淀の坂を乗り越えて   作:krm.nc55

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2022/01/17 文章の一部を変更しました。


第一章
プロローグ


『さあ、やってまいりました宝塚記念! 今年は一昨年と同じく京都レース場からお送りいたします』

 

『そうですね、一昨年は不慮の事故により京都で行われましたが今年もここ、京都レース場で行われることとなりました』

 

『一昨年はライスシャワーが転倒する事故がありましたがとっさにウマ娘が助けに入り骨折で済みましたからね』

 

『そういえば今年の宝塚記念にはその時助けに入ったウマ娘が参加してるようですね。えっと……8枠16番ですね。これは一昨年のライスシャワーと同じ枠番ですね。運命を感じます』

 

『確か出走前のインタビューにて尊敬するウマ娘にライスシャワーとおっしゃてた娘ですね。名前は……』

 

 

 本番を前に控室で集中する。今年の宝塚記念は私にとって特別だ。あの日の事故……それ以来私にとってライスさんの存在が変わった。ライスさんは尊敬する先輩だし、私にとっての英雄(ヒーロー)でもあるのだ。

 一昨年、ここ京都レース場で行われた宝塚記念。第四コーナーを回ったとき急に失速し転倒した。いや、私はこの結末を知っていた。何故か? それは私が所謂転生者だからだ。

『私』と言うイレギュラーがあったから結末は変えられると思っていた。私はこれまでに実際に未来を何度も変えてきた。しかしこの宝塚記念の悲劇は回避できなかった。しかし私がライスさんが完全に倒れる前に全速力で助ける事ができたから骨折と言う結果で済んだのだ。

 

「アリス」

 

「トレーナー? うん、私は大丈夫」

 

「そうか」

 

 そこには私のトレーナー、チームスピカのトレーナーだ。心配して見に来てくれたのだろう。今日はライスさんがけがをしてしまった宝塚記念だ。私は……彼女、ライスシャワーが成し遂げれなかったこのレースで勝つ! 

 

「それじゃあ行ってくるね、トレーナー」

 

「おう、行ってこい! お前なら勝てる!」

 

「言われなくてもわかってる。この淀の坂を乗り越えて一着を勝ち取ってくる!」

 

 私の名前はアリスシャッハ、黒鹿毛色の髪をなびかせ地下バ場を歩く。その先には見知った顔のウマ娘がいた。

 

「ライスさん! ブルボンさん!」

 

 目の前にはライスシャワー、そしてミホノブルボンが居るのを見つけた私は駆け寄った。

 

「えへへ、アリスちゃんが宝塚記念に出るって聞いて応援に来たよ」

 

「ありがとうございます! 私の全力をもってぶつかってきますね!」

 

「あなたなら大丈夫です。この私が保証します」

 

 あはは、二人にそこまで言われるなら負けられないね。

 

「頑張ってきてね、アリスちゃん」

 

「はい! 必ず……勝ってきます! 待っててくださいね!」

 

 ライスさんとブルボンさんに見送られターフの上に立つ。周りには見知ったウマ娘も居る。だけど負けるわけにはいかないのだ。私はこの京都の地で……

 

 

『さあ、各ウマ娘ゲートインが完了しました! ……今ゲートが開いた!!』

 

 

 ゲートが開く。私は今地面を強く蹴り、スタートした。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 ウマ娘。それは、ヒトの姿をしていながらウマの耳・尻尾を持ち身体能力も普通の人間以上の存在。そして今の私もいわゆるウマ娘と呼ばれる存在になったのだ。

 まずは私の前世についてお話しようか。

 

 

 私は、生まれつき病弱で人生のほとんどを病院で過ごした。その為、外で遊んだことないし少し走るだけで息が切れるようなレベルで貧弱な少年だった。

 そのため病院で過ごすことが多かったので、私は所謂オタクになっていた。ゲームやアニメが大好きだった。

 

 その中であるアプリと出会った。それがウマ娘プリティーダービーだ。アプリをきっかけにアニメも嗜んだ。個人的には2期はやばかった。うん、ダブルジェット師匠のシーンとか泣けたもん。おっと、ダブルジェットじゃなくてツインターボ師匠だったね☆

 というボケは置いといてそのウマ娘において私の最推しは『ライスシャワー』だった。彼女の芯の強さに惹かれたのだった。可愛いだけじゃない彼女の魅力は皆も知っているだろうから省かせてもらおうか。

 

 ウマ娘に出会って数ヶ月後、がんを患わっていた私は懸命の治療にかかわらず亡くなった。その時に私は願った。

 

『神様、もし……来世があるのなら、健康な体で走り回れるような存在にしてください』

 と。

 

 私が前世の記憶持ちだと気づいたのは物心ついてからだ。ただし、前世の記憶はあるとはいえあんまり覚えていない。自分がどんな存在だったのか、両親の名前や顔はわからない。強いて言うなら常識や体験してきたことは覚えている。この世界に来てもウマ娘という存在を除きほとんど変わらないので苦労はしなかった。

 

 幼いころから私は中央トレセン学園を目指して特訓してきた。現在の両親も父は元トレーナー、母もウマ娘としてレースに出ていたということもあり知識には苦労しなかったのが救いかな。

 ウマ娘になってからは、鏡を見るたびに「あ、本当にウマ娘になったんだな」って実感してた。だって顔立ち良すぎるもん。何これ? 尊すぎるんですけど。ちなみに母も妹も結構綺麗で目の保養によい。

 

 私は、黒鹿毛の髪を持ち、ウマ娘の象徴でもあるウマ耳には右耳に耳飾りをしていた。つまり、私の元になったウマは牡馬だ。ただ、私の名前であるアリスシャッハという名のウマは聞いたこともない。一体これは……? 

 

 まあ、考えてもしかたない。まずはトレセン学園に入学することを目標に幼少の頃を過ごした。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 時は進み、私はトレセン学園へ受験をできる年になった。小学生の頃は周りの子たちと遊んだり勉強しながらトレセン学園へ入学するために毎日トレーニングをして過ごしていた。あの頃はほとんどの時間を病室で過ごしていたので友達が居るだけでも幸せだった。

 また、私の地元にも何人かウマ娘の子たちもいたが、その中で中央トレセン学園に受験するのは私だけだった。よく仲間内のウマ娘達からも「アリスちゃん早いから中央に行っても活躍できるよ!」と言われていた。

 

 トレセン学園に受験をしてしばらくして合格発表も近づいてきたということもあり、不安なのがばれないように冷静にしていたが、母に「心配しなくても大丈夫よ、あなたは私たちの自慢の娘だしこれまで頑張ってきたでしょ? 大丈夫よ!」と言われてしまった。

 不安なことを見抜かれていたのだ。さすが我が母だ。

 

「ありがと、母さん」

 

 すると仕事帰りの父親が帰ってきた。

 

「おーい、トレセン学園から手紙届いてるぞ」

 

 父が大きな封筒をもってリビングに入ってきた。

 ついに開封の儀だ。A4くらいの封筒だ。今まで頑張ってきたんだ。どんな結果でも悔いはない。……多分。

 

 封筒を開ける。そこには……

 

「ご……ごうか……やった、やったよ!」

 

【合格】と書かれた紙が一番前に入っていた。嬉しくて言葉が出ない。今までの努力が報われた瞬間だ。こんな経験したことないからどう反応すればいいのか分からずあたふたしてる。

 

「よかったね! やっぱりあなたは自慢の娘だよ!」

 

「うん……! ありがと、父さん、母さん!!」

 

 とにかく嬉しかった。ついに憧れのトレセン学園に入学できるんだ!! 

 どんな子たちが居るのだろうか? アニメやゲームで見てきた子たちも居るのだろうか? 今から楽しみで仕方がない。

 ウマ娘になってから十数年目標にしてきた夢が叶った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 さらに時は流れ、トレセン学園への入学式が近づいてきた。

 

 私の実家は中央から離れているので前日入りする。近くの空港まで送ってもらった。

 私の家族構成は、両親と妹がいる。妹も私と同じく黒鹿毛の綺麗な髪をしている。姉に似てほんと可愛いな。おっと、少し自画自賛すぎたかな。

 

「お姉ちゃん、離れ離れになっちゃうの……?」

 

「大丈夫、住む場所は離れるかもしれないけど私たちの心はずっと一緒だよ!」

 

 我ながら姉らしいこと言った。……普段は姉らしくないってことではないぞ。

 若干シスコン気味の妹だが悪い子ではない。いづれは私を追ってトレセン学園まで来るだろうなぁ……意外と足早いしあの子。

 

「それじゃあ……行ってきます!」

 

「ああ、行ってこい!」

 

「頑張るのよ、アリス」

 

 笑顔で見送ってくれる家族に最大限の笑顔を向けた。少し寂しい気持ちもあるけどトレセン学園に入学する夢が達成できた私はこれから始まる新生活に期待を胸に秘め、トレセン学園のある東京行きの飛行機に乗った。

 

 さあ、トレセン学園へ!




簡単なキャラ紹介
・アリスシャッハ
主人公。黒鹿毛の髪を肩くらいの長さでサイドアップで結んでいる。青色の耳飾りをしている。一応前世は男であるがその要素は少ない。が、完全に心は女の子になっていないので恋愛対象は女性らしい(本人談)。
ちなみに完全オリジナルウマ娘ではあるが、父は決まっている。なんとなく予想はつくかもしれないけどね。


まったり更新していきたいと思います。時空も結構ゆがむけどそれでも許してください。既に時空歪んでるけど…
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