目が覚めたら異世界だったByカズマ 作:スーバル・フォン・ナッツキー2世
「いらっしゃいませ。本日はどういったご用件で?」
ギルドの受付嬢はこれはこれは美人でスタイルの良い女性だった。思わずたわわに実った2つの果実に目が泳ぎ始めそうになるが、目的を果たさねばと目を捕らえる。
「冒険者になりたいんですけど…」
「冒険者ですね。登録には1000エリス必要ですがお持ちですか?」
「ええ…これですね」
「はい。丁度ですね。こちらに必要事項の記入をお願いします」
役所みたいな感じだ。ただこの国の文字は知らない…。
「ミツルギ」
「やっぱ文字は読めないか…。じゃあ順番に聞いてくから、それに答えて」
「すまない」
「あのー、ミツルギさんのご友人さんでしょうか?」
「は、はい。サトウカズマです」
「随分と遠くの国から来られたんですか?」
なんて言えば良いのか…。
正直に答えたところで不法入国の犯罪者。なら真実と嘘を混ぜながら話すしかないか…。こんな美人さんに嘘つきたくないがなぁ。
「故郷で何もしてなかったので、新天地で何かしようと思い立ち、ならば違う国で働いてみようと思ったんです。ただ、話せるようになるまでは良かったのですが、中々文字が苦手で」
「そうだったのですね。ただ他の国の言葉は対応してないので、そうですね。代わりにミツルギさん記入お願いします」
「もちろん引き受けます」
そこから身長、体重、年齢、特技などなど、聞かれた事に答えていきながら記入を進める。
「これで以上だね」
「書き終わりましたか?それではこちらの機械に手をかざしてください。サトウさんのステータスを読み取ります」
そんなご都合の様にステータスとか言っていいのか?俺はゲームの世界に巻き込まれたのだろうか…。まあ確かに、自分の力を数値に表せるのは良いかもしれんがなぁ。なんでもかんでも数値で決めるのは良くないよなぁ。こういう所は日本とあまり変わらないかも。
「…はい!結果が出ました…カズマさんは…すごい!全体的にステータス高めですね!あまり冒険者では役立たないんですけど、幸運がずば抜けて高いです!どの職業にもなれるステータスは持っているんですけど、正直商人やる方が成功する気がしますね」
んん?これは良い評価なのか、冒険者としては悪い評価なのか…。
「…あれ?このスキル何でしょう?なんて書いているのか分からない…」
「そもそも全体的に何書いてるか分からないぞ」
「…これは、本当になんて書いているんだ?」
「もしかしたらかなり昔の言葉かもしれません。翻訳に引っかからないので…。ですがどうして…」
ま、まあ俺は中々の才能を持っているから、チートまではいかなくとも大活躍出来るだろうな!どうしようかなぁ…魔法とかあるのかな?
「魔法使い的な奴はあるんですか?」
「魔法使い…サトウさんだと上位職のアークウィザードになれますね!」
「じゃあそれで!」
よっしゃあ!これで異世界無双の第1歩を「あ、あれ?」…えっ?
「どうしたんですか?」
「…エラーが起きて、適性を満たしているのにアークウィザードになれないですね」
えっ?それってマジ?もしかしてこのなんて書いているかみんな分からないこれが原因?
「ほ、他の職業は。強そうな職業なら…」
魔法使いになれないだけだ、と思ったら聖騎士もソードマスターも前衛も後衛も、まさかただの剣士にもなれないとは…どうなってる!これって呪いか!?呪いなのか!?
もしかして魔女に好かれたとかあれ?もしかして俺の能力死に戻り!?
んな馬鹿な
「残すは最弱職の冒険者…。でもこの幸運を見る限り冒険者やるくらいなら商人になった方が成功しますよ」
「佐藤くん…」
おいおい、俺の事を憐れむなよ。その同情するかの様な、励まそうとしようとしてるその顔をやめてくれ。引きこもりになる。
「いえ…冒険者でお願いします」
そんな最弱職でも生きていける環境なのかは謎だが、きっと大丈夫だろう。ご都合的なあれが働いてくれる。きっとこれも呪いじゃなくてバフだったりするはず!
…スキルを手に入れるのにも教えて貰って適正職より倍以上のスキルポイントを払い、適正職よりもかなり劣ったような技で正直やっていけるのかなぁ。魔法使いなりたかったなぁ。
「…冒険者…はい!申し込み完了です!…しかしこのような方は初めてです。呪いの可能性もあるので1度教会で祈りを捧げた方が良いかもしれません」
うぅ…俺の異世界無双チートハーレム生活が…うぅ…。
こんな訳が分からない呪い。ミツルギには申し訳ないが、俺は魔王を倒すなんて事は無理そうだ。
「佐藤くん…。そう、気を落とさないでくれ。なんなら僕がレベル上げにも付き合うし、呪いを解呪してくれるプリーストだって見つけ出すよ」
こいつ、いけ好かないイケメンだと思ってたが、やっぱ本当に優しい奴だ。かなりナルシストで周りが見えてなさそうな所はあるが、こうして接するに根は良い奴なのだろう。そんなに女神が自分の闘志を燃やしてくれるほど美しいのかは知らないが、ちょっとそういった所は怖い。
「いや、いいよ。多分俺じゃあお荷物だ。言葉も分かんねぇしな」
「佐藤くん」
「…魔王、倒すんだろ?」
「だが、しかし「俺のことは良い。俺が行ったところで盾にもなれない。お前は信頼出来る強い仲間を見つけねぇと。俺なんかに構ってる暇は無いんじゃないか?」…そうだね」
今の俺はテコでも動かない。命の恩人の迷惑をかけるような真似は出来ないからな。
「金、いつ返せるか分からないが、真っ当に働いて返すよ」
「いや、大丈夫。ただ、もし僕がほかの街に行くことになって会えなくなっても。また元気な姿を見せて欲しい」
…めっちゃお人好しだよこいつ。爽やかなイケメンだよ。女の子簡単に堕ちちゃうよ…。そんなイケメンを前に俺みたいなフツメンは影が薄くなっちゃうよ…。良い奴だけどやっぱこいつと行動は難しそうだ。命の恩人だけど。
「あぁ。同じ日本人同士頑張ろうぜ。互いにな」
互いの拳をぶつける。こんな友達とか、ライバルみたいな事最後にやったのいつだったかな。何ヶ月もリア友と遊んですら居なかったからな。
ミツルギとは仲間と言うより、良き友人になれればいいな。良ければ可愛い女の子を紹介んん!!
まずは言葉と生き残る為のお金を稼ぎに行かないと…。
…そう言えば冒険者って、なにが出来るんだろう。覚えることが多いな…。ゲームにはチュートリアルはあるが、人生はそうはいかない。自分で学ぶ必要があるからな。法則は生活の中に隠されているのだから。
あ、ミツルギは意気揚々と旅立った。あいつなら多分良い仲間を見つけて魔王とやらを倒してくれるはず。俺はそれを待とう。
「あー、ギルドのお姉さん?」
「ルナです」
「ではルナさん。いくつか聞きたいことが」
「何でしょう」
「モンスターと戦わないで済む仕事って斡旋してたりしますか?」
まずは衣食住。それを果たす為には金が必要だ。異世界だろうが腹は減るし喉は渇く。狩りには装備が必要だ。住処が無ければ休まらないし冬も越せない。冬があるのかは知らないが、働いて金を稼いで学んで衣食住を確保する。これが当面の目標だ。ニートとか一人の奴にできることでは無い。金のある親がいて、平和な環境で初めて成立するものだ。この世界でニートやろうとすりゃあひもじい思いして死ぬだけだ。それは避けたいところ。いや、ぐーたらしたい訳では無いが俺すぐ死にそうだなぁ。
「そうですね…。壁の修繕とかいかがでしょうか?常時募集してますよ」
「なら、それで。即日行けますか?」
「大丈夫ですよ。では地図を渡しますね」
異世界に来て最初のクエスト(?)が土木作業とはなぁ。いきなり討伐に走った所で死ぬだけだし、一攫千金は無理でも手に職付けるならこれで良い気がする。滅多にない経験したのだからこれくらい普通でいいんだよ普通で。
異世界に行けたからと言って冒険者になれるかと聞かれたら…………。
夢見過ぎた過去の私、現実を知って社畜になる。
大人って哀しいのね。