淀の坂を乗り越えて   作:krm.nc55

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アグネスのやべー方

 あれから数か月、スぺちゃんは無事にレースで勝利を収めて、テイオーとのライブ練習の成果としてきちんとライブをこなしていた。……それでもぎこちなかったけど。

 また、ゴールドシップのいつもの手段でマックイーンも無事にチームに合流。これでチームスピカのメンバーも揃ったのだった。

 

 

 

 さて、私はあれからマンハッタンカフェの言葉が頭から離れない。

 実はマンハッタンカフェに言われる前から感じていたことだ。

 

 昔からある夢を見てきた。

 それは、とても広い草原の上。周りは芝が生えた平原である。ほかには何もない。

 その場所には私一人。ううん、違う。あそこに居るのは……

()だ。そう、この世界に居るはずのない4本足で歩く私たちのよく知っている姿をしている馬が居る。

 その馬は黒鹿毛のきれいな毛をしている。前世の私は本物の馬には会ったことはなかった。だけど、その馬はとても綺麗で、凄く……親近感を感じた。

 普通、馬に触ることは危険なこともあるので禁止されていることもある。しかし、その馬はまるで私に何かを伝えたいように近づいてくるのだ。

 だが、私はウマ娘。ウマであっても馬ではない。その馬が考えていることは残念ながら伝わらない。ただ、何かを必死に伝えたいように……

 

 ◆

 

「……あぁ、またこの夢か」

 

 久しぶりにあの夢を見た。マンハッタンカフェと出会ってから、彼女は意味深な言葉を残した。もしかしたら何かわかるかもしれないと思い探しているのだが、なかなか見つからない。

 私も練習も忙しく、探す時間を確保できていないことも原因だろう。

 

「おはよう、アリスちゃん。大丈夫? 顔色あんまりよくないけど……」

 

「ごめん、大丈夫だよ。それとおはよう、クライン」

 

 クラインは本当に優しい子だ。しかも、日本文化が好きらしくお互いにオタクとしてよく話が盛り上がるためよき親友となっていた。

 

「予定より時間遅れているから早く準備しないと!」

 

 時計を見ると本来起きるべき時間から10分遅れていた。やっべ。

 

「はい、これ。

 とりあえず制服とカバンまとめておいたから寝ぐせ直していくよ!」

 

 ありがてぇ!! 

 さっさと制服に着替え、寝ぐせを直す。そしていつもの様に髪をサイドアップに結ぶ。

 

「よし! 準備できた!!」

 

「ほら! 行くよ!!」

 

 慌てて部屋を二人で飛び出し、朝食をすませ、そのまま学園に登校した。

 

 ◆

 

 午前はいつも通りに授業を受けた。一応転生者なので一般教養程度の知識ありそうと思われるが、前世の私は人生のほとんどを病院で過ごしていた為学校にまともに通ったことがない。

 なので、基本的なことはできても数学や理科など日常では学ぶことの少ない教科は本当に楽しい。

 新しい知識を学ぶのはこんなにも楽しいものなんてね。

 

 その為、よく図書室を訪れていろんな本を漁る。よく図書室に訪れていたので自然とゼンノロブロイとも知り合うことができ、色々な本を勧められ読んでいる。

 図書室にはレースに関する本や小説、なぜか魔術書的な本まである……なんで??? これほぼスイープトウショウ用じゃん……

 そして今日は、トレーニング開始前に図書室に寄ることにした。

 

「んー、まだこの本の続きは入ってないか……」

 

 最近お気に入りの小説の新刊の発売日だったのだが運が悪いことにまだ並んでいなかった。ロブロイに勧められたので気になっていたのだが……

 仕方ないので他の面白そうな本を探すため、図書室の中をうろうろしていると……

 

「ふぅン……これはこれは、面白そうな学術書があるではないか!」

 

 ……そこにはアグネスタキオンが何かよく分からない本を開き呟いていた。

 

「ん? んんん??? そこの君、私に何か用かね?」

 

 気づかれた……! 

 

「もしかして君……デジタル君が以前話していたウマ娘ではないかね?」

 

「えっ?」

 

「そうかそうか! いや、まさかこんなところで会えるとはね! これは運命なのかもしれないな!!」

 

 まてまて、どうしてアグネスタキオンが私の存在を知っている!? いやまて、今デジタルって名前が……

 

「どうして、私が君のことを知っているのか不思議そうな顔をしているね? 

 実は、デジタル君が君について話をしてくれたことがあってね。綺麗な黒鹿毛で吸い込まれそうな青色の瞳をしている同志を見つけたと喜んでいたんだ」

 

 えっ、普通それだけで特定できるものなの??? 

 

「実際、私も今君の反応を見るまで確信を持てなかったのだがその様子だと本当の様だね?」

 

「……鎌をかけたんですか」

 

「まぁまぁ、そんなに怒ることはないだろ? そうだ、せっかくだし私の研究に付き合ってもらえないかね?」

 

 なるほど、何されるかは分からないがタキオンはウマ娘相手の実験をするときは基本的には自分で治験はしているとは言うが信用に値するか……

 

「なに、安心したまえ。私で一度試しているからウマ娘には害はない……はずだ

 

 どんなのも飲まされるかは分からないが、これは大きな一歩だ。断る理由はない。

 

「わかりました。でも、この後トレーニングあるのでそれが終わってからで問題ないですか?」

 

「ああ、かまわないよ。……トレーニングが終わったらこの場所に来てくれ」

 

 一枚の紙きれを受け取った。そこには学園内のどこかの地図のようだが……? 

 

「これは私の実験室の場所だ。ここに来ればすぐにわかるさ」

 

 確かこの場所はアグネスタキオンだけではなくマンハッタンカフェのスペースがあったはずだ。

 

「わかりました。それではまた後ほど」

 

「ああ、楽しみに待っているよ()()()()

 

 何故私の名前を知っているのか……どうせデジタルから聞いたのだろうが、まるであっちも探していたようだった。

 こっちにとっても好都合だ。ありがたくこの機会を利用させてもらうとしよう。 

 

 

 ────────────────────

 

 

 今日のトレーニングも終え、約束通りにアグネスタキオンの実験室に向かった。

 

「ここか……」

 

 貰った地図を元に実験室につき、ノックをした。

 

「入りたまえ

 待っていたよ、アリス君」

 

 そこの部屋はまるで理科室のような部屋だった。そして、同じ部屋にマンハッタンカフェのスペースもあった。

 

「ようこそ、あぁそれとそっちはカフェのスペースだから変に触らないように。私の実験資料燃やされたことあるからな……

 

「……カフェさんは今日はいらっしゃらないのですか?」

 

「ん? カフェは今日はこない。明日なら居ると思うよ」

 

 んー残念だ。

 

「ともかくだ。どうせ君は明日も来てもらうつもりだから会えるだろう

 君にはこの後、これを飲んでもらってその効果を聞かせてもらいたい」

 

 そういって、タキオンはどこから出したか分からないが謎に光っている液体のはいった試験管を取り出した。

 

「これ……飲んでも大丈夫なものなんですか……?」

 

「あっはっは、心配ご無用。念のため私自身でも治験済だ。ウマ娘相手にならそこまで大きな副作用はないだろう」

 

 うわー……すっごく心配。

 そう言われ、例の薬品を受け取る。

 

「本当に大丈夫ですよね? なんか誓約書でもないんですか?」

 

「安心したまえ! 何かあったら私が対応することを約束しようではないか!」

 

「……信じますよ」

 

 少し怖かったが一気に飲み干す。あっま!! 

 

「うぇ……なにこれ甘すぎ……」

 

「そうかね? 私にはちょうど良かったが……」

 

 あなたの味覚が共通だと思うなよ……甘すぎて口の中が……

 

「で、なにか変わったことあるかね?」

 

「そんなすぐに効果は出ないと思いますけど……

 今のところ特に大きな変化は感じないですね」

 

「ふぅン……そうか、明日また何か効果でたか聞かせてほしい。それと何か副作用でたらすぐに連絡してくれ、問題が起きる前に対応しよう」

 

 思っていたより常識人なのか、単純にウマ娘相手には優しいのか……

 

 その後、タキオンと別れ寮に戻った。

 特に問題は起きなかったが……

 

 

 ────────────────────

 

 

 次の日のトレーニングの時間。

 

「はっはっ……トレーナーどうですか?」

 

「どうした……? 上がり3ハロンいつもよりも速い……」

 

 トレーナー曰く、ここ最近のトレーニングで一番早かったとのこと……

 確かにいつもよりも脚も軽く、走りやすかった気もする。

 

「なんか今日のアリスいつもとなんか違わないか?」

 

「そうね……確かにアリスは速いけどあそこまで加速するの初めて見たかも」

 

 ウオッカ、スカーレットも少し驚いている。

 そんなに今日の私は違うか……? 

 

「よし! それじゃあアリス、最後に軽く流して今日のところは終わるか」

 

「はい、いってきま……」

 

 ◆

 

 見慣れない天井……じゃなくて保健室の天井が見える。

 

「おれ……? 私は……」

 

「起きたかねアリス君」

 

 そこにはアグネスタキオンと私のトレーナーがいた。

 

「どうしてタキオンさんが?」

 

「ああ、お前が倒れたと聞いて顔を真っ青にしながら駆け寄ってきてな……」

 

 つまり、これはタキオンの薬の影響? 

 

「実はアリス君のことを遠くから観察していて急に倒れてもしかして私のせいなのではと思ってな。身体に異常はあるかね?」

 

「そうですね……少し身体が怠いくらい……ですかね」

 

「ふぅン……今回は私の責任だろう。しばらく安静にしておいてほしい」

 

 タキオンってこんなキャラだっけ? もしかしてこっぴどく怒られたとかされてそう……

 

「ところでタキオンさん。私に飲ませた薬って何だったんですか?」

 

「ウマ娘の潜在能力を引き出す薬だ。実はデジタル君にも試したことあったがこのような事態にはならなかった」

 

 デジタルも? まぁ彼女なら喜んで飲みそうだけど……結果としては私だけが倒れたってことだが。

 

「何か変化とかあったかね?」

 

「しいて言うなら今日のトレーニングでいつもよりタイムが速くなった……くらいですかね」

 

「ふぅン……一応効果はあったのか。でも何故アリス君だけに? しかも倒れるなんて……

 ともかく今回の薬は何を引き起こすかわからないってことが分かった。すまないね、アリス君」

 

「いえ、私自身も自ら飲んだのであなたの責任ではないですよ」

 

「……優しいな君は。

 さて、私はここで失礼するよ」

 

 そう言い残し、タキオンは保健室から去ろうとした時

 

「……あの」

 

 一人のウマ娘が入ってきた。

 

「……タキオンさん。あなたも居たのですか」

 

「カフェ、そんなに嫌そうな顔をしなくてもいいではないかね?」

 

「……私は彼女と話をしにきました。できれば二人っきりで」

 

 二人っきり!? ウマ娘二人……なにも……グハッ

 ……ともかくマンハッタンカフェにここで会えたのは大きい。

 

「わかったわかった。それではまたね、アリス君」

 

 タキオンが保健室を去り、カフェと二人になった。

 

「……突然すみません。少しあなたとお話をしたくて」

 

「いえ、ちょうどよかったです。私もカフェさんに用があったので」

 

「私に……ですか?」

 

 前にカフェから聞いた話を聞くことにした。

 

「ああ、あの時ですか……正直私もあの子も詳しくはわかりません。ただ、言えることはあなたから私の()()()と近いものを感じたことです。

 あの子曰く、うっすらとしか分からない……っと言っています」

 

「少しでもいいんです」

 

「あなたがなぜこの話に固執するのかはわかりませんが……一つだけ、まだ()()()()()とのことをお友達が言っています」

 

 どういうことだろうか? まず、カフェは私から何を感じたのか、それもカフェ自身も分からないらしい。

 いづれ分かるときが来るのだろうか。

 

「……もし何かあれば私も協力します。タキオンさんに気に入られたのならばほっとく訳にはいきませんので」

 

「ありがとうございます、カフェさん」

 

 大きな収穫こそなかったが、カフェと知り合いになれたことは大きいだろう。

 今後、霊障にでも困ったことがあったら協力を頼めそうだ。

 

 

 

 

 

 しかし、ここ最近は例の夢を含め不思議なことが多く起きる。

 そもそも、ウマ娘事態もオカルトに近い存在だからだろうか? カフェが言っていたこと……いづれその事について分かるときが来るのだろうか。




メジロドーベル天井しました()

さて、前回から一気に話が進み、テイオー・マックイーンが既にスピカに参入しています。アニメと同じ展開はカットしますのであしからず……

裏で、ドーベル天井したのですがやっと黒マックイーンが出てくれました。素直に嬉しいです。

次回なのですが、また時間が一気に進むと思います。このままだとアリスのデビューいつになるねん…ってなるのでね。

それでは、また今度!
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