スーパーロボット大戦 無限戦争 設定集&外伝   作:ダス・ライヒ

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これで最終回です。


償いの戦士

「クソぉ、あの復活野郎…! 特攻なんかしやがって…!」

 

 キナが覚悟を決め、ライデンの申し出を受け入れた後、武蔵の特攻で大ダメージを受けたメンへは再生していた。かなりのダメージを負ったが、僅か数秒足らずで不老不死なマリよりも速く元の状態へ再生する。

 

「まぁいいや。特攻なんかした馬鹿は二度と出て来ねぇし。この世界の奴ら全員ぶち殺してから、別の世界へ行って愛してもらおうかな」

 

 そんなメンへは気にも留めず、特攻した武蔵を馬鹿にしつつ、この世界の人間を皆殺しにすると口にした。だが、それは叶うことは無い。何故なら、止める者が居るからだ。

 その存在を知らず、自分を止められる者は誰も居ないと思っているメンへは、まだ再生しきっていないマリをいたぶろうとビームを撃ち込む。これに当たれば、マリは肉片と化すはずだが、上がったのは土煙であった。

 

「あ?」

 

 これにメンへは首を傾げ、思わずマリを探す。金髪の女は目立つので、直ぐに見付かった。だが、誰かに抱きかかえられている。その何者こそ、メンへを止める存在であった。

 容姿はやや禍々しいが、メンへとは違って全身に正義に満ち溢れたオーラが見られ、不思議と安心感を覚える。

 また邪魔をする者が出て来たことに、メンへは苛立ちながら何者かと問う。

 

「またか。誰だよお前?」

 

「お姉ちゃん、ありがとね」

 

「まさか、キナちゃん…?」

 

 メンへの問いに何者かは答えず、腕の中に抱えているマリに礼を言う。正義の怪物にマリはその正体と悟った。この自分を抱えている怪物こそ、あのキナであると言うことを。

 キナはライデンより手渡された小物を握り、正義の怪物に変身したのだ。自分が犯してきた罪の数々に対する罪悪感と後悔、それに対する償おうとする覚悟。こんな自分でも助けて守ってくれた人々に対する感謝の気持ちと助けたいと言う思いで、彼女は正義の心に目覚め、戦える身体に変身した。

 

「キナちゃん、貴方なの…?」

 

「そうだよ。こんな私でも、守ってくれた人たちを助けるために生まれ変わった。だから安心して。あいつは私がどうにかするから…」

 

 マリに問われたキナは、償いと助けたいと言う思いで生まれ変わったと答えた。

 

「無視してんじゃねぇぞ! ゲテモノ野郎!!」

 

 一方で無視されたメンへは怒り、ビーム攻撃を仕掛けたが、来ることが分かっているキナはマリを抱えたままライデンの元へ瞬間移動する。彼女を地面に優しく下ろせば、ライデンにマリを守ってくれるように頼み、追撃を仕掛けようとするメンへに立ち向かう。

 

「お願いします」

 

「承知した」

 

 キナの頼みを受け入れたライデンは防御結界を張り、メンへの尋常じゃ無い攻撃を全て受け流す彼女の背中を見守る。地面に降ろされたマリはバスタードソードの剣先を再びライデンに向け、キナに何をしたのかと問い詰める。

 

「あんた、キナちゃんに何したのよ? 無理やりしたんじゃないでしょうね?」

 

「あの者が望んでしたことだ。お前と自分を気に掛けてくれた者たちを守りたい一心でな」

 

 マリが強制したのかと問われたライデンは、キナが望んだと正直に答えた。事実、キナは望んで正義の怪物に変身した。そして今、この世界と自分を助けてくれた者たちを守るために、世界を滅ぼす存在であるメンへと戦っている。

 

「止せ、帰って足手纏いだ」

 

「どうしてよ?」

 

「キナが償いの戦士となった時点で我らの勝ちだ。最後の仕上げは、宇宙に居るゲッター線が完遂する…!」

 

 キナに加勢しようとするマリであるが、ライデンはそれを止める。何故なら既に勝利のビジョンが見えているからだ。キナが正義の怪物、否、償いの戦士としてなった時点で勝利していたのだ。

 最後の仕上げは、武蔵もといゲッター線が宇宙で行うと天を指差しながら告げた。どうやら、ライデンは武蔵らゲッター軍団に最後の片をつけさせようとしているらしい。

 つまりキナではメンへを倒せないことだ。現にキナはメンへの攻撃を全て受け流し、カウンターを入れているが、大したダメージは与えていない。

 

「クソぉ! なんで攻撃が当たらない!? あいつの攻撃は効いていないのに!」

 

 大したダメージは与えられないが、精神的なダメージは与えられていた。自分の攻撃が当たらないことに苛立つメンへの反応を見たキナは、変身直後に言われたライデンの言葉を思い出す。

 

『成功だな。内から漲る力を感じているな? しかし、速さと守りは自己愛の怪物(メンへ)と同等であるが、力の方は及ばん。だが、勝つ見込みはある』

 

 償いの戦士として覚醒し、変身したキナであるが、はっきりと勝てないとライデンは告げた。これにキナは落胆しそうになるが、ライデンはそれを見越してか、勝てる見込みがあると告げる。それは、ゲッター線に頼る事であった。

 

『巴武蔵、その男は知っているな? あの者はゲッター線の僕。あの者が属する軍団であれば、自己愛の怪物など一捻りだ。しかし、それはこの星の死を意味する。自己愛の怪物は、宇宙で倒すほかない。今の君なら、それが可能だ』

 

 ライデンが言う勝つ見込みとは、先ほど述べた通り、メンへを宇宙へ飛ばし、そこに待ち受けている武蔵率いるゲッター軍団の分遣隊に排除させる物だ。

 問題は以下にしてメンへを宇宙へ飛ばすことだが、キナは飛ばし方を知っていた。武蔵が何度も自分に披露した「大雪山おろし」である。武蔵が柔道で生み出した技の一つであり、相手の力を利用して体勢を崩し、自分の身体に引き込んで回してその遠心力の利用で投げ飛ばす荒技だ。

 だが、幾らキナが強くなっても、ゲッター3に乗った武蔵でさえ宇宙に飛ばすのは無理だ。やるにはメンへを激昂させ、自分に突っ込ませる必要がある。それをライデンに告げれば、直ぐに答えは返ってきた。

 

『なれば煽るが良い。彼奴は強いが、精神は幼子に等しい。ゴットスレイヤーの正論に動じ、逆に激怒し、冷静さを失って感情的に襲い掛かった。犯した罪に後悔と罪悪感を覚える君の挑発なら、必ずや冷静さを失い、激高して殺しに掛かるだろう。その時がチャンスだ』

 

 ライデンはメンへの精神が幼い事を見抜いており、正論を言ってやれば逆ギレして突っ込んでくるとキナに告げた。どう煽ればよいかも、今のキナなら出来ると告げる。

 この言葉を思い出したキナは自分の攻撃が当たらないことに苛立つメンへに向け、怒らせるために自分の懺悔を始める。

 

「私は今まで罪を犯してきた。生きる為には仕方がないと思ってた。けれど、その度に後悔した…」

 

「あぁん? なに自分語りしてんだよ化け物が…!」

 

 突如となく自分の罪を懺悔したキナに、メンへはより苛立ちを覚える。相手が苛立った反応を見て、キナはさらに続ける。

 

「物を盗んだ、人を殴った、殺した。自分の生まれたばかりの子供を二人も殺した…! 自分が生きる為なら仕方がないって割り切ろうとしたけど、無理だった。なんであんなことしたんだろうと、後悔してる」

 

 だが、自分の非道と言うべき行為を後悔していると言えば、メンへの苛立ちは白けた所為で消え、懺悔するキナを笑いながら下品に罵倒する。

 

「アッハッハッ! 何を言うかと思えば、後悔だぁ? それにお前あの中古だったのかよ! 通りでクソ見てぇな人生送ってるわけだなッ! しかも自分が生んだ餓鬼を、産んで早々に殺すとか、テメェの方こそ人殺しじゃねぇか! だったら目の前で自殺しろよぉ! ほら、今すぐ責任取って自殺しろアパズレ!!」

 

 自分を棚に上げ、罵声してくるメンへにキナは反応しなかった、怒りは覚えた。次に下品に笑うメンへに向け、挑発ではなく説教を始めた。

 

「貴方は可哀想な人。でも、自分を可哀想だと思って相手が勝手に慰めてくれると思ってる」

 

「あっ? 何言ってんだテメェ。責任取って自殺しろよ」

 

「お母さんやお父さんに愛されてない自分は可哀想で、何をしても許されると思ってる。絶対に自分は好かれる存在だと思ってる。でも、それは間違い。貴方からは後悔も罪悪感も感じられない。自分のすることがすべて正しいと思ってる。だから何も感じないし、間違いも無いと思ってる。批判されても、間違いを指摘されても相手が悪いと思ってる。そんな貴方を誰も好きにならない。むしろ嫌われる一方」

 

「おいコラ、中古の分際で説教垂れてんじゃねぇぞカス…! 俺はテメェ見てぇな性欲処理玩具とは違って、みんなに愛される存在なんだよ…!」

 

 手を叩いて自殺しろと迫るメンへは、キナに自分の絶対的な考えを間違っていると否定される。これにメンへは暴力的な言葉で反論する。

 確かにメンへは何をしても、自分が可哀想だから許され、誰にでも愛されると思っている。だが、こんな男を誰も愛するはずが無い。そればかりか嫌われる一方だ。それを指摘されたことに、メンへは怒りを覚える。

 そんなメンへに、キナは更に畳み掛ける。

 

「みんなに好かれたいなら、自分から歩み寄ろうとすれば良いのに貴方はそれをしない。愛そうともしない。何故なら、自分が一番大好きだから。自分が一番好きだから誰も愛さない。ただ自分の心地良い言葉だけを耳にして、それ以外の物は耳を塞いで聞こえないようにしてる。そんな自分勝手な貴方を誰も愛さないし、嫌いになって排除する」

 

 このキナの指摘はメンへに全て当てはまっていた。メンへが一番愛しているのは自分自身であった。皮肉にもメンへは、憎んでいた父である旧アシュラの国家元首と似てしまったのだ。

 内心では薄々分かっていたが、我が身の可愛さ余り自分が全否定されていると思い、それを指摘する相手が全て悪いと決め付けて聞きもせず、自分に逆らう者は誰であろうと全て殺してきた。殺してきた末に自分のやること成すことが全て正しいと思ってしまい、間違いを犯しても省みず、ただ己を否定する者こそが間違いだと思い込むようになり、遂には怪物と化してしまった。

 更にキナは、メンへに向けお前は孤独であると告げる。

 

「だから貴方は孤独。もし、私が誰にも出会わないでこの力を手に入れていたなら、貴方のように誰彼構わず殺し、脅して従わせていたかもしれない。けれど、あの人たちが居たからこそ、私は自分の罪と向き合え、力に呑まれずに済んだ。貴方はどう? 力に呑み込まれて暴走しているだけ。そんな貴方に誰もついて来ない」

 

「だからこそ自分は愛されてるって言いたいのか…!? ふざけやがって…! 自分は特別だって言いたいだけじゃないか! この絶対的な力を手に入れた俺こそ、正義その物なんだぞ!?」

 

 止めてくれる存在が居ないお前は孤独だと言われたメンへは激怒し、自分が特別な存在だと誇示してるだけだとキナに反論する。キナの言うことは最もであるが、メンへは決して認めようともしない。先に述べた通り、自分こそ正義で、逆らう者は何であろうと悪なのだ。

 己こそ正義その物であると誇示するメンへに向け、キナはそんな考えを抱くからこそ、誰からも愛されるどころか、嫌われると突き付ける。

 

「その姿は貴方その物、いや、貴方がお父さんを殺した時点から怪物だった。もう誰も貴方を愛さない。例えそれを口にしても、恐怖で従っているだけ。心から好きだとも思わないし、むしろ嫌いになる。いや、世界中が貴方の事を嫌いになって排除しに来る。だから貴方は皆に嫌われる醜い怪物その物」

 

 もはや全てキナの言う通りであった。メンへは装置を吸収しなくとも、父を殺した時点から人の姿をした怪物である。

 

「テメェ…! テメェ、テメェテメェテメェェェッ!! ふざけるなァ! 醜い怪物だとォ!? 僕はこの世界で一番可哀想でみんなに愛される存在なんだァ! その俺を性処理道具の分際で全否定しやがってェ!! 殺してやる! 殺す殺す殺すゥゥゥッ!!」

 

 キナの言葉はメンへを怒らせるには十分であった。激昂する余り我を忘れ、怒り心頭となったメンへは全力でキナに突進していく。

 マリとライデン、起き上がろうとするリュウが固唾を飲んで見守る中、突進してきたメンへをキナは両手で掴み、その力を利用して自分の方へ引き寄せ、ぐるぐると回して遠心力を作り、空高く投げ飛ばした。キナの見よう見真似な大雪山おろしが決まったのだ!

 

『ワァァァ! アァァァッ!!』

 

「駄目だ…! 届かん!」

 

 だが、武蔵率いるゲッター軍団の分遣隊が居る宇宙にまでは届かない。今は勢いよく飛んでいるが、いずれかは限界が来て、地面に落ちて来るだろう。

 

「まだ生きてる…! これなら!」

 

 それを見越し、マリはゲッターポセイドンの残骸に近付き、まだストロングミサイルが無事であることを確認する。これをメンへの真下で爆発させ、その衝撃波で大気圏を突破させようと言うのだ。

 

「何?」

 

「君のやろうとしていることは理解した。こう言う事なら、俺の方が適任だ!」

 

 直ぐにマリは魔法でストロングミサイルを浮かせ、飛ばされるメンへの方へ飛ばそうとしたが、起き上がったリュウが彼女のやろうとしている事をその行動だけで理解し、自分が適任だと言って爆発させない程の力量で浮いているストロングミサイルを飛ばす。

 

「はぁ!!」

 

 リュウの放たれた波動で、ストロングミサイルは勢いよくメンへの方へ飛んでいく。リュウはライデンにストロングミサイルを破壊させるために飛ばしたのだ。

 

「なるほど、衝撃で一気に宇宙まで押し上げるか。こういう時こそ、雷神たる私の出番だ」

 

 同じくマリがやろうとしていることを一目で理解したライデンは、メンへの真下にストロングミサイルが到達したのを見計らい、雷神の異名の通り、右手を翳して電撃をそれに向けて放った。雷神の右手より放たれた電撃は吸い込まれるようにストロングミサイルに命中し、見事に大爆発を起こした。

 ストロングミサイルの大爆発により発生した衝撃波で、メンへは更に押し上げられ、天高く飛ばされていく。雲を突き抜け、成層圏も突破。遂には大気圏も突き抜け、メンへは宇宙に放逐された!

 

 

 

「やぁぁぁ!? いィィィ~!!」

 

 キナ、マリ、リュウ、ライデンの決死の攻撃により、メンへは遂に宇宙まで飛ばされた。宇宙にまで飛ばされたメンへは無重力に掴まり、勢いは止まった。宇宙にまで飛ばすことに成功したは良いが、まだ引力がある衛星軌道上である。

 

「こ、この僕を宇宙に叩き出しやがって…! この星ごとぶっ殺してやるゥ!!」

 

 そればかりかメンへは宇宙空間でも生存可能であった。このままでは、衛星軌道上から放たれるメンへの惑星全土の生命体を皆殺しに出来る攻撃で、四人は惑星に住んでいる住人諸とも殺される事だろう。

 だが、これほどまで必死でメンへを宇宙に飛ばしたのは、そこで待機している武蔵のゲッター軍団に片をつけさせる為である!

 宇宙に飛ばされたメンへを待ち受けるゲッターエンペラー参戦艦「ベアー号」の艦橋にて、この軍団の長である巴武蔵は、レーダー手の部下より報告を受ける。

 

「目標、視認!」

 

「ようやくここまで飛ばしてきたか。ダークデス砲発射用意! 照準はあの自己チューのクソ野郎だ!」

 

 報告を受けた武蔵は、星の全てを腐らせる兵器であるダークデス砲をメンへに撃ち込むように指示を出す。この時の武蔵の服装は少年の時では無く、将軍らしい軍服であった。だが、あの工事用ヘルメットは被っていない。代わりに軍帽を被っている。

 

「なんだぁ、あのダセぇ馬鹿でかい宇宙戦艦は? この一撃でぶっ壊してやるぜェ!!」

 

 自分に星を腐らせる兵器の照準が向けられていることも知らず、メンへは視認できるくらい見える武蔵のエンペラー参戦艦に向け、惑星を死の星に変える程の威力を持つビームを撃ち込んだ。だが、ゲッター線の力は強大と言うか、恐ろしい物であり、メンへの星を破壊する力など、ゲッター線の前では無力であった。

 

「う、嘘だろ…!? 僕は正義その物なんだぞ!? なんであんかダサい戦艦に正義の攻撃が効かないんだ!?」

 

 全くの無傷なことにメンへは酷く動揺する。何発も撃ち込むが、エンペラー参戦艦には傷一つ付かない。おまけにバリアすら使っていないのだ。

 そんなメンへを嘲笑うかの如く、武蔵はパイプを咥えながら滅ぼされる運命にあると告げる。

 

「フン、そんな小便みてぇな攻撃なんぞ、バリアを使うまでもない。力を手に入れたお前は自分を神様や仏様と勘違いし、人類を支配しようと企んだ。その時点でお前は負けていたのだ。そんな悪の塊であるお前など、誰が愛する物か! 虫けらの如く人を殺すような奴をな! そんなクソったれで生かしておく価値の無いお前は、じわじわと腐りながら死ぬのがお似合いだ」

 

 聞こえても居ないであろう相手に説教を述べた後、ダークデス砲の発射準備が整ったと部下より報告が来る。

 

「ダークデス砲、発射準備完了です!」

 

「照準は目標に固定しております!」

 

「ウム。ダークデス砲、発射!!」

 

 報告を受けた武蔵はダークデス砲の発射を命じた。何か撃ち込まれる事を理解したメンへは、久方ぶりに思い出した死の恐怖に駆られて逃げ出す。

 

「う、うわぁ~! 嫌ダァァァ!!」

 

「ハッハッハッ! 尻尾巻いて逃げ出しやがった! だが、逃がさんぞ。化け物め!」

 

 無論、この光景は武蔵にも見えており、その恐怖に駆られ、逃げ出すメンへの背中を見て笑うが、ダークデス砲が発射された直後には、真剣な表情になった。

 発射された星の全てを腐らせるダークデス砲は、吸い込まれるように逃げるメンへの背中に命中。星を腐らせる兵器の直撃を受けたメンへの身体は腐り始め、彼の全身に凄まじい激痛を与えた。

 

「あぁぁぁ!? 痛い! 痛いィィィ!! ママ、パパァ! 助けてェ!!」

 

 腐り溶けていく自分の全身を見て、メンへは居もしない両親に助けを求めた。だが、助けに来るわけがない。ただ身体が腐り溶けていくだけだ。

 

「何を言ってるか分からんが、どうせ父ちゃんと母ちゃんに助けを求めてるんだろ。もしくは、罪を後悔して謝罪するから助けてなんぞほざいてるんだろ。フン、今さら遅いわ」

 

 その様子はエンペラー参戦艦の艦内からも見えており、腐り溶けていくメンへを見て、謝罪は間違っているが、武蔵は言っている事を大体は当てた。

 

「嫌だ…死にたくない…! 僕は、僕はみんなに愛されるべき存在なんだ…! こんな醜く腐って死ぬなんて、あり得ない…! 僕は絶対正義で…最強なんだ…この僕がこんなところで死ぬのは…間違いなんだ…!!」

 

 この期に及んで、メンへは自ら犯して来た罪を後悔するどころか、未だに自分は皆に愛されるべき絶対正義と宣い、自分が死ぬのは間違っているとさえ口にする。余りの身勝手さに呆れるどころか、寒気さえ覚える程だ。

 

「僕だけが、僕だけが勝者なんだ…! 誰も僕に、僕に勝つことは許されないんだ…! お前らの方が敗者…」

 

 やがて生命機能も腐り果てれば、メンへは断末魔を上げながら腐り溶けて息絶えた。メンへの細胞の破片一つ残さず腐り溶けて消え去れば、部下はそれを司令官である武蔵に報告した。

 

「目標、腐り溶けて無くなりました。一片の細胞も確認できません」

 

「綺麗さっぱり無くなりやがったか。清々したぜ。あぁいう世界が自分を中心に回っていると思っているクソ野郎は、再生できぬよう細胞の一つ残らず消すに限る」

 

 報告を受け、武蔵はメンへのような強大な力を持ち、己を絶対正義と宣い、恐怖で人々を支配する者は、二度と蘇らぬように細胞の欠片一つ残さず消すに限ると口にする。

 

「さぁて、忘れ物を取りに行くか。ゲッターロボの部品一つも忘れるなよ! この世界の連中に、例えネジの一本でも一つも渡すんじゃないぞ!」

 

 忘れ物である大事なヘルメットを取りに行くため、武蔵はあの星に送り込んだゲッターロボ四機の残骸の回収も兼ね、回収部隊を引き連れて転送装置に向かう。転送先はメンへとの決戦場となったあのバンカーがあった湖周辺だ。連隊規模の回収部隊と一触即発に備えた戦闘部隊と共に、武蔵は現場へと転移した。




次回はエピローグでございます。
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