それに絶望したマルゼンスキーは学校から行方を眩ましてしまう。
マルゼンスキーを探し、マルゼンスキーを説得することが出来るのか―?
あれから聞き込みをしながらいろいろな場所を探した。
「この辺りこんな赤い車走ってませんでしたか?」
「いやぁ、見てないな...おーい、お前こんな車見たりしなかったか?」
「いや、見てねぇなぁ...こんなすげぇ車なら頭に残るからなぁ...誰か探してるのか?」
「はい。...実は担当のウマ娘の行方が分からなくなってまして......情報、ありがとうございます」
「そうかい...早く見つかるといいなぁ。頑張れよ!もし見つけたら学校に連絡しておくよ」
―時を同じくして場所はゲームセンターを探すスペシャルウィークとグラスワンダー。
「すみませーん、こういう感じのウマ娘見ませんでしたか?」
「いやぁ、見てないね...ってこの娘、"スーパーカー"マルゼンスキーじゃないか!?何かあったのかい!?」
「実は先輩の行方が分からなくなってまして......今、先輩を探してるところなんです」
「そういえばニュースでも見たなぁ...彼女、日本ダービー出られなくなるんじゃないかってな...僕、彼女の大ファンなんだ」
指を差すその先にはマルゼンスキーのグッズが大量にあった。サイン入りの色紙もあった。
「もし、彼女を見つけたらよろしく伝えてくれ。僕はもう1度、あの娘のスーパーカーっぷりを見たいんだ...!」
「ありがとうございますっ!見つけたら、必ず伝えます!!行こう、グラスちゃん!!」
「ええ。情報、ありがとうございました」
―時を同じくして場所は公園のゴールドシップ。
「おーいチビッ子ども~!こんな感じの車見なかったか?」
「あっ!この車よく走ってるよね!カッコいいお姉ちゃんが乗ってていつもここ僕たちが遊んでる時間によく走ってるもん!でも......うーん、今日は見てないね...」
「うん、いつも僕たちが手を振るとニコッと笑って手を振ってくれるもん!でも今日はまだ見てない...お姉ちゃん、どうかしたの?」
「ん?あぁ。今そのお姉ちゃんがいなくてな、探してるんだよ」
(ここもだめか.....何やってんだあのバカは...!!)
―時を同じくして駄菓子屋。
「なあおばちゃん、こんな車かお姉ちゃん見てないか?」
「あら、これマルゼンちゃんの車ねぇ!あの娘、どうかしたのかしら?」
「ああ...実はちょっと色々あって行方が分からないんだよ。おばちゃん、見たりしてないか?」
「いや、見てないねぇ...たまにうちの店にマルゼンちゃんと担当のトレーナーさんが来たりしてたけどねぇ...」
「そうか.......サンキュー、ばあちゃん。礼と言っちゃなんだけどそのお菓子、買ってくよ」
―俺たちは合流し、結果を述べあった。
「やっぱダメか...マルゼンスキー、どこに行ったんだ......」
「........あっ!そういえば!!」
スペシャルウィークが手をポン、と叩いた。
「そういえばマルゼン先輩、サ店?って場所によく行くって聞いたんですっ!そこならもしかすればどこにいるか分かるかもって!...でもサ店って何か分からなくて.....」
「そうかっ!!サ店って確か喫茶店のことだな...前にマルゼンスキーが...」
"ここ、あたしのお気に入りなの。中々ナウいでしょ?"
俺たちはマルゼンスキーのお気に入りの喫茶店へと向かった。
「ああ、マルゼンちゃん?来たわよ、お昼頃に」
「やっぱりな......姉さん、マルゼンちゃんがよく行く場所とか知ってるかい?」
「あの子、よく気分転換に湖を見たりしてるって言ってたわねぇ.......それに、今日スゴい落ち込んだ顔してたわね。......"あたしのせいでトレーナーちゃんも..."て言ってたわ」
落ち込んだ顔をしていた......彼女は普段から笑顔が絶えないウマ娘だってここの店員さんも言っていた。
実際、俺もあの娘が落ち込んだ顔をしているのはあのスプリングSのときしか見たことがない。
「もしあの娘を探してるならここから東にそこそこ進めば湖があるから、もしかすればそこにいるかもしれないわ。......あの子、日本ダービーに出られないかもって話になってるもんねぇ......」
「はい...その件で、いま理事長が話してくれるそうですが下手をすればこのままレース自体に出走出来なくなるって話も出てるんです」
やはり日本ダービー出走許可が下りない話はかなり有名なようだ。...無理もない。"スーパーカー"の異名を持ったウマ娘が出走出来ないなんて大事も同然だ。
「なあ、あんたマルゼンちゃんのトレーナーなんだろ?なら早くマルゼンちゃんのとこに行きなさいなっ!!」
「走ることが出来なくなったとしても!ウマ娘の心のケアをするのもあんた達の仕事だろ!!担当トレーナーになったのなら、そこんところもしっかり責任を持つもんだよっ!!」
「!?」
俺は店主さんに大事なことを教わった...そんな気がした。ただトレーニングを考えたりすんじゃない...彼女の心を支えるのもまたトレーナーだってこと....!!
「ありがとうございます...大事なことを教えてもらった感じがしました...!行ってきますッ!!」
「あ、待ってくれよ!!」
「あんたらはここにいなっ!!この問題は.....マルゼンちゃんとあのトレーナーの事なんだから.....」
しばらく店主の言うとおりに行くと―。
「ここって確かあのスプリングSの時の...!」
そう、その湖とは俺とマルゼンスキーの涙を初めて見た場所だった。
―そして少し見回すと....あのスーパーカーが止まっていた。そしてそこには彼女...マルゼンスキーもいた。
(マルゼンスキー......!!)
「...トレーナーちゃんなら来てくれるって思ってたわ♪」
「......分かってたのか、俺が来ることを」
「モチのロンッ!あたしの大事なトレーナーちゃんだもの♪」
マルゼンスキーは気丈に振る舞っているが...その笑顔は作られたものも同然だった。
「トレーナーちゃん......あたしたち、短い間だったけどもうそれも終わっちゃうかもしれないんだよね。あっという間だよね。......あっという間........っ!!」
マルゼンスキーのその目には涙が流れている。
...確かにも終わったら......
「マルゼンスキー、よく聞いてくれ。いま君を探すためにいろんな人に出会った。...そしてその皆が君のことを応援していたんだ。....それに君の大ファンの人だっていたんだ」
「でもさ...それってトレーナーちゃんがいたからこそ、なのよ......?あたしだけじゃそんなことにならなかった......それに、あなたがいたからいまのあたしがいるの」
それは違う...今の俺がいるのは彼女自身が築き上げた戦績があるからこそ。彼女が俺を選んでくれたからこそだ。
...だが俺はそのことをなぜか言えなかった。...なぜだろうか?こういうのって素直に言わなきゃいけないんだって分かってるのに...
「...ねえトレーナーちゃん。もしもレースに出走出来なくなったら...あたしの地元の学校に一緒に来ない?.......ずっと考えてたんだ。あたしのせいでまたトレーナーちゃんが振り出しに戻っちゃうくらいなら、一緒に来た方がいいかなって!.....まあその、中央よりは盛り上がりはないけどさっ!その...トレーナーちゃんとならあたしも頑張れると思うの!それに...あっちの後輩ちゃんにもあなたを紹介したいの。そしてあの子達にも...」
「なにバカなこと言ってんだよ......!!」
「え......?」
マルゼンスキーの言葉に俺は怒りがこみ上げる。
彼女は........忘れている。あのときのことを。
「マルゼンスキー......君はいままで背負ってきたその後輩の夢を...簡単に捨てるのか....?君がこの学園に来て...ターフを走る覚悟は.......それっぽっちなのか!?」
「あたしはっ!!!」
マルゼンスキーの目はシンボリルドルフの言っていた怒りに満ちた目だった。だが、その目にはどこか悲しんでいるようにも見える...。
「あたしだって!!その夢を捨てたくないわっ!!けどっ...!!!その夢だってレースを走れるからこそのものよっ!!......それが出来ないんだったらどうしようもないわっ!!......あなたには分からないっ!!トレーナーなんかに分かるわけがないッ!!」
「だからってそこで諦めるのもおかしいだろ!?まだ可能性だって....!!」
「"奇跡"を信じろって言いたいのかしら?...笑わせてくれるわねぇ...あなた、そんなものずーーーっと小さいときから信じて生きてきたの?..."奇跡"なんてねぇ......こういう時に限ってアテにならないものなのよ....?」
マルゼンスキーは車のドアに手をかける。
「待てよ、マルゼンスキーっ....!」
「しばらく1人にさせてちょうだい。...まさか奇跡なんて信じてるおバカなトレーナーだなんて思わなかったわ...じゃあね」
そう言うとマルゼンスキーは車に乗り、俺の前から去っていった―。
「奇跡を信じるバカ、か......なに考えてんだろうな、俺。これじゃ他人のことを考えれない飛んだ笑いもんじゃねえか......」
次回へ続く―。
今回のお話、いかがだったでしょうか?史実だとマルゼンスキーは出走できませんでした。それに沿っていきたいと思う反面、アプリのように走らせたい気持ちがぶつかる中書かせてもらいました。
...自分自身、最近ストーリーが重くなりがちだなって思ってます。
しかしあまり重すぎるのも私としてもあまり気分が良くないなって思っております。ウマ娘はやっぱ明るめなものじゃないと...!
それでは、次回もお楽しみに!