金なら2枚、銀でも2枚   作:凍り灯

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本日二度目の投稿です。
昼ごろに投稿したものをまだ見ていない方はお気をつけて。





そいつの名はキョロちゃん

 

 

 

「~~~~~!!~~~~!!」

「~~~~!」

「~~~!!~~~~~~~~~~~!」

「~~!~~!」

「~~~~~~~!~~!!」

 

私は今、奇妙な赤いお面を被った小人(ガジャブ―)に群がられている。

敵対的なものではない。友好的なものだ。多分

「キミって変なフェロモンでも出てるのかニャ?」

 

大袈裟な動きをしてくるから威嚇(いかく)なのかそうじゃないのか、違いが分からん。

 

だがちょうど良かった…さっき爆発する鱗を落とす竜(バゼルギウス)との戦いで耳がいかれたからな!またかよ!全てが遠く聞こえる…静かなものだ。

「よく爆破耐性がある竜とああまで大立ち回りできたものだニャ…」

 

そして始まるこのお面小人との奇妙な生活。

時に背中に乗り込まれ、時にデカいカエルを追い返し、時に嵐を(まと)う明らかに格が違う龍をやり過ごし。

困ったことにこいつら、私が逃げたくても勝手に突っ走るから戦わざるを得ない。そんなスタンスだから利用されてるんだろうな。まぁ私はキョロちゃんだからな、付き合ってやるさ。

 

それにしてもこのお面小人は器用だ。お面もそうだが、壺爆弾なんていう造形の凝った爆弾なども作っている。持ち帰ればお土産として売れそうだ。売れる相手いなかった。

ただ、くれるのはありがたいのだが、嘴の中に木の実と一緒に入れようとするのはやめてくれ。私が死ぬ。唯でさえチョコボール(笑)状態なのだからこれ以上、凶器の缶詰状態を加速させないで欲しい。

ん~色的にそれはチョコボール(濃い苺味)かな。パッケージにキョロちゃんが印刷されてない、大人に人気だったやつね。パッケージにいないんだから遠慮させてくれ。

「類は友を呼ぶってことな気がしてきたニャ」

 

 

そういったやり取りもだんだん慣れてきた頃。かなり大きめの地震があった。

 

 

 

そこら中に生えている結晶が崩れるほどなのだから相当だろう。お面小人も大騒ぎだった。

こう言う時は慌てず騒がず走らずに、机の下に避難するんだぞ。そう言って私が避難した横穴は崩れた。解せぬ。

で、しばらくすると久々に人間を見ることになる。

「ご主人様だニャ!やっと再会できたニャ!」

 

もしやさっきの地震って人間が起こしたわけじゃないよな?流石にやらないか。でもやりそうだから頭の片隅には入れておこう。人間は、滅多に使わないが核爆弾なるものを隠し持っているからな。主に人間同士で使うから大丈夫だと思うが…そもそも使われたら逃れようがないな。諦めよう。

被爆の”記憶”は悲惨だったな…半分滅べばいいとは思うがそれが原因だとこちらも巻き添えをくらうから粛々と速やかに滅んで欲しい。無理か。

 

人間たちの拠点をチラリと覗いてみたが、あれはパチクリ(レイギエナ)を仕留めたハンターと…私も会ったことあるメンツのようだ。眼鏡の気難しそうなおっちゃんや猫顔のハンターがいるからな、きっとそうだろう。

 

と、考えているとお面小人がドタドタとやってきて騒ぎ出す。ええい見つかるぞ、声量を落としておくれ。

 

騒いでも何言ってるか分からんぞこっちは…いやわかったわかった、付いていくから。壺爆弾を口の中に放り込むなんていう脅しはやめてくれ、その術はワタシに効く。

 

彼らの縄張り付近へ戻った私に対して、身振り手振りとかで何が言いたかったか表現するお面小人たち。

 

うん。

 

翼があって?角が二本?竜かな?似た奴は荒れ地で見たかな?…黒い、と。そして………その、投げナイフを体中に張り付けてるのは何だ?逆ディオ様状態じゃない。ハリネズミ?全身トゲトゲ?

…そんなにトゲだらけってこと?あってる?おお、あってるのか。

 

ならばトゲトゲトゲトゲ竜と仮称しようか!

「ネルギガンテだニャ」

 

そいつが凶悪の極みってことか?…それであってるらしい。

いなくなるまで引き(こも)ろうって話か。大賛成だな。ハンターが同時期にきたことを考えると何か関係あったりするのかね。まぁ、きっとそのトゲトゲトゲトゲ竜も人間にぶっ殺されるだろう。可哀そうに。

 

 

 

―――なんて呑気していたのは「フラグ」というやつだったようだ。

「そんな気がしてたニャ…運命からは逃れられないのニャ…」

 

 

口は(わざわい)の元(おかしい、喋ってはいないぞ)とはよく言ったもので、自分の運のなさを甘く見ていたらしい。いや、それを言うならばこの大自然の厳しさを侮っていた私が悪いのだろう。来るな!大自然!!

 

 

―――つまり今、追いかけられています。トゲトゲトゲトゲ竜に。

 

 

畜生!本当に凶悪だな!?結構器用に障害物を使って逃げてるつもりだが全部ぶち壊してくるぞっ!

死体の山から出てきた龍の王(ヴァルハザク)とは違う種類の圧迫感!例えるならば暴君…!

見ろよこの愛らしいキョロちゃんボディ!絶対食べれる部分少ないって!そのモチベーションはどこからきてやがる!引かぬ媚びぬ省みぬか!?聖帝なのか!?愛ゆえに哀しみを背負っているのか!?違うだろうなぁ!じゃぁテメーはただの暴走機関車だなぁ!?

 

お面小人が逃げだして行くのが見える。結晶で出来た壁の隙間を縫って反対側に逃れているようだ…ずるくね!?

その壁際まで辿り着いたものの、どう見ても私が取り抜けられる隙間は…ない!

「後ろ!後ろ来てるニャ!」

 

後方確認。

 

トゲトゲトゲトゲ竜が迫る。やるしかないのか…まずは逃げる隙を作らなくては…!

 

(やっこ)さんの耐久力は異常。火炎液はどうだ?最大火力なら恐らく効きはする…と思う。自信がない。竜は止まらない。来いよ、正面から、顔面にぶつけてやるッ!!竜は止まらない。火炎液を分泌、混ぜ合わせる木の実を舌で転がして選び出す。竜が私を目の前に踏み込む………今!

 

火炎液が吐き出され、口外の空気に触れ瞬時に発火。同時に、火炎液に混ぜ込んでいた木の実も燃え上がり、その効果を発揮する。

 

つまりトゲトゲトゲトゲ竜と私の顔の前で大爆発である。私は分かっていたので瞬間身を引いて顔を庇う…のだが。

 

火炎液とは違う、押し付けるような強烈な衝撃。次いで浮遊感。混乱。何だ!?

薄く目を開けると、無数のトゲ。こいつ…閃光と爆音にやられてようがお構いなしで突っ込んできやがったッ!!

運良く、巨大な角の間…つまりやつが顔面から私の身体に突っ込んだおかげで全身を串刺しにされるようなことは避けられたが…そのパワーは圧巻!挟み込まれたまま押し込まれるッ…!!

 

さながら刺股(さすまた)に捉えられた犯罪者。詰みでは?

「/(^o^)\ナンテコッタイダニャ」

 

ちょっと待った。まさか後ろの壁で勢いそのままに押しつぶす気か!?ちょ、待っグえぇぇぇぇぇええぇ!?

 

 

 

―――幸運なのは壁が脆かったために思った以上に痛手ではなかったこと。そしてもう一つ。

 

 

 

壁の向こうに、ハンターがいたことだ。

 

 

 

盾と剣。間違いない、パチクリ(※レイギエナ)を仕留めたハンター。

「ついてるのかついてないのかわからないニャ!」

 

 

それに気が付いたトゲトゲトゲ竜は顔を仰け反らせて私を放り投げる。痛ッ!

それによって角刺又から逃れ…だが勢いを殺せずにクンチュウのごとく転がる。だいぶ痛い!!

わたわたと翼を動かしなんとか止まった頃には、視界の端で、トゲトゲトゲトゲ竜とハンターが対峙していた………は、これって、チャンスじゃないか?

 

あのハンターが勝つかはわからない。だが、それが今出来なくても人間は必ずその仇を取るだろう。つまりあのトゲトゲトゲ竜は終わりだ。詰みだ。

 

私が何かリスクを負う必要などない。あんな恐ろしいやつと戦うなんて馬鹿のやることだ…

 

尻尾を撒いて逃げ出そう…としたその時!ハンターの、人間の視線が私に向けられる。

 

 

瞬間!ワタシはキョロちゃんとの青春を思い出していた!ひた媚び続ける日々!果たしてこのまま逃げていいのか!?

「いや逃げていいと思うニャ」

 

ダメだ…やはりこのワタシがここで…逃げるわけにはいかない……!!「誇り」が消える…っ!ここでこいつから退いたら!!

ワタシは「キョロちゃん」だ。ワタシが目指すものは『人間に媚び続ける』ことだ。ここで逃げたら…その『誇り』が失われる。

 

次はないッ……!

 

…これは「試練」だ。

過去に打ち勝てという「試練」とワタシは受けとった。ワタシの成長とは……未熟な過去に打ち勝つことだ!つまり!命を賭して!ここで点数(好感度)を稼ぐ!ただでさえ危険生物指定されてるかもしれんからな!ほんと後ないぞ!?

「いろいろともう遅いと思うのはボクだけかニャ…?」

 

投げやりなのか無駄に上がったテンションを沈めつつ。ハンターの横へとゆっくりと並び立つ。この横一列の配置がチームの証だって”記憶”のいろんなテレビゲーム媒体が言っていた。どうだ仲間っぽいだろう!?

 

ハンターはそんな私も、目の前のトゲトゲ竜のことも警戒しているが、トゲトゲ竜はそんなこと気にしていない。開戦の咆哮を上げ、近い位置にいたハンターに襲い掛かる。

腕を振り下ろし、地面が弾けた。その手から飛び出すトゲは、私の方へ散弾のように飛んでくる。

飛び出すトゲに反応できず、何発か身体に貰う…!

勢いに仰け反り、しかしなんとかその場で踏ん張った!距離があったからそのトゲが突き刺さることはなかったとは言え、厄介なッ!あの様子。恐らくジャブ程度の威力しか出していない…つまりはただの牽制…!牽制でこの威力っ!!

 

 

トゲトゲ竜は、ハンターと私を同時に相手取る気満々というわけか。

 

 

初撃を躱したハンターが前に出て、瞬発力がこの場で一番ない私が斜め後ろ、トゲトゲ竜の視界にぎりぎり入る場所へと位置取る。

なし崩し的に、前衛と後衛での二対一の構図が生み出されたわけだ。

 

トゲトゲ竜とハンターが超至近距離で交戦開始。

トゲが散り、砕かれ、生え代わり、より強靭に!ハンターは躱し、盾で防ぎ、その取捨選択が凄まじく上手い…!

ハンターの身体に攻撃が当たらないのだ。当たりそうなものは、あの頼りなさそうな盾によって防がれ、いなされる。

パワーもスピードも圧倒的にトゲトゲ竜の方が上のはずなのに当たらず、さらに隙を突いて剣で的確に傷を刻んでいた。トゲトゲ竜も怒り!叫び!だが届かないッ!

それは星を掴もうと足掻くがごとく。

 

大した使い手だ…トゲトゲ竜の攻撃を紙一重でかわしながらワタシへの警戒も全く怠らない。

 

私はトゲトゲ竜の視線上に事あるごとに入り込み、意識せざるを得ない状況を作り出して攪乱(かくらん)しているが、果たしてそれも必要だったのかどうか…そもそも私が狙われたら三秒…いや十秒はもつか。それくらいしか本当にもたないだろう。邪魔もしたくないから私はここでいい。

 

しかし媚びると誓った以上、目に見える戦果を出さねばなるまい。

今は至近距離で張り付くように戦い続けているハンターも、人間である以上スタミナに限界があるはずだ。いや、予想の10倍くらい長く動き続けてて戦々恐々なのだが。またドーピングなのか!?

ともかくスタミナ切れのタイミングは必ず距離を取るはず。その時が私の出番。

 

 

こんな風に。

 

 

私はここぞというタイミングで後退するハンターに合わせて口から火炎液を染み込ませた木の実…チョコボール()をいくつも吐き出す!

ハンターを追撃するトゲトゲ竜は止まらない。それはもう分かった…つまりあの竜は自分の目の前に転がってきた木の実なんぞ気にしやしない、大丈夫だと、そう思っている!

 

────チョコボール(※木の実)が足元へと到達した時、それらは全て爆発した。どんぴしゃ!流石のトゲ竜もその威力に文字通り足元をすくわれて顔面から硬い地面へと転んで突っ込んだ。あれは痛い。

 

ハンターがチラリとこちらへ振り向く。

 

私はこのチャンスを逃さずクエーと鳴いてアピールする。

 

ハンターは思わずと言った風にニヤリと笑ってトゲ竜へと向き直った。

 

………これは決まった…間違いなく!キョロちゃんはこのワタシだっ!!依然!変わりなく!

「時々出て来るそのテンションは何なんだニャ」

 

正直まだあのトゲ竜と対峙するのは怖すぎるが、ここを乗り越えれば確実に好印象を人間側に刷り込むことが出来るっ!!

このまま比較的安全な位置から嫌がらせを行っていればいいのだからハンターに比べればまだマシだ。

 

 

―――その後はハンターも私も危うい場面がいくつかあったものの、ハンターの対応力の高さに助けられつつ、ついに長い戦いにも終わりが見え始めていた。

 

 

満身創痍のトゲ竜。私も少なくない傷を負い、一番無事に見えるのはやはりハンター、人間だった。既に私もチョコボールは売り切れ在庫切れ。臓器より絞り出した火炎液でなんとか立ち回っている始末。それでも一応はトゲ竜の気を引ける場面があるものの、最早消耗した私は大した脅威と見られてないのか多くを無視されているのが現状だ。いないよりはまだマシ程度だろう。

 

 

だが、私が攻撃を躱すために空へ滞空しており、尚且つトゲ竜が再びトゲを全身に纏った時、それは起こった。

 

 

トゲ竜が今日一番の咆哮をあげる!直後、後方へ跳躍し滞空、その満身創痍と思えない素早さに、勝負を決めに来たのがわかったッ!ハンターもそれを当然わかっていただろう。しかしトゲ竜は火事場の馬鹿力なのか、全盛の、当初の早さを取り戻している!

 

消耗によって動きが鈍っていたはずのトゲ竜のその動きは、私とハンターが思ってもいなかったギャップ…つまり緩急を、当人が意図せず生み出すことになる。

 

 

―――だから分かっていても、矛先を向けられたハンターは一歩、いや一瞬遅れた。

 

 

トゲの塊となった竜は自身の身体を質量弾とし、高速で突っ込む。ハンターはそれでもなんとか後ろに退くことで紙一重で躱すことはできた。それでも後ろに退くことしか、できなかった。

トゲ竜のそれは次の攻撃のための予備動作を終えている!やってくるのはトゲを飛ばす攻撃!!…だがそれは、わかっていてもどうしようもない状況。

 

地面への衝突の際に生まれたあまりに大きな()()が、紙一重で攻撃を回避したことで崩れていたハンターの体幹を揺さぶり、さらに大きく崩す!それは一瞬の隙、あまりに大きな、一瞬!!

 

トゲが来る。

ハンターはその一瞬の後、動けるようにはなったが攻撃範囲から逃れられない。回避先を無くすように横に広くトゲを飛ばす気なのは、上から見ていた私にはわかったからだ―――故に、私は上空から火炎液を落とす。火の玉が、炎の軌跡を残しながら落ちていく。

 

ハンターの盾は、至近距離からのトゲに対抗できない。特にあの黒いトゲに生え変わってからは明白。全てが黒いトゲの、渾身の面攻撃ならば今度こそ躱しきれないだろう。だから火炎液の爆風による無力化…は無理でも、方向を逸らすことは出来るかもしれない。それに賭けた。狙いは、トゲ竜とハンターとの丁度真ん中ッ!!

 

その意図を、トゲ竜は察したのだろうか。やつはトゲを打ち出す構えになった刹那、こちらをチラリと見上げた。

 

 

―――次はお前だ。

 

 

その目は、そう語っていた。

火炎液程度ではこの棘を防げないと言う絶対の自信!!そしてその自信の通り、あれでは防げないと、私はその目を見て悟ってしまった………―――

 

 

―――次は、私の番か。

 

 

トゲは撃ちだされ、火の玉が爆ぜる。

どうしようもない、絶望に近い諦めが私を包み込む前に、ハンターが飛んだ。

 

 

 

()()()!?

「ニャ!?」

 

 

―――この時、いくつかの偶然があった。

 

トゲ竜が私の方に視線を向けてしまったこと。

 

ハンターの装備が、炎に対して高い耐性があるアンジャナフ装備であったこと。

 

ハンターが、体幹を崩したときに偶然上を向き、私が火炎液を落とした瞬間が視界に入っていたこと。

 

私の知る由はないが、ハンターの持つ武器―――片手剣には()()()()()()()()()()()()()があり、それをしっかりと習得していたこと。

 

そしてハンターは、私の想像を超えてぶっ飛んでいたということだ。

 

 

トゲをやり過ごすために運任せに伏せるのではなくっ!!()()!火炎液に身を晒してその爆風を利用して大きく空へと飛び上がったッ!!!!

 

えぇ…まじか人間…

「あの新入りやっぱり頭おかしいニャ!」

 

勿論無傷とはいかない。大きく跳躍したとはいえ、至近距離での爆風。しかし辛うじて、容易に鎧をも貫く黒いトゲの攻撃範囲から逃れた!

 

何という星のもとに生まれたのか。奇跡的とも言っていい出来事。いや、そんな生易しい表現は良くない。この厳しい世界の中で奇跡を起こすには、それを手繰り寄せられるための"何か"なければ起きない。

 

この青い剣のハンターは持っていた!

冷静さと、逆転の発想と!それを実行するための度胸と大胆さをッ!!

 

偶然であり必然。

上空へと飛び上がったハンターを、私に視線を向けてしまったトゲ竜は見失う。

視線を前へと戻した時、その思考は停滞したはずだ。

自分の目の前にいるのは、無残に串刺しにされた人間ではなかったのか?、と。

 

 

気が付く暇を与えられるはずもなく、普段以上の高さから落下してきた人間がトゲ竜の頭に強烈な一撃をブチ当てる!

炎に焼かれながらもここでも人間は冷静だった。無理に剣で突き刺すことは無く、盾による打撃で押し込み、硬い地面を利用して盾と地面の挟み撃ち、激しく脳を揺らしたのだ!!

巨大な角がけたたましい音と共にへし折れ、脳を揺らされたトゲ竜はそれにすら気が付かずに身体を地面へ放り投げる。

 

顔の前へと降り立ったハンターは、間髪入れずに動けないトゲ竜の目玉から渾身の一撃で剣を差し入れ、絶命させた。

血が噴き出し、燃えていた装備の火を消しながらハンターを赤く染める。

鎮火によりあがった煙が風に乗り、それは上空へと尾を引いていた。

 

その一連の動作、立ち姿は、私にはあまりに美しく、そしてあまりに残酷に見えている。

例えるならば、まるで流れ星。

落ちる様は美しいが、落ちた先にいれば逃れようのない運命が待っている。

 

改めて思う。人間の、なんと恐ろしい事か。私の選択肢は間違っていなかった…彼らこそが天災なのだ。

 

 

「お前は、一体…」

 

 

そのハンターは地へと降り立った私の方へと、血みどろのまま振り返った。

 

 

ひっ!?

 

 

恐る恐る、近づいてくるハンター。きっとそこに悪意はなく、純粋な疑問があったのだろう。

だが今、畏怖の念をこじらせていた私に、その姿は死神にしか見えてなかった。

 

要はめちゃくちゃ怖かった。

 

 

 

 

 

ワ タ シ の そ ば に 近 寄 る な あ あ───────── ッ !!!

「あ、置いてかれたニャ…まぁちょうどいいからご主人様の元に戻るニャ」

 

 

 

 

ただ、なけなしの意地でクエーと三回鳴いてから逃げた。げにおそろしき人間よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"調査記録006"

 

「流れ星」より渡りの凍て地にてその存在を確認したと報告あり。その特徴的な鳴き声と頭部の赤みがかった体色と、木の実を吐き飛ばす行動とオドガロンによってつけられた傷跡と、その後の三つ巴で受けたと思われる数々の傷跡と、奇面族から譲り受けたらしい、側頭部の傷跡を隠す白い花を模した(恐らく?)飾り(と呼んでいいのだろうか?)から「耳なし」と断定。

 

温暖な地域を好むはずがまさか正反対の極寒のこの地にいるとは誰しも考えもしていなかった。隊員の「古参ハンター」の言葉はもはや予知のレベルのようだ。"顔"(アイルーフェイク)と馴染んだせいで生態に変化が起きたのかもしれない。彼も調査が必要か…

 

第六回目の長期観察調査を開始。

 

まず「耳なし」が活動に支障をきたしていない理由は満場一致でトウガラシを食しているからだと推測された。今までの調査から考えるに特殊な体質の線は非常に薄いのと、トウガラシを絶えず嘴の中に蓄えている姿が容易に想像できたからだ。だがこれも確証などあるはずもない、要調査。

 

結果として我々の推測は当たっていた。正しくトウガラシの群生地を把握しているらしい。

寝床を探したところ、地熱により気温の高い洞窟内部に発見。何故こうまで自身に厳しい地に足を運んだのかは相変わらず不明である。

 

また隊員の「寡黙」が、ギンセンザルと共に天然の温泉に浸かっているのを確認したらしい。しばらくその様子を観察したが、徐々にその頻度が増えているのを確認。

 

このことから、遠からずしてまた別の温暖な土地に移る可能性が高いと研究者二名は言う。どこか安住の地を探している節があるため、ここまで来ざるを得なくなった状況を多少哀れに思う。

長い間観察してきた我々としても、そうなってくれることを願っている。

 

 

 

追記1:「耳なし」がイヴェルカーナと接触。逃走する前に物言わぬ氷像と化した。

 

調査記録の内容は私と「古参ハンター」、「三枚目」の三名の証言をまとめる。

 

『伏せろ!』

『なんだ!?』

(風が強く吹く音)

「さっむいニャ!?」

『イヴェルカーナだ!ついてねぇ!おい!殿は俺がやる!さっさと逃げるぞっ!』

(風の音、慌ただしい足音)

(「三枚目」の荒い呼吸音)

「相変わらずジェイは体力ないニャ!」

『「耳なし」はどうなってる?見えるか?』

『ちょっと待て…ありゃぁ駄目だな、やられちまってる…あのサイズですら凍らすのか?イヴェルカーナ…』

『確認しよう。戻るぞ』

『ハァ、ハァ…はぁ!?ハァ、今、まだ危険だぞ!?ハァ…』

『俺もそう思うぜ。お前さん、もう少し待った方がいい』

『イヴェルカーナの調査も必要だ。出来れば凍った直後の状態を確認したい』

(遠ざかる足音)

『ハァ、おい!ハァ、ゲホっ、ったく、行くぜ』

『仕方ねぇ…』

「ボクも彼女が心配だニャ…」

 

結果として、「耳なし」は無事であった。

 

イヴェルカーナ通過後に、万全ではないとはいえ氷漬けの状態より復帰、離脱した。

所謂死んだ振りだったようだ。

 

我々がイヴェルカーナの起こす猛吹雪の余波を受けた後、すぐ引き返したが「耳なし」の離脱の瞬間は目撃できなかったので確証は得られず。

ただ凍結して剥がれ落ちた鱗のみ残してその姿を消したので、生存しているのだけは分かっている。かの怪鳥は運がないのかあるのか、意見が別れるところだ。

 

こんなことがあったのだ、やはり再び新たな移住地を探す日も近いのかもしれない。

 

余談だが同日、「流れ星」とイヴェルカーナが我々より先に接触している。彼のおかげで適切に対処できたので、後日礼をしなくてはなるまい。

 

その「流れ星」よりイヴェルカーナが新大陸へ渡り、生態系に多大な影響を与える可能性を示唆されている。

我々も急ぎこの地を後にし、その対策に奔走することになるだろう。一先ず調査を打ち切り新大陸へ帰還する。

「ボクが見ておくニャ!」

 

 

追記2:調査を再開した直後、大量のキブクレペンギンに群がられている姿を「寡黙」が発見。理由は不明。

ケルビの時とは違い、キブクレペンギン側からのアプローチが(うかが)える。

 

特異個体に見られる赤みがかった体色(顔のみ)と嘴があること、それと目つきあたりが確かに似ていると言えなくもないか。(あまり自信はない)「寡黙」は似ていると主張。似ていることにする。

 

「耳なし」は困惑しているのか(まるで助けを求めるように)首を周囲へ回していたが、諦めて無関心を装うことにしたらしい。

 

あの数のキブクレペンギンが集っていた理由は恐らくイヴェルカーナだろう。

セリエナから撤退を余儀なくされたために大層機嫌が悪く、そのことを察してか小型の生物は怯えている。

その中で顔が似ている(やはり似ていないのでは?)温厚で自分たちより強力なモンスターが現れたため、守ってもらおうとしていると思われる。

 

ケルビと言い、ガジャブ―と言い、どうにも「耳なし」はこういった状況に縁があるようだ。

 

『イャンクックを追う暇があるなら「流れ星」をサポートしろ』とありがたい言葉を上からいただいたために、一先ずイヴェルカーナを討つ手助けをすることに集中する。その間にかの怪鳥がこの地を去らないことを願う。

「こいつ温泉入ったり囲まれたりと結構呑気してるニャ…」

 

 

追記3:見送りは許されたらしい。

イヴェルカーナも討伐され、ようやく一段落した我々を待っていたかのように「耳なし」は調査を再開と同時にこの地を去った。

 

残念ではあるが、それでも一目見ることが出来たのは運が良かったと言えよう。

その飛び立つ方角から、再び新大陸に戻ることないだろうと研究者二名は言う。私も含め調査隊員は皆、そう予感している。

 

『行ってしまったか………旅する怪鳥とは乙なものじゃなぁ』

『「耳なし」に関してだけは、僕もそう思うよ。癪だけどね』

『寂しくなるわね…』

『あんな面白いやつがいるなんてなぁ…しかもイャンクック…!是非ともどこかでまたひと騒ぎ起こして欲しいねぇ…!』

『俺は疲れた…歳かねぇ、長期の調査はそろそろ遠慮するべきだな。だがいい"景色"を見れたぜ』

「本当にいい"景色"だったニャ!」

『…』

『どうしたの?「語り部」、笑っちゃって』

『何でもない。調査を終了。帰還する』

「ラルスはあのイャンクックを追いたいのかニャ?」

 

20年近くこの新大陸にて活動をしてきた私ではあるが、かの怪鳥とまみえたこの調査は若い時の意欲を再び取り戻したかのような心地になることができ、有り体に言えば楽しかった。

「耳なし」を追うためにこの新大陸を離れるのもまた一興か。そう思えるほどに、「耳なし」は現地調査員としてもとても面白い存在だ。

 

私も彼女のように何事にも耳を貸さずに我を通すことが必要なのかもしれない。

この歳になって、それでも熱を入れてくれた「耳なし」を見習って。

 

以上を持って六回にも及ぶ長期観察調査を終了する。再び出会うことを願って。

ありがとう。

 

 

 

『ハンターになったばかりの時を思い出したよ。世界ってのはこうまで広いのかってな。昔みたいに"こいつ"とお前さんと、あの奇妙なモンスターを追うのもありかもな…何?全員行くって…?』

「また面白くなってきたニャ!新しい"景色"を見に行くニャ!!」

   ~古参ハンターより

 

 

 

 

 







■「耳なし」
命の恩人を化物呼ばわりする村人ムーブをかました一般怪鳥。自分を明確に弱者と理解しているので立ち回りが上手い。赤とかピンク繋がりなのか帝王みが増してきた。
ガジャブ―より餞別を受け取り、この地を後にする。

■お面小人
ガジャブーのこと。今回の共生相手。爆弾魔。

■爆発する鱗を落とす竜
バゼルギウスのこと。「耳なし」は謎のシンパシーを感じていた。

■デカいカエル
ドドガマルのこと。「耳なし」は割とシンパシーを感じていた。

■嵐を纏う明らかに格が違う龍
クシャルダオラのこと。「耳なし」はヴァルハザクの会った時と同じような気分になった。

■トゲトゲトゲトゲ竜
ネルギガンテのこと。「耳なし」が正面から対峙したら1分くらいで死ぬ。隣に(主観で)圧倒的理不尽の塊の「流れ星」がいたことと、キョロちゃんに対する熱い想いがあったから立ち向かえた。

■「流れ星」
イャンクックを追う調査隊を不審がっていたが、今回の件で彼自身も興味を覚えた。
「耳なし」にも顔が見えていたのは、ジャナフヘルムのβの見た目なのでバイザーを上げた仕様になっていたため。その火耐性により最後は救われた。
変わらずレイギエナの片手剣。この後ゼノジーヴァとの戦いでも同じ技で決める。最後に駆け付けた大団長がその様を目撃し、調査団を導くシンボルともかけて「青い(剣の流れ)星」となった。




















■”記憶”のちょっとした裏話
悲劇的な最期を遂げた誰かたちが混ざり合っている。
他国に爆弾により謀殺された者、有毒な爆風に侵された者、心を殺されひっそりと首を吊ったまだ幼い者。
ほとんどは忘れたいから忘れられ、或いはトラウマを、まるで動画で見たようなただの記録として誤魔化し、内に留まった。
”器”も脳みそが粗末なので”体験”として感じるのみでしかないのは救いだったろう。
それでも人を恐れている。だから安心が欲しい。人の手(強者)による安心が。
もしかしたら誰もいない美しい自然を望んだ誰かもいたかもしれない。世界を見て回りたかったと、アニメーションを見ながら夢見ていたかもしれない。
ただそれだけの”記憶”。

という裏設定があったが、雰囲気に合わないのでどっちでもいいぜ!


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