C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話   作:QAAM_M1911

39 / 41
篝火と船頭

「え……ハイネが転属!?」

「仕方ないわね。ヘブンズベースの戦功であなたたちもFAITHになった。今まで3人もFAITHが居た事だって、イレギュラーもいいところよ。そもそも、ヘキサもハイネもそこまでFAITH権限は使ってないのよ。精々が優先して部品を回させるってところまでだったわ。」

「それが4人となると……」

 

幾重にも優先命令が発令出来てしまう。それにより指揮系統への混乱が起こる……そんな事は、どんな新兵にでも理解できるものだ。とは言え、ムードメーカーと言えたハイネの転属は傷口に塩を塗るようなもの。逆を言えば、今まで命令系統の混乱が起きなかった事が奇跡……いや、ヘキサとハイネの手腕と配慮によるものだと言えてしまう。

 

死んだわけではないのだが……今まで共に戦ってきた者が遠くへ行ってしまうのは寂しいし、昇進による栄誉ある転属というわけでもなかったため、素直に喜べない若者が多かった。ミネルバの兄貴分二人、そしてチーフメカニックとオペレーターの損失は計り知れないダメージを齎していた。

 

「……気持ちは分かるわ。こっちも胃が痛いくらいにはね。いくら軍だとて昨日の今日で切り替えられるものじゃないけど、とにかく目の前の敵に集中なさい。」

 

いくら実力があるとて、ここまで気分が沈んでいては。先を憂いるしかない……そんな苦境に、ミネルバは立たされていた。

 


 

「ったく、もう大丈夫だっての。」

「まだ肋骨にヒビ入ってんだ。素直に休暇として寝とけ。」

「休暇なら飲ませろってんだ……」

「おいおい、うるさいぞ。」

 

そういえば、病室には奇妙な先客が居たのだった。ネオ・ロアノーク……紫がパーソナルカラーの連合指揮官だ。俺とアーモリーワンでファイター対決をやった奴らしい。で、この前のデカブツの時に俺とフリーダムで撃墜したわけだが……わざわざウィンダムを回収したらしい。

 

手錠一つという、異常に拘束が緩いわけは……そうだな、俺がアークエンジェルのクルーに挨拶に行ったときに知った。

 

 


 

「初めまして、かな?」

「あなたが……」

「君がフリーダムのパイロットか。ヘキサ・ラプトリオだ。」

「キラ・ヤマトです。」

「……若い。」

「え?」

「良い親に育てられたな。隊長が希望を捨て切れなかったわけだ。」

 

フリーダムに乗っていたパイロット……いや、ストライクの時代から幾度も刃と銃口を向けあっていたというのに。俺たちは異常なまでにも……波長が合った。

 

憎しみもなく、憤りもなく……お互いを理解出来てしまった。

 

「……クルーゼさんの、あの手紙は……」

「紛れもない本音さ。とは言っても、俺の手でコピペしたもんだからな。」

「えっと……?」

「隊長の遺品整理は既にされていた……まぁ先も短かったんだ。やってたのは想像できたが、まさか遺言状なんか残してるとは思わなかった。世界が終わるのなら、そんなもの遺さんさ。」

 

「……他に道は、あったと思いませんか?」

「隊長は世界を試されていた。賽を投げ、5つ揃わん限り世界は滅ばない。だが偶然にも賽の目は5つとも1のピンゾロを指していた。絶望もする。だが、君という盤をひっくり返す希望を求めていたのもまた事実だ。」

「……」

 

こんな優しい青年に、のしかかるプレッシャーはあまりにも重い。だからこそ……

 

「俺が引っ張ろう。」

「え?」

「君が世界を守りたいのであれば、俺がその道を照らす篝火となろう。道がないのであれば、君はその道を作る開拓者となる。その灯火に誘蛾の如く人々が集まり、集落が作られていく……そうやって世界はいつも回っている。道と集落なくして盗賊は現れない。通る商人なんかいないんだからな。」

「だからあなたは……」

「ACESを作った。何があったかは知らんが、お前たちが引っ込んじまったから作ったんだ。が……活動を再開したんなら同志だ。手を組まない手はないだろう。」

「……」

「政治や哲学の話は苦手か?」

「まぁ、はい……」

「なら、やめておこう。人に押し付けるもんじゃない。」

 

中々どうして、好青年だ。隊長が色眼鏡で見ていただけあって、本当に普通の青年だ。いくつもの作られた才能を秘めていること以外は。彼の性格に、その才能はいい意味で恐ろしく不釣り合いだ。

 

「……マリューさんとは、お話しましたか?」

「艦長さんか。まだだな。」

「先に知っておいた方がいいことが……」

「……ヤキンで撃墜したストライクのことか?」

「え……」

「わかるさ。大方恋仲だったって話だろ?じゃなきゃバッテリーの切れた機体であのミサイルに突っ込んでいかねぇよ。」

 

修理されているムラサメを見る。オーブのパイロットは皆愛国心に満ち溢れていた。だからもう一度、祖国を取り戻さんとアークエンジェルやACES、ターミナルに手を貸しているのだ。

 

「何かを守りたい、誰かのために戦う。いい話だが、命は投げ捨てるものではない。君にはそうなっては欲しく……ん、どうかしたか?」

「えっと、その……ストライクのパイロット、亡くなっていると思ってますか?」

「……は?生きてんの?」

「その、経緯はかなり複雑ですが……」

「……は?あれを?核並みの爆発を、落ちたPS装甲で受けきったのか?」

「病室に手錠付きで寝かされてた人です。」

「あー……確かに隊長に似てるとは思ったが。え?アイツってエクステンデッドの上官だろ?ソイツ連合で戦ってたよな?」

「あの後、連合に回収されて様々な処置が行われたみたいで……」

「記憶を奪われた模擬エクステンデッドってわけか……いや待てって、ホントに色々おかしいだろ。」

 

頭が痛い。前世があって、この世界を観測していたと言う記憶は蘇ったとは言え、この後何が起こるのかは思い出せていない。ホントに何なんだアイツ。エンデュミオンの鷹、不可能を可能にする男……末恐ろしい……

 

「何なんだほんとに……アークエンジェルで生き残ってたんだからそりゃ強いには決まってるけどよ……そういやお前さんもそうだな。よくフリーダムの胴体貫かれて生きてるな。」

「何とか……ってところ、ですけど……」

 

回収されているフリーダムを見た。頭部とコックピットブロック以外が完全に喪失している……無残たる姿だ。だが、それは逆に驚嘆するほかない結果を示していた。

 

「NJCを切って核爆発を防いだのか。」

「ほとんど無意識でしたし……無事では済みませんでした。」

「骨の一本や二本、戦ってりゃ折れるもんだよ。普段生活してても折れることはあるからな。」

 

フリーダムの隣には、俺の乗っていたレジェンドが同じようにワイヤーで固定されていた。プロヴィデンスの後継機とフリーダムが隣に居るのは……中々面白い。

 

「……隊長は君に託し、俺に遺した。何かやりたいんなら言いな。出来ることはやってやる。」

「……はい。よろしくお願いします。」

「そうかしこまるなよ。アスランより上とは言え、そこまで年も変わらんしな。」

 

 

 

「全く、ここは本当にどうなってるんだ?ザフトのAoA(エースオブエース)にオーブの国家元首に……」

「姫君が居るのは俺も正直ご勘弁願いたいがね。いわゆる“同志”ってやつさ。」

「“同志”ねぇ……どんな高尚な思想で集まってるんだか。やっぱり平和ってやつとか?」

「決まってるだろう?でなけりゃアークエンジェルはもっと戦火を広げているさ。」

「そうだろうけどね、世界はそう回らないもんだよ?簡単に幸せなんて手に入らないぜ?」

「いいや、簡単だね。宗教だとか哲学だとか上っ面のいい事述べまくってりゃあ良いんだよ。皆脳内お花畑でジエンドだ。」

「……それってルール違反じゃあない?」

「だから難しいし、幸せの定義もブレるって事なのさ。宗教も落ちぶれたから、明確な基準がない。だから面倒なんだ。でも歩む方向を同じくすれば……」

「ま、同じ船には乗れるってね?」

「呉越同舟、船を降りたらお好きにどうぞ。もっとも、船が陸に上がれるかは未知数だけどな。」

 

全くもって嫌なノアの方舟だ。隊長やら何やらがなければ孤児院の皆でどっかの廃要塞買って隠遁生活してらぁ。

 


 

「空気も抜けちゃってましたが……こんなものがありました。」

 

ダコスタがアタッシュケースから取り出したのは、ボロボロの本一つ。だが、ページを捲っていくと、赤いペンで書かれた「Destiny Plan」の文字。デュランダルのものではなく、むしろ彼を……いや、デスティニープランを危険視した研究員の一人のノートらしい。

 

ヘキサから齎された、ひとかけらの情報と照らし合わせながら、ノートをひとしきり読み終わる直前のことだった。緊急警報が鳴る。

 

「偵察型ジン!?」

「つけられたな、ダコスタ!」

「えぇっ!?」

 

元からメンデルが見張られていたのは確実。とは言え、渡るべき綱であったのは確かだ。ヘキサの思惑がどうであれ……前大戦を混沌に導いたクルーゼの遺言状でしか記述がなかった。信憑性に欠けるなんて程度のものではない。

 

が、ここでハッキリした。ヘキサ……ACESは味方だ。付けていた監視もやっと外せる……そう思っていた矢先の奇襲だ。

 

「ここのファクトリーの機体だって、まだ最終調整は終わっていない。攻め込まれたら守り切れん。」

「船を出しましょう、バルトフェルド隊長。今すぐに。」

『その方がいいと思いますよ。』

 

エターナルの通信機から声が響く。ニコルのものだ。

 

『戦力を二分させてほしいんです。エターナルの逃げ足なら、3隻は持っていけると思います。』

「こっちにはガイアしかないんだぜ?ナスカ級一隻ともやりあえる戦力はない。勝てる見込みは」

「勝ちたいのではありません……守りたいのです。」

 

この圧倒的に不利な状況では何とも言えないが……ラクスの思いはバルトフェルドには伝わった。そして、ニコルがすぐに作戦をひねり出した。

 

『エターナルには地球方面へ向かってほしい。我々はその間に迎撃態勢を整え、追撃にプリンシパリティを出します。最悪の場合、降下軌道まで逃げてあの二機をアークエンジェルへ届けてください。』

「それと、この資料も……」

「……よぅし、分かった。エターナル発進だ!とにかく逃げるが、プリンシパリティが追いつける程度の範囲には出来る限りとどまるぞ!」

『ジャンクチャ、オーバードレールカノン発射用意!周囲一帯が片付いたら狙撃!』

 

混乱の中、桃色の艦が鈍色の岩の中から加速する。青い地球へ、黒い宇宙を駆ける。“自由”と“信頼”を、“運命”と“正義”が戦う、混沌の渦中へ届けに……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。