淀の坂を乗り越えて   作:krm.nc55

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2022/01/17 文章の変更・加筆しました。


トレセン学園

「やっぱりデカイなこの学校……」

 

 トレセン学園について開口一番がこれかと言いたくなる。しかし入学式で初めてトレセン学園に来たのだが想像以上の広さを感じた。受験の時は実家の近くの地域で開催された会場で受けたので本物を見たのは初めてだ。

 そしてこの場に居るヒト達が全員ウマ娘というのがとても不思議な感覚だ。小学生の頃にも周りに居たが私を入れて数人だった。

 

「本当に来たんだな……ここに」

 

 あっけに取られている暇はないな。入学式ももうすぐ始まってしまう。急いで行かなければ間に合わなくなってしまう。

 

「これから始まる学園生活……どんな生活が待っているのだろう……楽しみだ!」

 

 夢に見たトレセン学園での生活。これから来る未来に期待を込めて学園の門をくぐった。

 

 

 

 

 

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 入学式が始まると初めに生徒会会長として【皇帝】シンボリルドルフが壇上であいさつをした。

 さすが皇帝と呼ばれるだけあってものすごい威厳を感じる。こんなにもかっこいいのにあれでダジャレを言うんだもんな……ギャップ萌えも大きいものだ。 

 

 そして周りを見渡すと他にも有名はウマ娘がちらほら見える。同級生には誰か知っているウマ娘が居ないか……ん? あれは……

 あのティアラは見覚えあるな。そうか、つまり私はダイワスカーレットと同級生となるのか。ならばウオッカも……うわ、スカーレットの横に居るのか。本当にあの二人は何かと運命を感じるよね。

 

 スカーレットとウオッカと同級生ならばスぺちゃん達は先輩になるのかぁ……それはそれで面白そうだ。

 

 

 

 

 

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 入学式も終わり、あらかじめ指示されていたそれぞれのクラスに向かった。私は奇跡的にもスカーレット達と同じクラスのようだ。これは運命なのか、運命だよねきっと。

 ここがアニメ軸の世界線なのは既にテレビやネットの情報から確認しているのでトレセン学園に入学したらスピカに入るつもりだ。なのでいずれは同じチームになるスカーレットとウオッカとは仲良くしておきたいね。

 

「あの、さっきから視線感じるんだけど何か用かしら?」

 

 突如スカーレットに声をかけられた。見ていたのがばれてたか? 

 

「特に用があるかと言われるとないけど、こうも周りがウマ娘が多いと変な感じがしてね……今までウマ娘とあんまり出会う機会も少なかったもんで……」

 

「そうか? こいつの目何かヤバイ感じがしてたぞ?」

 

 ウオッカ君、そういうこと言うのやめて。私のメンタルは豆腐以下だぞ。

 

「ソ、ソンナコトナイデスヨー???」

 

「そう? ならいいんだけど……同じクラス同士よろしくね! 私はダイワスカーレットよ!」

 

「俺はウオッカだ。よろしく頼むぜ!」

 

「アリスシャッハです。よろしくね、スカーレット、ウオッカ」

 

 初日からこの二人と少しでも話せたのは今後のより友好的な関係を気づいていくのにいい出だしだろう。いずれは同じチームになるだろうし今のうちにもっと仲良くなっておきたいところだ。

 

 

 

 

 

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 その後は初日ということもありその日はクラスの顔合わせや自己紹介などで終わった。寮の部屋の割り当ては決まっており私は美浦寮に割り振られていた。どこの部屋に割る振られているかは私はまだ知らないが荷物は先に届けられているので決まってはいるのだろう。

 

「美浦寮寮長のヒシアマゾンだ。よろしく頼むよ!」

 

 美浦寮に入寮する新入生の前で生ヒシアマ姉さんがここの寮でのルールなどを説明してくれた。何かと言わないがデカイ。私が小さいからなのか余計でかく感じる。

 

「さて、部屋割りについてなのだが……」

 

 部屋割りについて書かれた紙をもらった。えっと私は……oh。そこには相部屋の子は居ない、つまり一人である。相部屋なはずなのになぜか私だけ一人である。ドウシテ……

 

「あの……ヒシアマゾンさん。私の部屋一人なんですけどこれ間違いじゃないんですよね?」

 

「ん? ああ、今はまだ居ないぞ。寂しいかもしれないが我慢してくれよ」

 

 まじかぁ……でもヒシアマ姉さんの言い方的にいずれは相部屋の子が入ってくるのだろう。せっかくの相部屋の寮なんだから誰かいてほしいもんだよね。

 

 

 

 

 

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 部屋の割り当ても終わり、私たち新入生はそれぞれの部屋に向かった。そこでは特に何も面白いことはなく一人寂しく部屋に着いた。

 

「ほかの娘達はペアいるのに私だけ一人……どうせ、私なんて残り物なんですよーだ」

 

 寧ろ誰かといる方が落ち着かなさそうだけど。早めにウマ娘だらけの空間に慣れておかないと相部屋のペアができたら耐えれなさそうだ。何に耐えれないのかって? 同志なら分かるだろ? 

 

 そうこうして部屋の片づけをしていたため気づかなかったが既に結構遅い時間になっていた。夕飯は既に済ませていたがお風呂はまだだった。せっかく大浴場もあることだし早めに済ませよう。

 さすがに時間も遅いので誰も居ないようだ。自分の体は見慣れているが他人のは耐えれる自信はない。しばらくはこうやって時間ずらしておくのもありかもな

 

 大浴場に入る。こんな時間だ、誰も居ないと思っていたがそこには一人のウマ娘が居た。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 咄嗟に謝ってしまった。一応身体こそ同じウマ娘なので罪には問われないだろうが、心はまだ男だ。

 

「あ、あの……」

 

「すみませんでした! すぐに消えますので!!」

 

「えっと……大丈夫?」

 

 どこかで聞いたことある声だった。うっすらと目を開ける。

 そこには私と同じ髪の色をした少女がいた。そうだ、私はこの子を知っている。

 

「えっと……ら、ライスシャワー……さん……ですか?」

 

「ライスのこと知ってるの……?」

 

 しまった。まだライスシャワーはデビューしていないしこんな入学したてのウマ娘が知っていること自体がおかしい。なんとかごまかさないと……! 

 

「は、はい。えっと……今日からこの美浦寮でお世話になります、アリスシャッハと申します。ライスさんのことは今日の寮の説明の時に私の部屋の近くのウマ娘について聞きましたので……」

 

 少し無理がある説明かな? 

 

「そうなの……? えっと、よろしくね……アリスちゃん」

 

 そんな優しい瞳で見つめないで! 私の心のデジタルが耐えきれないぞ。リアルで会うと分かるこの可愛さ、このままではデジタルと同じようになってしまいそうだったがまだ気合で耐えている。

 

「ところでどうしてこんな時間にここに居るのですか?」

 

「ライスと居ると皆不幸になっちゃうからできるだけ他の子たちと被らないようにしていたんだ……ごめんね! ライス先にあがるねっ!」

 

「あ、待って……」

 

 それは一瞬の出来事だった。まるで避けられているようだったがまだこの時期のライスシャワーは自分に自信は持てていないらしい。わかりきっていたことではあるが……

 推しであった彼女に出会えたのは奇跡だ。もし名前を憶えていてくれたらなー……とか思ってたり。

 ただ、彼女に会った時なんとも言えない……そう確かに私の最推しでもあったのもあるがまた別の、ウマソウル的な何かが共鳴ていうか……そう、言葉にできない()()を感じた。これは一体? 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 あれから数週間、特に大きなことも何もなくトレセン学園での生活を楽しんでた。

 文武両道を掲げているので午前は座学、午後はトレーニングを行っている。トレーニングを積んでいくうえで自分の適性も理解してきた。

 

「なぁスカーレット、アリス、チームどうするんだ?」

 

 チームか……ウオッカの発言で思い出した。

 

「そうねぇ……何か候補ないかしら」

 

「そんな二人に面白そうなチームのチラシ持ってきたんだけど」

 

 こっそり仕入れておいたスピカのチラシを渡す。

 

『ナウいあなた チームスピカに入ればバッチグー!!』

 

 そう、あの何とも言えないまるでマルゼンスキーが作ったようなチラシである。確か二人はこれに惹かれてスピカに入ったはずだ。

 

「チームスピカ……? へぇ、面白そうなチームだな!」

 

 ウオッカがこのナウいチラシ食いつく。ある意味このチラシに惹かれたからこそスピカで出会えたのかもしれない。

 

「そうね、今度見に行ってみましょう」

 

 勝ったな。あとはうまくチームに入るように誘導するだけだ。それでは私は先にスピカについて偵察しておくか。この時期はまだゴルシしか居ないはずだ。

 

 

 

 

 

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「やっと見つけた……」

 

 やっとの思いでスピカの部室を見つけた。思ったより学園の端にあり見つけるのに一苦労した。

 

「ほう、いい脚だ。柔らかいながらしっかりとした筋肉のつき方。これは長距離で活躍できそうないい原石だ! 君の名前を教えてくれ!!」

 

 私は知っている。この人を……多分間違いなくスピカのトレーナーだろう。彼がウマ娘の脚をすぐ触ってくることを知っていたがいざ触られると背筋がゾッとする。落ち着け、いややっぱり無理だ。ごめんよトレーナー、本能には勝てないようだ。そして本能的に思いっきり後ろに居る人物を蹴り飛ばしていた。

 

「あ……すみません。大丈夫……ですか?」

 

「だ、大丈夫だ……これくらい慣れてる」

 

 慣れてるんだ。時々思うけどほんとに人間か? 

 

「よく蹴られんですね。自覚あるならいきなりヒトの脚触るのやめたほうがいいですよ?」

 

「ははっ……ん、まてよそのチラシ……もしかしてスピカの入部希望者か!?」

 

「ええ、そのつもりで来たのですがいきなり脚触らるとは思っていなかったのでやっぱりやめます」

 

「おいおい、待ってくれ! 今どうしても部員が必要なんだよ!」

 

「知ってますよ。今部員一人でしたよね?」

 

「どうしてそれを……?」

 

「ちょっと特殊なルートで仕入れただけです。ちなみにさっきのは冗談ですよ、入部するつもりで来ていたので安心してください」

 

 少し意地悪過ぎたかもしれないが、弄られてこそこのトレーナーだと思っているのは私だけだろうか? 

 

「ほ、本当か? 本当にいいのか!?」

 

「はい、本当ですよ。よろしくお願いしますねトレーナー。私はアリスシャッハです」

 

「おう、よろしくなアリスシャッハ」

 

 こうして私のスピカへの入部が決定した。あとはあの二人を勧誘して上手くこのスピカに導くのが最初の私の仕事だ(多分)。スピカの為に一肌脱ぎますか!




公式サイト風キャラ紹介
・アリスシャッハ
「私はどこまでも走る。そして最強のステイヤーになってみせる。それが私の願い。どこまでも駆け抜けてみせよう!この脚で!!」

誕生日…4月1日
身長…156cm
体重…増減なし
スリーサイズ…B76・W52・H76

とにかく走ることが大好きなウマ娘。
誰にでも優しく接する為、多くのウマ娘達から信頼されており相談役も兼ねることも。
他のウマ娘に比べて個性が薄いため稀に存在を忘れられていることもあるのが悩みらしい。

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