C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話   作:QAAM_M1911

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珍しく戦闘なし。次も多分無い。


もう一人のクローン

「じゃあなお前ら。ちょいと療養して直ぐ帰ってくる。絶対死ぬんじゃねぇぞ。」

 

「分かってる、お前も元気でな。」

 

「あぁ。二人にも伝えといてくれ。“命あっての物種”ってな。んじゃ、またな。」

 

「はい、お元気で!」

 

そう言うと、俺は二人に見送られてシャトルに乗った。

 

「はぁ…俺が地上に降りられるのはいつになるやら。つか大丈夫かなアイツら…」

 

溜息を吐きながら俺は自分の席へと向かう。そして、隣には先客がいた。

 

「君がレイ・ザ・バレル君だね?今日からよろしく頼むよ。」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

「よしよし、素直な子は嫌いじゃねぇぞ。」

 

そう言って俺は彼の隣に座る。

 

「君は…いや、シャトルの中で話せる様な内容じゃないな。向こうについてからこれは話すとしようか。」

 

「…ラウの腹心、と聞いていますが貴方は何故…ラウに?」

 

「俺の出自と戦う理由が関係している、と言えば良いかな。出自も機密だからここじゃ話せる内容じゃないが…戦う理由はな、別にプラントに勝つだとか負けるだとかどうでも良いんだ。人類がこれを見てどう思うか、そしてどう乗り越えるかを前線を経験した上で見たいんだ。これから行く孤児院に金を送るって理由もあるけどな。」

 

「成程…ギルの事は何か?」

 

「遺伝子工学に非常に精通している天才だと聞いているよ。君を助け出したのだから善人であるとは思っているよ。」

 

少し考えてから、俺はレイの顔を見て言う。なるほど、確かに全貌は見たことがないが口元などクルーゼ隊長に似ている部分は多い。

 

「俺は思った事をあまり隠せない性分でね、言わせて貰うよ。いくら育ての親、命の恩人だとは言え全てをゆだねるのはいけない事だよ。」

 

「…は?」

 

「パスカルの“パンセ”と言う書物に『人間は考える葦である』、と言う一文があると言うのは有名だね。何を伝えたかったか、は言うまでもないだろう?人間は考えなければならない、とね。考えるのを放棄するのはいけない事だ。君の考えた末の意思で彼に全てを任せる、なら俺は最早何も言うまい。だが、無考での服従なら俺は止めねばならない。それが隊長から賜った任務なのでね。」

 

「ラウ、から?」

 

「あぁ、とにかくだな…これからの孤児院での社会勉強で君の生き方をしっかり考えて欲しい。それが出来れば、君は立派な大人の一員だ。」

 

「…はい。」

 

「あ、それとだ。」

 

「何ですか?説教はそろそろ切り上げて欲しいものですが…」

 

「いや、忠告だな。孤児院の仕事、割と大変だぞ。」

 

「…え?」

 

「世の中の母ちゃんって軍人みたいなスケジュールだからな?お前が軍に入隊するならこれも訓練の一環だ。軍人の戦う理由、それも考えてみるといいかもな。取り敢えず、ちょっと長い旅になるんだ。ゆっくり休んどけよ。」

 

そう言うと、俺は瞼を閉じて眠り始めた。

 

 

 

「さて、着いたぞ。」

 

「ここが…孤児院ですか?想像してたよりもずっと綺麗ですね。」

 

「子どもが多いからな。不潔な家では健全に育たんよ。」

 

そう言って俺は玄関を開けた。

 

「よう!お前ら元気しとったか!」

 

「あー!ヘキサお兄ちゃんだー!おかえりー!」

 

「おうおう今日も元気いっぱいだなノア!ちょっとお客さん来てるから、お土産とか遊ぶのはまた後でな。」

 

「分かったー!」

 

そう言うとノアは遊び場に引っ込んでいった。恐らくトイレから戻っていた…のではなく俺に会った事でトイレに行きたかった事を忘れてるんだろう。また出てきてトイレに向かって行ったし。

 

「大変そうだろ?」

 

「え、えぇ…まぁ…」

 

「まぁ、苦しいのは最初だけだ。次第になれる、と言うか楽しくなるさ。」

 

そう言うと、俺はレイを連れて孤児院の奥へと向かった。

 

 

 

「帰りましたよシスター。」

 

「あら、おかえりなさい!怪我したって聞いたけど…大丈夫?」

 

「軽いですから運動も全然出来るさ。万一を考えて隊長が、ね。」

 

「良い隊長を持ったわね。それで…そちらの方が?」

 

「レイ・ザ・バレルです。これから三か月間よろしくお願いします。」

 

「はい、よろしくお願いしますね。…あら、私、自己紹介してなかったかしら?」

 

「いつするかって気になってたぜ。」

 

「んんっ、私はマリア・カシスタ。ここの孤児院をやっています。」

 

「シスターと呼ばれてましたが…何か宗教を?」

 

「いえ…無宗教なんですが、何ででしょうね?」

 

「あの…失礼ですが年齢は…」

 

「今年で22だぜ。」

 

「こらー!女の人の年齢ばらしちゃいけないって言ってるでしょーが!」

 

「な?スゲー幼い。だからシスター(お姉ちゃん)。他にも理由はあるがな。」

 

「成程…」

 

「と、とにかくっ!明日からよろしくお願いします。これに目を通してください。」

 

と言い、レイにスケジュールを確認させる。読むにつれて顔が険しくなっていく。

 

「えっと…これ、毎日ですか?」

 

「はい。」

 

「休みは…」

 

「俺とかの兄貴姉御分が全部担当する日だけだな。年に数回だけ。休んで欲しいっちゃ欲しいが…」

 

「私の生きがいを奪わないで下さいよ!?」

 

「…凄まじい方、ですね。」

 

「な?世の中の子育てするお母ちゃんたちは軍人だぜ。」

 

「ハハ…ところで、22という事は…」

 

「えぇ、私もここで育てられた孤児なんです。数年前に私の代の先生が亡くなってしまい、私が引き継いだ、と言う感じです。金銭の支援がなくなってしまいましたけど。」

 

「だから、俺が軍に行って出稼ぎしてるって訳だ。そういや、アリ―は今どこに?」

 

「キアルちゃんは3ブロック先の喫茶店でバイトをしてますね。ネルセン君はこの前道路整備の仕事クビになっちゃって…今はコロニーの整備をしてます。」

 

「コロニーの整備か。結構金入る仕事だな。」

 

「でも、ヘキサ君もあまり危険な目に遭わなくても良いんですよ?ネルセン君と一緒にコロニーの整備やるだけでも十分…」

 

「俺には俺のやりたい事があるって言ったでしょう。ザフトの為、とかじゃないけどこのコロニーをやらせんって思いがあるんですってば。」

 

そう言うと、俺は大きな欠伸をかみ殺す。

 

「~ッ、スマン。今日はもう休ませてくれ。久々にゆっくり寝たい。」

 

「夕食の時には呼びに行きますよ?レイ君は過ごすお部屋を案内しますから。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

2人のやりとりを見て、俺は割と成功に近いんじゃないかと内心ほっとするのであった。シスターの魅力はぶっちゃけ歌姫にも劣らないものがあると思う。向こうはカリスマ性があるとしたら、こっちは包容力と何と言うか…守護らねば、とかそう言う感じである。

 

まぁとにかく、シスターと仲良くなれた様で何よりだ。こっからはもうこっちのもんだ。

 

 

 

「ヘキサにいちゃんかえって来たんだってよ!」

 

「本当!?ぐんじんさんって大変なのにすごいなー!」

 

「僕らの兄ちゃんなんだぞ!当たり前だ!」

 

「おーおー元気だなお前ら。」

 

「うん!お兄ちゃんも帰って来たし、ごちそうもいっぱいだし!」

 

「ハハッ、花より団子ってか。」

 

「なにそれ?」

 

「もう少し大人になったら、分かるかもな。」

 

「はーい、皆静かに~。夜ご飯の前にお話しがあるって言ったよね?分かったらお返事は?」

 

「「は~い!」」

 

「うん、いい子だ。んじゃ、今日俺が帰って来た訳だけど、今日から少しの間、ここでお手伝いをする事になった俺の後輩になるであろうレイ・ザ・バレル君だ。」

 

「こんばんは。」

 

「まだ緊張してるかもしれないけど、みんな仲良くするのよ?」

 

「「は~い!」」

 

「よろしい!それじゃ、ごちそうを食べましょう!…って、あら。まだキアルちゃんは来てないのかしら?」

 

「あそこの戸締りするっつってたからそろそろ帰ってくるんじゃないか?でももう食った方がよかねぇかシスター?」

 

「ネルセン兄!それぼくのー!」

 

「我慢出来ねぇってか。しゃあない、アリ―には悪いけど先に食おう。」

 

 

 

食べ始めて30分。もう子どもたちはお腹いっぱいで遊び始めているが、大人組はまだまだいける。

 

「ただいまー」

 

「キアル、遅かったな。何かあったのか?」

 

「今日はラストオーダーにもお客さんが居てね、ちょっと忙しかったのよ。」

 

「そうか。悪いが先に食わせて貰ってたぞアリ―。」

 

「あ、ヘキ兄さんお帰り。そっちの人は前に言ってた?」

 

「レイ・ザ・バレルだ。よろしく頼む。」

 

「ふぅん、中々良い男じゃない。婿に取れたら幸せものね。」

 

「…そうか?」

 

「謙遜しないの、イケメンなんだから。あ、ワインあるかしら?」

 

「孤児院ですよ?ある訳ないでしょ、そもそもあなた未成年ですよ!」

 

「あらら、残念。」

 

「まぁまぁ、ソーダでも飲んでリフレッシュだ。」

 

「ありがと。」

 

そう言ってアリ―はソーダの入ったグラスを一煽り。あ、アリ―ってのは俺がキアルを呼ぶときの愛称だ。

 

「さて、ここからは大人同士のお話会にしようぜ。つかヘキサ兄、いつまでここに居られるんだ?」

 

「一ヵ月は居られねぇかなとは願ってるが、戦局が戦局だからな。二週間すれば戻るよ。」

 

「あー、意外と短いわね。レイ君は三か月居るんだったかしら?」

 

「…その予定だ。」

 

「確か今士官学校に通ってるんだったかしら?何でここに…」

 

「人間的成長、だ。士官学校のカリキュラムにも一応はある。一種の洗脳にも近いが、一般市民と交流させて奮い立たせる、って言う感じだ。」

 

「それ本人にバラシて意味あるのか?」

 

「バラシても意味があるから続いてるんだよ。」

 

「じゃ、初日だけど早速感想聞かせてくれるかしら?」

 

「…子どもが多くて、大変そうだな…と。」

 

「大変よ?でもそれが楽しいのよ、子どもって不思議な生き物でね…一秒ごとに成長して飽きないの。でも、その中でやっぱこの子だなって思う事があったり…訳わかんないかしら?」

 

「えぇ…」

 

「ま、それもここに慣れる内に分かってくるわよ。兄ちゃんサイダー取って。」

 

「自分で取れっての。」

 

「いいじゃないバイトで散々配膳したんだしさぁ。」

 

「ヘキサ兄怪我してんの分かってる?」

 

「どうせ大した怪我じゃないでしょ。痛がる素振りだとか変な動作とかないじゃない。」

 

「よく分かるな。」

 

「兄ちゃんの隣でいっつも寝てたんだもの、分かるわよ。」

 

「キアル姉さん言い方よ。」

 

「この童貞め!恥ずかしがってんじゃないわよこの!」

 

「オメェも体験無いだろうがよ、それどころか男っ気一切ねぇじゃん!ヘキサ兄と何年も同じ部屋なのに!」

 

「うるせぇ、飯時に下品だぞ。悪いなレイ、コイツらいっつもこんななんだ。」

 

「そうですか。ところで、お二人は今何歳に?」

 

「私はヘキサ兄ちゃんのニ個下だから、15歳よ。」

 

「俺は14だ。学校は飛び級したから、もう働いてるぜ。」

 

「なら、僕はネルセン君と同い年になるのかな。」

 

「マジか。んじゃあ堅っ苦しいのはやめてさ、ネルセンって呼び捨てにしてくれよ。」

 

「なら、俺も呼び捨てにする。それでいいか?」

 

「同い年同士、仲良くしようぜ!」

 

「仲良くなれそうで何よりだ。さて、明日は早い。飯食ったら少ししたら寝るぞ。」

 

「俺らが朝食の番か。忘れてた。」

 

「…料理、出来ないんだが。」

 

「ナイフ位握れるだろ?レイにはスープの具を切ってもらう。明日は5時起きだ。」

 

「…早めに寝ないとな。」

 

「基本、俺らもあいつらと同じ様な生活をする。二週間は俺もレイのバックアップに入るから、心配するな。」

 

明日から2週間程、懐かしきこの孤児院で羽を伸ばす事が出来そうだ。

 

「…死ぬなよ、お前ら。」

 

そう呟き、サイダーを煽った。

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