スぺちゃんのデビューに向けて練習が始まった。
アニメと同じように基礎練習がメインとなった。これは私にとっても基礎をしっかりと練習できることはありがたい。
他のメンバーは「これ意味あるの?」って感じを醸し出しているがトレーナーのことだ。何か考えがあるからやっているのだろう。
彼はウマ娘の為なら何でもする信頼に値する人物だからね。
そういえば何か結構大事なこと忘れている気がするがなんだっけなぁ……ま、いっか。
◆
そうこうしているうちにスぺちゃんのデビュー戦の日となった。一週間とは早いものだ。
パドックにスピカのメンバーでスぺちゃんの登場を待つ。
「いいなー、スぺ先輩。もうデビューできるなんて……」
「スぺさんは既に本格化していたんでしょ。私たちも本格化すればデビューできるから気長に待とうね」
"本格化"
それはウマ娘が持つ不思議な力の一つ。聞いた話では、食欲が今まで以上に増えたり力が強くなるとか言われているが実際どうなるのかは私も知らない。
私もいづれその時は来るだろうけどね。
「そろそろスぺ先輩が出てくるんじゃないかしら?」
スカーレットが呟いた時、スぺちゃんがちょうどパドックに出てきた。
……手と足が同時に動いている。緊張のあまり表情も硬く、動きがカクカクである。
「スぺ先輩、手と足一緒に動いてる……」
「あれ? スぺ先輩、ゼッケン忘れてない?」
「おっと、忘れていた」
トレーナーがゼッケンを取り出しひらひらさせている。
「スズカ、これスぺに届けてくれるか?」
「はい。行ってきますね」
スぺちゃんに渡し忘れたゼッケンをもってスズカさんが地下バ場に向かっていった。
「……そういえばトレーナーさん」
「ん? どうしたアリス」
思い出した。確実に印象に残っていたことだったのにどうして忘れていたのか。
「スぺさんにダンスレッスンってしましたっけ……?」
「……あっ」
「「「えっ……?」」」
完全に忘れてたって顔をしているトレーナー。凍り付く空気……
どうして気づかなかったのか。もう過ぎたことはしょうがない。
◆
その後、無事にデビュー戦は見事勝利を収めたスぺちゃんであったが案の定ライブは棒立ち……
お怒り案件になりそうなのでスぺちゃんのデビュー戦後、私は今後の為に先に動くことを決意した。
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「さて、君はどのような用で生徒会室に?」
あの後、アニメと同様にスぺちゃんの棒立ちライブが新聞に取り上げられ、このの様子が世間に広わたってしまった。
なので、私はダンスを教えてくれそうな人……つまりトウカイテイオーを探しているのだが見つからなかったので彼女がいそうな生徒会室を訪れた。
「会長さんなら気づいていそうなのですがね……まぁ、先日の棒立ちライブ……その反省を得てダンスを教えてくれそうな人を探していまして」
「ほう? 君は……そうか、スピカ所属のウマ娘だったね。ウマ娘たるものレースだけではなくきちんとライブもしてもらわなければな」
「はい……その点は気づかなかった私もチームのメンバー、トレーナーにも非があるかと」
「気にすることはない。スペシャルウィークはまだ転入して1週間だったはずだ。1週間でダンスも教えることは難しいだろう。君たちは悪くないから気にすることはないよ」
「はい。ありがとうございます。会長」
思っていたより怒っていなかった。確かあの時はこの時空と異なって他のメンバーもダンスできてなかったからあそこまで怒っていたのかもしれない。
「で、探しているウマ娘は誰かな?」
「トウカイテイオーです。一応クラスとか探してみたのですが見つからず何となくですが、ここに居そうな気がしたので……忙しいのにすみません」
「テイオーか。うん、彼女ならダンスも上手いしきちんと教えてくれるだろう。テイオー」
「話は聞かせてもらったよ!」
ルドルフの座っているソファーの裏からひょっこり現れるトウカイテイオー……まて、今までどこにいた? 入ってきたときは居なかったはずだ。
「はじめまして! ボクはトウカイテイオー!! えっと君は……」
「アリスシャッハです。気軽にアリスと呼んでください」
「おっけー! あと年も近いからテイオーって呼んで。それと敬語は使わないで欲しいな」
「えっ? う、うん。わかったよテイオー」
実際にテイオーと会ってみると印象変わるなぁ……
「で、アリス君。ダンスはどうするのかい?」
「は、はい。トレーナーと相談してカラオケでテイオーに教えてもらおうかなと思っています」
「なるほど……先ほども言わせてもらったがライブもファンの為に大事なことだ。テイオー、頼んだぞ」
「任せてカイチョー!」
「それと、アリスシャッハ」
「なんでしょう?」
「今後また困ったことがあったら私たちに頼ってほしい。私は全ウマ娘の幸せを願っているのでね」
「……! はい、その時はよろしくお願いしますね」
無事にテイオーを見つけることができ、しかも生徒会のメンツとも関係も結ぶことができた。ちゃっかりルドルフの連絡先も貰えたので一石二鳥だ。
「ところでアリス、ボクは何をすればいいのかな?」
「そうだね……さっきも言ったけど私の所属しているチームにダンスを教えて欲しいんだ。スズカさんは既にできるとはいえ、スぺさんは転入したて、私とスカーレット、ウオッカはまだ入学したてで練習あまりできていないからね」
「そうなの? 分かった! ボクに任せて!!」
心強い味方だ。そのまま上手くスピカに誘導できればいいのだが……
「とりあえずカラオケでダンスを教えてもらいたいんだけど、トレーナーがチケット用意してくれるそうだから準備ができたらまた後日連絡するね」
「はーい! じゃあこれ、ボクの連絡先教えるから携帯貸して」
テイオーと連絡先を交換後、私たちは分かれそのままトレーナーの元に向かった。
◆
「ほう……あのトウカイテイオーが協力してくるのか。てか、アリスいつの間にそこまで話進めていたんだよ……」
あの日、私はトレーナーに「このままだと私たちライブやばそうなんで教えてくれそうなウマ娘連れてくるんで、トレーナーはカラオケボックスの予約しておいて」っということを伝えておいた。
そして、今日の生徒会室での事を伝えた。
「なんか雑用任せてすまないな。それと、カラオケの用意もしておいたぞ」
「さすがトレーナーですわ。仕事が早いですね」
「これ以上恥ずかしい思いはお前たちにさせるわけにはいかないからな……」
トレーナーは私たちウマ娘を第一に考えてくれる素晴らしいトレーナーだ。……多分。
仕事も早く済ませてくれたトレーナーのおかげで思っていたより早く進みそうだ。
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そして、テイオーとダンスレッスンの当日。
「おし、お前ら、この間スぺのライブの反省としてダンスレッスンを行おうと思う」
トレーナーはポケットからカラオケのチケットを取り出した。
「カラオケ?」
「ああそうだ。詳しいことは行けばわかるさ」
◆
カラオケに着くと既にテイオーが先に入っていて歌っていた。
「「テイオー!?」」
「おっそいよー」
「というわけで特別講師としてトウカイテイオーに来てもらった。テイオー、頼んだぞ」
「うん、まっかせて!」
その後、テイオーはダンスも歌も得意ということもあり喜んで指導してもらった。
テイオーは身体が柔らかいこともありダンスを難なくこなすので真似するのは結構きつい……
「そうそう! もっと指先を意識して……」
「こ、こうかな?」
アプリなどで何度もライブのダンスは見てきたが、実際に自分で踊ってみるとかなり難しい。てか、これ順位でダンスの内容も変わるので全部覚えるの大変なのでは???
また次の出走が決まっているスぺちゃんも必死に練習している。……次のライブは頑張らないといけないからね。
ダンスももちろんだが、歌もしっかりと練習した。私は何度も聞いてきたので歌詞もリズムも完璧……とは言えないが、比較的歌えた。
こう……なんというかこの身体になってから初めてのカラオケなのだが……てか、前世でも行ったこと無かったわ。うん。
カラオケという場所は何とも不思議だ。だって自分の声が聞こえるのは変な気持ちだ。普段自分が聞こえている声と異なるもんなんだなぁ……
「ねぇねぇアリス、結構歌うまいけど歌ったことあるの?」
「うーん、カラオケに来たのは初めてだけど昔からレースとかライブ見てきたからある程度は覚えているだけだよ」
嘘は言っていない。実際、小さいころからテレビでレースやライブの映像を見てきた。自分で走ることも好きだったが、レース映像を見るのも大好きだったからね。
そして私ももうこちら側の世界に来た。私もデビューしたら、見てくれる人に感動を与えられたらなと思っている。
「私ね、ウマ娘に生まれることができてよかったなと思ってるんだ」
「へぇ、どうして?」
テイオーが尋ねてくる。
「これは皆共通かもしれないけど、昔から走ることが大好きだった。そして、レースやライブを見て『私も、将来はレースに出てライブを通して皆を笑顔にしたい』って思うようになったんだ。だから、トレセン学園に入りたくて小さい頃から頑張ってきたんだ」
「そうなんだね、ボクもカイチョーに憧れて無敗の三冠ウマ娘目指してるんだ!」
多分この世界がアニメ世界ならテイオーは三冠も無敗のウマ娘にはなれないだろう。でも本人の前でそんなこと言えるわけない。
「うん、テイオーならきっとなれるよ」
嘘だ。ごめんよテイオー。もし君が挫折する時は私が少しでも支える……そして、そこにはマックイーンもきっと。
「おーい、二人とも話してないで練習の続きしようぜ」
「ああ……そうだねウオッカ。デビューに備えてしっかり練習しておかないとね!」
「ちょっと! アタシも混ぜなさいよ!!」
「あはは、じゃあせっかくだし三人で何か歌おうか」
そうして私はきっとデビューの時に歌うだろうMake debut! を入れ今日の練習の成果をみることにしたのだった。
◆
「んー! 今日は楽しかったね、皆ありがとね!」
「こっちこそ、今日はありがとね、テイオー」
「いやー、実際に練習してみると大変なもんだな」
「そうね……もっとしっかり練習しとかないと」
「ありがとうございます、テイオーさん! 次のライブは失敗しないように頑張りますね!!」
練習も終わり、それぞれ用事もあるそうなので今日は解散することになった。そして私は、テイオーと少し話をしながら寮に帰っていた。
「スピカのメンバーって面白い子が多いね」
「だね、皆個性的だし一緒に居て楽しいからここに所属してよかったなぁ……って思ってるよ」
「実はボク、まだチーム探しているところなんだけどこのメンバーなら楽しくやれそうだなぁって思えたんだ」
「ほほう? それではテイオーさん、是非ともチームスピカに入部はどうですかね?」
「うん!」
「で、サプライズ入部はどうだい? テイオーなら会長さん経由で何とかできそうだし」
「それは面白そうだね! トレーナーにも秘密にするの?」
「その方が面白いでしょ?」
「アリスも悪いこと考えるねぇ」
「それと一つお願いがあるんだけど……」
「なになに? ボクにできることならなんでもするよ!」
なら好都合だ。確かテイオーとマックイーンは同じクラスだったはずなので勧誘をお願いすることにした。
「マックイーン? そうだね、ボクと同じクラスだよ」
「是非とも彼女もスピカに入って欲しいんだ。実はゴールドシップさんがよく勧誘してるらしいんだけどあの人、結構強引にしかねないからテイオーにお願いしたいんだ」
「おっけー! ボクに任せて!!」
「ありがとうテイオー」
「それじゃあボクはこっちの寮だからまた明日ね!」
テイオーと話しをしていて気づいたらもう寮についていた。テイオーは栗東寮なので寮の前で分かれた。
私も美浦寮に帰った。
◆
まだ、門限前ではあったが他のウマ娘の数も少なくなっている。
私も部屋に戻り明日の準備をしようと思いっていたところ……
「あの……」
後ろから声をかけられた。振り返るとそこには青鹿毛の漆黒の長い髪。引き込まれるようなその瞳をもつ少女がいた。
「えっと……マンハッタンカフェさん……でしたよね。私に用事でも?」
マンハッタンカフェ、美浦寮の中でも有名な人である。たまに彼女によく似た
「もう私のこと知っているのですね。あの噂ですか?」
「ええ、まぁそんなところです」
「そうですか。あなたもあの子見たことありますか?」
「いえ、あいにくまだ……」
「……それと急に声かけてすみません。あなたからはお友達に似ているなにかを感じたので」
お友達? カフェのお友達は見えない。彼女はそれに似たなにかを感じたと言われたのだ。
「それはどういうことでしょう?」
「……いえ、気にしないでください」
そのままカフェはその場から去っていった。
……さっきの言葉の意味、どういうことなんだ……?
マンハッタンカフェ……彼女と友好関係を築けばなにかわかるかもしれない。
確かアグネスタキオンとよく絡んでいたはずだ。タキオンならどこかに研究室があるだろうが……デジタル経由でなんとか探し出すか。
デジタルとも同じウマ娘オタクとして仲良くなりたいしいいきっかけにもなりそうだ。
今回は早かった。
はい、テイオー回です。アリスシャッハの行動力は未来を知っているからこそなのかもしれませんね。
ちなみにスぺちゃんのダンスレッスンは本人も忘れていたそうですよ。
「さすがに生まれ変わって10数年もすれば少しは忘れてしまいますよ……」
とのこと。
それとどっかで日常とか番外編とか出したいとか考えています。
次回も早めに投稿したいですね……