規格外の風、その名はマルゼンスキー。   作:蒼井みこと

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噂が広まる―。あのマルゼンスキーにトレーナーが付いたことを...しかしそのトレーナーの正体を知り不思議に思った生徒会一同―。
そして始まるマルゼンスキーのメイクデビュー戦。

伝説の始まりを、その目に焼き付けろ―。


第3レース.始まる『規格外』の伝説。

その噂は瞬く間に広がった。

数多のトレーナーのスカウトを断り続けたウマ娘、マルゼンスキーが一人のトレーナーと契約を結んだことを―。

 

 

「おい聞いたか?あのマルゼンスキーがトレーナーと契約したって」

 

「ああ!あのエリートを断った大物がとうとうな!!」

 

「きっと優れたトレーナーさんかもしれないわね!」

 

 

トレーナー達が噂を聞いてざわざわしている

それだけじゃない、その噂はウマ娘達の中でも盛り上がっていた。

 

 

「ねえねえ聞いた!?マルゼン先輩とうとうトレーナーさんと契約したって!」

 

「うんうん!とうとうあの最速ウマ娘って言われてる先輩がトゥインクル・シリーズに...!!」

 

「でもさ、先輩と組んだトレーナーって聞いた噂だとぉ...」

 

 

そう、その言わずと知れた大物のトレーナーが予想を裏切る存在だということを皆唖然としていた。

 

 

「相当噂になっているようだな、マルゼンスキー」

 

 

生徒会室でも、『皇帝』とも呼ばれる会長シンボリルドルフも驚いていた。

 

 

「あたしは正直まいっちんぐなのよ...後輩ちゃんからも誰なんですか!聞かれまくっちゃってねぇ...」

 

「まあそれはそうだろうな。貴様は色々なトレーナーのスカウトを断ってきているからな」

 

 

シンボリルドルフの側にいた『女帝』エアグルーヴはため息をついた。

 

 

「よく噂で貴様は実は理想が高いから並みのトレーナーのスカウトを蹴っていたなんて聞いていたぞ」

 

 

「やぁね~あたしはそんなワガママなギャルじゃないわよぉ」

 

 

マルゼンスキーは手をヒラヒラさせて苦笑いをする。

 

 

「...しかし、君のようなウマ娘がまさか新人トレーナーを選ぶなんてな。どこか惹かれる所があったのか?」

 

「モチのロン!彼は他のトレーナーと違うのよ」

 

「新人トレーナーがか?まだこの学園に就いたばかりの者にいったいどんな...」

 

「新人だろうがなんだろうが関係ないわ。...彼はね、他のトレーナーと違ってあたしの考えと似たところがあるのよ。普通のトレーナーはよく重賞取りたがったりするってのに彼はあたしにそんな目標とかを押し付けたりしない優しさがあるのよ」

 

 

エアグルーヴはやれやれといった仕草を取る。

 

 

「それだけか?まったく....そのトレーナーがどういったもんか知らんがトゥインクル・シリーズがどんなものかを理解していない」

 

「....それはどうかな?私には普通のトレーナーにはない、何か不思議な素質があるようにも思えるぞ。....フッ、これからそのトレーナーとうまくやっていくんだぞ、マルゼンスキー」

 

「当然よ♪さて、そろそろトレーナーちゃんのところに行こうかしらね!じゃあね、ルドルフ、エアグルーヴ!」

 

 

マルゼンスキーは生徒会室を後にしていった。

 

 

「あのマルゼンスキーと手を組むトレーナー.....しかと目に焼き付けさせてもらうぞ、新人トレーナー君」

 

 

シンボリルドルフは窓を見てつぶやいた。

 

 

―時を同じくしてトレーニングコースへ。

 

 

「おいおいマジかよ!お前あのマルゼンスキースカウトできたってよ!!」

 

「ああ...て少し離れろ近いっつうの....!!」

 

 

同僚「秋山」はの顔を手で押し退ける。

 

 

「どういった話術でスカウトしたんだよ!教えてくれよ!」

 

「いやその、別に話術とかそんなもんじゃねえよ。たださ...」

 

 

俺はトレーニングコースで切磋琢磨しているウマ娘達を見る。

 

 

「彼女が求めていたものは『気持ちよく走ること』。つまりマルゼンスキーは何かを押し付けられたりするのを嫌っていたんだ。話聞いてるトレーナーのイメージがガツガツしているって感じてたみたいだからな」

 

「俺ら人間だってさ、誰かに『お前絶対やれよ!!』とか強制されるとやっぱ嫌じゃんか?俺は特にそうだ...だから彼女にも無理に応える必要ないって言ったんだよ」

 

「へぇ~......」

 

 

秋山はニヤニヤと俺を見つめ始めた。

 

 

「お前のそういうとこ、 俺の勝手だけどよ。マジでダチになれて良かったなって思ってんだよな~。なんつうかさ...そういう考えを持てること、羨ましいよ」

 

「いやいや、普通。普通の考えだよ...ただあのエリートさんを快く思っていないみたいだよ彼女は」

 

「そらそうだろうよ、俺としても先輩だとはいえ気に食わねえ。べつに俺に何かしたわけじゃねえけどよ.....お、来たな!」

 

 

ふと誰がと思ったら1人のウマ娘が秋山の元へ来た。

 

 

「おーいトレーニング終わったぜ~!あぁ疲れた」

 

 

そのウマ娘は高身長...多分平均の男並みに背が高い。腰まで伸ばした葦毛が特徴だ。

 

 

「まったくオメーのトレーニングハード過ぎね?とりあえず休みてぇんだけどっ!」

 

「お、オメー.....なあ秋山、この子お前の担当ウマ娘か?」

 

「おうよ!こいつはゴールドシップっつってなぁ...ゴルシちゃんレーダー....?とかいうのでなんか俺をターゲットにしてきたのな....」

 

「へぇ、良かったじゃないか」

 

 

「はぁ!?何言ってんだおま....ぅごっ!?」

 

 

秋山はゴールドシップにヘッドロックをし始めた。

 

 

「いでででででおい離せお前自分の力どんだけやべえか分かってんの!?」

 

「いいじゃねーか減るもんじゃねえし!こんな美人なウマ娘と一緒になれたこと光栄に思えっつーの!」

 

 

今度は秋山の髪の毛をワシャワシャし始めた。

 

 

「と、まあコイツにいわゆる逆スカウトされたってわけよな...!」

 

「お前そんな状況でサムズアップ決めてもなあ......あ!?ゴールドシップってまさか!?」

 

 

先輩トレーナーの間で話を聞いたことがある。

黙れば美人、喋れば奇人なやばいウマ娘が1人だけいると...

 

 

「ん?どうした?アタシの顔見て...もしかしてこのゴルシちゃんに一目惚れしたのかぁオイ?」

 

「いやいやそうじゃないけど...秋山、でもある意味凄い大物の担当になったかもしれねぇぞ?」

 

「はぁ!?....ま、まあそうだろうなぁ!とりあえずゴルシ、休んでいいからいい加減離せ!!」

 

 

と、その時ものすごい突風が吹いた。

 

 

「な、なんだぁ!?」

 

「ちゃお☆トレーナーちゃん!待たせてめんごめんご♪」

 

 

その突風の正体はマルゼンスキーだった。どれだけのスピードでこっちに向かってきたものか...

 

 

「お、さっそくお出ましだなマルゼンさんよ!」

 

「あら、ゴルシちゃん!そこのトレーナー君が担当してるのかしら?」

 

「へ、まあな!!こいついつもアホみたいな面してるけどしっかりしてんだぜ!」

 

「一言余計だっつうの!!」

 

「お似合いのトレーナーね♪...さて、と!」

 

 

マルゼンスキーが相変わらずの余裕の笑みで俺の方を向く。

 

 

「さあて、トレーナーちゃん!あたしにはどんな風に組んでくれたのかしら?何でも任せてちょんまげ♪」

 

「ちょ、ちょんまげ......?ええと、今回のトレーニングは...」

 

 

彼女のあの驚異的なスピードを活かすなら『逃げ』が最適と見た。

そして距離はマイルが得意としているみたいだ。

 

 

「あら!中々センスあるんじゃないかしら♪オーケー!さっそくかっ飛ばすわよ!」

 

 

―そしてメイクデビュー戦当日。

マルゼンスキーはいつもよりも嬉しそうにしていた。

 

 

「ずいぶんと嬉しそうじゃないか、マルゼンスキー」

 

「当たり前よぉ~、なんたってこのレースがあたしたちの物語の第1歩じゃない♪今日もアクセル全開で行くわ!」

 

「そうか!んじゃあ、頑張れよ!応援してるよ」

 

「はぁ~い!終わったらサ店でレスカ奢ってね♪」

 

 

そう言うとマルゼンスキーはレース場へと向かっていった。

 

(マルゼンスキーのことについてはしっかりと調べてトレーニングを組んだからいけるはずだ....!)

 

そしてメイクデビュー戦がいよいよ始まる。

 

 

『ゲートが開いてスタートしました!ウマ娘達が芝を駆け抜けます!』

 

 

実況が始まってまもなく1人のウマ娘が前に出る。

 

 

『さっそく前に出たのはマルゼンスキー!メイクデビュー戦でも異次元のレコードを叩き出したウマ娘です!』

 

 

「はぇ~やっぱマルゼンちゃんはレベルが違うねぇ!」

 

「ん?....ってうわ!!」

 

 

気付かぬうちに俺の側には秋山とゴールドシップが立っていた。

 

 

「マルゼンスキーはレベルが違うっつーの!オメーでもそんくらい知ってるだろ?」

 

「まあねぇ...生きてるうちでもあの化け物レベルの速さを出せるったらマルゼンちゃんしかいねえだろぉ!?」

 

 

ゴールドシップと秋山の言うとおりだ。マルゼンスキーは段々と他のウマ娘との距離を離していく。

 

 

(ウフッ♪気持ちいい歓声にこの心地いい風....イケるわね!)

 

「さぁ!アクセル全開のノリノリでいくわよォッ!!!」

 

 

ただでさえありえないスピードはさらに加速していく。

 

 

「オイオイありゃ飛ばしすぎってもんだぜおい....!」

 

「あれがマルゼンスキーさ。彼女は勝つためじゃない...とにかく楽しく走り、心地いい風を感じて走り初めて喜びを得る...それがあの速さを引き出している車で言えばガソリンみたいなもんさ」

 

「おぉ!?マルゼンのトレーナーもすげぇこと言うじゃんっ!!さすがあいつに見込まれたトレーナーなだけあんなっ!」

 

そんなことを言うゴールドシップの手には....ルービックキューブがあった。

 

 

「マルゼンスキーがスパート掛けたな」

 

「まだスピード出るのかよっ!?」

 

 

(見ててねトレーナーちゃん♪あたしの.....『規格外の速さ』を、ね!!)

 

『マルゼンスキー!速い!速い!!一気に加速し後方のウマ娘を引き離していきます!!まるでスーパーカー!!並みの車を圧倒的なスピードで掛けるスーパーカーです!!!これはすごい末脚だ!!』

 

「追い付けない...なんで.....!」

 

「先輩本当にウマ娘なの......!?」

 

 

後ろを走るウマ娘達は走る疲労よりもあの驚異的な末脚でターフを駆け抜けるマルゼンスキーに圧倒されていた。

 

 

『マルゼンスキー!圧倒的な速さでゴールイン!!その差は....嘘っ........!?』

 

『じ、........10馬身以上!!そのタイム差は2秒!!今ここに大きな期待を寄せる歴史が誕生しましたッ!!』

 

「10馬身だって!?ホントにあの娘は....ウマ娘なのか!?」

 

「言ったろ、『走る楽しさ』そのものが彼女の動力源だって」

 

 

秋山の手を見るとこいつもまたルービックキューブを持っていた。.....ウマ娘といい、トレーナーといいお互い何やってんだ.....

 

 

「トレーナーちゃあぁん!!見てたかしら、あたしの走り♪」

 

「ああ!ちゃんと見ていたぞ!」

 

「ウフッ、良かった♪サ店のレスカ待ってるわよ!」

 

「ああ!レスカの他にティラミスも奢ってあげるよ!」

 

「ホント!?やった♪」

 

 

そしてマルゼンスキーの最速伝説はここから始まったのだ―。

 

 

次回へ続く―。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の物語はいかがだったでしょーか!O(≧∇≦)O
とうとう同僚の名前は秋山になり、担当ウマ娘はゴルシちゃんになりました!
担当ウマ娘に関しては結構悩みました...
さて、今回マルゼンスキーは無事メイクデビュー戦を突破しました!
華々しいデビューだけどこれから先はどうなっていくのか...!
次回もお楽しみに!!
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