『スターラスターガール ~感応兵器・如月千早の夏休み~』   作:cyanP

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―宇宙ステーション―

 

~~タイタン発、

貨客船9652便が間もなく到着します。

係員はC-48番ゲートで待機して下さい。

 

まもなく貨客船9652便が到着します

係員はC-48番ゲートで待機して下さい。

~~~

 

 

高い天井と人けの少ない広いロビーにアナウンスが響いている。

 

 

 

基地は今、地球に近いかなりの低高度を通過中らしく

手すりの向こう側を数階分のフロアに渡って

大きく覆っている展望と装飾を兼ねた

巨大なパノラマウィンドウを通して地球をとても近くに見ることができる

 

見下ろすと下の階ではツアーの団体客がおなじように

手すりの前で並んで地球をバックに記念撮影をしていた

おばさん達は上機嫌ぶりを隠そうともせずすこぶるハイテンションなのが

ここからでも身振り手振りと響いてくる雑多な歓声で

手に取るように分かった

 

宇宙世紀昭和85年と言っても

普通の人は仕事関係でも無い限りそうそう宇宙に用があるわけではない。

 だからワザワザ観光で見に来るわけなのだが

この地球を肉眼で見るだけでも宇宙に来る甲斐がある気がする。

 

とくにこんな低高度をタイミングよく通過中に訪れられたのは

運がいいと言える。

 

 

高天原宇宙基地(たかまがはらうちゅうきち)

 

最大部は現時点で約7000メートル

現在も各用途のブロックごと入れ替えや拡張が行われているので

外形さえ変容する。

帝国艦隊が所有運営する大型ターミナル宇宙ステーション

 

 

テロ対策その他の理由で旧来の宇宙ステーションのように

一定の軌道を周回しているのではなく

高度もコースも適宜変更されスケジュールは非公開。

 

 

 

う~~~ん

 

しかし宇宙に来た感覚が、

というか、宇宙人の進んだテクノロジーが使われているという感覚が

まるで感じられない。

科学万博のパビリオンの方がよっぽど未来的かもしれない。

 

科学技術に詳しくない自分でも『重力コントロールシステム』

なんてものが

地球にある従来の技術じゃ到底ムリである事ぐらいわかるのだが

ここに来るシャトルに乗った段階で当たり前に使われている状態なので

それが

”飛躍的な技術”として認識できない。

 

他にもこの巨大な宇宙施設は不可視の防壁や

構造を補強する力場で守られているはずだけど

基地内にいても何も感じない。

 

この宇宙ステーションにやってきたのは何年ぶりだろう?

まだ小学校に上る前に家族でやってきたことがある

でもほとんど記憶というか印象に残っていない

 

もうとにかく来るまでに長時間じっと座らされたり並ばされたりで

すっかり嫌になっていて

 

僕はと言うと見学そっちのけで最初の売店で見かけた

『ポケットシリーズ』と称されたどこででも買えるオモチャが

すっかり欲しくなってしまい

当然そんなものを買い与えたがらない両親と一悶着を起こして

散々ごねてやっと買ってもらい

にもかかわらず帰りのシャトルで呆気なく壊してしまうという

なんともしまらない子供らしいといえば子供らしい

そんな思い出しか無い。

 

姉も一緒に来てたはずだけど

その印象もまるで無い。

 

逆に言えば

そんなどうでもいいオモチャに負けてしまうほどの

子供にとっては面白みのない施設であったとも言える。

 

しかし、改めて見るとあれから10年ほどしか経っていないのに

ずいぶん様変わりしているのに驚かされる

当時はもっと工業施設を思わせる味気ない作りだったはずだけど

いつのまにこんな風になったのだろう?

 

 

 中央ロビー部は各方面の搭乗ゲートとなっているのはもちろん

複数のグッズやみやげ物等の小売店舗や飲食店、映画館、

フィットネスクラブ、ヘアサロンなど

サービス業の店舗も入居する商業施設エリアで

何階建てにもなった吹き抜け構造の

さながらショッピングモールを思わせる様相を呈していて

 

その他、〝さまざまな宇宙開発に関する展示場や植物園まで存在する〟と

世界各地の時計を兼ねた大きな噴水の出るモニュメントの案内板に

表示されている。

 

またその噴水やその外周には沢山の木や花やツル植物が

植えられ配置されており

そのすべてが瑞々しい本物でまるで宇宙にいることを感じさせない。

 

僕は蘭の花が放つ新鮮な芳香に包まれてこだまするアナウンスや

かすかな雑踏の音を聞きながら高い天井画を見上げていた。

 

 

ただその大型国際空港風の施設の規模の割に圧倒的に人が少ないのが

非現実感をことさら誘起していた。

 

本来ここは人がごった返していなければならないところではないのか?

 

そういえば何年か前、

帝国艦隊のニューフロンティア計画の目玉だった数十光年向こうにある

ヤマトアマツユ星系で新種の宇宙人かなんかとの

大規模な事変が発生したとか

それでボロ負けして地球はじきに侵略されるとか騒いでた。

 

しかし

知らない間に他の話題と同じようにだんだんと飽きられて

何にも言わなくなったので結局たいしたことはなかったのかと

思ってたけど

 

 

実際はあれが後を引いて宇宙開発計画が停滞したとか

そんな感じなのかもしれない

 

よくみると商業エリアの店舗はどれも無人化がすすんでおり

ロビーに居るのも係員ではなく簡素なデザインの

インフォメーションロボットだ

 

 

姉には

関係者証明カードをもらっていてそれを入場口で提示して

チェックを受ければ許可を受けた者しか入れない

ラウンジが利用できるのでそこで待っているように言われていた。

 

僕は到着したての観光客らがいるホールの両側に

二本ずつ設置されたエスカレーターでうえに上がり

透明パイプのエレベーターに乗り込んで

遠ざかる下のロビーやグニャグニャと有機的にうねった各階の廊下、

向かいの壁のレリーフとシャンデリア、

それらが通過していくのを見ながら

落ち着いたやわらかい間接照明が照らす

待合エリアのある階へとやってきた。

 

そこは静かな音楽が流れ

置いてある家具も大人っぽいものがならんでおり

僕のような普段着姿の子供が一人で来るのは場違いな場所に思われた。

 

きっと他に大人がいたら

ジロジロ見られてしまうんじゃないかとすこし不安になったが

幸い人はまばらでそして図書室のように座っている誰も

他人のことなど見ていなかった

 

僕はこの広い中の

どこに腰掛ければ落ち着くのか迷ったが

どこに座っても落ち着かなそうだったので

あきらめて適当なソファーに浅く腰掛け改めて深く座り直した。

 

周りを見回してもスーツを着た大人しかいない

 

「お客様、ナニカお持ちしましょうカ?」

 

といきなりメイドの格好をしたヒューマノイドに話しかけられ

 

「えっ・・・あっ・・・・・・いや、いらないッデス」

 

と本格的にうわずった声で返答をしてしまって、

その声が意外と響いて周りに聞かれてしまった気がしたので

一人で座っているのがますます辛くなる。

 

(お姉ちゃん、早く来てくれ~・・・!)

 

時間が経つほどにどんどん不安になってくる

本当に待ち合わせはここでよかったのだろうか?

やっぱり外に出て待ってたほうが良いのではないか

 

そんなことを逡巡していると

 

 

 

 

「キミが千早の弟くんか?」

 

という声がして

視線を上げるとそこには

 

 

いかにも『切れ者』という

鋭い視線の女子が

帝国艦隊の青いジャンプスーツを着て立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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