スーパーロボット大戦 無限戦争 設定集&外伝   作:ダス・ライヒ

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全員倒すと言ったけど、尺的に倒せなかったわ。


英霊VS連邦&同盟 その8

「これ以上、好きにはさせるか!」

 

 同盟軍第01オルドリン義勇機械化混成師団は、ジェリド・メサが駆るバイアラン・カスタム一気に蹂躙されていた。

 マゼラアタックや連結合体六輪装甲車、ビートリー級、ギャロップなどの陸上戦闘艇は全てジェリドのバイアラン一気に破壊され、黒煙を上げていた。ザクⅣやケルベロスバクゥハウンドですら、残り少ない。

 

「殆どぶっ潰したと言うのに、まだ来るか!」

 

『うぉぉぉっ!』

 

 最後に挑んできたバクゥハウンドが飛び掛かりの斬撃を躱し、ビームサーベルで胴体を貫いたジェリドは、自分のバイアランに接近するヘルゴーグ・ジャスナーのザクⅣに気付いた。部下が乗るジェニス二機の僚機を失い、その仇討に燃えるヘルゴーグであるが、相手が悪過ぎた。

 

「その程度の腕で、俺に敵うと思ったか!?」

 

 ザクマシンガンを撃ちながら接近し、ヒートホークの間合いに入ったところで白兵を仕掛けるヘルゴーグのザクに、ジェリドは並のパイロットであると見抜き、その斬撃を躱してビームサーベルを敵機に突き刺した。

 

「そんな…! まだ俺は…仇すら…!!」

 

 ビームの刃で焼かれる中、ヘルゴーグは無念の気持ちを抱きながら蒸発した。

 

「うっ! なんだこの不愉快な感覚は…!? このザクのパイロットの怨念か?」

 

 ジェリドは仕留めたヘルゴーグの無念の声を聞き、不快感を覚えた。それに気を取られ、次に挑むロッツェア・アルナンドのドムのような重装型のザクⅣホバータイプの接近に気付かない。

 

「たった一機のMS相手に! これ以上やらせるか!!」

 

 ヘルゴーグと同様に憎しみに燃えるロッツェアは、残りの僚機と共にジェリドのバイアランに突撃を仕掛ける。

 凄まじい弾幕であるが、ジェリドのまた歴戦のパイロットであり、この弾幕を機体の機動性能を限界まで引き出して全て避け切った。

 

『避けただと!?』

 

「俺だってティターンズだ! これぐらいの事はやれる!」

 

 凄まじい弾幕であるが、その全てを躱し切ったジェリドにロッツェアたちは驚きの声を上げる。これにジェリドはティターンズであるから出来ると口にし、ビームを連射しながら反撃に出る。連発であるために精度は低いが、ビームの弾幕であり、ロッツェア機を除くホバータイプのザクは全滅した。

 

「こんなところで、こんなところで! 終われるかぁーっ!!」

 

 自分一人を除いで全滅したが、ロッツェアは復讐を果たすまで終われないと叫び、ヒートソードを抜いて急接近してくるジェリドのバイアランに斬りかかった。

 

「逃げずに挑んでくる! そんなに死にたいか!? ならば、望み通りにしてやる!」

 

 特攻の如く挑むロッツェアのザクにジェリドは額に冷や汗をかき、焦りの気持ちを抱きながらも返り討ちにすべく、繰り出される斬撃を冷静に見抜き、敵機の背後にビームサーベルを突き立てた。

 

「クソぉ! こんなところで、こんなところで終わるのか!? 母ちゃん、ごめんよ!」

 

 バイアランから突き出されたビームサーベルは、ロッツェアのザクを貫いた。脱出しようにも、コクピット内まで火が回っており、ロッツェアは助からないと分かって無念を口にし、オルドリンの戦いで死亡した母親に謝罪しながら爆発に呑まれた。

 

「お袋に謝りながら死んだか…! お前らの故郷が焼かれたのは、俺の所為なんかじゃない。お前たちに力が無かった所為じゃないか…!」

 

 ロッツェアの最期の声を聞いてしまったジェリドは、震えながらも自分の所為で故郷を焼かれたのではなく、焼かれたのはそちらの所為だと、既に物言わぬ彼のザクⅣの残骸に向けて放った。

 

「他の奴らとは違い、あの師団マークを付けた連中を仕留めた時の不愉快差は…! 残るは、あの師団本部の地上戦艦か!」

 

 流石に一個師団との戦闘は、英霊であるジェリドも疲れるのか、疲弊していた。特にオルドリン義勇軍師団のマークを仕留めた際、将兵らの無念の声がジェリドに届き、不快感を与えていた。それが更にジェリドに疲労を与える要因となっている。それでもジェリドは戦闘を止めることなく、師団本部であるレセップス級陸上戦艦「クトゥズ」に標的を定めた。

 

「て、敵機、来ます!」

 

「お、お終いだ…!」

 

「貴様らは残存兵力と共に撤退しろ! 殿は私がする!」

 

「し、師団長殿!?」

 

 向かってくるジェリドのバイアラン・カスタムに、クトゥズの艦内は恐怖に包まれる。今にも逃げ出しそうな将兵まで居るが、師団長であるサム・ブライナーは現存する戦力と共に撤退しろと告げ、自らが殿を務めると言い出す。それに将兵らは慌て初め、格納庫に居るパイロットが、自分が殿をすると告げる。

 

『師団長殿、無茶であります! 自分のザクはまだ動けます! 俺が代わりに…!』

 

「スクラップ同然のザクで何ができる! 俺の腕ならば、戦闘ヘリでクトゥズ離脱までの時間稼ぎは出来るはずだ!」

 

 師団長が戦闘ヘリで殿をすると言い出すので、上官を死なせないため、部下たちは我こそがと殿を申し出たが、サムは耳を貸すことなく、自分の愛機である戦闘ヘリ「アジャイル」に乗って出撃した。部下たちを逃がすために、サムは無謀にも戦闘ヘリでジェリドのバイアランに挑んだ。

 

「戦闘ヘリだと!? そんな空飛ぶ的で、このバイアラン・カスタムに敵うと思ってか!」

 

 このバイアラン・カスタムからすれば、戦闘ヘリなどただの的同然だ。そう言ってジェリドは体当たりで叩き潰そうと速度を上げたが、真正面から戦闘ヘリで空戦MSに挑むほどサムは馬鹿ではない。閃光弾を搭載したロケットを発射し、ジェリドの目を晦ませた。

 

「何ィ!?」

 

 目晦ましを受けたジェリドは、思わず操縦桿から手を放して目を覆ってしまった。

 

「ありったけの火力を!」

 

 この隙に、サムはアジャイルの全火力をバイアランにぶつけた。

「たかが戦闘ヘリ如きに、このバイアラン・カスタムは落ちないぜ!」

 

 無論、アジャイルの火力ではバイアランを落とすことは敵わず、ただ装甲に傷をつける程度であった。

 迫るジェリドのバイアランは、武器など使う程でもないと判断してか、機体の右腕を振り下ろそうとしていた。

 

「だが、時間稼ぎは出来た! お前たちの新しい指揮官は、オルドリン出身者だぞ…」

 

 もう既にサムは助からないが、それでもクトゥズの離脱する時間は稼ぐことが出来た。残存兵力もクトゥズ離脱と同時に既に撤退しており、残るはサムのアジャイルだけである。

 圧し潰さんと迫るバイアランの右腕を見上げながら、サムは残された部下たちの新しい師団長は、オルドリン出身者であることを口にし、振るわれた右腕に乗機のアジャイル共々潰された。

 

「ちっ、逃がしたか」

 

 サムのアジャイルを潰したジェリドであったが、クトゥズとオルドリン義勇軍師団の残存兵力に逃げられたことに、舌打ちをして乗機のバイアランを地上へと降ろした。

 

「まぁ良い、他の奴らをやるさ」

 

 撤退するオルドリン義勇軍師団を眺めながら、少しばかり一息つき、次なる標的を他の同盟軍部隊に定めた。

 

 

 

「こ、こいつは…!?」

 

『ば、化け物だ…! もしくは、悪魔か…!』

 

 式波アスカのエヴァンゲリオン弐号機改と対峙した連邦軍と同盟軍機動兵器部隊は、その圧倒的な力を前に、怪物か悪魔と対峙したと思い込み、後退り始める。

 エヴァ弐号機の周りには、無数の連邦軍機と同盟軍機の残骸で溢れかえっていた。たかが一機と思い込み、集団戦法で挑んだ両軍であるが、エヴァの力は彼らの予想をはるかに上回り、挑んだ者たちを引き裂いていった。

 

「はぁ、はぁ…! 流石に、大軍相手に厳しいか…!」

 

 そんな大群に囲まれているアスカも、流石に数が多すぎてか、疲弊していた。左手で汗を拭いつつ、敵機からのライフルによる攻撃を躱し、奪った火器で狙い撃って撃破する。エヴァの動きは凄まじく、誰もアスカのエヴァには当てられない。接近戦で挑んだ敵機も居るが、当然ながら敵うことなく、無残に引き裂かれるだけだ。

 

「か、勝てねぇ…! ひ、退くか?」

 

 エヴァに挑んだ連邦軍機や同盟軍機が引き裂かれるか、ライフルで撃ち抜かれる中、一人の同盟軍パイロットが、退くかどうかを同僚に問う。

 

「当たり前だ! こんな奴は、砲撃で倒すしかねぇだろ!」

 

 退くしかないと言う答えが返ってくる。この場から一刻も離れ、砲兵隊による砲撃で倒すしかない。が、砲兵隊は攻勢の援護砲撃で忙しいらしく、要請しても応じられないと返答する。

 

『こっちは連邦軍への砲撃で忙しい! たかが一機如き、お前たちで潰せ!』

 

「クソっ、それが出来れば要請なんてしねぇよ!」

 

 この返答に指揮官機のザクⅣのパイロットは苛立つ中、一人挑もうとする者が居た。それは、ヒールズ・シャックルズのグフ・ネオメイカーだ。

 

『た、隊長! そいつは化け物ですよ!』

 

『いや、悪魔だ! 悪魔に食われちまう!』

 

「ここでモダメ王国の存在を示さねば! それにここが絶好の機会! 例え、俺が死んでも…!」

 

 部下たちから止められるが、ヒールズは止まらず、同盟軍機が後退していく中、複数の連邦軍機と交戦しているアスカのエヴァ弐号機の背中をガトリング砲で狙う。凄まじい弾幕であるが、エヴァにはATフィールドがあり、その全てを防がれ、ただ連邦軍のダガー数機をハチの巣にしただけであった。

 

「こいつ、一機で挑んでくるなんて!」

 

 向かってくるヒールズのグフに気付いたアスカは、目前のダガーLのコクピットをエヴァの手刀で貫き、素早く引き抜き、接近してくる敵機の方へと投げる。

 

「っ!? 破壊した敵機を!?」

 

 飛んでくるダガーLの残骸に、ヒールズはガトリング砲で破壊しようとするが、間に合わず、目前で爆発してしまった。乗機のグフは無事であるが、ガトリング砲は先の爆発で破壊されてしまった。即座にビームピストルで、破壊した105ダガーから奪ったビームライフルで攻撃してくるアスカのエヴァに撃ち込む。

 

「照準器は無いようだな!」

 

『ちっ、こいつエースか!』

 

 その射撃で照準器が無いまま撃っているとヒールズが分かれば、最低限の動きで躱しながら接近する。このヒールズのグフの動きで、アスカは敵がエースであると分かり、ライフルを捨てて奪ったビームサーベルで挑んだ。

 

「凄まじい速さだが、若さに任せての突撃など!」

 

 凄まじい速度で迫るエヴァに、ヒールズは臆することなくビームピストルを撃ち続ける。相手が間合いに接近したところでピストルを投げ付け、即座にヒートサーベルを引き抜き、相手の斬撃を躱し、高温の剣で斬ろうとする。

 

「くっ! ビームの剣より熱い!」

 

 迫る高温の刀身に、アスカはその熱さを感じた。エヴァは操作性を更に高めるためのシンクロシステムが搭載されており、操縦者と感覚を繋いでいるのだ。済んでのところで躱すが、装甲が高温に晒されているため、火傷するほどの熱さを感じるが、それを我慢してビームサーベルの斬撃を入れる。が、ヒールズもそれが来ることが分かっているので、即座に交わして次なる斬撃を加えた。

 

「こいつに斬られたら、火傷どころじゃない!」

 

『すばしっこい奴! だが、これで!』

 

「っ!? こいつは!? アァァァッ!!」

 

 熱した刃で乗機のエヴァ弐号機を斬られれば、自分にもそのダメージが来るため、アスカは必死になって避ける。そこに隙を見出してか、ヒールズはグフ特有の武器の一つである電磁鞭のヒートロッドを右腕から射出し、それをエヴァに当てて高圧電流を流し込んだ。

 シンクロシステムゆえにアスカは高圧電流を直で感じて痺れ、全身を走る凄まじい激痛で絶叫する。普通なら死んでいるところであるが、身に着けているプラグスーツのおかげか、死には至っていない。常人では既に気絶しているか、最悪の場合、死に至る程だ。相手が高圧電流を流し込まれて動きを止めたところで、ヒールズは勝利を確信する。

 

「良いぞ…! この機体、どんな構造か知らんが、これを持ち帰れば、モダメ王国の科学力は凄まじいブレークスルーで更なる発展を遂げるぞ! パイロットはどんな奴か知らんが、このまま感電死してもらう!」

 

 笑みを浮かべ、圧倒的戦闘力と性能を持つエヴァを持ち帰れば、祖国の科学力は凄まじいほど発展を遂げると判断し、アスカを感電死させようとヒールズは電磁鞭の電力を上げた。

 

「アァァァッ! こんな、こんな電流ぅ! 初号機に食われた時にぃ! 食われた時に比べればっ!!」

 

 高圧電流で痺れ、今にも死にそうな状態のアスカであるが、14歳のまま身体の時を止められた要因である時に比べれば、マシであるようだ。精神を強く持ち、気合で痺れる身体を無理やり動かし、操縦桿を掴んでエヴァを動かす。

 

『マシッ!!』

 

「こ、こいつ! まだ動くのか!? パイロットが死んでいる電流だぞ!?」

 

 電磁鞭を直接掴んだエヴァ弐号機に、ヒールズは驚きの声を上げる。普通ならとっくに死んでいるレベルだが、アスカは精神力でそれに耐え、電磁鞭を掴んで引き寄せた。

 

「どりゃあぁぁ!」

 

 強く掴んで引き寄せたため、ヒールズのグフはアスカのエヴァ弐号機の方へと引っ張られる。飛んでくるヒールズのグフに、アスカのエヴァは拳の間合いに入ったところで、ATフィールドを重ねた正拳突きを行おうとする

 

「国王、国王陛下! 申し訳ございませぬ!! このヒールズ・ジャックルズめ、赤い正体不明の機動兵器に敗れました! 我が妻と子には、寛大な処置を願いまする!!」

 

 もはやその死は免れるぬと判断してか、ヒールズはモダメ王国の国王に敗北したことを謝罪し、自分の妻と子には、寛大な処置をしてくれるように願った。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

 その声は届いたかどうか不明だが、アスカのエヴァ弐号機のATフィールドを重ねた正拳突きがヒールズのグフ・ネオメイカーに炸裂し、跡形もなく吹き飛ばした。

 

「じゃ、ジャックルズを倒しやがった…!」

 

『ば、化け物だ! 奴には敵わん!』

 

『逃げろォーッ!!』

 

 エースすら討ち取ったアスカのエヴァ弐号機に、同盟軍は恐れをなして撤退した。

 

「はぁ…! 逃げ出してくれて、良かった…」

 

 両軍の大群に続き、エースとの戦いでアスカはかなり疲弊しており、彼女のエヴァ弐号機もその場で膝をついてへこたれた。

 

 

 

「インパルスが、これほどの性能を!?」

 

 一方で、ショウ・アカギのサザビー陸戦用重装型と交戦するルナマリア・ホークのフォースインパルスガンダムSpecⅡは、その素早さで圧倒していた。ルナマリアの得意な接近戦で間髪入れずに仕掛け、オリジナルの性能を知るアカギに驚きの声を出させる。対峙するサザビーを駆るアカギは、ルナマリアのインパルスが強化されていることを知らないのだ。

 

「赤くないサザビーなんて!」

 

 絶え間ないビームサーベルによる連撃で、ビームマシンガンを破壊したルナマリアは、赤くないサザビーなら勝てると思い込み、連撃を続ける。アカギのサザビーは地上専用であり、サイコミュはおろか、サイコフレームも搭載していない。そればかりか量産タイプであり、地上適性や防御面は向上しているも、オリジナルのシャア・アズナブルが駆るフラッグシップ機のサザビーより劣る。

 

「だが、パワーと防御力ならこちらが上だ!」

 

 そんなオリジナルに劣る陸戦用のサザビーだが、強化型のインパルスに比べて火力と防御面では未だ大きく上回っていた。機動性を駆使してビームサーベルで斬りかかるルナマリアのインパルスに向け、腹部拡散メガ粒子砲を放った。

 

「それはシミュレーションで何度も!」

 

『躱しただと!?』

 

 シャア搭乗時のサザビーとのシミュレーションで何度も経験しているのか、ルナマリアは即座にフォースシルエットの機動力を駆使して躱した。これにアカギは驚きながらも、距離を取ったインパルスに空かさずシールドのシュツルムファウスト二発を撃ち込んだ。フェイズシフト装甲で効かないと分かっているが、電力を大幅に消耗させることが出来るので、頭部バルカン砲と兼用して撃ち込んだのだ。

 

「シールドからロケット弾!?」

 

 流石にそれが飛んでくることにはルナマリアは驚いていたが、インパルスの胸部バルカン砲で飛んでくる弾頭を迎撃した。爆炎が巻きあがる中、ルナマリアは即座に再度接近戦を仕掛け、二振りのビームサーベルでサザビーの盾を滅多切りにする。

 

「こいつは、接近戦も出来るんだよ!」

 

 シールドを滅多切りにされたアカギのサザビーであるが、オリジナルと同様に陸戦用にはないビームサーベルとビームトマホークを装備していた。右手にビームトマホーク、左手にはビームサーベルを握ってサザビーからすれば小柄なインパルスに斬りかかる。凄まじいパワーを生かした連続の斬撃であるが、ルナマリアからすれば、見覚えのある攻撃であったようだ。

 

『うぉぉぉっ!』

 

「この連続攻撃、シャアのサザビーと同じ…!?」

 

 このアカギのサザビーの連続斬撃は、シャアが乗るオリジナルのサザビーの連続斬撃と似ていた。が、重力下でもその動きが出来るので、付け入る隙は無い。空を飛べば、あの腹部拡散ビーム砲を放たれてしまうだろう。

 

『死ねっ!』

 

「っ!? 今!」

 

『な、何ッ!?』

 

 どう対処するか斬撃を躱しながら迷っていたが、アカギは一気に仕留める気でいたのか、ビームトマホークで突きを行った。隙が大きかったのか、ルナマリアはそのチャンスを逃さず、一気にスラスターを吹かせて突進を行い、大きいサザビーを怯ませる。至近距離から拡散ビーム砲を放つのは誘爆の危険性があってか、アカギは躊躇ってしまい、インパルスが突き出したビームサーベルを受けてしまった。

 

「ぬわぁぁぁっ!?」

 

 腹部にビームサーベルを突き刺されたサザビーは地面に倒れた。その際、脱出装置が作動したのか、頭部から脱出ポッドが射出され、地面に転がる。サザビーの動力炉を刺してしまったのか、爆発寸前であり、直ぐにルナマリアのインパルスは離れた。

 

「敵機、撃墜…!」

 

 その後、サザビーは爆発した。手強い敵機を仕留めたルナマリアは一息つき、ヘルメットのバイザーを開けて飲料水を一口飲む。

 乗機を破壊され、脱出ポッドから飛び出したアカギは、徒歩で味方の陣営へと走って逃げていた。ルナマリアのインパルスから見えていたが、乗機を失って徒歩で味方の陣地に逃げているパイロットは脅威ではないので、無視してライフルを回収に向かった。

 

 

 

「ミーの、ミーの部下が…! 誰か応答するザンス!」

 

 ルナマリアのインパルスが、アカギのサザビー陸戦用重装型を撃破した頃、シン・アスカのデスティニーガンダムSpecⅡは、ジャン・ルイズ・ジョルジュ・ド・ランヌが駆るペーネロペーと対峙していた。

 ランヌには囚人兵たちが乗るドートレスやストライクダガー、監視役を兼ねた部下たちが乗るグスタフ・カールなどの二個連隊分以上の戦力があったが、鬼神のような強さを誇るシンが駆るデスティニーの前に、グスタフ・カールは全滅していた。残っているのが囚人兵だけなので、ランヌは部下に生き残りが居ないか無線で呼び掛ける。

 

「後はお前だけだ!」

 

『だ、誰も応答しないでザンス! ミーには、この囚人兵どもしか残されていないでザンスか!?』

 

 無論、誰も応答しない。シンは怒りの眼差しをランヌのペーネロペーに向け、仕掛けようとして来る。

 盾にしている囚人兵たちのMS等は、シンの圧倒的なデスティニーに倒されていたが、武器を破壊されるか、戦闘力を奪われるだけで済んでいた。全滅させたグスタフ・カールの戦い方で、二種のMSに乗っているのが囚人兵だと分かり、手心を加えた。彼ら彼女らを盾にするランヌの部隊に怒りを燃やし、それでグスタフ・カールを全滅させ、後はその親玉であるランヌを残すだけだ。

 

「か、勝てない…! こんなんじゃ…」

 

 監視役のグスタフ・カールを難なく全滅させた真のデスティニーに、囚人兵たちは完全に戦意を喪失していた。ドートレスとストライクダガーには、飛行能力は無いので、常に飛んでいるデスティニーに突っ込むどころか、白兵戦すら仕掛けられない。出来るとすれば、ランヌのペーネロペーだが、MAの如く大型すぎるため、対連合軍大型MAを想定して設計されたデスティニー相手では、分が悪過ぎた。しかもデスティニーはパイロットとの相性が良く、更に強化されている。ランヌのペーネロペーに完全に勝ち目が無かった。

 

「と、特攻するザンス! ジャンプして突っ込めば、何とかなるザンス!」

 

『い、嫌だ…! あんなのに敵うわけが…』

 

 完全に勝ち目がないのだが、ランヌは往生際が悪く、地上の囚人兵らに空を飛んでいるデスティニーに向けて特攻するように命令した。誰も応じなかったが、ランヌは脳波で囚人兵らの機体を爆破することが可能なので、敵わないと言った囚人兵のドートレスを脳波で爆破した。

 

「こいつの二の舞になりたくなければ、ミーの命令に従うでザンス! 誰が死にたいでザンスか!?」

 

 逆らえば殺すと脅迫し、囚人兵らを従わせて突撃させたが、逆にシンの怒りの炎に油を注ぐだけだ。

 

『うわぁぁぁっ!』

 

「無理やり、無理やり突っ込ませるのか…! こいつ!!」

 

 恐怖に駆られ、突撃してくる囚人兵らの機動兵器群に、シンは無理やり従わせて無謀な突撃を強いたランヌに怒りを燃やす。

 

「囚人兵共の代わりは、そこらの難民でいつでも補充できるザンス! 部下の方は補充と訓練に時間が掛かるザンスが、三週間も訓練すれば完璧になるザンス! 今は目の前のデスティニーを倒し、ミーが生き残ることが先決でザンス!」

 

 囚人兵は難民でいくらでも補充できると口にし、取り付いた彼等ごとシンのデスティニーを討とうとメガ粒子砲の照準を向けた。

 部下は時間が掛かるが、三週間ほど期間を設ければ、補充が出来ると言ってこの場で生き残ることを優先し、ファンネルミサイルの用意をしていた。だが、シンをこれほどまでに激怒させ、生き延びた者は殆どいない。

 

「味方ごとやるなんて…! こんな、こんな奴…! 許せるわけ、許せるわけが…無いだろうがっ!!」

 

 飛び掛かって取り付いてくる囚人兵らのMS群の隙間から、ランヌのペーネロペーが搭載ビーム砲とビームライフルの照準を向け、味方ごと撃ち抜こうとしているのが見えた。これを見たシンの怒りは頂点に達し、キラ・ヤマト、アスラン・ザラ、ラクス・クライン、カガリ・ユラ・アスハが持つSEEDと呼ばれる特殊な覚醒状態を発動させる。

 心の中でSEEDの種が割れたシンは、恐ろしいほど神経が研ぎ澄まされていた。身動きが取れないほど取り付いていた囚人兵らのMS群は、一瞬にして振り払われた。続々とスラスターを吹かせた囚人兵のMSが取り付かんとするが、覚醒状態のシンが駆るデスティニーに蹴り飛ばされるか、振り払われるだけだ。その時間は、わずか数秒ほどであった。

 

「なっ!? 何ザンスか!? 一体奴は何が!?」

 

 あれほどいた囚人兵のMS等が一気に振り払われ、こちらに目にと止まらぬ速さで迫る真のデスティニーに、ランヌは恐怖してファンネルミサイルを数発ほど発射した。ファンネルの名の如く、重力下でも複雑な機動を描き、目標に向かって飛んでいくミサイルであるが、背中の両翼を光らせたデスティニーは、それら全てを躱し切り、背中の大剣を抜いて高速で接近してくる。

 

「何ザンスかーッ!?」

 

 向かってくるデスティニーに恐怖するランヌは、逃げながらファンネルミサイル全弾発射した。これほどのミサイルを撃たれ、躱し切れるとすればニュータイプだけだと思われるが、SEEDを持つシンはそのファンネルミサイル群を、デスティニーの機能である分身で躱し切った。

 

「ひ、ヒヤァァァッ!? ミーは、ミーはこんなところで死ぬタマじゃないザンス! あの、あのゲオルグ・トリケラを討ち取るまで! し、死ねないでザンス!!」

 

 迫るシンのデスティニーに恐怖するランヌであるが、彼にはここで死ねない理由はある。

 それは、同盟軍の最強パイロット集団「十指」の一人であるゲオルグ・トリケラ特務少将への復讐であった。ランヌは、史上最大の決戦であるガルダーゴンの戦いでゲオルグに敗れ、その復讐の手段としてスパルタンⅤとなったのだ。

 

「フン、貴様如き、殺す価値も無い」

 

 ガルダーゴンの戦いでザクファントムに乗って参加していたゲオルグは、ランヌが駆るジャベリンを撃破した。

 撃墜されたランヌはまだ息があったが、単独で自分の所属部隊を壊滅させたゲオルグに恐怖し、破壊された乗機の中で震えていた。この様子を見たゲオルグは、殺す価値無しと判断してその場から去った。

 これにランヌのプライドは大きく傷付けられ、同時に凄まじい屈辱を受けた。ゲオルグに対する復讐としてランヌは超人兵士であるスパルタンⅤに志願し、肉体強化施術を受けてスパルタン・ランヌとなったのだ。

 

「ミーはランヌ公爵家の末裔でザンスよ! こんなところで、こんなガス臭い星で死ぬなんて、あってはならないことでザンス!!」

 

 晴れてスパルタンⅤとなり、第666機械化連隊の指揮官となったランヌであるが、シンのデスティニーと対峙した時点で敗北は運命であった。

 迫り来る死の運命たるシンのデスティニーを追い払おうと、ビームライフルや搭載ビーム砲を乱射するが、それでも追い払えず、徐々に距離を詰めてくる。

 

「にやぁぁぁっ! ランヌ家伝統の剣裁きを受けるでザンスゥ!!」

 

 遂に白兵戦の距離まで近付かれたランヌは、デスティニー相手では分が悪過ぎるペーネロペーで接近戦を挑んでしまった。乗機のペーネロペーの左手に持つビームサーベルで突きを繰り出したが、あっさりと躱され、アーサー王伝説に登場する騎士ランスロットが持つ剣「アロンダイト」と同じ名を持つ大型ビームソードで両断された。

 

「アァァァッ!? ミーは! ミーはこんなところで! ランヌ家の末裔であるこのジャン・ルイズ・ジョルジュ・ド・ランヌが…」

 

 切り裂かれたペーネロペーのコクピット内で、ランヌは高貴な貴族に末裔である自分がここで死ぬ人間でないと嘆いていたが、死の運命は無慈悲に彼を紅蓮の炎で焼き、爆発で跡形もなく吹き飛ばした。

 爆散するペーネロペーに、シンは無言でその様を見ていた。




次回で連邦軍の方も全滅させるか。
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