Twitterの公式垢なんだけど毎月リボーンのカレンダーイラストが投稿されてて、十一月分は滅茶苦茶可愛いブルーベルでした。
見ておくと幸せになれるからみんなも見ておこうな。
──夜明けとともに始まる戦いで、すべてが終わります。
ボンゴレたちのところに戻った姫は、静かにそう言った。
この光景こそがかつて自身が予知したものであり、この後、最後の戦いが始まるのは確定されている──しかし、それに勝てば白蘭の脅威は完全に消滅し、世界は救われるということを。
和やかだった空気が、自然と引き締まる。
あれほどの力を保有する真六弔花と、それを率いる白蘭に勝てるのか、という不安。
されども勝てば、何もかもが丸く収まるのだという希望。
過去から来たボンゴレ十代目達は、元の時代に戻ることができ、俺達は俺達でようやく白蘭から解放される……それは、命を懸けても良いほどの理由だった。
誰もが似たような思いを抱き、覚悟を固める中で、ボンゴレ十代目と、元メローネ基地隊長であった入江さんの指示によって防衛ラインの設定やチーム分けが為された。
──そう、これは言わば防衛戦だ。
姫を奪い取りに来るミルフィオーレから、姫を守り撃退する戦い。
たった四人と侮るような人間は、最早ここには居ないだろう──それだけの実力を、既に彼らは見せつけている。
俺の知る限りの、真六弔花の実力や技、匣兵器の情報なんかも加味された結果、比較的に桔梗さんに対抗するチームのメンバーが多くなった。
リーダーであることからも分かるが、あの人の実力は割と頭抜けている上に、そもそもの戦闘スタイルが厄介だ。
……まあ、俺がブルーベルの相手をするから、他はいらないと伝えただけとも言うのだが。
とは言え、俺と姫の間に一チーム配置されただけで、単純に俺が最初にかち合う形に収まっただけでもあるのだが。
これが、俺の想像を遥かに絶するくらい大切な戦いであるというのは分かっている。
俺なんかのちっぽけな私情を挟んで良いような戦いではないということも、もちろん分かっている。
だけど、それでも。
これが最後であるならばなおさら、俺だけに任せてほしかった。
殺すにせよ、殺されるにせよ、その相手はやはりブルーベル以外には考えられなかったから。
それに、どちらにせよあいつは俺を探してくるのだ。余計な手間をかける必要はない。
ボンゴレ十代目も、入江さんも、どちらも少しの逡巡があったが最後には頷いてくれた。
有難いことだ──姫は少しばかり……いや、大分しかめっ面になっていたが大目に見て欲しい。
俺だって、別に死ぬつもりはないわけだしな。
出来れば生き残って、平和になった世の中を満喫したいとは思っている。
だから絶対に勝ってみせるし、白蘭も倒す────
「なんて、そんな熱いことをらしくもなく、考えたりしてたんだけどな。お前の顔見ると、全部どうでも良くなりそうになって困る」
「……もう、逃げないんだね」
「これ以上は逃げる場所が無くてな──ついでに逃げる訳にもいかなくなった」
「ふぅん」
姫が予知した通りの夜明け。
未だ薄暗く、けれども上りつつある太陽の光に薄っすらと照らし出された空に、ブルーベルは浮いていた。
──お前、どんだけ泣いてたんだよ。
目が合った瞬間に抱いた感想がそれになってしまうくらい、ブルーベルの目は泣き腫らされていた。
それをわざわざ口に出すほど野暮でもない。代わりとでも言うように、リングへと炎を灯した。
ゆらと互いの、雨の炎が揺れる。
「最後に一回だけ、聞いてあげよっか?」
「いいや結構。分かりきってることを、聞く必要なんてないだろ」
「うにゅ……そうね。天雨はそういう人だもんね」
「どういう意味だよ、それ……」
言いながら開匣すれば、いつも通り
出し惜しみなしの全力だ──まあ、ブルーベルからすれば大したものでは無いだろうが。
面白くもなさそうに、ブルーベルが俺を見る。
「本当に、それで大丈夫? 一瞬で終わっちゃうよ」
「は、俺の得意分野が防衛戦なの、もう忘れたか?」
「ん-ん、それ込みで、言ってるんだよ──!」
ブルーベルが炎を自身の左胸へと押し込むと同時、ガチリと音が鳴って死ぬ気の炎は膨れ上がった。
真っ青に彩られた、死ぬ気の炎で編み上げられた球体から、スルリと泳ぐように飛び出したブルーベルは、既に人間の形を保っていない。
──否、そう言ってしまうと、まるで化け物にでもなってしまったかのように聞こえてしまうから、やはり訂正すべきだろう。
正確に言えば、彼女の下半身は魚類のようになっていた……まるで人魚のようだ、と言えば分かるだろうか。
ここが戦場で無ければ、実に絵になったことだろう。
まあ、より詳細に語るのであればそれは魚類ではなく、ショニサウルスという恐竜のものなのであるが。
匣兵器と人間を融合させた存在──それが、真六弔花である。
ただでさえ匣動物を凌駕する、匣恐竜を掛け合わせている彼女は冗談抜きで最強の一角だ。
……だというにも拘らず、そこまで恐怖を覚えないのは俺が甘いだけなのか、あるいは──。
「いくよ」
小さく言うのと並行して、ブルーベルは恐ろしい速度で死ぬ気の炎を練り上げた。
水のような形状の雨の炎が、急激に彼女の右腕へと集まり、槍のような形状へと変化する。
一撃、まともに喰らえばそれだけで死に至るだろう。
ほとんど反射で柄へと手をかけて、リングに炎が灯る。
──勝負は一瞬で決まる。
自然とそう、思うと同時にブルーベルは宙を蹴った。
同時に強く、一歩踏み込む。
「──ッ!」
抜刀した刀と、ブルーベルの槍がぶつかり合う。
拮抗したのは、本当に短い時間だけだった。
死ぬ気の炎にコーティングされた俺の刀は半ばから砕け落ちた。受け流す暇もなければ、身体を逸らすことすらもできず、些かも劣化していないブルーベルの槍が俺へと迫る。
あー……死んだ。死んだな、これは。
命の危機が迫ってきた時特有の、異常な速さで流れる思考に浸る。
あまりにも呆気ない──でもまあ、人なんてのはそういうものだ。
俺の心臓を貫くよう確実な軌道で、緩やかに槍が迫る。
そんな刹那の最中、ブルーベルと目が合った。
相も変わらず、澄んだ瞳だ。
そんな、随分と場違いなことを思う俺の胸を、雨の槍が貫いた──
「え……」
──はずだった。
しかし、予期していたような衝撃が来ることはなかった。
雨の炎の属性による、鎮静で痛みすら感じなくさせられている、という訳ではない。
やってきたのは、ただただ小さく振り上げられた拳だった。
修羅開匣はいつの間にか解けていて、ブルーベルの小さな拳が、俺の胸へと弱々しく落ちてくる。
か細く揺れた声が、耳朶を叩いた。
「できるわけ、ないじゃん……」
ブルーベルの手が、俺の服を弱く握った。
先程までの覇気は嘘のように霧散して、数歩歩み寄ってきたブルーベルはそのまま俺へと寄り掛かってくる。
抱きしめ慣れたその小さな身体は、恐れるように震えていた。
「ブルーベル……?」
「──やだ……もう、やだよ。天雨を傷つけるのも、天雨殺さなきゃならないのも、天雨と争うのも、もう、やだぁ……」
俺へとしがみつくようにして、ブルーベルはそう言った。
その瞳からはポロポロと涙が零れ始め、いっそう嗚咽混じりに声を漏らす。
意識せず、俺の手から刀は滑り落ちた。
灯った死ぬ気の炎が、風に吹かれて消える。
「わかってる──わかってるの、天雨はもう敵だから、倒さなきゃいけないってことくらい、良くわかってる。でも、でもね、ブルーベルには、もうできない。
天雨がいなくなって、ビックリして、怖くなって、怒ってはみたけど……やっぱり、だめだった。
もう、ブルーベルは戦えない──戦いたく、ないよぉ……」
「────」
言葉が、出てこなかった。
何と言って良いのかも分からなくて、けれども心のどこかで「ああ、やっぱり」なんてことを思った。
そりゃそうだ。幾ら俺がブルーベルの動きをある程度把握できるとは言え、ブルーベルが本気になればそれこそ数十秒で勝負は着くはずなのだから。
そうでもなければ、人類最強の称号と言っても良い、真六弔花を名乗ることはできない。
トゥリニセッテと呼ばれる、この世の至宝たる雨のマーレリングをあれほどまでに使いこなすことはできない。
だから、そうならなかった時点で、本当ならば気付くべきだった──目を逸らすべきでは、なかったのだ。
分かっていたはずだろう。
ブルーベルは俺では到底敵わないほど強いが、しかしそれ以上に、ただの女の子であることくらい。
少々無防備で、暇さえあれば甘えてくるような、そういう少女であるということを、俺は知っていたはずだろう。
だというのに俺は、姫を守るためと言い訳をして、見るのをやめてしまった。
ミルフィオーレである以上、全員敵だと思い込もうとした──せめて、ブルーベルのことくらいは、考えなければならなかったのに。
この、いつだってどうしようもなく気にかかる女の子のことを、俺は。
「ごめん、ごめんな」
心の芯が決壊して、ずっと言いたかった言葉が、重々しく吐き出された。
いつものように、ブルーベルを抱きしめる。震えを収めるように、涙を止めるように。
──あるいはもう、離れないと伝えるように。
「何で天雨が謝るの……悪いのはブルーベルだし、びゃくらんなんだよ? ブルーベルたちが悪者だってことくらい、ブルーベルももう、わかってるんだから」
「違う、そうじゃない。そういうことじゃ、ないんだ……俺は、俺は例えミルフィオーレを抜けたとしても、お前の手だけは離してはいけなかったんだ」
ブルーベルが、俺の背中へと手を回す。
ギュッと強く抱きしめられて、それに返すように力を込めた。
俺まで涙が滲んできて、それを雑に拭う。
ああ、そうだ。
姫を守らなければならないという使命と同じくらい、俺はブルーベルの傍にもいるべきだったのだ。
……いいや、それは少し違うか。
ただ、他ならぬ俺自身が、ブルーベルの傍にいたかった。多分、それだけだったんだ。
「だから、最初からこう言うべきだったんだ──ブルーベル、俺と一緒に来い」
「それ、は──ダメだよ。だってブルーベルは、ミルフィオーレファミリーで、真六弔花なんだから……」
「何だよ、いっちょ前に責任とか感じてるのか? 俺に仕事投げっぱなしだったくせに、今更だろ」
「にゅぅぅ……茶化さないでよ」
意地悪ぅ……という文句と共に、抱きしめられる力が増した。
自然と浮かんできた苦笑いをそのままに、ブルーベルの体温を感じる。
「でもね、やっぱり、そういう訳には──」
「問題ない……第一、この後どうせ、俺達は白蘭に勝つんだから。何も恐れる必要はないだろ」
「にゅぅ……そうじゃ、ないんだよ、天雨」
俺の肩に顔を埋めたまま、ブルーベルが言う。
「ブルーベルはもう、びゃくらんのものなの。そして、今はびゃくらんが、ブルーベルのおにいちゃんだから──」
「
──そうだ、知っている。俺は、この少女がどのように真六弔花へとなったのか、その経緯を知っている。
ブルーベルは、かつて将来有望な水泳選手であった──大会に出れば必ずぶっちぎりで一位を取るような、負け知らずの少女。
正しく水に愛されていたと言っても良いほどに優秀だったブルーベルは、誰からも期待をされていたし、ブルーベル自身、水泳選手として生きていくのだろう思っていた。
けれど、今からもう何年も前に、その道は断たれることになった。
不慮の事故というやつだ。
どこにでもあるような交通事故で、ブルーベルは兄と、自身の両足を失った。
そのどちらもが、ブルーベルにとってはかけがえのないものであったということは説明する必要すらないだろう──そんな時に現れたのが白蘭だった。
死ぬ気の強さとは、即ち覚悟の強さだ──必ずしも軍人が、誰よりも強い死ぬ気の炎を灯せるとは限らない。
だからこそ白蘭は、この水を愛し、水に愛された少女こそが、雨の守護者に相応しいと思い、近づき──そして今がある。
天使のような面の悪魔である彼が、これだけ分かりやすい少女を手中に収めるだなんて、そう苦労はいらなかっただろう。
ただでさえ、白蘭は星の数ほどある並行世界の記憶を保有しているのだ。
ブルーベルの兄の癖を掴んで真似するだけで、難易度もグッと下がる。
……いいや、別にそれを、批判したいわけではない。むしろ、知った時なんて上手いやり方をする、とすら思ったほどだ。
実際、今まで元気にブルーベルが過ごせたのも、あの人があちこちの世界から集めてきた技術のお陰でもあるのだし。
だけど──だけどである。
それってちょっとズルくね? と思っても仕方のないことではあると、俺は思うのだ。
元より他人を道具としてくらいしか見ていない人なのだから、なおさら。
「ブルーベル、お前の兄はもう死んだ……死んだんだよ。白蘭はお前の兄には、なりえない」
「──わかってる! ブルーベルだって、そんなことはわかってるんだよ! でも、それでも!」
「いやまあ、別に白蘭が暫定お前の兄でも、構わないっちゃ構わない話でもあるんだけどな」
「……は?」
いやまあ、一応ね? 一応、分かってないのであれば、分かっておくべきことだと思っただけで、白蘭が兄代わりのように振舞うこと自体は問題ないと思っていた。
仮初だとしても、そう振舞われるだけで救われるのであれば、それもまた一つの優しさなのだから──まあ、流石に若干イラっとはするが、その程度だ。
完全に俺個人の感情的な問題なので、別にそれはブルーベルが意識することじゃない。
ただそれはそれとして、である。
「妹が兄のものである、なんて話はないだろ……実際、俺の妹なんて常に反抗期だったからね?」
「……天雨、妹いたんだ」
「ま、昔はな」
──と、いけない。話が脱線してしまう。
あまり話すのが上手ではないから、すぐにこうなってしまう。
俺の悪い癖だ。コホン、と一息ついて仕切り直した。
「だからまあ、俺はお前にこう言うんだよ、ブルーベル。俺と一緒に来い、って──いいや、違うな。お前にはもっと直截的に言った方が良いか」
「?」
上目遣いのまま、ブルーベルが俺を見る。
そういう小さな仕草ひとつで緊張してしまうのだから、何だか相当参ってしまっているみたいだ、と思った。
さっきこいつと会ってから、何かがおかしい──いや、正確には、夜明け前に姫と話してからおかしかったのだと思う。
誰の傍にいるのか。誰と一緒にいるのか。誰と共に在るのか。
そんなことを考えた時に出てくるのは決まってブルーベルと姫だったのだから、まあ何とも言い訳が出来なかった。
「白蘭のものにはさせない……俺のものになれ、ブルーベル。そうしたら、ずっと一緒にいられる」
声は少しだけ震えていた。言ってしまった後悔と、やっと言えたという達成感があって、鼓動が跳ね上がる。
ブルーベルは、俺を抱きしめたまま肩を震わせた。
小さくか細い声が零される。
「ズルい……そういう言い方は、とってもズルい……ズルだよ、天雨ぅ……」
「白蘭がもう盛大にズルばっかしまくってるんだから、俺も別に良いだろ」
「~~~~っ!」
バシバシと背中を叩きまくり、一層顔を押し付けてくるブルーベル。
あんまり暴れんな。背中が地味に痛いんだよ。
「そうやって、ユニも落としたんだ」
「言い方が悪すぎない? というか落ちてないし、むしろ落とされそうなまであるから……」
「それはそれで不誠実じゃない!?」
マジでごもっともすぎて俺は何も言えなくなり、取り敢えず腕に力を込めておいた。
俺だってどうすりゃ良いのか分かんねぇんだよ……!
動揺を隠すように、言葉を重ねる。
「──それで、返答は?」
「そんなこと言われたら、断れないって知ってるくせに……」
「それでも、こういうことはちゃんと聞きたいって思うだろ」
少しだけの沈黙が落ちて。
そっとブルーベルが俺の耳元へと口を近づけた。
「良いよ、でも、約束。これからはずーーっと、ブルーベルと一緒にいてね」
「ああ、分かってる。もうこの手は離さねぇよ」
「うん……うん!」
一度止まった涙がまた、ブルーベルの瞳から零れ落ち始めた。
そんな彼女をあやすように、背中を叩き──
「ああ、でも、言っておかなきゃならないこともあるんだよな」
「?」
「や、お前が俺のものであるように、俺も姫のものなんだよ。忠誠誓ってるからさ」
「それはもう、ズルとかいう範囲超えてると思うんだけど!?」
俺の耳元で、ブルーベルの絶叫が響き渡った。
いやでも、言わない方が不誠実じゃない……? そう思いながら俺はフラフラッとその場に座り込んだ。
そうすればブルーベルが合わせるように落ちてくる。
ギュッと俺の頬が、ブルーベルの両手で挟まれた。
「──なんてね、良いよ、それでも。でもね、覚悟して……絶対に天雨は、ブルーベルのものになるんだから」
言って、ブルーベルは少しだけ笑った。
悪戯っ子のようでいて、どこか大人びた妖艶な笑み──思わず見惚れてしまった俺は、小さく頷くことしかできなかった。
天雨:幼女(じゃない)と幼女(じゃない)に引っ張り合いされているせいで「心が二つある~」状態。殴られろ。
ブルーベル:泣いたり笑ったり忙しい。
復活杯主催者である柴猫侍様よりイラストをいただいたので、表紙絵に設定しました。ミスってなければその内反映されると思うので見てみてくれよな(読了報告するとか、リンクを適当なところに貼るとかすれば、反映されれば見れるはず)。
どっちが好き?
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ブルーベル
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ユニ