目が覚めたら異世界だったByカズマ 作:スーバル・フォン・ナッツキー2世
――先頭は譲りません――
あの時の狼はどうやらかなり強い個体だったらしい。6匹倒していたらしいが、1匹あたりの報酬が5万。カエル5匹倒した報酬よりも高く俺の財布は更に潤う事になり、50万エリスも目前。経験値も溜まりレベルが4つ上がってレベル5まで上がっていた。財布も厚くなり強くなった気がするのは嬉しいものだ。スキルポイントも8貯まっているから、レベル上昇で2つポイントが手に入る計算だった。あれ、俺なんかやっちゃいました?
と言いたいが調子乗ると死ぬのが目に見えているから、まずは剣の動きなど、戦闘について慣れる必要がある。前回は完全に初心者過ぎた。剣も持たずに魔法だけで対処しようだなんて無理がありすぎた。前衛、後衛と居るからこそ魔法の有効性が確認できるのだ。魔法単体じゃ隙だらけだった。この発言はめぐみんとゆんゆんに喧嘩を売る為心の中で閉まっておくことにする。
大振りすぎる攻撃は威力こそ大きいが、隙だらけになる。かと言ってスキルに任せた攻撃だとラグや規則性が生まれる事が想像に容易い。強者とぶつかった際にそのスキルというのが慢心になるだろう。何事も経験を積むしかない。法則で許されるのはゲームの世界だからだ。現実にターン制など存在しない。単純なモンスター相手なら通用するかもしれないが、ボスレベルと対峙してしまった時には役に立たない。
動かぬ的(木)に向かい斬撃を繰り返す。
どの手段がバランスを崩さず、それでいて強くダメージが入るか、木に刻まれた傷の深さによって判断する。
別に俺はこう言った経験者ではない。本職から聞くのが1番かもしれないが、ここは初心者の街。そう言った期待はしない方が良い。
「カズマさんって真面目な方なんですね」
「あれで元々怠け者と言うのですから信じられませんね。ところで何故ゆんゆんが居るのですか?」
「めぐみんのいじわる!ちょっと混ぜてもらってもいいじゃない!」
ギャーギャーと喧しい騒ぎ声に対して頭が痛いぜ…。今日はこれくらいにしておこう。
「お前ら騒ぎすぎだぞー?」
「ゆんゆんのせいですよ」
「私!?」
お前ら以外どこにいる。とは言わないお約束。
察しろよお前、そこの眼帯ロリっ子。
「そ、それよりもクエストに行きませんか?体動かさないと鈍ってしまいますから!」
クエストか…。
「悪いがクエスト挑んだことは無いんだ」
「え?嘘ですよね?カズマさん」
「嘘のようで本当のことですよ。カズマの職場は壁修繕ですから」
本業は冒険者だけどね!
日を過ごせるくらいは貰える。正社員にならないかと話が定期的に来るからもういっそ乗ろうかなぁとか思わなくはない。
「それなのにあの一匹狼の群れに挑んだんですか!?」
あれどう見ても集団だったよね!?どこが一匹狼なんだよ!
「一匹がかなり強い個体のことを一匹狼と言うのですよ」
それ意味間違ってねぇか!?なんだこの世界。
はぁ、なんでこんな世界に来たんだろうなぁ。
社会更正は出来ているのだから、遠くにいる両親も厄介者が消えたと喜んでいるのかもしれないが。
「うん。まあ、あれだ。行ってみるかクエスト」
「えっ?良いんですか?」
「俺はお荷物かもしれんがな。チャレンジしてみるよ、冒険者」
「お、お荷物なんてそんな」
「行きましょう」
正直、俺にそんな力があるとは思えない。元はと言えばニート。ただ家に引こもるだけではなく、少し過度な運動と数時間程度の勉強、そしてゲーム。普通の人が働いている時間、学校で勉強している時間を好きなことをする為だけに、トラウマを盾のようにして甘い蜜を吸い続けただけの、平凡以下の人間だ。
でも
「めぐみん、やけに乗り気じゃねぇか」
「それはそうですよ!カズマなら、私の爆裂魔法を活かしてくれると信じていますから」
でもまあ、こんなに期待してくれる子がいるなら、また頑張ってみるのも良いかもしれない。
「ったく、しゃーねぇーな!」
―――
クエストを受けに行ったところ、受付のルナさんにかなり驚かれた。目を輝かせながらたわわな果実を揺らし視線を奪われたのはここだけの話。めぐみんに蹴り入れられた。
しっかしあぁは言ったものの…。
「デカすぎんだろ…」
やっぱ無理かもしれない。
「何怖気づいてるんですかカズマ!?一匹狼と比べても格下!雑魚中の雑魚ですよ!?」
「いや、怖ぇだろあれ。俺ら、あれにのしかかられたらぺしゃんこ。分かるか?ぺしゃんこ」
臓器ぐしゃー、南無ー。グロテスク。
……やっぱおかしいだろ!?何食ったらカエルがあんなにでかくなるんだよ!?
「分かります!分かってます!だから剣でも魔法でも使って戦ってください!本当に喰われますよ!?」
「良し分かった逃げるぞめぐみん!ゆんゆん!」
「えっ?」「はいぃ?」
めぐみんとゆんゆんを両脇に挟んで逃げる。
「ちょっ!?カズマ!?何故逃げるんです!?ってなんで2人抱えて走ってるのにカエルより速いのですか!?」
「か、カズマさん!?こ、これはかなり恥ずかしいです!?わ、私は戦えますから!?」
「やっぱこえぇぇぇ!!!あんなデケェもん相手できるか!?あいつ見た時から恐怖で帰りたくなったんだ!こんな時の為に取っておいた逃げ足スキルを大発揮するぜ!」
「「衝撃のカミングアウト!?」」
やっぱ冒険者は無理だぁ!?お家に帰してぇぇー!!
「カズマカズマ!ストップです!カエルの姿は見えなくなりました!なのでストップです」
はい。
「そしてカズマ、早く私を降ろして下さい」
はい。
「…カズマ。」
はい。
「…初めてで怖いのはもちろん分かります。でもですね、私が一匹狼の群れに囲まれた時のカズマ。普段は戦いたくないとか、すぐ逃げるとか言ってるのに、重症を負ってもなお、奮闘している姿、カッコよかったのですよ?もっと自信を持ってください」
「…めぐみん」
なんだか、めぐみんに励まされてばかりだ。武器を手にしたって、魔法があるからって、正直怖いものは怖い。
「カズマさん。大丈夫です!失敗しても私たちが居ますから」
「…ゆんゆん」
失敗したって、カエルに踏み潰されない限りは生きてられる。過去に喰われたユンケルだって、今も元気に働けてる。
まったく、この中では年長者の筈なんだけどなぁ。ここまで歳下に励まされてしまってはしょうが無い。
「余計な心配かけて悪かった。めぐみん、少し時間をくれ。ゆんゆん、今回は出番が少ないかもしれないが、何かあった時のサポートをお願いしたい」
「カズマさんは何をするんですか?」
「カエルを1箇所に集める。それをめぐみんが爆散させるって作戦だ」
「…!ついに私の出番が来たようですね!」
「…でもかなり厳しい役ですよカズマさん」
「大丈夫だ。こう見えて俺は大逃げのカズマさんと呼ばれた人間だからな」
「…ダサいですねやっぱり」
「あ、あはは…」
不評だった。良いじゃねぇか大逃げ。
…ぶっちゃけ殺ろうと思えば殺れない相手ではない。過去に1匹葬っている。しかしだからといって、ここであいつら相手にスキルを多様するのは違う。スキルに頼りすぎると、使えなくなった時が怖い。
スキルなんて枠組みに囚われちゃ、自由がない。でも怖ぇな単騎突撃。こうなるんなら遺書くらい書いとけばよかった。
…いいや、いい加減男を見せろ佐藤カズマ。ここには俺の勇姿を待ってる女の子が2人いるんだ。ここで男を見せれば、きっとハーレムが待ってる…!いや、そんな無粋な事を言うのもな。俺だって、ようやく異世界で勇者になる機会を得たんだ。無駄にしちゃいけねぇ…ッ!
「逝くぞぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「「それは天に召されるやつー!」」
拝啓、母さん、父さん。こんな思念が送られてきた頃には、私はもう死んでいることでしょう。恥の多い生涯を送ってきました。自分には、冒険者の生活というものが、見当つかないのです。短い時間を長く無駄にしていたと気付いたら、今までの生活が大した事ないと、にわかに興が覚めました。
「畜生ーッ!このカエル野郎がァァァァ!!」
今、私は1人の女の子が活躍出来るように努めていますが、これが最初で最期でしょう。
「ウラァァァァァァ!!!」
私は雄叫びながら、カエルの腹を捌いているでしょう。夥しい量の生臭い赤色の液体、捌いてる筈なのに潰れたような音の断末魔、きっとここはカエル地獄かもしれません。仲間の悲鳴をトリガーに、地面に走る衝撃が強くなり、自然の怒りをフツフツと感じます。
「こっちだぜぇぇ!!カエル野郎共がぁァァ!!」
でもこうして全速力の逃げが、叶うなら。
あの時みたいに、小石に躓く事がなければ。
「よしっ!この距離なら…!行け!めぐみん!」
『その合図、待ってました!準備は万端です!エクスプロージョン!』
「えっ、その掛け声詠唱に含まれる――!?」
詠唱に突っ込みを入れたところ、後ろから来る爆風と衝撃波に吹っ飛ばされた。
10話目、ライバルはカエル。地に帰る。血に変える…
フフッ
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