更新バカ遅いですね。すいません。
今回の話はゆんゆんが可哀想です。本当にすみません
あ、あとメリークリスマス!
「はい!確かに初心者殺しの討伐が記録されていますね。こちらが今回の依頼報酬です。お疲れ様でした!」
そう言った受付嬢はニッコリと微笑んだ。
_____結局、このままでは帰れないとゆんゆんとめぐみんが言い出したため、もう一度ゴブリン達を狩り、出てきた(今度は何故か普通に襲ってきた)初心者殺しをめぐみんが爆裂魔法とやらで仕留めた。
あんなに騒いでいたというのに、実にあっけない最後だった。
しかしまあ、人間があんな魔法を行使するとは中々凄いと思う。消費魔力や攻撃範囲を考えると少々オーバーキルな気がしなくもないが、そこは使いようによって変わるだろう。
その後、俺は魔力がスッカラカンになって動けなくなっためぐみんを背負い、こちらもほとんど魔力を使い果たしたゆんゆんを支えながら必死に街へと帰った。
こうして今に至るわけだが____
ギルドを出た頃には暗くなっており、俺たちをバカにするようにカーカーと数匹のカラスが鳴いていた。
「ディーノ、ディーノ、あのカラス共が喧嘩を売ってきます。中級魔法くらい使えるでしょう?撃ち落としてください」
めぐみんが杖をブンブンと振り回しながらそう言うせいで、バランスが崩れそうになる。
爆裂魔法を撃った後に当たり前のように背負うことを要求してきためぐみんを、仕方なくおぶってやっているというのにそんなことを言うとは、俺を召使いかなにかと勘違いしているのか。
「やめろよ、動物保護団体に怒られるだろ。というか、そんな暴れられる元気があるなら降りろよ。お前重いんだけど………ちょっ!叩くなって!」
反論すれば、かなり強い杖の攻撃と悲鳴に近い説教が俺に襲いかかる。
「最低!最低です!年頃の乙女を重いとか!」
「そうですよ!いくらなんでもデリカシーってものがあります!しかもめぐみんは私達の年代の中では軽い方なんですよ?…痛い痛い痛い!なんで庇ってるだけなのに髪を引っ張るの!?」
俺を挟んで喧嘩をし始めた二人の
「なんで逃げるんですか?普通は『か弱い女の子二人じゃ危ないし、送っていくよ』とか爽やかに言うものですよ!それが常識というものです!」
「えー……なんだよそれ……」
「ええっ!?知らなかった、常識ってそういうものなの……?」
ここにも一人非常識な奴がいらっしゃるのだが。この血気盛んな紅魔族が「か弱い女の子」なのかはともかく、この世界の常識はよくわからないので覚えておくことにする。
「ふーん、じゃあ送るよ。ゆんゆんは宿までだろ?めぐみんは……」
「屋敷がありますので、そこの前まで送ってくれると助かります」
屋敷か。駆け出しで家を持つとか聞いたことがない。爆裂魔法も使える紅魔族ということで意外と活躍しているのだろうか。そうなるとますます「か弱い女の子」じゃなくなる気がする。
俺がそんなことを考えていると、めぐみんがスっと袋を差し出してくる。ただの袋ではなく十分に膨らんでいて、何かがぎっしりと詰まっているようだった。
「……爆薬か何かかな?」
「はっ倒しますよ。……初心者殺しの報酬です。私には不要なものなので差し上げますよ」
意外だった。めぐみんのようなタイプならば何がなんでも自分の報酬を9:1くらいで取りそうなものだが、俺はどうやら勘違いをしていたらしい。
「じゃー、遠慮なく」
そう言って俺が受け取れば、めぐみんは満足そうな顔をして小さく頷く。
「では、向かいましょうか。ゆんゆんはもうすぐそこが宿なのでもういいですよ」
「それって私のセリフじゃない!?」
すぐさまゆんゆんがめぐみんの発言にツッコんだとかと思うと、途端に視線をあさっての方向へ向ける。
どうしたのかと首を傾げていると、めぐみんの鉄拳がゆんゆんの頭に落ちた。
「いたいっ!何するのよ!」
「えーい、モジモジと鬱陶しい!さっさと済ませてください!時間は有限なんですよ!こんだけ付き合った私の身にもなってください!」
「めぐみんは勝手に着いてきただけでしょ!わかってる、わかってるから!」
茶番のようにひとしきり口喧嘩をした後、ゆんゆんは不安そうな表情で、しかし真っ直ぐとこちらを見つめ……またすぐに逸らす。
「……えっと、ディーノさん。私的には今日のクエストはグダグダだとは思ったんですけど……」
「え?うん、俺もそう思う」
そう返すと、めぐみんに後頭部を
むう、解せぬ。
「なんだかんだいって初心者殺しも討伐できたし、職業的な相性もバッチリだと思うんです。だっ、だから……えっと……あの……その……え……と……」
「なんなんですか、もう!一言言うだけにどれだけ時間かけるんですか!」
「い、今言おうとしたの!めぐみんは黙ってててよ!」
「なら早く言えばいいじゃないですか!言ったらどうです?ほら早く!」
終わらせたと思ったら、早速口喧嘩が再開されたようだ。喧嘩するほど仲がいいとは言うがこんなに仲がいいなら二人がパーティーを組めばいいのになと思ってしまった。
(……あ……)
ふと、そういえば今回の依頼はパーティーの面接を兼ねたものだったということを思い出した。自由にしていた自覚はあるが、楽しかったのならよかった。……楽しいかだけがパーティーを組むかに関係するかといったらあまりしないとは思うけれども。
ゆんゆんはめぐみんに言われた事を気にしたのか目を伏せ、ブツブツと何かを呟くと決心したようにこちらを見つめる。
彼女の瞳は緊張からか紅く輝いている。耳まで赤く染め、意を決したようにゆんゆんは叫んだ。
「私と、パーティーを____」
「ああっ!!いた!!」
___のだが、何者かの声によって遮られる。
声の方を見れば、盗賊風の少女……少女?が俺の顔を指指しながら、あんぐりと口を開けていた。
「……え、誰?」
「君、ちょっと!ちょっとだけいいかな!?」
盗賊風少女はそう言うと、俺を近くの路地裏に連れ込む。
「あれは……クリスですか?」
「あ…………」
そんな声を背中から受けながら、俺は手を引かれるがままに少女について行く。なんとなく、そうしなければならない気がしたから。
「…………なんかごめんね?ちょっと聞きたいことがあってさ」
「別にいいけど、俺金持ってないぞ?」
「か、カツアゲじゃないよ!そんなのよりもっと大事なこと!」
盗賊の少女の外見は銀髪にラフな軽装。年頃の娘にしては感心しない肌の露出度だと思うが、人の服装にはあまり首を突っ込まないようにしているため、言わないでおく。
『お前はいつも同じ服じゃねえか』と言われたら終わりだからである。面倒だというのもあるが。
「じゃあ、なんの用だよ。俺暇じゃないんだけど」
「いや、暇じゃないとかそういう問題じゃなくて!」
盗賊の___めぐみんにクリスと呼ばれた少女は、気を取り直すようにコホンと咳払いをすると、真剣な面持ちで俺を見つめる。
「私の名前はエリス……女神エリスです。この世界に迷い込んでしまったあなたを助けるためにここに来ました」
全てを包み込むような優しい声と共に、彼女は柔らかに笑った。
………………………………。
……………………。
…………。
「何言ってんだアンタ。エリスってこの世界の通貨にもなった偉い貧乳女神様なんだろ?バチあたるぜ」
「う、嘘じゃないよ!っていうか、貧乳!?そ、そんなわけないでしょ!?誰からそんなこと……!」
「アクシズ教徒はみんな口を揃えて言うから本当なのかなって。あとむねぱっと?だっけ」
「うわあああああ!」
クリス……自称エリス様は慌てたように俺の声を遮ると、顔を赤くして俺の胸ぐらを掴みあげた。
「ぐえ……」
自分から聞いた事のないような、カエルの潰れたような声が漏れる。
「それは忘れる!それは事実じゃない!いいね!?」
「りょーかいしました……」
俺が従順にこたえると、彼女は満足したように胸元を締め上げていた手を放した。開放された俺はいそいそと距離をとり、ペコリとお辞儀をする。
「じゃあ、俺はこれで」
「待って待って!まだだよ!話聞いてたでしょ!?君を返すために来たんだってばー!」
まだ自分を女神エリスだと疑わない目の前の痛い少女は、俺の服を掴んで離れない。この調子だと、いつまでも俺に引っ付いてきそうである。
「……わかった。分かったよエリス様。話は聞いてやるけど、普通はそんな簡単にはいかないもんだぜ?」
「あれ、意外と素直じゃん。何?やっと信じてくれたの?」
嬉しそうに顔を綻ばせるエリスに、俺は引っ張られた服を伸ばしながらこたえる。
「いや、そもそも俺が異世界から来たなんてわかるのはそれこそ女神様とかしかいないんじゃないかなーって」
「最初から女神って信じてくれてたってこと!?その上でからかってたの!?勇気あるね!」
「世界中に信者を持つ女神様がそんな狭い心をお持ちのはずないしな。それに対策すらしてくれなかったの腹立つし。俺にコンタクトするの遅いし。ここに来てから何日たったと思ってんだ」
「後半が本音じゃん!それはちょっと悪かったなって思ってるけど!」
エリスは勢いよくツッコみ、俺の頭をパシンと叩いた。
「もう!こっちはすごく真剣だったのに!君のこと想ってたのに!」
「悪かったよ。俺は真剣な話が苦手なんだ」
「雰囲気作りまでしたのに!」
謝られても溜飲が下がらないらしい女神様は、大きくため息をつくと、ほんの少しだけ笑った。
「混乱してると思ったけど、普通そうでよかったよ。君レベルの天使が暴れられたらこっちとしても困るしね」
「俺は戦闘狂じゃないし、そこは心配しなくていい」
「でも冒険者にはなったんでしょ?」
「そりゃあ、皆には世話になったし……ちょっと楽しそうだしさあ……なんだよ」
俺が言い訳するようにモゴモゴ呟いているのを、なぜかエリスは嬉しそうに見つめてくる。
「ううん!これなら大丈夫かなって。ぶっちゃけ、君が元の世界に戻る方法はまだ見つかってないからね」
本当にぶっちゃけたな。
「まあ、うん、だろうなー……」
「そもそもの原因が分からないんじゃどうしようもないしさ……君はなんか知らない?」
「さあ……?声は___聞こえたような気がするけど」
「うーん……あっちとこっちじゃ法則が違ってくるから、色々と面倒なんだよね」
エリスは考え込むように顔を俯かせたが、バッと顔を上げ俺の肩をビシバシと叩いた。
「ま!何とかなるか!」
「ポジティブだなー」
「君の楽観的な性格には負けるよ」
エリスは明るく笑う。仕事としての笑顔ではなく、無邪気に笑う。こちらを照らすように優しくわらう。
やはり神様はそういう存在なのだろうか。誰かを支えるために、誰かを生かすために、彼女たちはいるのか。
だとしたら俺は_____
「……い、おーい!ディーノ?」
「……ん?」
「話聞いてなかったでしょ!全く、ちゃんとしてよね。これでも仕事なんだからちゃんとしてないと叱られるの、絶対にあたしなんだから」
「悪い悪い……で、なんだって?」
「だーから、しばらくはあたしとパーティーを組んでもらうってこと!いくら害意はなさそうとはいえ、できるだけそばに居た方が何かと便利だしね」
「……まあ、今はフリーだし別にいいけどさ。女神様は暇なの?」
「忙しいよ!めっちゃ忙しいよ!……でもだからって君をする事なす事を拘束する権利はないからね。できるだけ時間もとるし、ちゃんとサポートするよ」
「ソーデスカ」
ぶっちゃけ冒険者カードつくって、パーティーもどきもつくって、クエストもクリアしたから結構満足したとか言ったら怒られるかな。
なぜか感動的な雰囲気を出しているので、きっとそれは許されない。俺は瞬時に判断し、大きく頷いた。
「じゃあ、それでよろしく」
「ほんとにわかってる?」
まあ、女神エリス様は忙しいらしいのでそんなに頻繁にクエストに行くなんてことはないだろう。
俺は一人納得し、ゆんゆん達が待つ宿の前へと足を向けた。
「わかってるわかってる。りょうかいしましたー」
「ホントにぃ!?」
「ぐえ……」
「何なんですかさっきの!?クリスとどんな関係ですか!!?」
「め、めぐみん、ディーノさん死んじゃうから!」
戻ってきた途端めぐみんに首を絞められた。この世界の女の子は人の呼吸を止めさせるのが好きらしい。
「落ち着けよ……ちょっとものすごく大切な急用があっただけだって」
「それならここで言えばいいでしょう!それよりクリスはどこに行ったんですか、ダクネスが最近会えなくて寂しいと言っていたので屋敷に招きたかったのですが」
「帰ったよ、多分」
「め、めぐみん……ディーノさんは大丈夫そうだけど、周りの目線が気になるからそろそろ手を放してあげたら?」
おずおずと声をかけるゆんゆんの言葉に渋々従い、めぐみんは俺の服を放す。
この一瞬で俺の服は随分伸びてしまったのでは無いか。結構お気に入りなので入念に確認しながら、俺はゆんゆんにお礼を言う。
「助かった。ありがとな」
「いえ!めぐみんが暴力的なのが悪いので」
「あなたはたまにズバズバ言ってきますね!」
「だって本当のことだもの。…………えっと、それより、あの……パーティ……のことなんですけど……」
「え?なんだって?」
「ぱ、パーティ……のことなんですけど……」
「そういえば、クリスとなんの話しをしてたんですか?」
ごにょごにょと口ごもるゆんゆんを見て、まだダメだと判断したらしいめぐみんはさりげなく空気を保つ。めぐみんはなんだかんだ言って面倒見がいいようだ。
「え?まあ……なんか色々やらかしたから一定期間パーティーを組まなくちゃならないことになったんだよね」
「「え!?」」
「期間未定だけど」
「「ええっ!?」」
2人揃ってあんぐりと口を開ける姿は姉妹のようで微笑ましいが、めぐみんに言うと殺されるので黙っておく。
「ちょ、ちょっと待ってください!そんなのってありなんですか?というかなにをやらかしたらそうなるんですか!」
「ちょ、また服掴むのやめて!」
ゆんゆんは未だ固まったままである。
「監視付きということは国……いや、クリスならエリス教団関係ですか?」
「え、いや、まあ、そんなトコ」
「ほんとに何をやらかしたんですか!貴族の知り合いはいますがエリス教徒なので揉み消せませんよ!」
「揉み消そうとすんな!……じゃなくて、そんな心配するほどのことじゃなくて色々とあるんだよ」
「色々と……ですか」
ジトリと見つめてくるめぐみんの視線に耐えきれず、俺の視線は自然と固まったままのゆんゆんにいく。
「ゴメンな、急に。俺も楽しかったけど、結局お試しにもなんなかったし不採用だったとおもったから了承しちゃったけど」
「いいいいえ!大丈夫です!」
「ほんとに?まあ、ゆんゆんは優秀だったし、パーティーメンバーなんてすぐに見つかるよ」
「は、はい!すいません!それじゃあ!」
ゆんゆんは本当にわかっているのかわからない返事で会話を強制的に終了させると、別れの挨拶をする暇もなくダダダっと宿へ走っていった。
その背中を見つめながらめぐみんは呟く。
「…………適当に理由をつけたわけじゃないですよね。あの子とやりたくないけど、断れないからって」
「まさか」
鼻で笑う俺をめぐみんは静かに睨む。隠すことなく「疑ってます」というその表情はライバルへの、親友への心配の表れな気がした。
不器用な彼女に思わず言葉がこぼれる。
「俺はそんな面倒なことしないさ。裏切るのも嘘つくのも俺は得意じゃないんだよ」
「そうですか。後ろめたいこともないんですね?」
「ない。約束してやる」
「それを聞ければ結構です」
めぐみんは大きく頷く。
彼女もなんだかんだ言って人を疑うのはあまり得意では無いらしい。初対面ならともかく、少しでも一緒に過ごしてしまったらもう、情が移ってしまう。
そしたらもう、突き放しきれない。
「お前、生きづらそうな性格してるよな」
「なんですか急に」
「いや別に。さっ、早く屋敷とやらにに行こうぜ」
「そうですね。私は別にゆんゆんのことなんてどうでもいいですし」
あえてそんなことを言うめぐみんだが、俺は心配そうにゆんゆんの言葉を聞いていたのを知っている。
つくづく不器用な少女だ、と思った。
ごめん……ゆんゆん……ごめんね……ぼっちにさせたいわけじゃないけど……ごめん……展開的にこうなってしまうんだ……