淀の坂を乗り越えて   作:krm.nc55

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いつも見てくださってありがとうございます。
多分今年最後?だと思います。


トウカイテイオー

 日本ダービー、それは一生に一度しか出れないレース。

 クラシック3冠の一つであり、皐月賞、日本ダービー、菊花賞の3冠を取るものは少ない。

 かつて3冠を達成したのものとしてシンボリルドルフが特に有名だろう。

 

 そして、今日。私達のチームからトウカイテイオーがこの日本ダービーに出走する。既にテイオーは皐月賞を取っており、これで2冠目の挑戦となった。

 彼女の夢は「無敗の3冠ウマ娘になること!」

 ここまで無敗。そして日本ダービーでも圧倒的力を見せつけた。

 まさに無敵の帝王。しかし……

 

「折れてます」

 

「「えっ?」」

 

「骨折です。暫くは入院してもらいます」

 

「待ってください! 菊花賞は……」

 

「厳しいでしょう。諦める他ないかと」

 

 それは無慈悲な宣告。圧倒的強さを誇るテイオーが骨折したのだ。

 それは瞬く間に世間に広まり、菊花賞の出走は厳しいだろうと言われ始めた。

 

 トレーナーはそれでも諦めなかった。テイオーの復帰プランをねった。「必ず菊花賞に間に合わせる」その想いで。

 テイオーもそれに答えようと、そして彼女の夢である無敗の3冠を目指すために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テイオーさん! もう退院したのですか!?」

 

「にひひ、無敵のテイオーさま復活だぞ!」

 

 松葉杖をついてはいるが、テイオーが退院した。

 

「テイオー、これがお前の菊花賞に向けての復帰プランだ」

 

 トレーナーがテイオーの為に練った復帰プラン。

 ……私は後の未来を知っている。だけどそんなこと言えるわけない。もしそれをテイオーが知ってしまったら? あの時もし私が出走を引き止めていたらこの骨折を防げたかもしれない。

 でも、もしそれを伝えても多分彼女はダービーに出ていただろう。私には止める権利はない。

 

「……テイオー、おかえり」

 

 今私ができることはテイオーを笑顔で迎えて、支えてあげることだろう。

 

「うん! ただいま、アリス!」

 

「テイオー、なにか困ったことあったらなんでも相談してね。

 私はテイオーの為に何でもするから……!」

 

「ちょ、ちょっとアリスどうしたの? 少し怖いよ?」

 

「ご、ごめん……でも、テイオーには元気にいてほしいから……」

 

「もう! 心配しないで、だってボクは無敵のテイオー様だよ!」

 

「そうだね……分かったよ、テイオー」

 

 にひひ、と笑うテイオー。テイオーの笑ってる姿は本当に可愛い。

 この笑顔を私は失いたくない。彼女にはずっと笑っていてほしい。

 

 その後、テイオーはトレーナーの菊花賞復帰プランを元に練習に帰ってきた。

 最初はアニメと同じようにイメージトレーニングのようだ。入院期間自体は長くはなかったがやはり、自分の走りをイメージするのは大切だ。

 

「むむむ……」

 

「テイオー、調子はどう?」

 

 ゴールドシップとスペさんの併走を見ながらイメージトレーニングしているテイオーに話しかけた。

 

「うん、大丈夫だよ! どうしたのアリス?」

 

「少しテイオーと話がしたくて。……練習終わったあと時間あるかな?」

 

「問題ないけど、ここじゃだめ?」

 

「うん、できれば二人で話したいんだ」

 

「おっけー! 分かった!」

 

「ありがとう、テイオー」

 

 私はテイオーが骨折してからテイオーの走り、そして走りの特徴を映像を元に色々調べた。

 テイオーは、身体がとても柔らかく柔軟性がとても凄い。これは、テイオーの走りにも影響がでていることが分かったのだ。

 特にテイオーは足首も柔らかいためその柔らかさを生かした走り……まるで跳ねるように走っていた。そこで私は思った。

 

(もしかしてこの走りがテイオーの脚の負担になっているのでは?)

 

 ものは試しだ。ある日のトレーニングを終えたあと、実際にテイオーの走りを真似してみた。

 

(この走り、思っていたよりも走りにくいし脚への負担も大きい……

 ある意味テイオーだからできる走りなのかもしれない)

 

 テイオーの柔らかさを生かした走り。だがそれはテイオーの脚への負担も大きくなっているとも考えられたのだ。走り方を変えたらもしかしたら……と言う考えが浮かび、それについて話そうとしたのだ。

 

「はい、テイオーのはちみーね」

 

「わざわざありがとう、アリス! 

 ところで話って?」

 

「実は…………」

 

 テイオーの走りについて私の考えを伝えた。

 

「ボクの走りが脚へ負担になっていると……」

 

「そう、多分テイオーが思っているより負担が大きかったんだ。

 だから、走り方を変えるだけで少しでも負担が減らせるならって思ったんだ。でも、今までの走りを変えることは簡単じゃない。だからそこはテイオーの判断に任せようと思う」

 

「アリス……ボクの為に色々考えてくれたんだね、ありがとう。

 でも走り方を変えると言っても具体的にどうするの?」

 

 確かにそれは一つの問題だ。できるだけ脚に負担かけないような走り方でかつ元のテイオーに近い走りの方が変えやすいだろう。

 

「んー、テイオーにできるだけ近い走り……それか他のみんなの走りを参考にしながら試すしかないと思う。

 あとこのタイミングで走り方を変えるってことはもしレースに出走する時までに新しい走り方を身に着けていないと狂ってしまうかもしれない。

 そして一番大事な点として、できるだけ今のテイオーの走りを崩さないようにすること。あくまでもこれはテイオーの"脚への負担"を減らすことが目的。元の走り方と大きく異なってはいけないんだ」

 

「なるほど……つまり、ボクの走り方に近い走り方を真似すればいいってこと?」

 

「そうだね。テイオーの場合はストライド走法に近いから……ゴールドシップさんとかかな?」

 

 ゴールドシップもかなりテイオーに近い走り方だ。

 

「それならアリスもボクの走り方に近くない?」

 

「そう……かな?」

 

 あまり意識はしていなかったのだが、テイオーに言われてみれば……

 実際テイオーの走り方を真似したときも普段の走りと大きく違いはなかったが、足首などの柔らかさを意識しながらバネのように走ったが確かに私自身の元の走り方に近い気もした。

 

「ふむ……それならテイオーの怪我が治ったら一緒に試してみようか」

 

「いいね! 二人で秘密の特訓だね!」

 

「うん、テイオーも早く治すんだよ?」

 

「分かってるって〜。ボクも早く走りたくてたまらないから楽しみだなぁ〜!」

 

 新しいことに挑戦していこうとするその姿はやる気に満ち溢れていた。

 すぐには走れるようにはならないだろうし、テイオーにはそれまではイメージでしっかり練習するように伝えてテイオーは帰っていった。

 

「……盗み聞きはだめですよ? ()()()()()

 

「気づいていたのか……」

 

「ええ、何となくヒトの気配を感じていたので。

 ところでトレーナーはさっきの話についてどう思いますか?」

 

「ああ、確かに一理ある。寧ろ俺が気付かなかったことに気付くあたりさすがお前さんだと感心したよ。

 ただ、もしフォームを変えるとしてまともに走れるようになって菊花賞まで最悪一ヶ月……くらいしか練習の時間が取れないかもしれないぞ」

 

「テイオーだから大丈夫だと思いますよ。彼女の才能は間違いなく本物だと感じていますので」

 

「はぁ……お前が言うならそうなんだろうな。

 分かった。俺もできるだけ協力しよう。困ったことがあったらどんどん俺を頼ってくれよ」

 

「ありがとうございます、トレーナー。さすが私達のトレーナーやってるだけありますね!」

 

「褒めてるのかそれ……」

 

「褒めてますよ?」

 

「お前には敵わないなぁ……」

 

 トレーナーの言質もとった。基本は私がテイオーのサポートをして、その上トレーナーも協力してくれるのでとてもありがたい。

 

 もしテイオーが菊花賞に出走できて無敗で三冠を取ることができたら……

 それはそれでまた面白い未来なのかもしれない。

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