。オーブの軍服を着やがって、すっかり馴染んでやがる。

 

「トーレスか。どうだ、アークエンジェルは?」

「中々楽しませてもらってるっす。主砲とか、バリアントとかはやっぱりプリンシパリティの方が性能いいっすけど、練度が良いっすよ。操舵も的確っすし、狙いやすいことこの上ないっす!」

「俺たちザフトレッド5人含めた艦隊を退け続けてんだぜ?誰よりも死線を潜ってきてんだ。まぁお前もそこに入れてるんだから、大概だな。」

「あんな無茶ぶりされなきゃ来てないっす!」

「確か……連絡員だとか言ってたのを無理やりアークエンジェルに押し込んだとか聞いたぞ。」

「むしろ良かったろ?ターミナルとの連携が早く取れたろ?」

「あんま変わんなかった気はしますけどね。」

「結構暗号に手間取ったしな……そうだ、お前が起きたことを伝えに行く。」

 

アスランが扉を閉め、部屋の中にはザフトの3人。本来ならあり得ん事だろうが、イレギュラーが過ぎる状態だしな。

 

「ま、こうして俺たちを快く受け入れてくれる下地を作ってくれてたんだ。ありがてぇ限りだ、な?」

「そうだな……後でなんか奢るか。」

「じゃあマグナム(ワイン)をお願いします!」

「万単位するだろうが……まぁ良いけどよ。」

「俺のはどうした?」

「オーブ行ったらまとめて買ってやる!今一文無しだが!」

「そういや金も何もかもねぇのか今……」

「下手すると口座とかも凍結されてないっすか……?」

「あっ……いや、うん。そうだな……まぁいろんな国に金預けてっから。うん、大丈夫だと思うぞ、たぶん。」

 

何だろう、撃墜されたよりも傷口が大きい気がする。億あった口座引っぺがされてたら色々嫌だぞマジで。半分くらいシスターの方に送ってあるけどさぁ……

 

「……今思うと、キャリア全部捧げてんだよなぁ。」

「でも、それをやるだけの理由がある。違うか?」

「ディステニープランってのは確かにいい制度だとは思うっす。でも、大砲ドンパチ撃てなくなるのはヤなんで。」

「根っからの戦争屋ってわけか。」

「別に戦争だけに使うわけじゃないっすよ?邪魔な小惑星とかにぶっ放してドカーン!って!最高じゃないっすか?」

「それはよくわからんが……」

「まぁ、戦う理由は人それぞれだ。快楽殺人鬼にさえならなきゃ文句は言わん。」

 

 

俺の戦う理由。そんなのは決まっている。

 

未来を掴む。

 

孤児院の皆が、笑える世界を創る。

 

世界中の皆が、競い合って、発展して……あの日見た宇宙の果てに行く希望の光を。再び世界に齎す。

 

そうすれば、コーディネーターだってナチュラルだって。手を取り合えるはずなんだ。

 

その間に血は流れるだろう。競うとは、そういうものだ。

 

だが、流れる量を減らしたり、傷の治療は出来る。

 

その、基盤を作るのだ。

 

俺がやることは……世界平和を保つための、方位磁針を造る。

 

「とりあえず、ブラックボックスの解析を待つ。俺たちは“同志”ってやつなんだ、挨拶に回らんとな。“お願い”をしなきゃならん。」

 


 

ヘキサの様子を陰から覗き、マリュー艦長に一報を入れる。確かに、何か憑き物が落ちたような気がした。ラスティの墓参りに行った際、無理な重石を背負っていたあいつとは違う。何が変えたのか。部下か?仲間か?どれも違うだろう。そして、それを知る術は俺にはない。

 

感情は吐き出してもらわねば理解することはできない。察せれどもそれが是か非かは本人に聞かねばわからない。でも、ああやって冗談を言えるのなら。大金を失ってから気付いて、それでも尚戦う理由を視界に留めていられるのなら。

 

大丈夫だ。絶対に。

 

羨ましいとさえ思えてしまう。うだうだと悩んでいた自分に、腹が立ってしまうほどに。

 

昔から真っすぐな奴だ。最適解ではないにせよ、思った道を、適切に辿り続けるのがヘキサ。

 

父のおかげで、悩み続けてきた。そして崖に誘われそうになったとき。引き上げてくれた。

 

かつて闇の中から魔の手を伸ばしてきたのに。

 

……今になって思うと。あれは本当に魔の手だったのだろうか。

 

俺とやりあってたにせよ、カガリの追撃を狙わなかったのも、世界の破滅にあまり積極的ではなかった証左ではないのだろうか。

 

闇の中で道を見失わない……いや、本来なら一本道なのだ。そこに遅かれ早かれ、様々な天変地異が生じてズレていき、やがて終末を迎える。

 

それをヘキサは修正出来る。皆がその後ろに立てば道を違えず。彼から学べばまた船頭となれる。

 

キラやラクスだって、ヘキサと同じ思いと力を持っている。なら、俺はそれの補佐をしよう。

 

世界を破滅に導きかけた、父の代わりに贖罪する。

 

間違い、迷い続けた過去を清算する。イザークやディアッカだって、同じ思いでザフトに復帰した。

 

そして掴む。俺たちの幸福を。最後に笑っていられるハッピーエンドは、誰だって欲しいんだ。

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