淀の坂を乗り越えて   作:krm.nc55

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え……8月……?


第三章 クラシックへ
いざ、クラシック級へ!


 あの激闘を広げたホープフルステークスから数日経ち、新しい年を迎えた。

 そして、1月1日の朝早い時間に私はジャージに着替えてランニングの準備をしていた。ここ数日は、レースの疲れを取るためにトレーニングを控えめにしていた。それが原因なのかわからないけど、とにかく走りたくてしょうがないこの気持ちを落ち着かせるために、そしてあわよくば初日の出を見られたらなぁ……とか思っている。

 目的地は少し前に確認済みでルートも頭に叩き込んでいる。入念にストレッチをしていると

 

「あら、奇遇ですわね。あなたも朝からランニングを?」

 

「うん、そのつもり」

 

 そこには私と同じくジャージを着て走る気満々のマックイーンが居た。

 

「なら、私もご一緒してもよろしくて?」

 

「いいよ。行きたいところあるからそこまで行く?」

 

「いいですわよ! ところで、どこに行きますの?」

 

「んー、折角の正月だから初日の出でも見に行きたいなーって思っているのだけどどうかな? もういい場所見つけてるからそこに行こうかなと……」

 

「いいですわね! どこまで行きますの?」

 

「ここだけど……」

 

 私はスマホを取り出し目的地をマックイーンに見せる。

 

「結構距離ありますわね……」

 

「一応、私は一回ここまで走ってるしマックイーンなら余裕じゃない? 別に全力で走るわけじゃないし」

 

「まぁ……あなたがそう言うならば大丈夫なのでしょう」

 

「じゃあそろそろ行こうか……の前に、そろそろ出てきたらどうですか? ()()()さん?」

 

「ふぇっ……!? き、気付いていたの……?」

 

「はい、ほぼ最初からそこに居たのは分かってましたよ」

 

 私をつけてきたのかまでは分からなないけどすぐそばに木の枝を持って隠れていた。

 

「ライスさん!? 居ましたの!?」

 

 え……気づいてなかったの……? あんなに分かりやすい隠れ方だったのに……? 

 いや、待てよ。確かテイオーとブルボンから逃げてたあのシーンでも気づかれてなかったような……? 思っているより皆鈍感なのか? 

 

「ささ、のんびりしていると初日の出に間に合わなくなりますよ。ほら!」

 

 二人を催促し、走り出す。まだ朝日は昇っていないので周りは薄暗い。ひんやりと冷える冬の風を浴びながら、白い息を吐き出しながら走る。

 他愛も無い話をしながらこうやって走っているとまるで青春を謳歌しているような……ううん、これは立派な青春のひとつなんだろう。

 

 

 

 一人では長く感じたこの道のりも三人で走ればあっという間だ。いつもトレーニングで一緒に走ってるとはいえ走る場所や目的が変わればこんなにも世界が違って見えるものなのか。

 

「だいぶ明るくなったけどどうにか間に合ったね」

 

「えぇ、でもここから見る景色は普段と違って見えますわね……」

 

「でしょ! 私も二人と一緒にこれて良かったよ」

 

 周りが明るくなり、初日の出を拝んだ私達はそのままその場でゆっくりと時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

「さて、そろそろ戻るとしますか」

 

 朝日が昇るのを見届けた私達は、学園に戻ろうとする。

 

「そういえば帰り道にいつもの神社ありますわね。どうですか? そのまま初詣済ますのは……」

 

「う〜ん……私は別に構わないけど二人はいいの? 汗かいたままだしジャージのまま行くのは……」

 

「確かにそうですわね……では、一度寮に戻って着替えてからまた集合ということにしませんか?」

 

「そうだね。せっかくだから汗も流してから行こか」

 

 一度寮に戻ることを決めた私達はここまで来た道を再び走って寮に戻った。

 

 ⏰

 

 寮に戻った私達は汗を流し、着替えを終えて学園前の入口に集合した。すると、そこにはマックイーンとライスさん以外にも数人が集まっていた。

 

「これはこれは……皆さん勢ぞろいで……」

 

 そこには私のチームであるスピカの仲間(+トレーナー)が集まっていた。

 

「おせーぞ、アリス! 待ちくたびれちまったぜ!」

 

「マックイーン、この状況は……?」

 

「私もここに来たときには既に……」

 

 この様子だとゴールドシップによって皆集められた……って感じがするなぁ。雰囲気がそんな感じしてるもん。

 

「よぉし、トレーナー! 運転任せた!」

 

「はいはい……」

 

 そのまま私達はトレーナーの車に乗り、行く予定だった神社に向かうことになった。

 その後は最早恒例となった初詣を済ませ、学園へと戻った。そして、私達の部室でコタツを中心に鍋を囲っていた。

 

「もう毎年やってるから気にならなくなったけど誰一人鍋の準備手伝ってくれないのだな……」

 

「何言ってるのですか、私が居るじゃないですか」

 

「お前除いてだよ……たく、あいつらときたら人使いの荒いウマ娘だぜ」

 

 まあ確かにあの子達がトレーナーを手伝う様子は……想像できないな。

 

「あ、そうだアリス。今年からお前もクラシック級になった訳だが、出たいレースとかあるか?」

 

「えぇ、もちろんありますよ。ウマ娘として生まれたからには三冠に挑戦したい……と思ってます」

 

「あぁ、そう言うと思ってたよ」

 

「私の考えとしてなのですが……まずは弥生賞を、そして皐月賞に挑みたい……と思っています」

 

「いいのか? 無理して前哨戦に出なくてもお前なら出走できると思うぞ」

 

 確かにそうかもしれない。だけど、そもそも2000mは苦手な距離だ。ホープフルステークスで勝てたのはほぼ奇跡に近い。マイル、中距離が得意なクラインが居たら間違いなく負けていたと思う。

 

「私は……ホープフルステークスで勝てたのは奇跡だと思っています。2000mの皐月賞にはクラインも出てくると思います。はっきり言って今の私では彼女には勝てない……だからこそ、弥生賞に出ることで皐月賞への対策を組みたいのです」

 

「……分かった。こっちもトレーニングのメニューも作っておこう」

 

「ありがとうございます! トレーナー!」

 

 やはり持つべきはウマ娘への理解のあるトレーナーだな! これからも頼らせてもらうよ、トレーナー。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

「ジュニア級王者……? 私が……?」

 

 たづなさんが突然訪ねてきて何事かと思ったら……えっ!? 

 

「クラインじゃなくて私ですか?」

 

「そうですね! しかも、ほぼ同票だったらしいですよ!」

 

 うーん……どうして私だったのだろうか。クラインと同じで無敗でではあるものの、ホープフルSは割とギリギリの勝利だったし、クラインの方が圧倒的勝ち方してたと思うけど……

 そう考えていると、たづなさんから一冊の雑誌を受け取った。その中には去年の年度代表ウマ娘や、ジュニア級王者になった私について書かれていた。

 

『グローサークラインとアリスシャッハで迷ったが、ホープフルステークスで熱い勝負を見せてくれたアリスシャッハに入れることに決めた』

 

『これからの走りに期待して、そしてクラシック級でも素晴らしいレースを見せてくれると信じて』

 

 あ、むしろホープフルSのレースが評価になったのか。うむ……期待されるのは嬉しい。クラシックでも皆の期待に応えられるのようなレースをしていこう。

 

「あ! それとアリスシャッハさん、今度の表彰式があるので参加してもらうのですが、その時に簡単でいいのでスピーチをお願いしても大丈夫ですか?」

 

「え、えぇ……だ、大丈夫です!」

 

 おう……中々のプレッシャーを感じる。人前で話すの苦手なんだよね。多分これ、放送されるかもしれないし、下手すれば全国の人が見るのでしょ? ……ヒェッ。

 

「が、頑張るぞぉ……おー!」

 

 気合を入れ直し、表彰式にむけてスピーチを考えたものの、肝心の本番でガチガチで噛みまくったのはまた別の話であった。




別に失踪してたわけでもないんだからね!

……時間が……時間が欲しい……
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