タイトルがなんか重く見えるけど、ギャグだけです。
「あ、ここです。ありがとうございました」
他の家よりも一回り大きい屋敷の前に着くと、めぐみんは俺の背中からストンと降りる。どうやら俺をタクシー代わりにしたらしい。
「なんですかその目は。ほら、ここまで送ってくれたお礼に今日は我が屋敷に泊めて差し上げましょう。宿代も浮きますし、今日は食事も豪華らしいので期待してもいいですよ」
なるほど、そういうことなら許してやろう。
途端、自分でもわかりやすいほど機嫌が良くなった。
宿に泊まるのはいいが、金はかかるわ、外にはほぼ全裸の冒険者たちが笑い転げているわ、布団は薄いわで居心地はそこまで良くないのだ。早く安眠できる家が欲しい。
「めぐみんのパーティーメンバーか。どんな奴らなんだ?」
ふわふわと浮かれる俺をめぐみんは嬉しそうに微笑む。
「問題児ばかりですけど、頼もしくて楽しいパーティですよ」
それは、大切なおもちゃを自慢する小さな子供のような無邪気な笑顔だった。
きっとこれは普段では発揮されないパーティメンバー達へのデレなのだろう。まったくこの中二病はわかりにくい。ツンみんとデレみんの割合が7:3くらいならちょうどいいと思うのだが。
パーティを自慢げに語るデレみんがドアを開けると、
「コラっ!めぐみん、こんな遅くに帰ってくるとはどういうことだ?いつも遊びに出かけるのは夕方までと言っているだろう!」
まくし立てるような説教が俺たちに向かって飛んできた。玄関で頬を膨らませているのは金髪碧眼の女性。歳は17、18くらいだろう。
何時間かここで座って待っていて足が痺れたのか、少し身体がプルプルと震えていた。しかし少し嬉しそうなのは気のせいか。
めぐみんの後ろで立っている俺を見ると、途端に顔をしめ、めぐみんとコソコソ話し始める。
「めぐみんのお客さんか?」
「ええ、今日はこの人……ディーノというのですが、一緒に初心者殺しを討伐しに行ったので、お礼も兼ねて泊めることにしたのです」
「急に泊めるとなると、全員の許可がいるな……いや、私は別に大丈夫なのだが…」
「アクアには前に買っておいた高い酒で手を打ちます。カズマは最近チョロマなので何とかなりますよ」
「そ、そうか……なら文句はない」
話が終わったのか、金髪の女性は俺に向かって微笑む。
「ディーノと言ったな。私の名はダクネス。クルセイダーを生業としている。この度はめぐみんが世話になったな。その……何か迷惑をかけたりとかは?」
めぐみんをチラ見しながら、小声で聞いてくるダクネスに俺は首を振る。
「いや、別に。喧嘩っ早いこと以外はまあ許容範囲内だ」
「そ、そうか。爆裂魔法は撃っていたか?」
「撃ってたな」
「あれで迷惑とかは……」
「とくにないけど」
俺が質問に返せば、ダクネスはホッとした安堵の表情を浮かべる。
魔法による爆風は受けたが、どこかの破壊魔の悪魔や魔王に比べたらまったく大したことは無い。むしろ帰りでジャイアントトードを仕留めてくれたのでありがたいとまで思っている。無駄な体力を使わずに済んだのだから、本当にありがたい。
「ではダクネス。ディーノの案内をよろしくお願いします」
俺とダクネスが会話している間に、めぐみんは素早く靴を脱ぎ、そう言い残して廊下を走っていった。どうしたのだろうか。
「自ら招いた客を放っておくとは……すまないな。あれでも悪い奴ではないので是非仲良くしてやってくれ」
「うん、まあうん……」
俺はめぐみんの友達ではないと思うのだが、ダクネスの母親のような表情を見て思わず頷いてしまった。
「あれ?カズマ、アクアはどうした?」
「なんか上でめぐみんとなんかやってる。待ってるのも冷めちまうし、食べちゃおうぜ」
リビングらしき部屋に行くと、一人の青年が食事を並べていた。ハンバーグにパスタ、サラダやフルーツの盛り合わせまであり、とても美味しそうだ。
ふと、青年が涎を垂らしそうになっている俺の存在に気づき、目がバチリと合う。
数秒間の沈黙______
「うおおおおおおお!」
「おわっ!」
突然、青年が物凄い形相でこちらに突進してきた。思わず避ければ、ギロリと敵意の篭った目で睨め付けられる。何か気に触ることをしただろうか。
「ダクネス!何故このイケメンを屋敷に入れた!この屋敷に住むにあたっての掟を忘れたのか!?第六十三条『イケメンを連れ込むべからず』!お前は真面目なやつだと思っていたのに!こいつはなんだ貴族の兄ちゃんか!?出てけえ!貴族様はお呼びじゃねえんだ!」
俺に突進してきたカズマと呼ばれていた青年は、俺と目線をそらすことなく、一気にまくし立てて威嚇する。なにやら貴族だなんだと勘違いされているようだが、そんな気品やらなんやらは俺にない。
「誰がいつそんなルールを作った!前の六十二条はどんな内容なんだ!?…そもそもディーノは私の客人では……」
この街の住人はとにかく喧嘩が大好きらしい。何か気に食わぬことがあれば喧嘩。肩がぶつかれば喧嘩。目が合えば喧嘩。……さすがにそこまで酷くはないと思いたいが、この街に来てから喧嘩している冒険者ばかり見ている気がする。
「おいコラそこのやつ座れ」
「ディーノな」
「……ディーノ、ここに座れ」
言い直してくれたカズマは、彼の隣の席をビシッと指す。案外素直なやつなのかもしれない。
よく見たらこいつ少し顔が赤い。間違いなく酔っている。見てくれは未成年だけれど、毒耐性を持っていたりするのか……いや、しないな。しかし、酔っているやつのいなし方はダストで完全にマスターしている。
ドンと来い、と意気込む俺を正面に据えて、カズマは俺の両頬を掴んだ。
「はなひぇ」
「……別にさ、異世界転生したからってハーレムになるって思ってないし?」
「…?じゃなふて、はなへ」
「いいんだよ、今に見てろゆんゆん辺りが『カズマさんの子供が欲しいっ!』とか言ってきてモテ期に入るから」
こいつ、相当酔っていた。ゆんゆんと知り合いなのかとかそういう質問はとにかく、話に脈絡がなさ過ぎる。
そして俺の頬から手を離してくれない。
「俺はさー、顔とかチートとかで自分が最強だと勘違いしてる奴が大嫌いなんだよ……最近だとな、レベル三十差の奴を公衆の面前で負かしてやった」
「ほー……」
思わず賞賛の声が漏れる。レベル三十差とはすごい……のだろう。こんなひょろひょろでゴブリンにも負けそうなこいつは実は凄い奴だったりするのか。
俺が感心していると、ダクネスがボソリと呟く。
「ディーノ、騙されるな。こいつはただ単にスティールで剣を奪い取っただけだ。あれを勝ちとは言い難い」
「なんだよ!」
感心して損した!
思わず叫ぶと、カズマが「うるせえぞ」と睨みつけてくる。この酔っぱらい、かなりめんどくさい。
ドン!と大きな音を立てて、かずまは酒瓶をテーブルの上に乗せた。そして自分の目の前に二つのコップを置き、バンバンと机を叩いた。おそらく隣に座りやがれということなのだろう。
「…………」
「…………」
助けを求めるように、ダクネスへと視線を移したがそっと逸らされた。
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「そんでさ、頭をこうやってサッカーみたいに蹴りあってさ、敵が目を回した隙にアクアが浄化したんだよ!やー、あいつは見掛け倒しのかなりのポンコツだったなー」
「ふーん……」
やっと俺の顔から手を放してくれたカズマが上機嫌で酒の入っているコップに話しかけている。
俺としてはかなり眠たいのだが、カズマが逃がさないとばかりに俺の肩に手を回し、腕に力を込めてくる。
「すまないな……最近褒めてくれる奴がいないとかで、ディーノが話を聞いてくれるとわかって上機嫌なのだ……これでも、このパーティーの司令塔でリーダーだ。ストレス発散のために許してやってくれ」
ダクネスが苦笑しながら俺のコップに酒を注ぐ。別に酒のためじゃないから。俺は初心者で仕方なく先輩の冒険話を聞いてるだけだから。
だが、眠たいものは眠たい。ここはポカポカと暖かいためか、より眠気が強くなる。
「うー……眠い……寝たい……明日は絶対ずっと寝てやるからな……」
「本当にすまない……!」
俺が呪詛をブツブツと吐いていると、上からドスドスと勢いよく階段を下る音が聞こえてきた。音からして二人分だ。
「ふはははは!ホラホラ、そんなに欲しいのなら力で奪い取ってみるがいいですよ!」
一人はもちろんめぐみん。片手に酒瓶を持って勢いよく走ってくる。
そして、もうひとつの足音は___
「ねえめぐみん、なんでそんなに意地悪するの!?さっきから追いかけっこばっかりじゃない!仲良く飲みましょうよー!」
カズマの話に出てきていたアークプリーストのアクアとか何とかか……?
俺は彼女を何となく見、
「ぶふっ!!」
口に含んでいたピンクネロイドを、ダクネスに向かって思い切り吹き出した___
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「いや、ごめん。マジでごめん」
「構わない……むしろご褒美だ……っ!」
何かダクネスが言っていたが俺は気にせず、彼女の顔を綺麗な布巾で吹く。
そして、カズマと酒瓶を奪い合っている青髪の女性をちらりと見る。……名前はアクアと言うらしい。この時点で嫌な予感がしただろうに。
本題だが、このプリーストかなりの聖なる魔力、いってみれば神気を感じる。そこらの上位天使の比ではない、それこそ女神クラスの神気だ。
「ちょっと、離しなさいよヒキニート!女神である私にこのお高いお酒を譲るのが道理ってもんでしょ?」
…………本当に信じたくないが、彼女は女神らしい。
「誰が女神だって!?駄女神の間違いだろ!?Si〇jiで「駄女神」って打ってみろ!?「アクア」って変換で出てくるぞ!」
「駄女神!駄女神って言った!誰よ!そんな罰当たりな変換入れた人!女神なのに!私本当に女神なのに!」
もう自分で女神って言っちゃってるし。
だとしたら何をやっているのかが疑問として上がってくる。さすがに世界を調停人である神がこんなところで駆け出しパーティに入っている筈がない。アクシズ教徒とか言ってたし。
「ねえ、ディーノ!カズマが駄女神って言ってくるのよ、酷いと思わない?私れっきとした女神なのに!ねえ!?ダクネス、めぐみん!?」
「「「へー、そうなんだ。すごいねー」」」
「なんでよー!」
とりあえず知らないふりをすることにした。
別にほかの世界の女神が何をしていようと、俺には関係ない。それがたとえエリス教やアクシズ教の御神体であったとしても。
そうだ。俺はただめぐみんと初心者殺しを倒しただけの関係だ。ウン、俺は悪くない。
いっそ開き直って、どんどん飲んでしまおう。
「なー、このピンクネロイド開けていいか?」
「ディーノ……お前まだ飲むのか……」
「うん、これおいしい。今まで飲んできた中で一番うまいな」
「そうか……それは良かったな……」
こだわりのあるギィやリムルには悪いが、俺には
「あー……最高……俺もう寝る」
これが幸せというヤツか…………。
俺は幸福感に浸りながら、腕を枕にしてソファに寝そべる。
「会って数時間でこんなことは言いたくないが、お前本当に自由人だな……」
何とでも言うがいい。
俺はダクネスの呆れた視線と声を受けながら、浮遊感に身を任せて目を閉じた。