C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話 作:QAAM_M1911
「ダイダロスにジャンクチャが向かっているのか……なるほど、悪くない。」
「とは言ってもスペック見る限りは単艦行動は無茶が過ぎるぜ。」
ディメスとの一騎打ちは俺の勝利に終わった。真剣勝負ではなかったと言えばそうだが、まぁ普通にぶつかり合っても俺が勝っていただろう。現在はロゴスの凶行を止めるために行動……しようと思ったが、既にマティアスが手を打っている上、俺たちよりも先にザフト軍が動いている。行ったところで出来ることはほぼない。ファクトリーに戻って補充が先決だろう。
「ミネルバの状況はどうなってる?」
「単騎でレクイエムの裏をかきに行ってるみたいだな。つーかオレンジショルダーもようやるなぁ。第二射の前にぶっ壊す勢いだぜ。」
「心配は無用だと思うか?」
「だろうな。負け犬には負け犬らしく無様に死んでもらうが関の山だろうさ。」
「ジブリールの事か?俺にはよく分からんが……ま、連合でも末端の兵士にゃあぶっちゃけ嫌いだって言う兵士は多いぜ。」
一射目はまず外し、二射目の前にミネルバがレクイエムをぶっ壊す。呆れるほど何も出来ないまま死んでいく。分不相応な地位のツケは面白いほど軽い死だな。今は俺たちが次の戦いに備えて英気を養う時だ。
「おやっさん、フェイスの装備カタログを見せてくれ。あと二号機はどうなってる?」
「二号機はディメスにやるのか?」
「連合でも使える、国籍や人種を超えたっていうアピールも必要だからな。つーか普通にパイロットの中でも上澄みだぜ?多分ディアッカとやり合える逸材だぞ。」
フェイスの二号機は連合のフラッグシップ機としてディメスに操縦してもらうことになった。ま、一騎討ちで派手にぶっ壊れたのもあるしな。あと、単純に一機生産ではいろいろと不都合も生じる。予算面とかでな。欲を言えば3号機4号機と建造していい感じのパイロット見繕って乗せたかったが……間に合わないもんは仕方ない。
「ところでヘキサ君。アークエンジェルが今コペルニクスで情報収集の任に就いているというが……援護はなにか必要かな?」
「うーん……分からん。流石にMS戦が起こることはないだろうが……あり得るとしたら、白兵戦による暗殺やアークエンジェルのハイジャックあたりだ。が、アスランも回復しているし、何ならマリュー艦長だって居る。ぶっちゃけ心配ないだろ。」
「そういうものか?イレギュラーは常に起こりうるものだよ。」
「そのイレギュラーが向こうで起こっちまったなら、俺たちがそれを引き継ぐだけさ。その為の補給作業だぜ?」
「うーん……月面にも一応オーブの艦船が入港できる場所はある。でも、見られないというわけではないからね。」
「彼らも覚悟していることだろ。何かしらあったら速攻で向かう。それで十分じゃないか?」
戦術的な意見をプリンシパリティの艦橋で交わす。連合、ザフト、オーブの3つの軍人が、だ。大きな意味を持つことは確かだ。
「そうだ、ヘキサ!レジェンドから吸い上げたデータでドラグーンを3基作ってみたんだ。試験してくれねぇか?」
「マジか、随分と早い。」
「元々が拡張性抜群の機体だからな。ドラグーンシステムだって当然載せられるさ。」
「量産機にしたい完成度だなこれ。」
多くの兵装がプリンシパリティに積み込まれていく。それは元々“クロス”に所属していた艦隊にも同じように。ウィンダムのライフルでさえも生産しているこの拠点は、最早テロ組織なんていう規模ではない。多国籍軍と言った方が正確でさえある。
「……ウィングマンは?」
「出向前に搭載するよ。今の任務はファクトリーを守るためのスクランブル待機だからね。」
「了解。ちょっと寝てくるが、大丈夫か?」
「まぁ問題ないと思うよ。休んでおいた方がいい。僕も休むが、君たちは大丈夫かい?」
「元々閑古鳥が鳴いてたからな。まだ大丈夫だ。それまでの対処は任せておいてくれ。」
「あ!?ミーアが暗殺されたぁ!?」
『……あぁ。すまない。守れなかった……』
「議長もいよいよか。クソ、世界が動くぞ!総員出撃準備!」
アスランからの無線をすぐに切り上げてファクトリーの艦隊に火を入れる。何回かミーア……ラクス嬢の偽物とは会っているが、こうもあっけなく死ぬとは思わなかった。アスランの口ぶりからして、ラクス嬢を庇って死んだとかそんな感じだろうが、恐らく議長はどちらにせよ彼女を粛清する予定だったとは思う。何せデスティニープランからしたらイレギュラーだ。ラクス嬢だってアスランと同様、最高峰のコーディネーターだ。キラ君も同じように最高の調整を施されているが、言ってしまえばミーアは天然モノだ。彼女を整形して傀儡にしていたことがバレている現状、議長は彼女を矢面に出すことは出来ない……そう、本物のラクス・クラインを人類の敵としない限りは。
シンとの扱いの違いはそこだろう。兵士は単に強くあればよく、士気を上げる者は相応の名声と信頼がなければならないからな。
「デスティニープランの演説が始まった。」
「さて、世界はどう動くかな?少なくともオーブは拒否するだろうが。」
「スカンジナビア王国も拒むんじゃねぇか?連合も多分乗り気ではないだろうよ。」
「とはいえ、政府がゴタゴタな今それを公表したんだ。決めかねてる間に諸々の詰めを行っている。議長が積み上げてきた信頼もあるし、いいことづくめに聞こえるものな。」
何だ、この胸騒ぎは……議長のことだ、絶対に何かを隠している。世界を揺れ動かす何かを。
「……トダカ一佐。相談だ。俺は何かを見落としている気がする。」
「同感だね。議長が何も考えずに、増してや力の必要性をよーく分かっている人だろうしね。」
「……ディメス。連合がもし拒否するとしたら、どうする?」
「分かって言ってんだろ?話もせずに艦隊を上げて、核をバーンと撃つさ。」
そうなると、ザフトも思いっきり応戦するだろう。そうなりゃ……
「……ニコル!」
『どうしました?』
「ジェネシスだ!議長の隠し持っているジェネシスはどうなっている!?」
『まだ動きはありません!でも……』
「何がある!?」
『レクイエム!破壊したと見せかけて修復していたとなれば、これ以上にうってつけな攻撃方法は!』
「あっ……クソッ、忘れてた!クソッ、ユニコーン!サビドゥン!中継コロニー狙撃だ!やれるか!?」
『そのために手を打っているのだ。確実に命中させる。』
「なら狙撃任務はそちらに一任する。頼むぞ艦長!」
マティアスの声がやたら頼もしい。いつ発射されるかは分からないが、もう既に第一リングに照準は付けているとのこと。その後は遁走させるのだが……これは足の速いウィングマンにやらせる任務だな。
「プロジェクト・ウィングマン発令!コフィンシステム起動せよ!パイロットは機体にて待機!」
『プロジェクト・ウィングマン発令確認。これよりウィングマン・エリートに機体を換装する。ニュートロン・ジャマー・キャンセラー搭載。アグニ砲の追加装備。』
「パイロット各位。健闘を祈る。彼らを帰せ。そして貴官らも無事に帰ってこい!!」
『了解。次の世代のためにも生き証人となるさ。』
数々のファイターが一気にジャンクチャの居る宙域へと向かう。次にやるべきことは……
「プリンシパリティ、出港準備完了したよ。」
『アリコーン、既に火は点いている。』
『クロス隊だ、俺たちも続く。』
「エンジェル隊、いつでも行けるな?」
「勿論。塗装もピカピカに磨いてますよ。」
『ヘキサ。こちらはジェネシスの動向を見張ります。何か動きがあればすぐに。』
「頼む。というかもうぶっ壊してもいい。内部工作がバレてなきゃ良いがな。」
『そのための、ブリッツですよ。』
「そうだな……結局怪我人にも重労働させちまうな。」
『大丈夫です。皆さんが命を張っているんです、元赤として僕だって命張らなきゃ。』
「死に急ぐ真似だけはしてくれるなよ、同期が死ぬのにはうんざりだ。」
エターナルも動き始めているようだ。これで大勢の駒は揃った。
「さて……戦争だ。始めようか、俺たちの未来を決める戦争だ。死ぬ気で戦い、生きて帰るぞ。眼前の敵は撃て。多くの命を救うなら、そこに居る命を奪え。悲しいかな、これが戦争だ。覚悟を決めろよ!」
動く。世界が動く。一握りの砂を見て、世界に絶望した賢者の思い通りにはさせない。愚者は愚者なりに懸命に生きるのだ。ただ与えられた幸せを享受するだけは、家畜に過ぎない。人の持つ可能性を、ギルバート・デュランダルに魅せてやろうじゃあないか。
「……ミネルバは出来るだけ撃ちたくないがな。」
「シン君も大丈夫かね?」
「生きてるさ。あいつは強い。意思を持ち、それを通す力もある。だが、度重なる不幸と洗脳が彼の四肢に糸を括り付けているのさ。レイも、あん時みたく一発ぶん殴ってやるとするか。」
「油断だけはしないでおくれよ。それで死なれたら格好もつかないよ?」
「そうだな……」