目が覚めたら異世界だったByカズマ   作:スーバル・フォン・ナッツキー2世

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月1投稿()
ようやく彼女が出ます。


17話 魔道具店の店主様

金に余裕が出来た。俺の中に眠るクズマならきっと自堕落な生活を送っていただろう。もしかしたら周りに酒を1杯奢っていたかもしれない。後先考えず行動していたかもしれない。

 

でもそれではいかん。100万は大金だが、生と死が隣合わせのこの世界。自分への投資が先決。装備にスキル、アイテム。投資すべきことは沢山ある。そうなると100万と言う大金、あっという間に無くなる。後は生活費もあるのだ。無闇には使えない。

 

「おぉ!カズマも冒険者らしくなりましたね!」

 

装備に対する出費は致し方ないものだと思っている。ジャージは動きやすいが場の雰囲気にそぐわないので非常に目立って仕方がない。

 

かと言って鎧を付けてしまえば動き辛い。1度甲冑を装備させてもらったがあれ着て全力疾走とか無理。小走りが関の山だ。

 

防御力は対してないが、一般的な服にグリーンのマントを着けただけのシンプルな格好にした。あんま派手なのは好きでは無いから白無地の服だ。地味かもしれないが、場の雰囲気に合わせるとちょうど良いだろう。そこまで高くないのも好ポイント。

 

「これも動きやすくて良いな」

 

最初はめぐみんオススメ黒ローブだったが、魔法耐性付きのそれはかなり高価で、尚且つ俊敏に動けず止めた。厨二病心燻られるデザインだったが、余計に目立つし。

 

「剣もショートソードを新調出来たし、文句無しだ」

 

これでレンタル生活とおさらばだ。

次いでに金を積んで鍛治スキルの習得も出来たし。これで数十万飛んだことは見ないふりだ。装備プラスアルファで30万エリス吹っ飛んだ。やばたにえん。

 

ショートソードは一般の冒険者が持つ様な、言ってしまえば初心者武器。良くも悪くも普通の剣だが、経験を付けるには手頃なのは間違いなし、だと思っている。

 

将来的にはmade in 俺 にする予定ではあるが、今はそのときでは無い。それは住環境を全て整えた後の話だ。

 

「カズマさんはこの後何しますか?」

 

「うーん。欲しいものは揃ったし、適当に街を散策かな?」

 

「で、でしたら、一緒に行きませんか!?い、いやでも私とが嫌でしたらべ、別に断ってくれてもいいんですよ!?私なんかと一緒に「はいストップストップ」え、か、カズマさん?」

 

この子はパーティー組んでもぼっちを拗らせるのか。最近大人しかったんだけどな。

 

「俺は良いよ。寧ろオススメあったら案内が欲しい」

 

「え、良いんですか!?」

 

「良いも何も、俺がお願いしたいくらいだよ」

 

「ほ、本当!良かった…」

 

…この紅魔族2人に対する保護欲はカンストしそうだ。ぼっち極めたゆんゆんは結構寂しがり屋で、かまって欲しいって表情するし、多分犬だったらしっぽブンブン振り回してる。この子将来騙されないかな…お兄ちゃん心配。

 

そして横でめぐみんがむくれてる。こっちも構えと服を引っ張ってくる。こっちは猫だろうな。どちらも甘えたがりなのは変わらないが。

 

「2人はどうする?」

 

「私も行きます!」

 

「私も着いていこう。こう言うのは人数が多い方が良いと聞く」

 

…なんとなくだが、ここにいるメンバーって若干…いや、結構人付き合いが得意な人間ではないよな。ぼっち拗らせに血の気の強い奴に、ドM過ぎる奴。そして引きこもり。対人関係行けるとは思えん。

 

「む、そんなに私を視姦してどうした?遂に欲望を私に晒け出そうと言うのか!?」

 

「あ、いや。うん。……うん」

 

「なんだその反応!?言いたいことがあれば言え!いや!言わないでもいい!そうして蔑んだ目で見られると私も興奮する!」

 

「あぁ…カズマの目がどんどん死んでいきます…」

 

うーん。仲間に入れたのは早計だったか?

でもまあ、頼んだのはこっちだし。頼んだくせして追い出すのもなぁ。やりたくないしな。

 

「カズマさん!早く行きましょう!」

 

「あぁ分かった」

 

ゆんゆんはかなり乗り気だ。お気に入りの店を共有できることがよっぽど嬉しいらしい。カズマお兄さんなんとなく分かった。テンションがいつもより、なんならキャベツで大金が入ったことよりも高いから。

 

―――

 

「ここです!」

 

街の中にひっそりと佇むお店。看板には『ウィズ魔道具店』と書かれている。…いや、本当に言語は学んどいて良かった。ローマ字形式で助かった。

 

「魔道具店?」

 

「はい!優しい店主さんのお店なんです。カズマさんの冒険に役立てるものがあるかなって」

 

魔法にそこまで精通してる訳では無いから、役立てられるかは分からないが…。折角ゆんゆんが誘ってくれたんだ。1つでも多く役立てるようにしよう。

 

カランカラン「いらっしゃいませー!」

 

ドアの鐘が涼し気な音を立てると、それに気付いた店員さんがすぐさま反応する。

 

「あら?ゆんゆんさんじゃないですか!…そちらの方達は?」

 

「ウィズさんこんにちは!この人たちは私の冒険者仲間なんです!」

 

出迎えてくれた店員さんはかなり美人な方だった。なんだろう。言葉に表すのは難しいがふわふわっとした雰囲気。あれだ。癒し系のオーラが漂っている。物腰の柔らかそうな女性だ。

 

「カズマです。一応ゆんゆん達のパーティーのリーダをやっている冒険者です。こっちはクルセイダーのダクネスとゆんゆんと同じアークウィザードのめぐみんです。ゆんゆんがお世話になっていると伺っています」

 

「そんなに畏まらなくて大丈夫ですよ!私はウィズ。この小さな魔道具店の店主をしています。もっと気楽に接して頂けるとありがたいです」

 

笑顔が眩しい。癒される。大人のお姉さんに魅力を感じる俺にとって、この店の常連になる決意をした瞬間だった。

 

「カズマ、顔が崩れてますよ」

 

おっと。しっかりしなければ。

 

「今日は何かお探し物ですか?」

 

「あぁ、これと言っては決まってないけど、何か冒険に役立つものがあれば買いたいなと」

 

おっ、ポーション見っけ。一体どんなポーションなの「あっ、それは衝撃を与えると爆発するポーションです!」…今なんて?

 

「ではこれは?」

 

「それは水に触れると爆発するポーションです」

 

「…この隣は」

 

「それは蓋が開くと爆発するポーションです」

 

「この店は爆発物専門店ですか?」

 

「違います!そこは爆発系ポーションのエリアなんです!」

 

そんなコーナーあってたまるか。この店がなんとなく地雷だと言う予感がした。爆発ポーションだけに。

 

「えぇ…。…他に何か役に立ちそうなものは…」

 

「そうですね…これなんてどうですか?『カエル殺し』!カエルの餌に見える炸裂魔法が封じられた魔道具なんです!」

 

「…ほうほう。お値段、そしてカエル以外の効果は…」

 

「お値段はなんと20万エリス!これはカエル系の魔物には有効ですが、それ以外の魔物は見向きもしないです!いかがでしょうか!」

 

ダメじゃねぇか!他の商品も地雷じゃねぇか!

何見て「ヨシッ!」って言ったんですか!?

 

「いえ、遠慮します。あと間違いなく売れないと思います…」

 

「そんな!?アクセルは周辺にジャイアントトードが多いので有効になると思ったのに!?」

 

何見てそう思ったの!?

 

「一般的なカエルの5匹の討伐クエストでも大赤字叩きだしますよ。基本的に剣や鉄防具があれば問題ないのですが…」

 

うちが一般的じゃないだけで。

 

「そ、そんな…!50個ほど発注したのに…!」

 

この人絶望的に商才が無い…欠如してる…。貧乏に、貧乏に愛されている…。決意が崩れた…。

 

「ゆ、ゆんゆんはいつも何買ってるんだ?」

 

「私はいつも回復ポーションを買っていますが…」

 

あぁ、普通のポーションとかもあるんだな。なんかヤバそうな魔道具やポーションしか無いと思ってたけど、ちゃんとあるんだな…。回復ポーション。ヒーラーの居ないうちのパーティーじゃ必須アイテムだよな…。…逆に言うとそれ以外に良い物は…。やめよう。考えるのはやめよう。

 

「でもウィズさん、すっごく聞き上手なんです。いつも私なんかの話を聞いてくれるんです!」

 

良き理解者なんですー!っと健気に話すゆんゆんに涙を禁じ得ない。めぐみん、この素直で心優しいゆんゆんが何故ぼっちなんだ。ええ?なんで目を逸らした。

 

「…んん!でもこれではカズマの役立てるアイテムがポーションくらいしか。紅魔族の知能を凌駕するカズマならあっと驚くような使い方をしそうですが…」

 

なんでハードル上げたの?ねぇ、なんで?

 

「カズマさんもウィザード職の冒険者なんですか?」

 

「いえ、正真正銘最弱職の冒険者です」

 

「本当ですか!?伺う限り魔力も高いように感じられますが…」

 

「うちのカズマは特殊なんです」

 

なんかキリッとした表情で語る。それ俺のセリフだぞめぐみん。勝手に奪わないで。

 

「そうなんですね!ステータスを拝見しても?」

 

「どうぞ」

 

あんま人に見せるものでは無いとは思うが…。まあ、あんま悪用するようには見えないしな…。

 

「すごい!どの職業にもなれるステータスじゃないですか!そのレベルを考慮してスキルも豊富で…冒険に役立つのか分からないスキルもありますが…。…最後のは?」

 

「分からないんです」

 

「分からない…ですか?そう言ったこともあるんですね」

 

お返ししますと、一頻り見終わったウィズさんは冒険者カードを返した。

 

「良ければなにかスキル教えましょうか?」

 

「えっ、良いんですか?でもウチは魔法職なら間に合ってるんですが…なにかスキルが?」

 

「はい!カズマさんのパーティーだと『ドレインタッチ』っていうスキルが役立つはず「カズマ!下がってください!」」

 

「えっ?お、おいめぐみんにダクネス!いきなり割り込んで「ドレインタッチは…それは人の理を捨てた大魔法使い、不死王『リッチー』に許された固有スキルです!それが使えるのは禁呪を用いアンデッドに身を落としたアークウィザードと冒険者のみ!」な、なんだって!?じゃ、じゃあゆんゆんは…「ええ、操られている可能性が!ゆんゆんはチョロ過ぎるので!」そ、そんな…「ねぇなんで?ねぇなんで私の扱いが雑なの!?」「操られているだって?そんな無垢な少女になんてことを!?私が代わりに!」やっべ収集つかなくなった見辛い!一旦落ち着けお前ら!」

 

ウィズさんがアンデッド。魔物。しかもリッチーとか危険度MAXの敵…。いや、見えん。ここまでぽわぽわした雰囲気だとそうは見えん。人畜無害そうだし。

 

「で、ウィズさん。貴方がリッチーなのは本当なんですか?」

 

「ええ、私はリッチーです。こうしてお店を持つのが夢なリッチーです。誰かに危害を加えようとは企んでは…。なので、あんまりリッチーってことは…」

 

…話してもバカを見られるだけだろう。

 

「…ダクネス。悪いがウィズさんから冒険者カードを拝借して欲しい。ウィズさんも身の潔白を証明する為に協力頂いても問題は無いですか?」

 

「はい。そもそも疑われるようなことを話したのは私でしたから。カズマさん、魔道具を見てもあまり気にいった雰囲気無さそうでしたので、他に役立ちそうなものと言えばスキルくらいしか」

 

…すんませんでした!俺のせいじゃねぇか…。

 

「ほら、カズマ。しかし一体何故冒険者カードなのか?悪用するとは思えんが…」

 

「今まで倒した者に人間、ヒューマンが居なければそれが全ての証明だ。モノの命を刈り取る以上、それは経験として冒険者カードに記される。…うん。ウィズは無実だ。ここであったことは口外しない。いいな?」

 

逆にえぐい数の魔物を狩っている。この人実は怖い?

 

「…まあ、カズマが言うなら…」

 

「しかし、こう易々とアンデッドを見逃してしまっても良いのだろうか…」

 

「ダクネスは頭が固いな。寧ろスキル習得に協力してもらえるなんて心強いぞ」

 

俺は最弱職の冒険者。スキルはあるに越したことは無い。有効なスキルが複数あれば、それだけで戦闘の幅が広がるってもんだ。

 

「カズマは変わっているな」

 

「ダクネスが言えた口では無いがな」

 

「ンンッ!」

 

本当ブレねぇな。

 





?「アンデットなんかに先越されたんだけど」



この度、現職場からの異動辞令が出ました。場所は違うのですが通勤時間は変わらず…電車の混雑が酷い方に異動になりました。今後も最低1ヶ月に1話出せればいいかなぁ、と思いながらのんびり書いていくのでよろしくお願いします。

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