このすばを書くならこっちの方がいいなと思ったので。
見切り発車ですが、よろしくお願いいたします。
あと、通常運転のアクシズ教……というかとくにセシリー……を書いた作者が変態です。お気をつけください。
異世界
「放浪王」そんな名前をつけられた事もあったなと思い出す。
何故そんなことを考えているのかと聞かれれば、目の前に広がるのは見晴らしのいい野原のせいだと答えよう。美しい黄緑のみが周りを覆い、日を反射して美しく光る草原をなんと例えようか。
………まあ、ここまでは何も問題はない。美しい景色に暖かな日差し。普段ならばこれ以上ない絶好の昼寝の場所だと芝生にダイブしていたことだろう。
しかし、全く知らない場所というのは些か、いやかなり問題があった。
遠目には見知らぬ魔物がうろつき、そのまた遠目にはやはり全く知らない町の塀のようなものが見える。
「あれ、これちょっとマズくない?」
ちょっとどころではないほどマズいのだが、基本的に物事を楽観的にみているディーノにはそう感じるらしい。
放浪っていうか迷子だよなと、寝ぼける頭でぼーっと思った。
しばらく、ディーノは考え込むような仕草をするが、やがて諦めたように「探偵の苦悶のポーズ」をとく。
「まあ、いいか」
考えても仕方無し。
ディーノは持ち前のポジティブさとあきらめの早さで早々に「考える」という、無駄にエネルギーを使う行動を避け、『人に道を聞けば帰れんだろ』とばかりに平原の先に見える街らしき場所に向けて歩きだした。
そもそも、ほとんど世界を知り尽くしていると言っても過言ではないディーノが『全く知らない場所』と思うのならば、生きてたかが数十年の人間にわかるはずもないのだが______「早く寝たい」「腹減った」などの睡眠欲と食欲しか頭にない怠惰な堕天使には頭にもなかった。
ディーノside......
「饅頭~、饅頭はいかが~?」
「あっ、お兄さん!ここよってかない?」
俺はなるほどと街を見直す。
どうやらここは温泉街のようで、温泉特有の香りや湯気が暖かくこの街を包み込んでいる。
饅頭を売っている人もいれば、風呂上がりなのかホクホクした表情で道を歩いている男女もいた。
街には魔物という魔物もいず、[[rb:魔国連邦 > テンペスト]]に入り浸りすぎた俺には違和感を感じた。
しかし、街は平和そのもの…………
「きゃあああああ!!」
…ではなかったらしい。
悲鳴が聞こえた方を見るとちょうど金髪の女性が路地から駆け込んでくるところだった。
あまり面倒事に関わりたくない性分だが、見て見ぬ振りをするほど冷たくはない。
悲鳴をあげた本人と思しき女性に話しかける。
「あー……っと、大丈夫?」
「えっ……聞いてない、聞いてないわ!運命の王子様がこんなイケメンなんて……!嫌でも私はロリショタっ子が……!キョトンとした顔可愛い……!ああ、どうしましょう!アクア様!」
「…………」
なにかブツブツ呟いてて悲鳴をあげていたとは思えない。人違いだったらしい。
回れ右をして去ろうとすると、ガッと服を掴まれた。
「助けて!暴漢に襲われてるの!」
その女性の表情は先程とは違い切羽詰まっている。すると、女性が出てきた路地か怒鳴り声が聞こえてきた。
「あっ!いたっ!いたぞー!!やっと見つけた!」
「クソっ!手間かけさせやがって!!」
二人の(服装から見るに聖職者だろうか)男は金髪の女性を見つけると物凄い表情でこちらへ走ってきた。顔は般若みたいだし、言ってることもラミリスに借りた聖典のやられる系のモブに酷似している。
だが、来ている服は間違いなく……
「あれが暴漢?ていうかあれ聖職者だろ?さすがに一般人を襲ったりとかしないと思うけ」
「そんなこと言ってる場合じゃないわ!逃げましょう!」
女性は俺の言葉を遮ると、俺の手を引っ張って走り出した。
……なんか誤魔化されたような……。
というか、俺がついて行く必要なんてないのでは?
そんな思いを踏んでいくように女性は思わぬ速さでズンズン進んでいく。
「あっ!逃げた!」
「おい!そこの人!あいつはアクシズ教だ!エリス様の肖像画に落書きしたんだぞ!くそったれ!」
後ろからそんな声が…
「あれっ!なんで止まるの?このままお姉さんと一緒に愛の逃避行をしましょう?」
「肖像画に落書きしたんだろ?エリス教徒が言ってた」
「…えっ…と……ていうかなんで……エリス教徒の声でも聞こえたの?ここから結構離れてるはずなのに……」
ちなみに聞こえたのは魔力感知のお陰である。
しかし、それを言うほど俺は優しくないし。
「んで?」
「んでって……かわいい……。コテンってしちゃって!……ってそんな顔やめて!じゃあそうね、ギュッてしていいかしら!?ねえ、なんでそんなに距離を取るの!?」
ちょっと何言ってるか分からない女性に数メートル程距離を取ってから再度聞いてみる。
「何やってたの?」
「そりゃあ、もちろん憎き邪神エリスの肖像画という名の詐欺な絵画に芸術的な落書きを…!」
俺は辺りを見回し、見慣れた制服を見つけると……、
「おまわりさーん!」
「ちょちょちょ待ってー!!」
「ショタ……ではないが美少年だ……」
「イケメンだ……セシリーがイケメンを連れてきた!」
「…アメちゃんいる?かわいいわね!おねだりしてくれたらたくさんあげるわよ!」
「あっずるい!俺も美少年に抱きつきたい!」
なんなんだここは……。
確かこれはセクハラやらなんやら言うらしいが、これはひどい。
俺は「昼ご飯でも奢るから!そんなに怒らないでちょうだい!」と必死に懇願してきた、セシリーとかいうプリーストに教会に連れてこられていた。
ここにくるまでの間セシリーにここのことを聞いたが、全く心当たりがない。永い時を旅していたのだ、国名くらいはすべて覚えている。
しかし、国名も常識も全てが違う、知らない。ここは俗に言う異世界というやつなのだろうか。
それよりも……
「…なんか近くない?」
「そんなことないわ!これが普通よ!」
さっきから抱きつきながら頬をつついてくるセシリーが鬱陶しい。
ものすごく目をきらきらさせてむにむにと触ってくる。
「いいほっぺだわ!これは15歳くらいの美少女の柔らかさといったところかしら。ということはディーノさんは15歳、食べごろね!」
桁が二、三桁くらい違うし食べごろとはなんのことだ。
呆れつつも、ここに来た目的を思い出す。
「なあ、セシリー。ご飯は?」
「セシリーお姉ちゃんって呼んで!」
俺の方が年上のはずなのになぜお姉ちゃん呼びなのかは知らないが、そんなに童顔に見えるか…?
少し不安になってくる。
しかし、それよりも飯が優先だった。
「約束じゃん」
「お姉ちゃんって呼んで!」
「ご飯!」
「お姉ちゃん!」
むう。
どうやら譲る気はないらしい。
俺はセシリーを少し睨みながらぽつりと。
「…セシリーお姉ちゃんご飯ちょうだい」
「任せなさい!お姉ちゃんがおいしいものをたくさん食べさせてあげるわ!かわいいわね!ギュッてしていいかしら!?」
……なにこれ死にたい。
俺は端から見たら虚ろであろう目で、キャアキャアと悶えているセシリーを横目にどっと疲れを感じた。
昼食だが、意外にちゃんとしたものが出てきた。なんかまた変なものでも出すかと思ったから少し意外だったが、いちいち疑うのは失礼だったか。
考え直し、おいしくいただいた。
次に出されたのはデザートという名の、謎の飲み物なのか食べ物なのかもわからない物体。
ていうかこれよく見たら……。
「これスライムじゃねーか!」
「あら知ってるの?これはね、ところてんスライムって言って、スライムの寒天質を乾かして粉にして味付けしたものなの!私のおすすめはグレープ味ね!王道こそ正義よ!ささっ、ちゅるっといっちゃって!」
フンフンと鼻息荒く熱弁するセシリーに若干引きながらも恐る恐るそのところてんスライムを口に入れる。
「……うまぁ…」
「でしょでしょ!」
このツルリとした感触、それでいてトロリともしているスライムの喉越しがたまらない。グレープ味と言っていたがほっぺたが落ちそうな大変美味しい味だった。
確かにあっちでもスライムは食用でも食べられてたし、別に大丈夫なのか。
と、どこかのスライムが怯えそうな事をさらりと思ったが、おいしいので忘れよう。
不思議なことにゆったりとした眠気がやってくる。
いつもは寝たい時に眠り、サボりたい時にサボっていたが、今日は朝から歩いたり走ったり、疲れたりしても休憩しなかったからだろうか。でもこの眠気は全く苦ではなくむしろふわふわと心地いいものだった。
「セシリーさん、何をやっているのですか?」
「あっ良いところに来ましたねゼスタ様!美少年の寝顔ですよ!NEGAO!」
「ほう…それはそれは…ふむ…魔道カメラを借りて来ましょうか」
「さすがですゼスタ様!この不肖セシリー、命を賭けてでもこの寝顔を撮ってみせます!」
ディーノが起きて暴れだすまであと_________