目が覚めたら異世界だったByカズマ 作:スーバル・フォン・ナッツキー2世
「今日からお世話になります!カズマです!よろしくお願いします!」
「おう!よろしくなカズマ!俺はウォールだ。ここでは親方なんて呼ばれてる。まあ好きに呼んでくれや」
地図の中には紹介状が同封されており、それを見せたら珍しい顔された。まあ、討伐とか採取とかと比べると冒険者っぽく無いからな。俺にとっては外の光景が新鮮で楽しみだが。
「お前さん冒険者なのに戦わなくて良いのか?」
「戦えないが正解ですね。無一文で文字の読み書き出来ないので。それに最弱職ですからね」
「最弱職って…。本当に弱い奴や適性が無いやつがなる最後の手段だぞ…。寧ろ稀少的存在なんだけどもなぁ…」
おっと、最弱過ぎて稀少発言出ましたね。やっぱ適性無いやつが背伸びしてなるもんじゃないのか…。ステータス高めって言われたのになぁ。
「まあいい。俺は誰でも受け付けてるからな!ビシバシ行くぞ!」
「はい!」
壁の修繕か…。なんだか本当に某巨人の世界に来たみたいな感じだな。
ここに来たばかりだが、いきなり街中だったので壁の近くまで来ていなかったが、近くで見ると崩れかかっている所が何ヶ所かある。頑丈そうな壁でもモンスターの攻撃が加われば壊れる。ここは初心者の集まる街と聞いていたが、周りのモンスターのは本当に初心者レベルと言えるのか。やはり常に恐怖に囲まれているわけだ。戦いたくないなぁ。
しょっちゅうにそんなファンタジーな事を考えていたけど、あくまでゲームだからやり直せるのであって、現実はそうはいかない。これは遊びではない。どこかのキャラがそんなこと言ってたなぁ。ゲームだけど遊びではないと。ここは現実。ゲームですらない。やっぱ堅実に生きるのが良いんだなぁ。
「さっき教えた通りにやってくれ。分からないことがあったら周りに聞いてくれ」
「はい!」
これコミュ障にはきつい事なんだよなぁ。話しかけていいのか迷って結局何も出来ないと。
でもまあ、親方の教え方上手かったし、教えられた通りに修繕しよう。こう言うのは事細かく喋ったところで需要ないからなぁ。専門的なのは知識不足で説明できない。ご都合に流すしか無いんだよなぁ。俺誰に何を説明してるんだろう。
…やっぱ単純作業になるんだなぁ。ずっと学校行かずに同じ事ばかり続けていたのもあり、単純作業は慣れてはいるが、社会人になってもそういった所は変わらないのか。異世界に来てからそんな事を知るとはなぁ。やはりリアルのコミュニティに触れないと世間から遅れてしまい、元通りにはならない。そんなこと知りたくなかったが、知らぬまま成人になったら本当に世間に入れなかっただろうな。まあ、戻る方法なんて分からないから関係ないか。
「おお!たしかカズマだっけか?お前この仕事経験者か?」
「えっ?いや、この仕事に限らず働くのが初めてです」
「すげぇ丁寧に出来てるじゃねぇか!初めてでこんな上手いやつ見た事ねぇよ!なにかコツでもあるのか?」
「い、いや。仕事のことだけ考えてただけっす」
どちらかと言うと、世間というのばかり考えてたけど。仕事からの派生だしな。
「真面目だなぁカズマは!俺なんか飯の事しか考えてねぇよ!ガハハハ!!」
世紀末に居そうなモヒカン頭の兄ちゃんに絡まれたと思ったらただの世間話だった。なんかこの街こんなモヒカンを定期的に見かけるのだが、もしかして世紀末だった?
「じゃあ頑張れよカズマ!ちょっとくらいサボるのが長く続けるコツだかんな?」
「は、はい!」
でもなんか皆明るく過ごしている。娯楽が発展している様には見えないのに。何を楽しみに暮らしているのだろうか。俺はこうして外の景色を眺めるのでも充分楽しんでいるが、いずれは日常になり楽しみも薄れていくだろう。それまでにはなにかこっちで趣味や別の楽しみを見つけたいな。なんて思ってみる。
―――
昼休憩も挟み午後の作業に取り掛かる。こっちは季節で言うともう時期春になる時期らしく、昼でも涼しい。暖かくはない。ジャージだと夜は寒そうだ。そう言えば宿を探していない。部屋があるのが1番だが、野宿を覚悟する必要もあるかもしれない。
どうしようかなぁと思っていると、さっきから一定の感覚の揺れが近付いているのを感じる。なんと言うか、大きいものが飛び跳ねているような感じだ。ふとそちらを向くと、200m先にデカいカエルがいた。…えっ?デカ!?ざっと3m近くあるぞ…!?
「な、なぁ!あのカエルは何なんだ!?」
「ん?あんたジャイアントトードも知らないのか?家畜や子供くらいなら一呑みしちまうおっかねぇモンスターだよ!長い冬も明けかけてるから出てきてもおかしくないが、ちと早いかもな…。冒険者がいれば1発みたいだがよう…」
「あんなデカいのにか!?」
「まあ一応雑魚モンスターらしいからな。俺ら一般人じゃあ挑んだ所で餌になるだけだからな。ここは一旦逃げよう」
「お、おう」
冒険者って、あんなおっかないのと対峙しなけりゃならねぇのか!?あれで雑魚モンスターなんて、俺には無理だ。俺なんてすぐ餌だ…。
「お前ら早く上がれ!気がつきやがったカエル野郎…!去年の秋、家畜の被害を抑えられた事が逆に仇になったか…。奴らの覚醒がいつもより早い!」
「でも喰わせておけば今度は俺らの飯が無くなっちまうじゃねぇか…」
「冒険者にとっては格好の金稼ぎでも、俺らには家族や家畜が掛かってるんだよ…。家計や暮らしに響いちまう」
「例年より早いからな。多分クエストも少なかったんだろうよ。これはギルドに報告しねぇと…。作業中止だ!」
ゲームだったら、ミツルギの様にチートを持ってきてここに来ていたら。冒険者やってる俺が名乗り上げてる所なんだろう。俺が危機から救うと。だが実際はどうだ。俺は持たざる者だ。もしかしたら隠れた才能を持ってたりもするが、剣なんて握った事がない。少し厨二病やってたが俺は戦士じゃなかった。
俺は数時間前までただのニートだ。平和ボケして、家にいてゲームやって筋トレして勉強して、少し手伝いしていれば飯もくれたし、小遣いも貰えた。仕事も学校も行ってる訳でもないのに。
だがここではそんな訳にも行かない。身寄りが無い。金も無い。技術も無い。知人も居ない。そして勇気が無い。
俺は無力だと、現実を突き付けられた気分だ。
そりゃそうだ。ニートがチートになるのは二次元だけなのだから。
俺は作業中止の声を聞くと、直ぐにペアの奴と一緒に上がる。
「おい、早く上がってこい!死にてぇのか!」
「こ、怖くて…!妹のことを喰ったアイツらが…!」
「怯えてる場合か!妹と同じ目に遭うだけだぞ!」
「で、でも…!」
1組、竦んでいる奴がいる組があった。俺よりこの世界にいるのに、俺よりビビりかもしれない。でも、あの人は妹がアイツらの飯になっちまったのか…。トラウマそのものなのか。
何が初心者の街だ。何が雑魚モンスターだ…。某RPGのスライムだって、アイツに勝てない奴なんて俺の母さんくらいしか見た事ない。でもここではどうだ。毎年何人も、何匹もアイツらに殺されている。これが現実だ。
「くっ…!今引き上げる!だからしっかりと捕まってろ!今にもカエル野郎が壁に突進しそうだ!お前ら!何人か手伝ってくれ!」
「わ、分かった!お、俺も手伝う!」
名乗りを上げると滑車を経由している紐を引っ張る。しかし奴らは刻一刻と近付き、それに連れ揺れも大きくなる。
「あ、ああ!ゆ、揺れる!」
「あんた!気をしっかりとしろ!親方が言うように死んじまうよ!」
「む、無茶言わないでくれよ!」
「新人の言う通りだ!トラウマだからって怖がるな!俺もお前も今命がかかってるんだ!死んで行った奴らに顔向けできねぇぞ!」
彼の相方が励ますが、最悪のケースと言うのは案外簡単に起こるものだった。
ドンッ!と遂にカエルが突進してきた。
壁の上にいる奴らはしゃがみながら壁に手を着いていたから落ちなかった。
しかし
「あああああ!!!」
「ユンケル!」
あいつ栄養ドリンクと同じ名前だったのか…じゃない!怯えてた1人が衝撃で手を離し、そのままカエルの口目掛けて落ちていった。
投稿間隔かなり空いてるのに読まれてる。やったぜ