信忠の部屋
信忠「なあ、六。」
勝家「何でしょう、信忠様?」
信忠「今日一緒に、城下を見て回らないか?」
勝家「えっ、私とですか?」
信忠「ああ、三左達は他の仕事で忙しいって言うし、ダメかな?」
すると、
勝家「はっ!!私で宜しければ、是非!!」
勝家は非常に元気よく了承したのだった。
清洲城城下
尾張では、楽市楽座と呼ばれる人々が自由に取引できる市場が作られ、かつてない賑わいと繁栄をもたらしておりました。
勝家「信忠様、楽市楽座のおかげで相変わらず城下が賑やかですね。」
信忠「ああ、領民達が喜んでくれて、嬉しい限りだ。」
勝家「そうですね。」
信忠「これも、お前が賛成してくれたおかげだよ。姉上も感謝してた。」
と信忠は勝家に感謝の言葉を述べた。これには、
勝家「いえ、私は、過去に近江の六角江雲が行い成功したのを思い出し、賛成したまでです。」
勝家は謙遜した。
信忠「いや、お前のおかげでもある。本当にありがとな。」
そう言って、信忠は勝家の頭を優しく撫でた。これには、
勝家「の、信忠様!?」
勝家は嬉しい半面、恥ずかしい気持ちになったのであった。丁度同じ頃、良晴と犬千代も城下に行っていたが、この二人を偶然見かけて、
良晴「あっ、信忠と勝家だ。」
犬千代「・・・二人で逢い引き?」
良晴「そうかもしんねーな。くうう、信忠の奴、羨ましいぜ。」
犬千代「良晴、信忠様と勝家の邪魔しちゃ、ダメ。」
良晴「そんなの、分かってるよ。しかし信忠、本当に羨ましいなぁ・・・。犬千代も、もっと栄養のある奴食わねーと、勝家みたいにおっぱいがバインバインのたゆんたゆんにならねーぞ。」
すると、それを聞いた犬千代は、
犬千代「胸なんかタダの飾り!!それにアレは脂肪の塊!!」
そう言った。それに対し良晴は、
良晴「おっぱいは脂肪じゃねえ!!あの中に男の夢と希望が詰まってるんだ!!」
と反論したのだった。その時、
??「はっはっは、下品だねえ。」
という声が聞こえた。
信勝「姉上のサルを一目見ようかと思ったけど、こんなのとはね。」
織田勘十郎信勝。信奈と信忠が生まれていなければ、家督を継いだ人物にございます。
良晴(信長の弟って歴史上だと・・・。)
信勝「でもまあ、兄上と違って、礼儀知らずでうつけの姉上にはおサルさんがお似合いかな。」
良晴「自分の姉をうつけ呼ばわりか。礼儀知らずはお前の方だろ?」
犬千代「良晴、ダメ。」
良晴「信奈がバカにされてんだぞ。」
犬千代「信勝様は姫様と信忠様の弟。逆らうのダメ。」
良晴「けど・・・!」
その時、
信忠「良晴と犬千代じゃねーか?それと・・・」
勝家「お久し振りです、信勝様。」
信忠と勝家が現れた。
信勝「兄上、お久し振りです。勝家も、久し振りだね。」
信忠「お前、こんなとこで何やってる?」
信勝「姉上がおサルさんを雇ったとお聞きしたので、末森から参りました。」
信忠「・・・そうか。」
すると、信勝は良晴を見て、
信勝「君は何も知らないんだね。兄上も覚えておられるでしょう?父上の葬儀で、姉上がやったことを・・・。」
あの日のことを言った。
回想
信秀は死ぬ前から、信奈を跡継ぎと決めていたが、家臣の中には信奈の普段の行動から彼女をうつけだと思っている者も多く、双子の弟で、実力と人格を兼ね備え人望の厚い信忠を後継者にという声も上がり、これには実母の土田御前も支持した程であった。しかし本人は、
信忠「俺は父上の後を継ぐに足る器ではない。」
と固辞したのであった。そのため、仕方なく末の弟である信勝を跡継ぎにしようと企んだが、信秀は跡継ぎを信奈と決めたまま亡くなったので、跡継ぎは結局信奈のままであった。
そして、信秀の葬儀の日、萬松寺には織田一門含め多くの人が出席していた。
平手政秀「若様、こちらの席でございます。」
当然信忠も出席し、案内された席に座った。
家臣A「ところで政秀殿、信奈様は何処なのだ?」
平手政秀「姫様はまもなく来られる予定です。お待ちくだされ。」
その横で、とある家臣が政秀に尋ね、政秀はかなり困惑した表情で対応していた。
それから暫く経っても、
林秀貞「平手殿、信忠様と信勝様は既に参ったというのに、信奈様はまだ参られないのか?」
平手政秀「林殿、もうしばらくお待ちくだされ、まもなく来るはずでございます。」
焼香の時間になっても現れなかった。これには、葬儀に出ていた一門と家臣はあきれ果てた顔をしていた。
林秀貞「もう待てん、信忠様から焼香を上げていただこう。信忠様、ご焼香を」
林秀貞が痺れを切らして、信忠から先に焼香させようとしたその時、葬儀場に信奈がやって来た。政秀は安堵したが、信奈の格好を見て唖然とした。きちんと正装をせず、いつものうつけの格好で来ていたからだ。
政秀だけでなく信忠を除いた皆も唖然としていたが、信奈はそんな周囲の目に気にも留めず、焼香台の前まで行き、信秀の位牌をじっと睨みつけた。そして、焼香を一掴みすると、信秀の位牌に投げつけ、すぐに出て行ってしまったのであった。
それを見た一同は、
家臣B「何という罰当たりなことを、やはり、あの者は大うつけだな。」
家臣C「さよう。うつけ姫には当主の器がない。」
家臣D「あの方が当主では、我らは滅びる運命だ。やはり、信忠様が後を継ぐべきだ。」
と口々に信奈の悪口を言っていた。その中で正秀は、思い詰めた顔で信奈が出て行った方向をじっと見ており、
信忠(姉上・・・。)
信忠は、信奈が焼香を投げたとき目に涙が浮かんでいたのが見えたため、複雑な表情をしたのであった。
回想終了
信勝「・・・と言った事があったのさ。」
良晴(可愛くねー強がりなんかするから・・・。)
それを聞いた良晴は、信奈に対してそう思った。
信勝「いくら父上の遺言とはいえ、姉上に尾張の当主は務まらない。兄上が家督を継ぐべきだったんだ。」
信忠「・・・俺には務まらねーよ。」
信勝「そんなことありません!」
良晴「じゃあ、お前はどうなんだよ?」
信勝「え?」
良晴「尾張を手にしてどうする?こういう国にしたいという野望はあるのか?」
良晴にそう言われた信勝は、手に持ってるういろうを食べながら
信勝「ういろうを宣伝して、全国区の食べ物にするとか!」
そう言った。すると良晴から、
良晴「失格だ!お前は大名の器じゃない!県知事クラスがいいとこだ!」
と言った。
信忠「・・・けんちじって何だ?」
勝家「さあ?」
犬千代「?」
その後も何か言っていたが、全く以て曖昧な回答を述べていたため、
良晴「ダメダメだ!お前が戦国大名になれるなら、俺にだって務まるぜ!」
と信勝は良晴に言われたのだった。
信勝「と、とにかく姉上は、兄上と違って大うつけなんだ、織田家の恥なんだ!母上は幼い頃から姉上を毛嫌いして相手にもしなかった。乱暴で我儘で、南蛮人なんかと仲良くして、天下だの種子島だのと。兄上は常に母上と姉上の間に立っていたが、母上の気持ちも理解できる。母上も家督を継ぐべきは兄上か僕だと仰っていたよ、うつけの姉上ではなく・・・」
すると、
良晴「てめえ!!」
良晴が信勝に拳骨を食らわせようとしたのだが、
信忠「良晴!!」
信忠が良晴を抑えた。
信勝「ひっ!?」
良晴「は、離せよ信忠!!コイツは一発ぶん殴らなきゃ・・・!!」
信忠「良いから落ち着け!!ここでお前が信勝を殴ったら、お前は打ち首だぞ。姉上にも迷惑が掛かる。犬千代、コイツを連れていけ。」
犬千代「はっ!!良晴、行く。」
良晴「お、おい!!犬千代、離せ、離せよ!!」
そして、良晴は犬千代に首根っこ掴まれた状態で連れてかれたのだった。
信忠「・・・さて、信勝。」
信勝「は、はいっ!?」
信忠「お前に色々言いたい事が山ほどあるんだが、一言だけ言わせておく。お前も、母上も尾張ばかりに囚われるな。最悪、尾張は他国に呑み込まれるぞ。」
と信忠は冷たい目で信勝を見下ろしながら言った。
信勝「は、はい・・・。」
それには、信勝は恐怖のあまり、地面に座り込んでしまったのだった。
勝家「信忠様・・・。」
その時、勝家は信忠のもう一つの一面を見て鳥肌が立ったのであった。
それから、信勝は良晴の首を差し出すようにとの話になり、両者一触即発の状態となったのである。
投稿できました。
良晴君も怒る気持ちは分かりますが、例え誰が相手でも、身分が上の人を殴ったらヤバイよ・・・。
さて、信長の若年期のうつけ呼ばわりされたのですが、それは主に『城にじっとしておらず、常に町中をほっつき歩いて商人や旅人と交際している』という日常を批判されてしまったかららしいです。けど、信長はこうした行動から、民が何を考え、何を欲し、さらに管理者である大名は何を成すべきであるかを肌感覚で知る機会を得ていたようです。彼の行動原理は、『民の幸福』の実現だったのではないかと言われております。
何か長文且つうんちくをたれてしまいました、申し訳ございません(土下座)
僕、元々歴史が好きで、大学は文学部史学科であったのでつい・・・。
さ、さて次回は、信勝の謀反騒動ですね。
では、また!!