良晴が城を出た後も、今川を巡っての軍議は続いていた。
長秀「籠城など、考えられません!」
織田家家臣A「義元にとって上洛が最優先。仕掛けなければ、清洲を素通りする可能性が高い。」
長秀「戦わねば滅ぼされるのみ、二点です。」
その時、
信忠「お前、義元の此度の侵攻は上洛だと申したが、それは表向きの理由だ。」
と信忠はそう言いながら軍議に戻った。
織田家家臣A「すると、義元の侵攻目的は?」
信忠「アイツの此度の侵攻の本当の目的は・・・」
そう言って、軍議の真ん中に置いてある地図の一部を指し、
信忠「ここだ。」
と言った。その場所は、
長秀「知多?」
知多半島であった。
織田家家臣A「何故、義元はこの知多を?」
その疑問に
勝家「まさか、義元はこの知多とその周辺地域の商工業を欲していると!」
可成「この地域は窯業が盛んじゃ。中でも、常滑焼はよく稼げるしのう。」
と勝家と可成はそう答えた。
信忠「そうだ。それに、この常滑焼は日の本全てに流通している。つまり、流通機構も発達しているという事だ。父上は、この尾張の発達した商工業地域を支配下に置く事で力を付けてきた。無論、知多半島も求めた。その為、よく今川とは知多とその周辺地域を巡って小競り合いをしていたがな。そして、この知多にある緒川城を落とそうと、義元は村木砦という付け城を築いた。尤も、その砦は俺が落としたがな。」
織田家家臣A「な、なるほど・・・。」
織田家家臣B「その為の尾張侵攻だったのか・・・。」
長秀「この知多が目的・・・。」
その時、
恒興「申し上げます。鷲津、丸根両砦共に陥落、全滅した模様です。」
信忠「・・・であるか。」
鷲津と丸根が落ちたとの知らせが届いた。
織田家家臣A「二つとも落ちたのか・・・。」
織田家家臣B「信忠様!ここは降伏しかありません!」
その発言に、
長秀「姫様と信忠様を敵に差し出すつもりですか?家臣にあるまじき発言、零点です。」
と言われてしまった。
織田家家臣A「女子の分際で・・・。」
勝家「男のクセに女々しい方が情けないよ!」
すると、
信忠「・・・ふっ。」
信忠が不敵な笑みを浮かべたのだった。
勝家「信忠様・・・?」
これには勝家を初め、皆が疑問の表情を浮かべたが、
信忠「今のところ、俺の思い通りに進んでいる。だが、まだ足りぬ。」
と言ったのだった。その時、
良晴「信忠・・・。」
良晴が傷を負った状態でやって来た。
勝家「サル!?」
長秀「良晴殿!?」
信忠は良晴に近付き、
信忠「良晴・・・その傷は?」
と尋ねた。すると、
良晴「それより、信奈に会わせてくれ。今川本陣を見つけた。」
と言った。
信忠「・・・分かった。」
それを聞いた信忠は、彼を抱えて信奈の部屋に向かった。これには、一同唖然としたのだった。
信奈の部屋
その頃、信奈は一人オルガンを弾いていた。すると、
信忠「姉上。」
信奈「信忠?」
信忠が入ってきた。しかし、入ってきたのは信忠だけではなく、
信奈「サル!」
良晴も一緒だった。
信奈「何で、アンタ・・・。!それより、どうしたの、この傷!?」
良晴「それより、今川義元の本陣を見つけた。」
信奈「え!?」
良晴「桶狭間山の東の麓。本隊はおよそ五千、休息中で他の部隊から完全に孤立、今信澄達が足止めしている。」
信忠「それは確かだな。」
良晴「ああ。俺が出来るのはここまでだ。」
それを聞いた信奈は、
信奈「どうなの?アンタが見る未来は?」
と尋ねた。それに良晴は、
良晴「お前の道だ、信奈。お前が自分で選べ。俺は黙って付いていく。」
と言った。
信奈「・・・であるか。」
そして、
信奈「人間二十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり、ひとたび生を得て、滅せぬ者のあるべきか」
信忠「死のうは一定、偲び草には何をしよぞ、一定語り起こすよの」
信奈は敦盛を、信忠は偲び草を唄い、出陣したのだった。
良晴(敦盛そして偲び草、見届けたぜ信奈、信忠!)
そして、一同は熱田神宮に辿り着いた。
長秀「折角の熱田神宮です、神様に戦勝祈願をなさいませ。」
信奈「そうね。」
信忠「そうだな。」
そして、熱田神宮に向けてこう言った。
信奈「いつまでこの国を乱れさせたままにしてんのよ!」
信忠「これからは俺達がお前らに代わって、民を守ってやる。」
信奈「分かった?」
信忠「分かったら俺達を勝たせろ!」
信奈・信忠「「良いわね/良いな?」」
これには、皆唖然としていたが、如何にもこの二人らしいと思ったのだった。そして、二人は振り返り、
信奈「神殿の奥のコイツも」
信忠「勝利間違いなしと言っている。さて、善照寺砦に向かうぞ!」
織田軍兵士「「「おおーっ!!」」」
そして、織田軍は善照寺砦に入った。
善照寺砦
織田家家臣C「このまま突撃するのですか?」
信忠「いや、まだその時ではない。」
勝家「では、どうするのですか?」
信忠「まず三百の兵で、今川に寝返った鳴海城を攻める。」
と言った。これには、
可成「何と・・・!」
長秀「それだけの兵では、鳴海城は落とせません!」
良晴「そうだぜ信忠!」
それぞれ反対した。しかし、
信奈「・・・分かったわ。あなたの策に従うわ。」
信奈のみ賛成し、三百の兵で鳴海城を攻めさせた。その結果、
成政「申し上げます。鳴海城を攻めていた三百の兵、惨敗しました。」
負けたとの知らせが届いた。
信忠「・・・これで良い。姉上、中島砦に向かいましょう。」
信奈「・・・分かったわ。全軍、中島砦に向かうわよ!」
そして、全軍中島砦に向かった。これには、
勝家(信忠様、一体何を・・・?)
長秀(姫様は何も言わない・・・。何故鳴海城を僅か三百で攻めさせたのか・・・?)
可成(若・・・。)
長可(よく分かんねーけど、あたしは従うまでだな・・・。)
秀隆(私は、殿を信じる・・・!)
良晴(こんなの、ゲームにはなかったぞ・・・!信忠は一体何をするつもりだ・・・?)
それぞれ頭の上に?マークが浮かんだのだった。
今川本陣
義元「おーっほっほ!これで織田は終わりですわ!」
富塚元繁「織田の狙いは恐らく鳴海城。丹下、善照寺、中島の三砦を落としましょう!!」
義元「そうですわね。これで尾張は妾の物。そして、知多の経済も・・・。さあ、信澄ちゃん、遊びましょう。」
信澄「はい!」
そう言って、義元は信澄と蹴鞠を楽しんだのであった。
中島砦
秀隆「殿、今川の本陣、末端の兵まで気の緩む者まで現れております!」
その知らせに、
信忠「・・・機は熟した!姉上、この機を逃さず本陣を攻撃しましょう!」
信奈「良いけど、皆に作戦を伝えなさい。勿論私にも。分かんなかったんだから。」
信忠「ああ、そうですね。皆にはいらぬ心配を掛けたな、スマン!俺がここまで口を閉ざしたのは、この一世一代の作戦が敵に漏れぬよう味方にも秘密を貫いたからだ!今川はまんまと俺の策に嵌まった!『孫呉兵術』全ての条件が今ここに揃った!」
信奈「それで、その策とは何かしら?」
信忠「一つ、『卑うして之を驕らしむ』。僅か三百の兵で鳴海城を攻めさせたのは、俺達の少数劣勢を見せるいわば撒き餌!これにまんまと今川は完全に油断し、信澄のおかげもあるが、厭戦気分になった!!」
勝家「な、何と・・・!」
信忠「二つ、『利を見て進まざるは労るるなり』。今川軍は六日で四十里を大所帯で行軍し、夜通し戦い疲れている!!」
信奈「・・・!」
信忠「三つ、『千の力で万の敵を撃つは狭い谷間で戦え』。桶狭間の山道は非常に狭い!敵がどんなに多勢でも、この道なら俺達が相手するは少数の兵と同じものだ!それも良晴の情報で確信を得た!これを一気に崩せば、曲がりくねった山道に視界は遮られて、本陣後軍は前線で何が起ったかも分からず大混乱となる。恐怖は伝染し、総崩れとなる!」
可成「おおっ!!」
信忠「そして、最後の四つ目」
その時、
びゅおおっ
夏の時期によく吹く海風が吹いた。
勝家「!・・・まさかこれは、呉子の『まさに戦おうとする時は追い風の時に大声を出して攻めよ』では!!」
信忠「そうだ。この時期の未の刻に、鳴海城から桶狭間に通じる狭い道に夏の強い海風は吹き抜ける!絶好の追い風だ!!」
これには、
信奈「あなた、ここまで全て計算してたの!?」
長秀「これはこれは・・・点数以上です!!」
勝家「勝てる!!勝てるぞ!!」
可成「若!やりますなあ!」
長可「スゲー!!スゲーよ信忠様!!」
秀隆「流石は殿です!!」
皆それぞれ賞賛の声を上げた。良晴に至っては、
良晴(な・・・なんて事だ・・・!!信忠はここまで計算してたのか・・・!!全て、信忠の掌の上って事か・・・!!)
驚きのあまり、絶句してしまったのだった。
その時、突然雨が降ったのだった。
信忠「ははっ!熱田大明神は風だけでなく、雨まで運んできた!」
信奈「これぞ天運!一気に本陣に奇襲を掛けるわよ!!」
信忠「この戦に参じた者は家の名誉、末代まで語り継がれよう!!天は我らにあり!ひたすら励めぇ!!」
この言葉に、
織田軍兵士「「「おおーっ!!」」」
織田軍の士気は最高潮に上がったのであった。そして、信奈と信忠は義元のいる桶狭間に迫った。
今川本陣
義元「もう、何て雨ですの!これじゃ蹴鞠も出来やしませんわ。」
その時、
義元「あら?信澄ちゃん達は何処に行きましたの?」
富塚元繁「先程から姿が見えませぬ。」
といった状態であった。
織田軍
信奈「狙うは今川義元ただ一人!」
信忠「真っ直ぐ本陣に向かえ!」
信奈・信忠「「全軍、突撃!」」
勝家「うおおっ!!」
可成「行けーっ!!」
長可「ヨッシャー!!暴れてやるぜー!!」
秀隆「行けーっ!!」
今川本陣
義元「な、何ですの!?」
富塚元繁「敵の奇襲だ!全軍迎え撃て!!」
しかし、
岡崎忠実「ダメじゃ!酔い潰れた上にこの雨では戦になりもうさぬ!」
今川軍は戦える状態ではなかった。
そんな中、勝家と信忠はどんどん突き進み、
信忠・勝家「「どけーっ!!/どきやがれーっ!!」」
森親子と秀隆も
可成・長可「「うおりゃー!!」」
秀隆「殿の道を阻むなっ!!」
暴れまくっていた。
信奈「相変わらず、信忠の兵は一騎当千ね。」
他にも長秀や犬千代も暴れ、今川軍はどんどん戦線が崩れていったのであった。
犬千代「本陣は?」
成政「信忠様と勝家殿が向かっております!」
成政が言うように、信忠と勝家はそのまま真っ直ぐ突き進み、今川本陣に到着した。
勝家「今川義元、覚悟!!」
と勝家が槍を構えて本陣に入ったが、
富塚元繁「ここから先は!」
岡崎忠実「我らが通さぬ!」
富塚元繁と岡崎忠実が前に立った。
信忠「・・・行くぞ!!」
勝家「なら、覚悟!!」
そして、それぞれ一騎打ちが始まったが力の差は歴然、あっさり二人は信忠と勝家に討ち取られてしまったのだった。それを見た義元は、
義元「妾の負けです!!この身は如何様にしても構いません!!だからどうか、これ以上兵を傷つけないで下さいまし!!」
と義元は頭を下げて言ったのだった。それを見た信忠は、
信忠「なら、降伏の証に、お前の髪を切るぞ。」
そう言い、義元の背後に回った。そして、信忠は器用に彼女の髪を切り、
信忠「戦は終わった!!義元は降伏した!!これがその証だっ!!」
勝家「直ちに戦闘を止めよっ!!」
と高らかに叫び、その証を掲げたのだった。
信奈「やったのね!!」
良晴「おっしゃー!!」
織田軍兵士「「「おおおっ、俺達はやったぞー!!」」」
義元の降伏によって、将兵は散り散りとなり、『東海の弓取り』と言われた今川家は滅んだのでございます。
そして、義元を見た良晴は、
良晴「うおー!!義元も姫武将だ!!しかも超絶美人!!これは美味しすぎる!!」
と興奮していた。・・・おいおい・・・。何はともあれ、桶狭間の戦いは織田の大勝利に終わったのであった。
投稿できました。
桶狭間の戦い、何とか終えました。
最後の方は結構強引に締めましたが、お許し下さい(土下座)
桶狭間の戦いですが、よく言われるのは、今川義元が京に向けて上洛し天下に号令をかけるために尾張に侵入したところを信長が迎え撃ったというのが通説でしたが、近年の研究では、知多半島を巡る争いであったというのがこの戦いであり、義元が尾張に侵攻した理由だそうです。
この争いは、信長の父である信秀の代から始まっており、その知多半島を巡る最終決戦が「桶狭間の戦い」でした。
長文で、大変申し訳ございません。
次回ですが、美濃に目を向けます。
では、また!!