『スターラスターガール ~感応兵器・如月千早の夏休み~』 作:cyanP
水瀬さんが案内してくれて
僕たちは窓際にある席へと付いた。
イスが三脚ある丸いテーブルの席だった。
そこは天井から足元まで
傾斜した大きな窓が覆っていて宇宙が見渡せる
なんだかすごく気分のいい席だ。
それにテーブルの中央には
白い小石の敷き詰められた鉢植えが置いてあって
サンスベリアの葉っぱがめらめらと立ち上がっているので
いくらか彼女たちと正面から向かい合う形じゃなくなり
よけいな緊張をせずに食事が出来るのも
気の小さい僕にはありがたかった。
見るとさっきから
青と白っぽいツートンカラーの航宙機が窓の外を滞空している。
宇宙なんだから滞空って言って良いのか分からないけれど
ふわふわと流体の中を漂うように一定空間内に留まっている。
全長は二十メートル強くらいかな?
ちょっと距離感がつかみにくくて大きさが良くわからない。
でも操縦席の大きさから比較すると多分それぐらいだと思う。
普通の飛行機なんかと違って厚みがあって頑丈そうで
見るからに威力が強いと思われる大きな大砲が
機体の下部に槍でも構えてる風に据え付けられている。
菊地さんがその様子を見ていたので
知ってる人でも乗ってるのかな?
と思って訪ねてみた。
「艦隊付属校の人は、ああいうのにも乗るんですか?」
すると菊地さんは
「あれは軌道自衛隊所属の航宙機でね
ソルバルウって名前の攻撃機だよ、すごくカッコイイね。
艦隊にも配備されてるから私達も乗るかもしれないねー」
と答えた。
「航宙機ってみんな帝国艦隊だと思ってました
違うのもあるんですねー」
ぼくがそう答えると水瀬さんが説明してくれた
「地球や月の周回軌道やラグランジュ・ポイント周辺は
日本の軌道自衛隊の管轄というか守備範囲だから
ソルバルウが飛んでくるんだよ。
特にこういう帝国艦隊の宇宙基地でも重要人物の会合なんかがあると
ああやって警護に来てくれてる。」
「そうなんですか・・・」
とそのときはなんとなく返事を返したが何かがおかしい気がする。
警護っていったって
あんな物々しい大砲が付いた航宙機で対応しなきゃならないような事態が
発生しうるっていう事なのだろうか。
それほど危険なものがここまでやってくる?
こんな地球の近くに?
一体どういうことなんだろう・・・・?
「あの、みなさんは僕の姉と同じチームなんですよね?
それは一体なんのチームなんでしょうか?」
「感応兵器部隊のチームだけど」
水瀬さんが答える。
「・・・感応兵器部隊?」
僕がまるっきり分かってないと察して
コーヒーを一口飲んでから改めてこう言い直した
「『極東の魔女』って言葉を聞いたこと無いかな?」
「あ、あります。
なんかテレビのニュースで
外国政府の偉い人が何か怒ってる感じで時々聞きます。」
「あー、あれ、あの外人さんらに魔女呼ばわりされて
難癖付けられているのが、私ら『感応兵器部隊』」
「え、そうなんですか!?」
「うん」
僕が驚いていると菊池さんが補足した
「魔女じゃなくて巫女なんだけどねぇ?」
「巫女?巫女ってあの・・・」
「うん、そうだよ!神社にいるでしょ?
でも外人さんは巫女というのが何なのかわからないのかなぁ?
私達は天翔ける巫女。宇宙にいる巫女なんだよ」
「はぁ・・・」
菊地さんがニッコリ笑って『巫女なんだよ』って説明してくれるのだが
ぼくには彼女が何を言っているのか全然わからない。
「まぁ、わからんだろうなぁ。」
と水瀬さん。
「あの、巫女と宇宙がどういう関係なんでしょうか?」
「いや、巫女と宇宙が関係あるわけじゃなくてな
『念積体』は聞いたことあるかな?」
「はい、名前ぐらいは・・・」
「念積体っていうのは前の大戦、
第三次世界大戦の引き金にもなったぐらいの
強力なエネルギー関連に関わってくる
〝最重要戦略物質〟なんだがな?」
「はい・・・」
「まぁ、戦争するにもしないにしても絶対欲しいやつ。
でも実は重要なのは念積体そのものじゃなくて
その制御技術の方なんだわ、
つまり念積体だけあってもとても使えない」
「ええ」
「で、その念積体をコントロールする
念積制御の核心部分の技術を帝国艦隊が抑えていてな?
独占状態となっている」
「はい」
「その最重要の極秘の制御技術を持ってして
念積体の面倒を見てるのが私達、『感応兵器部隊』ってワケだ」
「はい・・・・・・えええ???」
「――ん?」
僕が戸惑う反応を見て水瀬さんが首を傾げる
「あの・・・つまりみなさんが
念積体の制御のカギを握っているというワケですか?」
「うん」
こともなげに水瀬さんが答える。
それって、なんていうか
ものすごく重要な役目ですよね?」
「うん、まぁ、重要といえば重要かな、外国には出来ないし」
「そこにぼくの姉もいるんですか?」
「うん」
「感応兵器部隊・・・ですか・・・・・・」
聞き慣れない言葉をなんとか飲み込もうと考えてみる、
しかし奇妙な部分があることに引っかかった。
「え、・・・でも・・・さっきは確か、宇宙の巫女とか・・・?」
「あー、そこな!
それに関しては説明が難しいんだけど
まぁとにかく、私達が巫女さんパワーで
念積体を何とかしてるわけだ、フフフッ」
水瀬さんが自嘲気味に笑い、菊池さんも屈託なくクスクス笑う
でも確か念積体って
主要参戦国内なんかで戦争中に暴走してクレーター湖が出来るほどの
大惨事を引き起こしたすさまじい兵器って
習ったと思うんだけども・・・。
そうだ、未だにそのせいで
時空が歪んだままになっているなんて怪談めいた事も言われるぐらいの
とんでもない超兵器だ。
・・・ホントに姉が
そんなものを扱っているのだろうか?
ふたりがくすくす笑う様子からも
姉や今まで会った彼女らがそんな恐ろしい物質を
コントロールしているなんて話はにわかには信じられない、
というよりも
僕の日常とかけ離れ過ぎてて認識の接点がまったく見えない。
ぼくの姉が・・・・?
念積体の兵器を?・・・
制御している?・・・・
ホントに!? ――――