規格外の風、その名はマルゼンスキー。   作:蒼井みこと

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皐月賞を盛り上げたマルゼンスキー、ゴールドシップの競り合いはまた新たな物語の1ページとなった。
そしてマルゼンスキーもまた目標を持つことができた。次の日本ダービーに向けて頑張ることを決意するその気持ちを崩すような、最悪な事態が待ち受けていた―。


第11レース.最悪の展開―。

皐月賞から数日後、俺とマルゼンスキーは理事長室へ呼ばれた。

 

 

「うむ、2人ともよく来てくてれたっ!」

 

 

そこにはたづなさん、会長シンボリルドルフ、そして理事長の秋川 やよいがいた。

 

 

「君たちには悲しい知らせがあるんだ」

 

「知らせ...ですか?それはいったい......」

 

「トレーナーさんとマルゼンスキーさんが次回出走予定の日本ダービーですが......」

 

 

たづなさんはとても悲しい顔で言葉を詰まらせた。

 

 

「実は、皐月賞の後にマルゼンスキーさんの日本ダービー....そして今後のレースの出走許可が下りなかったんです......」

 

「そんなっ!?...なんで......なんで............」

 

 

マルゼンスキーの目に輝きを無くしていた。

今までのトレーニングは、レースはなんだったのかとショックを受けている......

 

 

「確かにマルゼンスキーの戦績はとても素晴らしい...観客からもファンレターが届くほどだ。しかし、運営側としてその常勝がどうしても"レースの盛り上がり"に欠ける...ということらしい。...最悪、トゥインクル・シリーズを諦めざる得なくなるかもしれない」

 

 

確かにシンボリルドルフの言う通りだ。今までにレースをしてきたミホノブルボン、ナリタブライアン、セイウンスカイ、テイエムオペラオーはそれぞれ異名を持つ強豪だ。

...しかし、それはマルゼンスキーの努力ゆえに手に入れた勝利でもある。

 

 

「驚愕ッ...私も実はこのような事態になったのは初めてなんだ......まさか特定のウマ娘の出走を運営側からストップが入るとは...」

 

「待ってください!その...僕のワガママになってしまうのですが......なんとか交渉してもらえませんかっ!?今までマルゼンスキーも挫折しそうな出来事もありました!!しかし、それを乗り越えてきたんですッ!!」

 

「落ち着くんだ、トレーナー君」

 

俺は必死に理事長に運営側との交渉を願う。

こんなところで...彼女の夢を終わらせたくない...!

 

 

「彼女だって夢を持ってこのトゥインクル・シリーズを走ってきました!!それをこんな理不尽な形で終わらせてしまうのはッ...ぐっ.....!」

 

 

俺はシンボリルドルフに両手で胸ぐらを掴まれそのまま持ち上げられた。

 

 

「落ち着け、と言ったのが聞こえなかったのか?誰に向かって言っているのか......少しは立場をわきまえろ」

 

「ルドルフやめてっ!!トレーナーちゃんは悪くないわ!!」

 

「確かに君は素晴らしいトレーナーだ。新人でありながらその他のさらに上に立つほどの実力を持っている...だが、どうであろうが君は新人トレーナーに過ぎない。口に気を付けろ」

 

「静粛ッ!!静粛にッ!!ルドルフ君、暴力はよせ、マルゼンスキー君の言う通り、彼は悪くない」

 

 

シンボリルドルフはそれを聞くと俺を地に下ろした。...まさかウマ娘があそこまで力があるとは思いもしなかった。

 

 

「うむ......分かった、私も交渉してみよう。しかし、仮に交渉がうまくいっても悪条件が付くことは避けられないかもしれないがよろしいか?」

 

 

とても俺からは返事を返せなかった。これは俺が決めるものではない。

...だが、マルゼンスキーがここで断れば俺たちの担当トレーナー、担当ウマ娘としての契約は終わる事は確実のものとなる。...そしてマルゼンスキーもターフから去ることになる。

...しかし、マルゼンスキーの目は俺を見ていた。

その目は"自分を信じてほしい"という目をしていた。

 

 

「.......分かりました。もし、交渉がうまくいって悪条件があたしに付くだろうとやらせてもらいます。もし交渉がうまくいかなかったら.......そのときはこの学園の生徒を辞めさせていただきます」

 

「なっ.......!?マルゼンスキー、いったい何を言って......!!」

 

「言ったでしょう、トレーナーちゃん。あたしは楽しく走るため...後輩ちゃんに良いところを見せたくてこの学園に来たの。......それが叶わないのならこの学園にいる意味.......ないもの」

 

 

そう言うとマルゼンスキーは理事長から出ていった。

 

 

「マ、マルゼンスキー!!」

 

「私を信じてくれ、トレーナー君。必ず......マルゼンスキー君を必ずターフに立たせてみせると約束しようっ.....!!」

 

 

理事長の目もまた決意に満ちたものだった。

今はただ......奇跡を信じるしかないのかもしれない。

"規格外"というものは.......時には良くない展開を作ってしまうのかもしれない―。

 

 

そして放課後。俺のもとにスペシャルウィークとグラスワンダーが走ってきた。

 

 

「トレーナーさんっ!!マルゼン先輩を見ませんでしたか!?」

 

「いや、見てないけど...練習コースにいないのか?」

 

「それが......学園の中でも普段しっかり授業を受けている先輩がいないって話になってたんです...」

 

「なんだって......!?」

 

 

ふと思い出した...あまり信用したくはないが...まさかこの間のあの悪夢はこれを示唆するものじゃないのか?と。

 

 

「車は....!?」

 

「それが...車もないんです......先輩と仲が良い後輩の子にもどこにいるか聞いてみたんですけど.......」

 

「分かった...俺探してくるから君たちはトレーニングに戻るんだ!!」

 

「トレーナーさん、どこへ行くつもりですか?」

 

 

俺の手をグラスワンダーは掴んで引き止めた。

 

 

「決まってる...彼女を探しに行くんだよ......!!」

 

「アテはあるんですか?無いのに探しに行ってどうするんです?」

 

「無くてもかまわない...彼女をこのまま野放しにするわけにもいかないだろ!!」

 

「トレーナーさん!!」

 

 

グラスワンダーが俺をジッと見つめる。

 

 

「やけにならないでください。何もしないで探すよりは周りの人に先輩のことについて聞いてから行くべきです、落ち着いて」

 

「そんな時間は...」

 

 

そんなとき校内放送で会長、シンボリルドルフが俺を呼んだ。

 

 

「すまない、こんな時間に呼び出して」

 

「いえ...しかし、あまり時間がないので出来れば早く用件を...」

 

「マルゼンスキーを探しているのだろう?」

 

「......!?」

 

 

会長のところまで話が出回っているのか...ふと会長の頬に目がいった。頬が少し赤く腫れているようにも見えた。

 

 

「その頬....いったい、どうしたんですか?」

 

「ああ、これか?...フフ.....彼女にやられたよ。...初めてだ、彼女が怒っている姿を見たのは」

 

 

少し時を遡って屋上ー。

 

 

「マルゼンスキー、悪いな呼びだしてしまっ...ッ!?」

 

 

私は彼女に今後のこと、そしてトレーナー君にしたことを謝ろうと屋上へ呼んだ。

...しかし、彼女の行動は私の頬を叩いたことから始まった。

 

 

「ねぇ、どうしてトレーナーちゃんにあんなことしたの?」

 

「それは......」

 

「あなた...トレーナーちゃんがどれだけ苦労して私とここまで来たのか分かってるの...!!」

 

 

マルゼンスキーの目はいつもの彼女しか見たことない人ならおそらく怖くて真っ直ぐ見つめるのも難しいだろう。...無論、私も見ることなんて出来なかった。

 

 

「トレーナーちゃんはねぇ......他のトレーナーとはわけが違うのよっ!!...楽しく走りたい私を...そんな私の願いを受け入れてくれたのっ!どのレースを走るか...それも私に考えさせてくれたのよ...!!勝つことと立場ばかりしか頭にないトレーナーとあなたなんかと一緒にしないでっ!!!」

 

「す、すまない。そういうつもりじゃなかったんだ。私はトレーナー君の件と今後の君のことを話し合いたいと思って....」

 

「それに、トレーナーちゃんの件はトレーナーちゃんに先に謝った?あたしに言う前に彼に先に言うべきじゃないのかしら......後、理事長室の時にあたし言ったわよね?......もし交渉に失敗したらあたし、ここを辞めさせてもらうって。辞めたら前にいた地元の学校に戻って後輩ちゃん達と卒業までの間普通の学生として過ごす。...レースにすら出られないんだったらこの学園にいる意味なんて無いから...!!」

 

 

彼女がいかに彼を慕っているのかが分かる発言だ。

 

 

「あたしはね...地元の学校の後輩ちゃんの夢を背負ってこの学園に来たの。あたしが活躍するところを見たいって...その夢にあたしも楽しく走りたい...その両方を受け入れてくれたのもトレーナーちゃんなの。でも...レースに出走が出来ないのなら後輩ちゃん達に顔向けも出来ない。それにいままで支えてくれたトレーナーちゃんにも.........あなたが求めてた答えはそれだけよ。じゃあね」

 

 

そう言うと彼女は屋上から去っていった。それから行方が分からなくなった―。

 

 

「今更ながらだが.......すまなかった。この件に関しては理事長から2週間ほどの停学処分を受けた。...みっともないな、生徒を束ねる立場でありながら暴力で停学なんてな」

 

「停学なんてあまりにも厳し過ぎるんじゃ...元はと言えば俺が目上の立場に口を聞くから...」

 

「いや、これは受けて当然の事だ。そもそも学園内での暴力はご法度......退学処分にならない方が不思議なものだ。ましてや他の娘の担当トレーナーにだなんてな...」

 

 

シンボリルドルフはうつむいている。...だがこの件は俺も会長より上の理事長に対して失礼な態度を取った。それは俺としても反省しなければならない。

 

 

「マルゼンちゃんを探すんだって?なら、俺達も連れていけよ」

 

「秋山......それに皆.....!!」

 

 

そこには秋山、ゴールドシップ、スペシャルウィーク、グラスワンダーが立っていた。

 

 

「ごめんなさい、どうしてもトレーナーさんを放っておけなくて...やっぱり探すなら皆で探した方がいいんですっ!!」

 

「でもトレーニングは...」

 

「前のトレーナーとは契約を切らせていただきました。この話を何度も言って説得したのですが話を分かってくれなかったので」

 

 

そこまでしてマルゼンスキーと俺を......何やってんだ俺は...その担当トレーナーの今後を壊すようなマネをしちまって.....

 

 

「ツラい時はお互い様、だろ?1人で悩み抱え込まねぇでアタシらにも頼りなよ、なっ?」

 

「ゴルシ.......」

 

「フフ...君は本当にスゴいんだな、こんなに仲間がいるなんて。私が言うのもなんだが......マルゼンスキーのこと、頼んだぞ」

 

「はい......俺も会長に謝ります。無礼な態度を取ってしまい...すみませんでした」

 

 

俺は会長に一礼をした後、秋山達とマルゼンスキーを探すことにした。

.......マルゼンスキー、絶対に探してやるからな...!

 

次回へ続く―。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の物語、いかがだったでしょうか?蒼井みことです!
今回の話は史実だとマルゼンスキーは日本ダービーに持ち込み馬ということもあったりで出走することが出来なかった悲劇の名馬とも言えます......アプリでは出走出来ましたがシンデレラグレイでは出走が叶わなかったようですが....果たしてこの物語では走ることが出来るのか―。
それはまた次回を見てくれると嬉しいです!!
それでは次回も、お楽しみに!
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