C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話 作:QAAM_M1911
「GのOSはどうなってます?」
「大体大丈夫さ。もう稼働出来る。」
「よし、何とかなりそうだな…突然の事で申し訳ありませんでした。」
「隊長の命令となれば、動かない訳にもいかないさ。俺らの命も掛かってるんだから、礼はいい。」
「…ありがとうございます。」
こうしたやりとりが見えるのには、理由があった。
「足付きの位置はつかめるかね?」
「掴んではいますが…かなり距離が空いています。」
「まだ追うつもりですか?こちらには稼働出来るMSはヘキサのジンHMASしか…」
困った様な声を上げるアデスに対し、クルーゼはニヤリと笑った。
「あるじゃないか、地球軍から奪ったMSが。それも4機もね。」
「つまり、俺のMSと合わせて5機稼働するって事です。データも欲しいですし、何よりクルーゼ隊という面子がある。」
「…そういう事だ。宙域図を出してくれ、ガモフにも打電だ。」
「さて、と。アスラン、腹が決まったら何時でも話せよ。」
「…そうだ、な。俺らの中じゃ一番大人なお前には話しておくべきかもしれない。」
休憩室でコーヒーを飲みながらアスランにあの戦場で起こった事を聞いてみる事にした。まだ迷いのある瞳をしてはいるが、吐き出させれば幾分かは楽になるかもしれない。
「俺の思い違いかもしれないが…あの機体に乗ってるのは、俺の親友なのかもしれない。」
「…何故そう思う?」
「奪取作戦の時、俺はキラ…俺の親友と再会したんだ。」
「それで、あの機体の近くに居たのはラスティとお前、そのキラって奴だけだったって事か。」
「…もう一人いたが、負傷していたしOSの書き換えなんて事は出来ないはず。」
「俺と隊長の予想が当たったって訳か。」
甘ったるくなったコーヒーを流し込み、再びアスランに向き直る。
「良いか、俺たちがやってんのは戦争なんだ。厳しい言葉を投げるけど…そこに一般兵の意思なんざ反映出来ねぇんだ。ましてや、士官学校上がりたてのルーキーなんてな。」
「…だが俺はキラと戦いたくないんだ!」
「だったらイージスを降りろ。俺がやってやる。」
「…ッそれはダメだ!」
「なんでダメだ?戦いたくないんだろ?」
「俺はキラを死なせたくない!お前は遠慮なしに撃つだろう!」
「なら戦えよ。せいぜいソイツを捕獲して戻るんだな。その為に何が必要になるか、分かってるんだろうな?」
「…分かってる。」
「ハッ、ならよし。捕獲して戻るなら確実に成功させる事だな。もし失敗したら次の作戦の失敗はお前の責任になる。俺は手助け出来ねぇぞ、エンデュミオンの鷹が居るからな。」
「…あぁ。」
「ま、上手くやれよ。せいぜい頑張んな。」
そう言って俺は部屋を後にし、機体へと向かった。
「ハルコンネンの調子はどうです?」
「とりあえず調整はした、がやはりじゃじゃ馬だな。大きなブレはもう無いと思うが、撃ってる間に多分またズレるぞ。砲身に想定以上の負荷が掛かる。」
「…もう少し威力下げて精度を高めてくれよ。」
「設計部に言ってくれ。」
どうやらハルコンネンは問題児らしい。砲身が耐えられない…んなアホな設計にするなよ。もうちょい使い勝手良くしてくれ。
「…全機出撃!」
4機のG、そして一機のジンがヴェサリウスから出撃した、
『ヘキサ、聞こえるかね?』
「隊長、聞こえています。」
『君にはヴェサリウスの護衛を頼みたい。』
「了解、しかし彼らの援護射撃は…」
『後方からデータリンクをすると良い。所謂スポッターと言うわけだな。』
「了解しました。」
無線を閉じ、足つきに集中する。ハルコンネンはここぞと言う時以外に使うしかない。そうなると足つきの弱点を狙い撃ちするしかないのだが…ブレでそれも難しい。
幾つか足つきに撃ってみるが、ブレがやはり酷く…しかも規則性も無くなった為当たらなくなった。
「アスランは上手くやってるな…だが、鷹が居ない。」
『聞こえるか、周辺を警戒しろ。』
「艦長…了解です。」
ふんわりとした言葉を噛み砕いて、足つきの周辺をスキャンする。が、熱源反応はない。
「熱源反応なし…慣性飛行、下か!」
『機関最大!艦首下げ!ピッチ角60!』
俺の方が僅かに早く動き、鷹の機体に弾丸の嵐を見舞う。だがどう予測しているのか、嵐を掻い潜ってヴェサリウスに命中させた。
「クソ!」
『機関損傷!推力低下!敵MA離脱!』
「追撃します!」
『いい、それより第二波の警戒を続けろ!』
「…ッ了解!」
周囲には敵影は足つきと搭載された二機のみ。そうなればこのままMS隊で抑えて損傷したヴェサリウスを撤退させるのがいいのだろう。
「…よし、白いやつの装甲がダウンしたか。アスラン、この機を逃すなよ…?」
イザークがビームサーベルで斬ろうとしたその瞬間、巡航形態に変形したイージスが機体を掻っ攫う。
「何をするアスラン!」
「コイツは捕獲する!」
「命令は撃破だぞ!勝手な真似をするな!」
「…ま、イザークはそう思うよな。ディアッカ、足つきに射撃。ニコルはアスランの援護に向かってくれ。」
「おいおい、本当にあれ捕獲するのか?スコアにした方が良くねぇか?」
「捕獲した方がスコアは伸びるぞ。」
「それに、ヘキサの分の機体になります。ヘキサもG、欲しいんじゃないですか?」
「欲しいと言えば欲しいが、HMASに慣れてきたんだ。もっとぶん回したいよ。」
『気を抜くな!まだ奴らが何か手を残しているかもしれないんだぞ!』
「…その様ですね。足つきより砲撃!ディアッカ!」
「よぉし!」
「ッアスラン!後方から鷹だ!」
「何ッ?」
「やらせない!」
ディアッカの狙撃は特殊な装甲によってほぼ無効化され、ニコルが鷹を止める事は射出されたオールレンジ兵器によって阻止。そして、不意打ちがアスランの機体を叩いて白いのの拘束が解けてしまった。
「…俺が殿を務める。撤退してくれ!」
「何?貴様、ここはヤツを討つチャンスなんだぞ!」
「白いのをやる内にヴェサリウスが沈んだらどうする!行け!」
「…イザーク、俺もヘキサに賛成だ。それにもうバッテリー無くなるだろ。」
「ディアッカ…お前!」
『何をしている!殿はヘキサに任せて撤退しろ!』
アデスの怒号が無線に響き、Gは撤退を始める。
「…さて、鷹よぉ!一緒に遊ぼうじゃねぇか!!」
「ぐっ…このジン、ほんっとしつこいねぇ!」
恐らくクルーゼではない。だがそれなりの手練れである事は分かる。Gに乗っているパイロットよりも状況判断がしっかりしており、また狙いも正確。それでいてガトリングなどを持っているから非常に戦いづらい。
「クルーゼの野郎、自分は出ないってか?楽でなによりだけどよ!」
ガトリングを掻い潜ってガンバレルを射出する、がその途端に射撃を中止してガンバレルの範囲から逃れてしまう。やりにくい相手だ。
「チッ…相当なカスタムしてやがるねぇ!」
『大尉、キラ君の収容が完了しました!ただちに帰還を!』
「つってもねぇ!コイツが中々手ごわいのよ!」
再びガンバレルを射出する。四方八方から放たれる弾丸に望みを託す。
「ハァツ、ッ…ハァァア!」
急減加速を繰り返し、急旋回を繰り返す俺の身体は悲鳴を上げていた。とにかくガンバレルがうざったるい。通常のメビウス数機と戦う方が楽だと思う。
「チッ…ガトリング一発は喰らってくれよ。」
そう言いながら射出されるガンバレルの軌道を見る。まるで魚を獲る網の様に四方から弾丸が降り注がれるのが予見できた。
「…見えた!」
一気にHMASのバーニアを全開にし、鷹に向かってシュトゥームを突きつける。背後から放たれる一発の弾丸は速度によって無理矢理回避し、照準が付きそうなガンバレルのワイヤーをシェーレで切り裂く。その時だ。足つきから砲撃が飛んできた。また、別のバックパックに換装したであろう白いのによりハルコンネンのバレルが若干溶かされた。
「…こちらヘキサ、撤退は完了したか?」
『完了した。状況は?』
「敵MAに小破。だが白いのが復活し、援護射撃によりこちらも若干の損害アリ。状況悪化により帰還する。」
『分かった、撤退せよ。』
ガトリングをばら撒いてから一気にハルコンネンを足付きに向かってぶっ放す。砲身が変形しているため酷いブレだ。これはもう修理できないだろう。反動を使って反転し、一気に戦線を離脱した。
「うおおおお!ハルコンネンがこんな姿にいぃぃぃぃ!!」
「いや、本当すみませんっておやっさん。つか戦場だから壊れはしますって…」
「もうこれ修理できんぞ!!しかもよく見たらバーニアの根元も溶かされてるじゃないか!!」
「え、マジすか?」
「…ヴェサリウスと一緒に修理だな。」
「え、じゃあ追撃はどうしますか?」
「アスラン以外の赤服3人で行う事にしたよ。」
「隊長?お疲れ様です。」
クルーゼは敬礼を手で制し、今後の動向を話す。
「私とアスラン、そしてヘキサ。君はこれよりプラント議会へと出向…いや、君はどうやら身体内部が酷い事になっているようだね。」
「え?いやでも俺は…」
「あの急加速を繰り返していればすぐに身体がダメになるぜ、今は何ともなくても検査は受けとけよ。」
「おやっさん…そうですね。了解しました。」
「詳しい説明は後で行う、私の部屋に来たまえ。」
「はい。」
「来たかね。」
ノックの後に響いた声に更に身体を引き締める。
「ヘキサ・ラプトリオ。指示の通り出頭致しました。」
「…フ、入りたまえ。」
ドアを開け、敬礼をする。
「プラントでの報告は私とアスランが行う、が君の意見も幾ばくか聞いておきたい。先にレポートを提出しておいてほしい。」
「はい。…ところで、ですが。」
「む。」
「あんな機動で内臓がやられるとは思えません。私の記憶では隊長の方がもっと凄い機動をしていました。何故あの程度で精密検査を…あ、いえ、今のは忘れて下さい。出過ぎた真似を…」
「構わんよ。察しの良い人間は嫌いではない。ましてや、同族であるとね。」
「同族…ですか?」
「今回の検査はその証明と言っても良い。私の求めた存在かどうか…期待しているよ。」
「はぁ。期待に沿えるかどうかはわかりませんが、頑張ります。」
「話はこれで終わりだ。退出したまえ。」
「はっ。」
もやもやとしたものを抱えながら、俺は隊長の部屋を後にした。