アサルトリリィと呼ばれた男 〜その子供達が征く〜 作:岡村優
入学式の後、クラス分けが発表され、各自のクラスに移動する。
結は、クラス分けを見てびっくりしていた。他のメンツも同様である。
「椿組ね、全員。」
「珍しいね〜だって同じ家の人間が4人も居るんだよね〜」
「…裏ありそう…」
「あの事に気付いたとか?」
「「「それは無い」」」
アンネリーゼに三人が突っ込む雫はそれが気になったようで…
「結、あの事ってなんだ?」
「あ〜知らない方がいいと思う…」
「水臭いこと言うなよ。」
「ここで言うのもなんだから後でね」
「……了解」
初めてのクラスで初めての人が多いようだ。周囲を観察していた結が呟く
「………ここの生徒全員編入組ね。」
「え?」
雀がなんでそんなとこが分かるのかという顔をしていた。
「雰囲気がまばらなのよ。実戦を経験してる人とそうでない人が、風格が違うのがちらほら居るのよ。それに、明らかにここの環境にいた娘が一人も居ない。」
「なんでそう思ったんですか?」
「……百合ヶ丘に元々いたのならば感じる雰囲気と感覚がこのクラスからは感じない。ということは全員編入組よ。私の母も父もここの卒業生だから分かったのだけれどね」
「な、なるほど」
「けれどおかしい…このクラスだけ編入組って…何かあるのかしら…」
と考えていた時に、一人の女性が入って来た。外見はまだ十代に見える。紫色の髪にグリーンの目をした女性だ。
「はいはい、皆さん席につきなさい。ホームルームを始めるわよ」
全員席についた。
「今日からこのクラスの担任になる番匠屋依奈です。よろしく。聞きたいことがあれば何でも聞いて頂戴。」
早速、結が手を上げる。
「はい、そこの方、船坂結さん」
「はいこのクラス編成…おかしくありませんか?」
「どうしてそう思うのかしら?」
「強いて言うならば雰囲気とオーラが全員違います。さらに言えば百合ヶ丘特有の雰囲気の方はこのクラスには教官しかいませんし、実戦を経験してる方とそうでない方の雰囲気とオーラが、別々です。」
「なるほど…ちなみに貴女は実践経験はあるのかしら?」
「はい、あります」
「でも書類には普通の小学校となっていますが?」
(やっぱりそうきたか…)
「3年前に大きな作戦が行われましたよね?」
「第二次台湾奪還戦ね……貴女まさか!?」
「そう、そのまさかです。元第8空挺師団に参加してました。もちろん天音、アンネリーゼ、椿もです。」
ザワザワザワ……
これにはクラス中がざわついた。そして依奈は天を仰いた。
「まさか…百之助が自身の娘を自ら戦場に放り込んだと言うの…」
「いいえ、自ら志願しました、経験を積む為に。」
「貴女達…一歩間違えてたなら死んでたわよ…」
「ええ、別に構いません名誉の戦死ならば我が一族の本懐なれば。」
「まさしく船坂家の典型的な考え方ね。同じ事を百之助、いえ、帝政大日本帝国近衛軍大将、第一遠征打撃軍司令官兼突撃擲弾兵総監船坂百之助が言っていたわ。」
「なるほど、父の戦友でしたか」
「元よ、それに私も貴女と同じ戦場にいたわ…見るものすべてが地獄で…辛くなって…それで教官をしているの」
「そうでしたか…お疲れ様でした…少佐」
「なぜ私の階級を?」
「父がなぜあの馬鹿はこの職に付いたのだ!と、言ってましたからね。」
「やっぱり彼と同じ様にはなれないわね…彼を支えられたなら良かったのだけれど。」
「父は、こうも言ってました、《俺は運が良かった、いろんな人に助けられた。だからそれを少しでも返したい、…が戦いしか知らないが故に、戦い続けることで返したい。そしてまだ見ぬ子孫たちのために、子どもたちの為に、明日を生きる人々の為に奴らを殲滅するまで戦い続けることで俺の祈りとしたい。》と」
「……あのバカ…」
「番匠屋教官、父は、あなたに向けてこう言ってました。《貴女にマギの加護があらん事を》と」
この言葉は運命の囚人が別れ際に言うものである。船で言う貴船の航海と無事を祈ると同じような意味である。
「そう…彼らしいわね…さてと、全員自己紹介してもらいましょうか。」
そう依奈は気を取り直して言った。