第七章 二つの想い・二つの力
肌に触れる空気すら痛みを感じるようだった。そんな張りつめた空気の中、二人はにらみ合っていた。周りの木々は飛ばされ、白玉楼ですら原形をとどめていなかった。
霊夢は圧倒されていた。こんな事があるのだろうかと思うほどだった。見つめあう二人の気迫は想像を超えるものだった。少女の身をまとう炎が天高くそびえる。こちらは吸収してきた力が入り混じっていた。
長い間、にらみ合っていた二人は、過ぎていくときの中、力を増幅させていった。
そして、霊夢が固唾を飲むと同時に二人が動いた。
紫は吸収されたのか分からない人の技まで使えていた。咲夜の『時を止める能力』、魔理沙の『星の魔法』、さらには、永林の『万能療法』や慧音の『歴史を動かす能力』など、見た事のある技術をオリジナル以上の力で使いこなしていた。
さまざまな力が折り重なる中、妹紅はあらゆる攻撃を、現象を無視してきた。七色の炎はあらゆる異変を無きものにする炎だった。霊夢の『夢幻の力』と妹紅の『全てを燃やす漆黒の炎』が見事に組み合わさった、まさに『点火夢想』の炎だった。
紫はその力を見るや否、うすら笑いを浮かべ他人の力ではなく、自らの力を駆使してき
た。他人の力は全て自分の力に変えていた。
彼女の能力は『空間移動』だった。いつもの速さよりも何十倍も速かった。そんな紫の力に圧倒されてきた。なぜならこの炎は『他人の力を解除する能力』になっていたからだった。周りの物は壊せないし、相手に傷一つもつけられない。そんな炎だった。
霊夢はそれに気付いていた。だから受け身ばかり取っている妹紅を不思議に思った。
(なんでさっきから受け身ばっかり取っているのかしら。・・・・何考えているの、いったい。)
長い間の戦闘で妹紅の体はボロボロになっていた。ずっと考えていた霊夢はもしかしたら、と思い自分の中で一番強い技を紫に放とうとした。
「夢想転生!」
その叫びは戦いの激しい騒音でかき消された。霊夢はこの技を使うと前準備として限界突破が自動的に発動する。しかし今回は変身をしていなかった。だから、技も発動しなかった。霊夢の予想は当たった。
「まさかとは思っていたけれど、そのまさかだったわね。私が上げた札を通して、あの子に私の力が流れ込んでいるんだわ。なんて子なの。」
霊夢は妹紅を見た。勝てる、と確信したからだ。
妹紅は攻撃を受けている間に自我を取り戻しつつあった。この力を使うとなれば自我は遠い闇に飛んで行ってしまう。妹紅はそんな暗闇を霊夢の力を使って抜け出そうとしていた。紫もその事は知らなかった。しかし、不意を突かれて妹紅は紫の渾身の攻撃を受けてしまった。妹紅は飛ばされた。身にまとう炎が消えていた。そして、飛ばされたところから微動もしなかった。
紫がこの程度か、と思わせるように目の前に立った。霊夢は祈った。
(お願い!妹紅にもう一度だけ戦える力と勇気を―!)
飛ばされてからどれくらいたったのだろうか。目が覚めるとそこは暗闇だった。
「あ~あ、私はついに―。でも、悪い気分じゃないわね。」
ポツリ、と呟いた言葉は常闇に飲まれ聞こえなくなった。
長い事その場所に立っていたが何も変化が起きなかった。ただただ長い沈黙とどこを見ても変わらない黒が広がった。
「・・・・・・。」
突然何かを感じ取ったように妹紅はピクッ、と動いた。何かが出てくるのをずっと待っていたがなかなか出てこなかったのでイライラし始めた。そしてイライラが限界まで達した妹紅は大声で叫んだ。
「もう!いつになったら出てくるのよ、この馬鹿鳥が!そんなんだから役に立つ事が無いのよ!」
罵声は暗闇の中に潜む紅い鳥を呼び覚ました。フェニックスの明るく、暖かい炎が黒を照らした。
「すまぬ。」
それっきり会話が途切れた。しかし沈黙をつかの間、妹紅はいきなり話し始めた。
「やっとわかったのよ。私が高熱で竹林に倒れたとき、助けてくれたのはあなたでしょ?あの時は助かったけど今回は別―。でも・・・・。」
妹紅はうつむいた。力の無さがここまで異変を大きくさせた事に後悔していたからだ。しかし、妹紅には希望が見えていた。妹紅は顔をあげて、フェニックスを見つめた。
「今回は彼方の力を借りることにするわ。だけど勘違いしないでね。私はあなたを受け入れたわけじゃないわ。」
「ずいぶんと強がりだな。まぁ、今回はしょうがないだろう。」
妹紅は微笑んだ。強い意志を示した彼女に彼も微笑んだ。
「それにしても強くなったな。今回はわれの力に飲み込まれないだろう。」
妹紅は微笑みを見せたまま言い放った。
「あたりまえじゃない!」
紫が立ち去ろうとしたとき、妹紅がピクッ、と動いた。そしてゆっくりと立ち上がった。
「あら、動かないから瀕死になったのかと思ったわ。でも、その様子だとちゃんとしているようね。」
妹紅はやる気に満ちていた。全身から虹色の炎がわきあがっていた。
「今までの借り、しっかり返させてもらうわ!」
紫はクスッ、と笑い、
「本当に出来るのかしらねぇ。まあ、さっきよりは楽しめそうね。」
それからまた大きな戦闘が始まった。地が揺れるほどの大きな争いになった。
「やっぱりその力を私は欲しい!」
紫は喜びに満ちていた。妹紅はだんだん不機嫌になっていった。
「じゃあ、なんでさっき倒れていたときに能力を取らなかったんだよ!」
「あなたの全力じゃなきゃだめなのよ。あと、全ての能力を禁止する炎、夢灯炎―全てを焼き払う黒い炎、無灯炎―。この二つの力が欲しいのよ。」
妹紅のイライラがまた限界に達した。
「もう!あんたの事なんて知らないわよ!」
七色に輝く炎は紫をまとった。必死に出ようと試みたが炎の能力で何も出来なかった。そんな紫を見て、彼女は言い放った。
「最後に残す言葉は?」
紫は妹紅をみてまたクスッ、と笑い、
「ひよっこのあなたが強くなったわね。あと、最後じゃないから、勘違いしないで―。」
妹紅は紫の言葉に疑問を抱いた。
(最後じゃないってことは、また何かのたくらみがあるのかしら?・・・分からない。)
エピローグ 実は
あの戦いから三日が経った。相変わらず冥界は美しい色に輝いていた。あの時、わたしがあの炎を使ってから、冥界がまぶしく光っていた。このまま一週間続きそうだ。
長く歩き続けて紅魔館にたどり着いた。力の解放の手伝いと道徳的な事を教えてもらったから、お礼を言った。みんな歓迎してくれていた。
再び歩き、博麗神社についた。霊夢にはいろいろな面でお世話になったから、今までしたほどの無いほどお礼をした。霊夢は、私のお礼のしすぎでまいってしまったようだ。
そして、私の故郷ともいえる場所、永遠亭―。あの異変の中でみんなの力が暴走する事が無く正直ホッとしている。また、異変が解決した後も、大きな異常は無かったようだ。
玄関の前に立ち、私は息を整えた。久しぶりに帰ってきたので、正直緊張している。門をくぐり、目の前に見えたのは・・・・変わらぬ景色だった。長い廊下に説教机、お茶を入れる台所―。しかし、一つだけ気になった事があった。おかしいなと思った。輝夜は
ともかく、慧音や永琳の姿が見られない。でもよく考えたらあの二人はよく出張して人里に行くからいないのはいいんだけど・・・・。さすがに兎たちはいるだろう。けれど、永遠亭のどこを探しても誰も見かけなかった。
(さすがにこれはおかしい・・・・。みんなどこ行ったのかしら?もしかしたら輝夜の宮廷にいるかもしれないわ・・・・。探してみよう。)
竹林に囲まれ、永遠亭の裏にある輝夜の宮廷はいつ見ても立派だが、たぶん中はいつも通り、薄暗くてろうそくが何本か立っているくらいの、素朴な部屋だろう。そう思って中に入ってみると、まるで異世界に飛ばされたかのように、変わっていた。私は驚きを隠せなかった。壁掛けには「祝福」と書いてあった。誰の祝福なのか分からなかった。だけど、慧音や永琳、輝夜に兎たちは私に飛びつてきた。本当に驚いた。みんなが泣いていたから私は現状に気付いた。
(ああ、そうか、私がしっかり帰ってきたから、みんな嬉しかったんだ。)
そうおもうと不意に涙が出てきた。そして、みんながいる前で大泣きした。みんなは私に「おかえり」と言ってくれた。私は自分のいるべき場所が分かった。と、同時に、泣いたまま「ただいま」と言った。
かなり長く続いた宴でみんな疲れ切っていた。そんな中、慧音が月の光が照らす玄関で呟いた。
「妹紅、ずいぶんとたくましくなったわね。でも、最後まであなたに気付かれなくて良かったわ。」
私は慧音の言っている事が分からなかった。
「まぁ、分からないのも無理は無いわね。・・・紫、出てきて―。」
そういうと後ろから紫が出てきた。私は勢いよく立ちあがった。
「大丈夫よ、何もしないわ。あと、今回の真相、言ったら?」
「・・・・そうね。」
そういうと、唐突に語りだしてきた。
「永遠亭が炎の結界に囲まれた時を覚えているでしょ。あの時、本当は月の材料をもら
いたかったんだけど、輝夜から、あなたにしっかり動けるように、って頼まれたのよ。」
「!」
輝夜がそんな事を言っていたなんて思っていなかった。
「そしたら―。」
「そのとおりよ。今回の異変は全て(、、)あなた(、、、)の(、)為(、)に(、)作られた(、、、、、)のよ。」
「じゃぁ、あの力は何だったんだ!」
今までの事が仕組まれていたなら、と思うと言葉に力が入った。
「あれは彼方の力よ。傷の事もあったでしょ?あれは力を無理に使っていたから、体の負担で少しずつ深くなってたのよ。」
「そう、だったのか・・・・。」
「じゃ、じゃぁあの病気は?」
「あの病気は人間世界で言う『インフルエンザ』っていうものだわ。危険性は極めて少ないわよ。でも、うまく乗せたのは私たちだからね。ほら、前を向いてみなさい。」
私は言われるがままに前を向いた。そこには今回の異変にかかわっている人がいた。黒炎に焼かれた人は幻影だったらしい。
私は泣いた。大声をあげて泣いた。私の力がないだけで、こんなにもかかわっている人がいる事に気づかされた。とてつもなくうれしかった。
「妹紅、あなたはやっぱり私の永遠のライバルよ。」
みんなが私を抱きしめてくれた。
今回の異変は夢のように儚く、美しいものだった。
次の日の朝、私はライバルとの決着をつける為、迷いの竹林に駆け込んだ。
お・し・ま・い
あとがき
この作品を書くにあたって『小説』とは何かについて考えてみました。僕の考える小説とは、人の考えを表現する物、そして自分の考えを伝える物、また、読む人にも感動を与える物、この三つだと思います。
話を変えまして。東方の事を知ったのは、『ゆっくり動画』と言う動画を見てからです。その時から興味が出て来ました。今では隠れ有名だ、といわれるところまで分かりました。キャラクター名は結構覚えてますけど、必殺技は・・・・触れないでおいて下さい。
東方は〝弾幕シューティング〟と言われる系統が多いのでRPGが二次創作と言う事になっているんです。格闘系もありますが二作品(?)しかありません。アニメも漫画も二次創作なので結構残念です。
そんな僕も今回は頑張ってみました。きっかけを作ってくれたのは某中学生のY君です。あの時は心に衝撃がきました。今までやった事の無い事だったので、不安もありました。面白く出来てたらうれしいです。感動してくれたらうれしいです。しかし原点は『最後まで読んでくれたらうれしい』いんです!
この本にかかわってくれた全てのみなさんに感謝しかありません。短いですがこれでしめさせてもらいます。
ありがとう