集う強豪のウマ娘達―。
セイウンスカイ、テイエムオペラオーがマルゼンスキーへターゲットを搾る。
だが、マルゼンスキーが警戒していたのはやはり『不沈艦』だった。
果たして今回も勝利することが出来るのか?そしてトレーナーがマルゼンスキーに伝えた作戦とは―?
少し時間を遡って控室―。
マルゼンスキーはいつもより嬉しそうだった。
「ずいぶんと嬉しそうだね、マルゼンスキー。調子はどうだい?」
「最っ高な気分よ!なんたってクラシックの舞台に立てるのよ!なんか想像してたよりも嬉しいわ!それに...」
「誰もが憧れるようなウマ娘になれるように頑張るわっ♪」
「そうだ、マルゼンスキー。今日のレースでアドバイスがあるんだ」
ーそして時間は元に戻しレース場。ファンファーレと共に観客席からはいままで以上に歓声が地に鳴り響く。
『最も速いウマ娘が勝つという皐月賞!成長を見せつけるのは誰だッ!!』
『現在、1番人気はマルゼンスキー、ここまでジュニア無敗王者の風格が出ています。3番人気にはテイエムオペラオー、2番人気はここまで同じくジュニア無敗王者セイウンスカイ。充分に勝利を狙えますよ!』
(セイちゃんもオペラオーちゃんも中々手強そうだけど...一番危険なのはやっぱりゴルシちゃんね......!)
(チェッ、何番人気の紹介もねえのかよ...ま、いっか。さあて、今回のターゲットはマルゼンスキー!おめえだけだな)
(勝たせてもらいますよ、マルゼン先輩!私だって勝つためにいつもよりキツーいトレーニング重ねてきたんですからっ!)
(どれも粒揃いだね!...その中でも危険なのはあなただ、マルゼンさん!!)
それぞれのウマ娘がターゲットを絞り、強い覚悟を決める。
『ゲートイン完了、出走の準備が整いました』
『さあゲートが開いた、各ウマ娘キレイなスタートを切りました!!』
(やばっ!?少し遅れたかもっ!!)
マルゼンスキーは少し気を張り詰めすぎたか少し遅れた。逃げにとって出遅れは下手をすれば勝敗を大きく変えるミスでもある。
『これは位置取りが熾烈になりそうですね!』
『先行争いはセイウンスカイ、マルゼンスキー、デュオスクトゥム!!』
―また時を遡って控室。
「えぇ!?50%で走るの!?全力じゃなくて?」
トレーナーからの発言にマルゼンスキーは驚く。
「ああ。今回俺が考えたんだけどいきなり100%で走れば負ける可能性がある」
「で、でもあたしは逃げがメインよ?逃げきることが出来れば...」
「忘れたか?追い込みにゴルシがいることを...あいつのスパート掛けた時の速さは間違いなく普段の君よりも速い。その理由は体力を最後まで温存し、400の辺りから仕掛けるからこそ爆発的なスピードを出せる...それを逆手に取ってあえてセイウンスカイに離されないように序盤は50%、中盤から少しずつペースを上げて終盤で100%で行くんだ。君が出来ると俺は思ってる....でも、これはあくまで俺の考えだから君に任せるから」
「いいえっ面白そうね!要はセイちゃんに手の内を隠して最後にかっ飛ばすのね♪そうじゃないとゴルシちゃんにも最後負けそうだし......その作戦に乗るわ!!」
トレーナーが考えた作戦...それはセイウンスカイに全力を見せずに付いていきながら終盤でスパートを掛けるもの。"差し"とはまた違うものだが逃げのウマ娘に離されずに付いていくのは至難の技―。
だが、マルゼンスキーは違う。
(中盤までは50...よねっ!)
『先頭はセイウンスカイ、快調に飛ばしていきます。その後ろにマルゼンスキー。いつもと違いどこか落ち着いているようにも思えます。まだそのエンジンを掛けている途中なのか!?』
(マルゼン先輩、思ったより速くないな......なんでだろう?なんか様子を伺ってるのかな?)
(速い......セイちゃんあたしが思ってるより上だわ...!でも......!!)
マルゼンスキーも全力を終盤まで出してはいけない事もあり付いていくのはかなりキツイものだった。
...しかし、仮にセイウンスカイを全力で挑んで抜いても終盤でゴールドシップの追い込みに抜かれる。
(マルゼンさん、僕は分かっている...あなたは今本気で走っていないっ!...しかしなぜ?セイちゃんではない誰かにターゲットを絞っているのか...!?)
(ったくマルゼンのやつ、なんでタラタラ走ってんだ?ウンスに合わせてるような....らしくねぇの、いつもならバカッ速ぇスピードで走ってんのによ)
―一方、時を同じくして観客席。
「おいおい、マルゼンちゃんずいぶんいつもと違うじゃねえか。調子でもわるいのか?」
「いや、いつもどおりさ。ただ...」
「ただ?...なんだよ」
「いや、なんでもない。1つだけ言えるのはゴルシの対策をした、それだけさ」
「ゴルシの対策?なんだそりゃ...」
(確かにセイウンスカイ、オペラオーも相当やばい...が、危険なのはやっぱゴルシだ)
あのデビュー戦でよく知っている...
あの追い込みのヤバさが逃げにとっての一番の驚異ってことを―。
『さあレースは中盤に差し掛かりました!先頭は相変わらずセイウンスカイ!マルゼンスキー、先頭との距離が少しずつ縮まってはいくがまだ後ろを走る!このまま逃げきられてしまうのか!!』
(なんか嫌だなあ...私のペースに付いてきてる感じ...それとも付いてこれないのかな...?どっちなんだろう.....?もう....ここで引き離すか!!)
『おっとセイウンスカイ!ここでペースを上げた!!マルゼンスキー、離されていくッ!!どうしたことか、スーパーカーのエンジンはまだ掛からないのかッ!?』
(ここからペースを上げていく!セイちゃんがペースを上げた...けどまだ100出すほどじゃないわね....!)
『マルゼンスキー!セイウンスカイとの距離を縮めていく!ここで抜いて...いかないっ!?あくまでも抜いていかないっ!?』
(そうか...!マルゼンさんは体力を温存しているんだ....!!だがっ!!)
「ここでボクはいかせてもらうよッ!!」
『おっとテイエムオペラオー!ここでマルゼンスキーを抜いていって!!スーパーカー!!とうとう無敗伝説はここで幕を閉じてしまうのかッ!?それに負けじとセイウンスカイ!さらにペースを上げていきます!!残り400!!』
ここでマルゼンスキーは聞き逃さなかった。
"残り400!!"
「ここで一気に行くわッ!!」
マルゼンスキーはここで温存していた体力を使い加速していく。
(ここでいかなきゃ...そろそろゴルシちゃんが来るはず!!)
(マルゼン先輩がスパートを掛けた!?は、速いっ!?)
(さすがマルゼンさんだっ!ドトウには敵わないがいい勝負相手だ!!)
『マルゼンスキー!!ここでスパートを掛けたッ!!中山の直線は短いぞ!他のウマ娘は間に合うのかっ!?』
(中山の直線は短いし...さすがにマルゼン先輩も追い付けるわけ......)
(まさかっ........そんなことってあるのかい..........!?)
慢心していたセイウンスカイとテイエムオペラオーに衝撃を与える展開があった。
「ウフッ♪おっ先ー♪」
『マルゼンスキー!!ここで抜け出したッ!!スーパーカーは伊達じゃないかッ!?後方から猛スピードでごぼう抜きしていくウマ娘がいるぞッ!!』
(来たわねッ......!!)
そう、マルゼンスキーは想像が付いていた。
「オラオラオラオラァッ!!どけどけぇッ!!」
『ゴールドシップだッ!!ゴールドシップが一気にマルゼンスキーに並び掛けたッ!!』
(ウソ......なんなのあの二人......!?)
(ターゲットを....間違えたか.......!?)
二人を尻目にゴールドシップとマルゼンスキーは並走する。
「マルゼン、ここで1発勝負だぜッ!!」
「ええ、望むところよっ!!」
『これは大接戦だ!!果たして勝つのはマルゼンスキーかッ!?それともゴールドシップかッ!?』
時を同じく観客席―。
「マルゼンスキーがスパートをかけた!!そろそろ来るのか...?」
「おっ、マルゼンちゃんスパートかけたな。...まさかお前、これは作戦か?」
秋山はにやけた顔をして聞いてくる。...まあ、分かられて当然というべきか...
「ああ、ゴルシに向けての作戦だ。...あの追い込みはある意味逃げの驚異だからな」
「ハハッ、まあマルゼンちゃんの逃げはあのウマ娘の中ではトップだろ。だが......」
「ゴルシの本気はどのウマ娘よりもヤバい。"走る姿は不沈艦"とは考えた会長も天才ってもんよな」
ゴールドシップは普段はトレーニングをしない。だからこそレースに命を掛けているウマ娘からしたら不快な存在かもしれない―。
だがゴールドシップはいざレースとなれば他の追随を許さないほどの未知の能力を秘めている...だからこそあの出走ウマ娘のなかで最も危険と予想した。
(今ああして並べているのは序盤に体力を温存させていたからだと思う。もしいつもみたいに走ってたら間違いなくやられてたと思う......頼むぞ、マルゼンスキー!!)
「さあ、一気に勝負仕掛けようぜ!!うおおおっ!!」
「えぇ........この勝負、あたしが勝たせてもらうわっ♪」
『速い!速すぎる!!これは現実か!?あれは未知の空間ッ!!勝つのはどっちか!?』
「「うおおおおおおおおおっ!!!」」
『ゴールインッ!!同着ッ!同着だ!これは写真判定で勝負が決まります.......おおっとこれはッ!!』
あ
少しの時間に間が空き、観客がざわついた。
「なあ、あれってマルゼンスキーが勝ったんじゃないか?」
「いやわからねぇぞ、ゴールドシップとほぼ並走状態でゴールしたからな...」
「赤い服のお姉ちゃん白い髪のお姉ちゃんに勝ったよね?」
「どうだろう?白い髪のお姉ちゃんも速かったよ?」
大人、そして子供を連れた家族もどちらが勝ったのかざわつく。
―そしてモニターに写真が映る。
『マルゼンスキー!!マルゼンスキーが僅差で1着ッ!!2着はゴールドシップ!!3着はセイウンスカイッ!!』
結果が分かった瞬間観客全員が大きな歓声を上げた。
『今回の皐月賞、素晴らしいレースでしたッ!!スーパーカーはやはり速かった!!』
「かぁーっ!!やっぱ負けちまったか~......いいレースだったぜ、マルゼン!!」
「ウフフ、今回のレース最高だったわ♪今までのレースよりもずーっと!!」
「マルゼン先輩、次こそは勝っちゃいますからね~」
「あぁ、素晴らしいッ!!マルゼンさん、ゴールドシップ!君たちの走り今後の参考にさせてもらうよッ!!」
―そしてウイニングライブを終えた後。
「マルゼンスキー!お疲れ様」
「あらトレーナーちゃん!あたしの走り、しっかり見てたかしら?」
「最高だったよ、あの作戦うまくいくかヒヤヒヤしたけど君なら出来るって信じてたからね」
「ウフッ、ありがと♪あのねトレーナーちゃん、あたし今日の皐月賞で1つの目標を持つことにしたわ」
今まで楽しく走ることを考えていたマルゼンスキーに目標が出来た。それは紛いもない、彼女もまたデビューする前から大きな成長を遂げたことの証だ。
「あたし、今回のゴルシちゃんとのレースで思ったの。もっともっと頑張らなくちゃって。だから、今後も追われる立場として...全力を尽くしてトゥインクル・シリーズに力を入れていこうと思うの♪」
「そうか.......目標を持てるって、いいことだな!...よし、じゃあ俺はもっともっと君が頑張れるようにサポートしていくよ!」
「それなら私たちも...マルゼン先輩の背中に追い付けるように頑張ります!」
「あらっ!スペちゃん、グラスちゃん!応援に来てくれたの?」
俺も後々から気付いたのだがこの皐月賞にスペシャルウィークとグラスワンダーも応援に来てくれていたようだ。
「さて、次は日本ダービーねぇ.....次もまた、最高の走りをみんなに見せるわね♪」
―こうして皐月賞はマルゼンスキーの勝利で幕を閉じた。
...しかし、マルゼンスキーのその心意気とは裏腹に予測もしないトラブルが起きようとは思いもしなかった―。
次回へ続く―。
投稿遅くなってしまいました、蒼井 みことです!
最近少し投稿が遅れてしまいすみません...動画編集や小説の内容を考えるだけで1日が終わってしまうこともしばしば...(そんなことはない)
しかし、その努力も実って少しずつYouTubeチャンネル『みこと』も成長しつつあります!
今回の話の元になったのは漫画『頭文字D』に登場する二宮 大輝というキャラとバトルする際の作戦、『相手に前半は相手に手の内を見せるな、後半に100%で走れ』から来ています!分かった人いるかな?
良かったらぜひ『みこと』で検索して遊びに来てくださいね!ウマ娘MAD動画があなたの暇を潰してくれるでしょう!
それでは次回も、お楽しみに!