今井宗久の納屋
今井宗久の納屋に、全ての会合衆が集まった。
津田宗及「手前は天王寺屋の津田宗及にございます。」
光秀「私から事情を説明させていただきます。」
そして、光秀は一連の事情を話した。
津田宗及「成程。お話は分かりました。」
信奈「私は必ず天下人になるわ。これは先行投資だと思って頂戴。」
津田宗及「京周辺の畿内は、信奈殿の弟君であらせられる信忠殿の八面六臂のご活躍で見事平定なされた。しかし、越前の朝倉や甲斐武田、越後上杉とまだまだ敵は多い。天下人など並大抵の事ではありますまい。」
津田宗及「それに・・・近衛殿の無理難題、近衛殿はともかく他の公家衆が、『織田を天下人とは認めぬ』という事では?」
これには
良晴(まずいな、正論だぜ。)
良晴は聞いててそう感じた。
今井宗久「津田はん。それがしは織田信奈様を天下人に相応しいとお見受けします。ここにはおりませぬが、その弟君の信忠様も然り。何より、堺の町を大切に思ってくれはるお方や。」
これに、今井宗久はそうフォローした。
津田宗及「そこまで肩入れなさるなら、たこ焼きの独占権をお売りになったらどうです?」
これには
今井宗久「何やて?」
津田宗及「12万貫で買います。」
今井宗久は驚いてしまった。
信奈「良いわ。買って貰おうじゃないの。」
しかし、信奈はそう津田宗及に言った。
今井宗久「おひいさま!?何を・・・」
信奈「関西人の舌をうならせる名物料理だったら、文句無いんでしょ?」
津田宗及「ほう、そんな物がありますかな?」
これに
信奈「このサルが作るわ。」
と言った。
良晴「ええっ、俺かよ!?」
これには、言われると思わなかった良晴は驚き
光秀「無理です!サル先輩にそんな芸当できっこないです!ここは私に・・・!」
光秀がそう言ったが
信奈「いいえ。サルならきっと出来るわ。」
と信奈は良晴を見てそう言った。
津田宗及「ふふ、良いでしょう。ただし、明智殿にも作っていただきます。」
これには、光秀も驚いた。
津田宗及「どうせなら勝負にした方が盛り上がるというもの。手前は明智殿に、今井殿はサル殿に賭けるのです。」
今井宗久「一体、何を賭けると言いますのや?」
津田宗及「会合衆代表の座、では如何ですかな?」
これに
今井宗久「はっ!?」
今井宗久は驚いてしまった。
津田宗及「手前が勝ったら、明智殿の料理は12万貫で買い上げましょう。悪い話ではありますまい。」
これに
信奈「望む所よ。」
信奈はそう言い
信奈「宗久。私が天下を取った暁には、日本一の商人いえ、世界一の商人にする事を約束するわ!」
と真っ直ぐな目で言った。
今井宗久「世界一でっか?これはまた大風呂敷でんなぁ。」
と言い、賭けに乗ったのだった。
良晴「妙な事になっちまったが、どっちが勝っても12万貫が手に入るんだ。俺達さえ上手くやれば・・・」
その時
光秀「黙りやがれです。」
と光秀が突然良晴にそう言った。
光秀「先輩面されるのはここまでです。サル人間には負けません。」
良晴「な、何言ってんだよ?」
光秀「私が勝たなきゃ意味ないんです!」
良晴「それじゃ今井のおっさんが・・・」
光秀「私の12万貫で信奈様と信忠様を助けるのです。その為には、誰がどうなろうと知ったこっちゃないです。」
これに
良晴「お前な・・・!」
良晴は怒ったが
光秀「我が明智家は由緒正しき名門。お前呼ばわりされる覚えは無いです!」
と光秀は目を吊り上げて言った。
良晴「っ!?」
光秀「父亡き後、母上は一人で明智家を支えながら立派な武将になるようにと、私に最高の教育を施して下さいました。」
そう言い、一枚の書状を出して
光秀「今病に倒れた母上に報いるには、織田家で一番になるしかないんです!」
そう言った。
良晴「いや、親孝行なのは分かるけど・・・」
光秀「そんな生温いものじゃないんです!手段は選びません!邪魔する奴はどいつもこいつも皆敵です!」
そう光秀は言ったのだった。
翌日
昨日の事を信奈に話した良晴。
信奈「あの十兵衛がねぇ・・・?」
これに、信奈は驚いた。
信奈「ま、アンタが勝てば良いだけの話よ。」
良晴「今井のおっさんまで巻き込んでるんだぜ。」
信奈「やる気を出してるのは良い事だわ。」
信奈「それより、名物料理は思い付いたの?」
良晴「並大抵の料理じゃあ、納得しねーだろう。色々と考えてはみたんだが・・・」
すると
今井宗久「たこ焼き、でっしゃろ?」
これに、今井宗久がそう言った。
良晴「気付いてたのか?」
今井宗久「そして恐らく、津田宗及も明智殿にたこ焼きを作らせるつもりでっしゃろなぁ。」
信奈「それじゃあ、十兵衛が勝ったら・・・」
今井宗久「向こうの狙いは、端から会合衆代表の座と、たこ焼きの独占権や。12万貫でも安い買物でっせ。」
良晴「織田家が得するように仕向けておいて、自分が最大の利益を手にする計画だったんだ。」
信奈「逆に利用されたって事?」
今井宗久「津田宗及を甘ぁ見たらあきまへん。」
良晴「それが分かってて何故・・・?」
今井宗久「商人は人を見て商いをする。それがしは、織田信奈こそが天下人やと見ました。」
今井宗久「そのおひいさまが、あんさんを心から信頼してくれはる。それがしが信じひんわけにはいきまへんでっしゃろ?」
これに
良晴「おっさん・・・」
良晴は嬉しい気持ちになった。
そして、遂に当日を迎えたのだった。
信奈「さあさあ。遂にやって参りました、たこ焼き対決!実況は私、町娘の吉が担当させていただきます!」
信奈「赤の屋台は、明智十兵衛光秀と助手の犬千代!」
信奈「対する青の屋台は、サルと五右衛門!」
信奈「勝てば12万貫負ければ岐阜城の厨房送り!」
これには
良晴「聞いてねーよ!」
良晴は抗議したが
信奈「つべこべ言わずに、ちゃっちゃっと始めー!」
構わずスタートさせたのだった。
光秀「サル人間め、厨房送り決定です!」
信奈「おおっと!十兵衛は既に生地を用意し、万全の備え!」
光秀「タダの生地じゃないです!小麦は香り高くコシの強い讃岐産。更に、昆布と鰹だしの絶品だしを入れてやったです!」
これには
今井宗久「か・・・関西人の好みを熟知しとるがなー!」
今井宗久は感動してしまった。
信奈「おまけに高級食材の山!金に物を言わせた、先制攻撃です!」
良晴「はっ!たこ焼きは庶民の味だぜ!」
五右衛門「負け惜しみにごじゃるな。」
光秀「今です!最高級明石のたこを投入するのです!」
犬千代「たこ・・・たこ・・・」
・・・犬千代、あまりたこで遊ぶなよ。
光秀(天下を取るのは織田信奈と織田信忠。天下を取らせるのは、この明智十兵衛光秀です。)
そして、光秀はたこの足を華麗に切り裂いて投入した。
信奈「見事・・・見事です!それに比べ・・・」
一方の良晴達は
良晴「あれ?火が弱いのかな?」
鉄板の予熱が足りず、生地が焼けてなかった。
五右衛門「任せるでごじゃる!」
そう言った五右衛門だったが
ズゴォッ!
良晴「って、アホか!?焦げる焦げる!」
・・・火が強すぎた。
五右衛門「ちと火が強すぎたでごじゃるか。」
・・・ちとどころじゃねーよ。
信奈「おおっと凄い炎。大丈夫でしょうか?」
光秀「私を信じてくれた母上のために、サル人間なんかに絶対負けないです!」
良晴「マズイ・・・どうする?どうする?」
五右衛門「油の引きも足りてないでごじゃるな。」
すると
良晴「油?そうだ油だ!揚げたこ焼きだ!」
そう言い、一発逆転を狙った。
信奈「出ましたサル語!訳が分からないけど、サル語が出た時は本領発揮!何をみせてくれるのでしょうか?」
津田宗及「揚げたこ焼きだと?」
光秀「ハッタリに決まってます!」
良晴「おりゃりゃりゃりゃりゃあっ!」
光秀「いりゃあああっ!」
そして、遂に完成した。
まず最初に良晴のたこ焼きだったが
信奈「うえええっ・・・何なのよ、これ?」
こんがりと焼き上がり焦げていた。そして何より
信奈「黒くて固そうで、白いネバネバぶっかけられて・・・」
良晴「卑猥な表現すんな!」
白い何かがかけられていた。
良晴「それはマヨネーズっていう調味料だ。」
そう、これはマヨネーズだった。
信奈「まよねいず?」
良晴「ああ。油と卵を混ぜて作ったんだ。相性抜群だから食ってみろって。」
そう言われて
信奈「分かったわよ。」
信奈は、良晴が作ったたこ焼きを口に運んだ。
信奈「何コレ、スッゴイ美味しい!!」
すると、信奈の顔が明るくなった。
今井宗久「なんちゅうもん食わせてくれはったんや?美味しゅうて涙が!」
津田宗及「からりと揚がった食感に、『まよねいず』とやらが絶品で!」
同じく食べた今井宗久と津田宗及は、美味しさのあまり涙が止まらなかった。
それを見た光秀は
光秀「そんな・・・」
信じられない表情で見ていた。
光秀(イヤです・・・信奈様の笑顔は・・・十兵衛の物です!)
そして、光秀もたこ焼きを出したが
津田宗及「こ・・・これは・・・?」
光秀「信奈様の大好きな八丁味噌をたっぷりかけた味噌たこ焼きです!」
何とも言えない見た目だった。
光秀「さあさあ、感動の涙を流して食いやがれです!」
そう言われ、口に運んだが
信奈「うえっ、マッズ!」
光秀「えっ?」
今井宗久「何ちゅうもん食わせはるんや?」
光秀「えっ?」
津田宗及「全てが最高なのに、勝ちを焦ったために全てを台無しにしましたな。」
光秀「そんな・・・」
不評だった。
良晴「よっしゃ!勝負あったな!」
これには、良晴は勝利を確信したが
津田宗及「・・・フッ。」
津田宗及は、不敵な笑みを浮かべていたのだった。
そして、遂に結果発表となった。
津田宗及「堺会合衆36人の投票結果を発表します!」
良晴は、勝利の笑みを浮かべ、信奈も笑みを浮かべたが
津田宗及「勝者・・・明智光秀!」
勝ったのは、光秀だった。
光秀「やったですー!」
五右衛門「おかしいでごじゃる。」
犬千代「良晴が勝ったはず。」
これには、五右衛門と犬千代がそう抗議した。
光秀「どうとでも言いやがれです。勝てば良いんです勝てば。」
今井宗久「随分と買収に銭を使いましたな。」
津田宗及「客に売るときは味噌を使わねば良いだけの事。これでたこ焼きも堺の町も、手前が握らせていただきます。」
今井宗久「まあ、これも勝負や。ただし、揚げたこ焼きはそれがしが貰いますわ。」
津田宗及「何?」
今井宗久「あんさんらはいりまへんのやろ?」
津田宗及「フフッ・・・食えぬお人だ。」
今井宗久「堺も、おひいさまが天下を取ればそれがしの手に戻りますわ。」
津田宗及「皮算用にならねば良いですな。」
その横で、今井宗久と津田宗及はそういった話をしていた。
良晴「お前本当にこれで良いのかよ?」
光秀「良いんです!サル人間はさっさと岐阜城の厨房へ行きやがれです。」
光秀「さあ信奈様、サルに左遷命令を!」
しかし
信奈「・・・。」
信奈は無表情のまま何も語らなかった。
それに気付かない光秀は
光秀「さあさあ、信奈様!」
催促していた。
信奈「・・・明日、12万貫を近衛に届けてきなさい・・・」
これに信奈は冷たい顔で
信奈「良いわね、『光秀』?」
いつもの通称では無く、名前で呼んだのだった。
光秀「光・・・秀?」
これには、光秀は上手く呑み込めず
犬千代「最低・・・。」
五右衛門「見損なったでござる。」
犬千代も五右衛門も、幻滅した顔でその場を去ったのだった。
良晴「・・・。」
良晴も、複雑な表情でその場を見て立ち去った。
光秀「・・・。」
光秀は、ショックを受けた表情のまま立ち尽くしたのだった。
こうして、将軍宣下を成したのだったが、後味の悪い結果となってしまった。
その裏で、信奈を追い落とす計画が、着々と進めていたのであった。
投稿出来ました。
上手くアレンジできたかな・・・?
それでは、また。