C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話 作:QAAM_M1911
「よし、全機突っ込んだな?」
データリンクの情報を集めながら俺はとにかくガトリングをばら撒く。メビウスはジン隊が対応している、攻め時だ。
「ディアッカ、着いてきてくれ。ニコルはヘキサと頼む。」
「了解。ニコル、右翼をやるぞ!」
「分かりました!」
ニコルが突っ込むと同時に戦艦の対空機銃を破壊する。
「これでぇーッ!」
「こちらヘキサ、ニコルの戦艦撃破を確認!」
「共同撃墜1!」
「ッ来たぞ、ストライクと鷹だ!ストライクはそっちに行った!」
「任せろ!」
「ニコル!鷹は俺に任せてくれ!」
「大丈夫ですか?」
「俺も赤だってとこ、見せてやんねぇとな!」
前回は決着の付かなかった鷹との勝負。それはかなり単調なものになった。迫り来るガンバレルをセンサーを頼りに避け、鷹には弾丸の嵐を見舞う。何処かで仕掛けなければこの膠着が続く。だが今はニコルとディアッカがフリーになる、であれば問題はない。その筈だった。
「後方からレーザー照射!?何だ!」
後方からメビウスが3機。損傷しているが、健在だ。
「…おいおい、ジン隊!応答しろ!聞こえるか!…クソッ!」
まさかジン隊が全滅するとは。純粋にジンとメビウスでは戦力に差があると思っていたが…
「ったく、ディアッカ!ちょいとこっち向かって一発頼む!」
「はぁ!?何言って」
「メビウスが3機来やがったんだよ、一旦ペースを乱す!」
「分かった、当たるなよ!」
バスターの熱線が俺のキワを潜り抜け、攻撃していたメビウスと鷹が俺から少し離れる。
「グゥレイト!」
「良い腕だぜディアッカ!」
そのままハルコンネンの特殊弾頭その2をぶっ放す。特殊弾頭SASM。対多数メビウス戦を想定した中範囲低威力爆発を引き起こす弾頭である。ジンの装甲なら耐えれる代物だが、メビウスなら爆風に煽られるなど中破は免れない。
「近接信管の設定完了!行け!」
メビウスが3機、爆発の中に消えた。損傷しているのだから耐えれるはずはない。
「…鷹も一度撤退したか。足つきの状況…降下姿勢に入ってやがるか!全機、足付きが降下姿勢に入った!鷹は撤退、繰り返す!鷹は撤退した!アスラン、ストライクは?」
「俺は損傷して一旦撤退した…クソッ!」
「そこまで強くなってるか…あのパイロットは。…ん?」
レーダーに反応。IFFは友軍を示している。
「イザーク…」
「ストライク…どこだ!出ないと…傷がうずくだろうが!!」
「…イザーク、データリンク開始。」
「おいおい、けが人だぞ?」
「イザークはそういう奴だ。お前が一番分かってるだろ、ディアッカ。」
「ハハッ、まぁな。」
「じゃあディアッカ、イザークは頼むぜ。子守りはキツイだろうけど、頑張れ。」
『全機追い込め!降下する前に何としてでも仕留めるんだ!』
「隊長の指示もアツくなってきたことで。一応メビウスの隊は全機やった、あとは船だが…弾幕が濃いな。」
「ヘキサ、聞こえますか?」
「聞こえてるぜ、何だ?」
「すみませんが…囮をお願いできませんか?」
「あぁ、良いぜ。俺が突っ込んでその後ろからお前が艦橋と砲塔をやる、それで良いか?」
「はい、お願いします!」
そう言うと、俺は深く集中する。息を吐き、スロットルを全開にした。
「行くぜ!」
艦隊のど真ん中を駆け抜け、ガトリングで対空砲塔の何基かを潰す。それだけでは勿論弾幕の厚さはあまり変わらない、が構わない。
ミラージュコロイドを持ったニコルのブリッツが今、艦橋を潰した。それに気づいた別の艦がブリッツに対空砲火を差し向けるが、今度は逆に俺がハルコンネンの通常弾頭で端から一直線にぶち抜く。
今度はとにかく周囲に弾をばら撒く様になった。だが二隻沈黙した今では悪手と言う他ない。ハルコンネンの一撃、ランサーダートの爆発。今やこの艦隊は壊滅状態である。
「っし、大戦果!ニコル、突っ込みすぎて死ぬんじゃねぇぞ!」
「分かってます!くっ…ディアッカ!イザーク!限界高度です!引き返して下さい!」
「うるさい!ストライクめぇ…!」
「ッこの馬鹿!ディアッカ、お前は戻れるか!?」
「もう無理だ!推力が負けちまってる!」
「クソッなら気を付けて降下…ん?何だ、この反応…」
軍属のシャトルがレーダーに表示される。
「避難民か…?全機、あのシャトルは撃つなよ。恐らくヘリオポリスの避難民だ。死んだら面倒な事になる。」
「分かった。聞いてたかイザーク…おい、聞いてるのかよ!?」
「うるさいッ!この腰抜け兵がぁぁぁ!!」
「ックソが!」
ハルコンネンを瞬間的に構え、デュエルの直近にある残骸に照準する。そしてSASMをぶっ放す。
「ヒュー、ナイスだぜヘキサ。」
「ヘキサ!!貴様よくも」
「あれを撃墜したらお前は軍法会議で極刑になるぞ!IFFを確認しろ!あれは避難民だ馬鹿!お前のプライドうんぬんよりも国際条約を守れ!向こうが破ってからやるんだ!」
「戦争で綺麗事を…!」
「せめてルールは守れ!そうでなければ泥沼化だ!とにかく!早く大気圏突入の体勢とれ!もう手遅れだ!」
「クッ…!」
足付きと共に、イザークとディアッカの2人は重力の井戸へと落ちて行った。
「…っあぁクソ!結局足付きを仕留められなかったか。」
『残念ではあるが、過ぎてしまった事は仕方がない。戻ってどうするかを決める。全機帰還せよ、恐らく私にも帰還命令が出るのでね。』
「了解、帰るぞニコル。」
「はい。」
「二人とも…地球に降りたらしいですよ。無事だと良いですが。」
「イザークならプライドだけで身体動くから大丈夫だろう。しばらくジブラルタル基地にいるのか?」
「そう簡単に帰投出来る環境じゃないさ。でも二人ならうまくやるだろう。」
「でも……大丈夫なんでしょうか?」
「何がだ?」
「結局、僕らはあのストライクと新型戦艦の奪取にも破壊にも失敗しました。またクルーゼ隊長は帰投命令でしょう。」
「隊長でも落とせなかった戦艦、そう委員会は見るだろう。」
「なら良いのですが…」
「心配ねぇだろ、今回の帰投も別の作戦の事だろうしな。しばらく、身体を休めるとしようぜ。」
「そうですね…」
『ヘキサ・ラプトリオ、隊長がお呼びです。出頭願います。』
「おっと、なんか呼ばれた。じゃあな、行ってくらぁ。」
「はい、お気を付けて。」
2人に手を振って、もはや見慣れた室内へと入る。
「来たかね、少し長い話になるから座ってくれ。」
「はい。それで…話とは一体…」
「君の気になっている事だ。見終わったらすぐに返却してくれ。」
「この量を、ですか……」
確かに俺は速読出来るが、百ページほどある量を読むのは気が引ける…と思ったが、なんとそれは隊長の筆跡…つまり自筆のもの。恐らく昔から少しずつ綴っていたものだろうが、こうまでして記録を残すとは一体…と気合を入れて目を通した。
「…これは、確かに自筆で…しかも声を出しちゃいけない事ですね…」
「分かったなら早めに目を通してくれ。こうして外気に触れさせるのも憚られる。一応遮音室ではあるが、ね。」
そんなもの一介の兵士の俺に見せんな、と心で突っ込みながら40ページ目に突入する。ここで俺が気になっている事は、ギルバート・デュランダルと言う人物が隊長の薬を手配している事。そして…
「レイ?」
「今回の話は正にそれだ。その為にも後半をしっかり読んで欲しい。」
そして後半…前半部分で日記の様に、呪詛の様に綴られていた憎しみを開放する作戦の一端。つまり、地球を焼き払う。しかし、最後になるにつれてどこか迷いが出ているのが見て取れた。
「…お返しします。」
「20分掛からなかったか。早いな…」
「士官学校の資料室に籠ってたもんで、その名残です。それで…お聞きします。つまり、話とは?」
「レイを…君の孤児院に入れたいと言う話だ。少々前にこの同志を助け出してね、今はギルバートに一任しているのだが…彼を残しておきたいのだよ。」
「…僕一人の意見では決めかねる問題です。が、確かに貴方の案に対しては賛成したい。彼一人としか接しないのではギルバートとやらの完全な傀儡になる可能性がある。しかし、だからと言って別の個人に預けてはギルバートからの反発がある。そこで、社会勉強として孤児院に入る…ですか。」
「理解してくれたかね?」
「…今、年齢は?」
「君の少し年下…と言いたいが、私にも正確な事は分かっていなくてね。だが君より歳は下だ。」
「…なら13程か…孤児院では12以下の子しか受け付けてないんです。が、社会勉強と言う事なら孤児院で雇い入れる事が出来るかもしれません。」
「ふむ…不安は残るが、良い案だ。手紙を出しておこう。それと、君も最初の間は彼の付き添いをやって欲しい。」
「えっ、俺の任務は」
「専用機の不調で内臓に軽度のダメージを負ったとでも記載しておけば休暇は取れる、やってくれるかね?彼の精神的な成長を促しておきたいのだよ、私は。」
「隊長…分かりました。まだ…人類に光を見ているんですね。」
「フッ、一筋の光さ。私程度乗り越えられなければ人類が終わる事の証明だろう?」
「ハハッ、そうですね。俺もこれから一芝居、打つとしますよ。」
「次、寄港したら降りてくれ。手配しておく。」
「じゃ、一度皆さんとはお別れですか。挨拶してきます。」
「あぁ、重大な任務になるが頼むぞ。」
「ハッ!ヘキサ・ラプトリオ、この任必ずや完遂してみせます。」
そう言って俺は隊長室を出た。息を大きく吸って、吐く。
「…スゲェ事になった。」
感想ありがとうございます、ここで言わせて貰いますが返信してないのは基本的にネタバレになりそうなやつです。ご容赦ください。