規格外の風、その名はマルゼンスキー。   作:蒼井みこと

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第2レース.規格外とトレーナー。

レースからしばらくして俺は尾崎トレーナーに彼女の事について教えてもらった。

....そして話を聞いたあと、俺に尾崎トレーナーはこんなことを言ってきた。

 

 

「もし彼女をスカウトするつもりなら諦めた方がいい。中堅クラスのトレーナーのスカウトも断るのだから新人トレーナーの君には振り向きもしないだろう」

 

 

正直、少し腹が立った。今の世の中歴が全てを物語る時代じゃないってことをその身にいやと言うほど教えてやりたいくらいだ。

 

 

―ある日、天気がとても良かったのでランチは屋上で取ろうとするとそこには先客がいた。

その先客は彼女、マルゼンスキー。どうやら電話をしているみたいだった。

 

 

「それじゃ、またね。....はい、はぁーい。」

 

「....ふぅ~~~~~~。」

 

「ずいぶん長いため息だな、何かあったのかな?」

 

「え?....わぁっ、君はこの間のトレーナー君。....あ、もしかしてここでランチしたかった?お邪魔虫だったかしら、ごめんなさいね!」

 

 

マルゼンスキーは俺を少し見てからふふっと笑った。

 

 

「にしても、君センスいいわね!こんないい天気にランチ、屋上で食べるとたしかに気持ちいいかも」

 

「気分もスッキリしそうだしねぇ.........ふぅ。」

 

 

どことなく彼女の顔はモヤモヤした感じだった。

 

「電話、あまりいい内容じゃなかったのか?」

 

「まさか!地元の可愛い後輩達からよ、楽しいに決まってるじゃない!トレセン学園に来てからも連絡を取り合ってくれる、いい子達なのよ」

 

「....そもそもあの子達が言わなきゃあたし、トレセン学園に来ようだなんて思わなかっただろうなぁ.....」

 

「そうなのか?ちょっと意外だなてっきり...」

 

 

彼女はやっぱりかって顔をして笑った。

 

 

「あたし、楽しくて、気持ちいいから走っているだけなのよ。そしたらね、後輩ちゃん達からあたしが活躍してるところが見たい!ってね。.....お姉さんとして応えなきゃ、じゃない?」

 

「それでトレセン学園に、か....」

 

 

「まっ、そういうこと!....それだけと言ったら話がピーマンみたいなものだけど、ね」

 

は、話がピーマン....それ俺の親が言ってたそこそこ古い言葉だぞ.....ちなみに「話がピーマン」っていうのは中身が空っぽの意味だ。つまり大きい理由が無いのと合わせて言ったんだろう。

 

 

「先輩~!!この間教えてもらったこと、体に教え込んできま~す!!」

 

「いってらっしゃぁーい!!無理はしちゃダメよ~!!」

 

 

トレーニングコースから後輩のウマ娘がマルゼンスキーへ大きく手を振っていた。

 

 

「こっちの学園でも後輩から大人気だな、さすがだ」

 

「みんないい子で可愛いわ」

 

「あの子ねぇ」

 

 

マルゼンスキーはさっきの後輩の子に軽く指差す。

 

 

「歳が離れた妹がいるみたいでね、すごく内気で外が怖くて部屋にこもってた時期もあったそうなんだけど、トゥインクル・シリーズを一緒に観に行って、それが楽しかったみたいで外がすっかり怖くなくなったんですって!」

 

 

さっきまでの彼女とは違い、走っていた彼女のときみたいな明るい笑顔で話していた。

 

 

「それでね、妹にもっと楽しい景色を見せてあげたい!ってあの子はここ、トレセン学園で頑張っているのよ」

 

 

「それは素敵な目標だね」

 

 

ただ速くなりたい、大きい栄光が欲しいだけじゃない―。

こうやって誰かのために走るウマ娘もまた存在するってわけか。

 

 

「そうなのよ~!すっごく素敵よね!!.....少し眩しいくらいだわ」

 

「そういえば...」

 

 

くるっとこっちに体を向ける。

 

 

「ねえ、君の夢って何?よかったらあたしに教えてちょ!」

 

「天下のトレセン学園専属のトレーナーなら、やっぱG1ウマ娘担当すること?...あ、もしかして世界とかいっちゃう~?」

 

 

マルゼンスキーは少しいたずらっぽい笑顔を浮かべる。

 

 

「ま、そりゃそんな子を担当できたら誇らしいだろうねえ」

 

「そうよね。......トレーナーってやっぱそういうものよね。特に専属のトレーナー達はみんな優秀だもんね。ガツガツしてるっていうか......ね」

 

 

どうやら彼女にとってトレーナーのイメージはあまり良いものではないらしい。....まあ、あんだけ新人やら先輩が餌与えられた獣みたいな顔して近づきゃそうなる。

 

 

「...あたしもね、そういうのに応えられるんだったらよかったんだけどさ」

 

「いや、俺はそんなもんに無理に応える必要はないんじゃないかな。君たちは俺らトレーナーの夢叶えるためにいるんじゃないからさ」

 

 

マルゼンスキーを見てみると驚いた顔をしていた。

 

 

「あれ?俺、おかしいこと言ったかな?」

 

「....君、なんか他のトレーナーと違って変わってるなって思ったのよ......ふぅーーーーーん.....」

 

「ねえ、君。ここにお互いフリーなトレーナーとウマ娘がいるわよね?」

 

 

そう言うとマルゼンスキーが近づいてきた。

 

 

「君はあたしの走っているところをジーッと見つめちゃうくらい、あたしのことを気にしてくれてるみたいだしぃ?」

 

「......気づいてたのか、俺が君の走りを見てたの」

 

「モチのロン!よ~~~~~く知ってるわよ♪この間あたしがトレーニングコースを走ってるときずーっと見てたしね!」

 

 

....あの時もまた恐ろしいスピードでコースを走っていたのは覚えている。

それも他の娘が必死に走っているなか楽しそうに、心地良さそうに走っている姿には見惚れる何かがあったからだ。

 

 

「あたしはいま『この賞を取ろう!』とか『勝とう!』とかガツガツしてこない変わったトレーナー君にちょっと胸が躍っているの」

 

 

 

さらにマルゼンスキーはズイッと近寄ってきた。

 

 

「こういう状況なわけだけど、トレーナーとしてあたしに何か言いたいことない?」

 

「よかったらだけど、君をスカウトさせてくれないか?」

 

 

言ってしまった。

 

 

「あはっ♪話の分かるトレーナー君ね!そういうとこ、グッと来るわ♪」

 

「......ありがと、ぜひあたしの方からもお願いさせて」

 

 

マルゼンスキーはどことなく少し照れていたため不本意ながらこっちまでプロポーズしてるみたいで恥ずかしくなった。

 

 

「...あっ!そーだそーだ!あたしたちの関係も1歩進んだわけだし、さっそくだけど頼ってもいい?」

 

 

そう言うとマルゼンスキーはスマホを手に取った。

何を頼もうとしてるのか?さっそくトレーニングのことか?

 

 

「後輩ちゃん達からね、電話もいいけど『ちゃっとあぷり』を使って連絡をしませんか?て言われてるんだけど『ちゃっとあぷり』っていうのはメールと何が違うのかしら....?」

 

 

「えぇ.....そこ分からないのか.....」

 

「うん、あたし今までメールか電話だったしね」

 

 

『話がピーマン』といい『チャットアプリとメールの違い』が分からないのもまた、俺と同じマルゼンスキーもまた変わったウマ娘みたいだ。

 

マルゼンスキーの担当トレーナーになった。

嬉しい気持ちの反面、これから先マルゼンスキーの担当になったことでライバル、予測もしないことが起きる予感がしていた。

 

 

次回に続く―。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の物語はいかがだったでしょうか?
とうとう次回から新人トレーナーとマルゼンスキーの物語が本格的に始動します!まずはメイクデビュー戦!
そして物語には同僚(名前決めてません)、エリートトレーナー尾崎が関わってきます。
果たしてマルゼンスキーと新人トレーナーはトゥインクル・シリーズを走り抜くことが出来るのか!?
次回も、お楽しみに!!
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