その圧倒的な速さは有名となり観客、そして実況者からの期待を集めることが出来た。そして実況の言葉から出た『スーパーカー
』は彼女の異名となる―。
(やった!やったわトレーナーちゃん...!あたし....あ.....れ........?)
マルゼンスキーは残り200のところで失速し始めのだ。
『一体何が....何があったのか!?マルゼンスキー、失速!!これは......』
「嘘っ.....そんな.....トレー....ナ........ちゃ........。」
マルゼンスキーは止まった先でそのまま倒れ込んだ。
『故障!!あのスーパーカー、マルゼンスキーが故障が発生しました!!競争中止!!早く!!』
「嘘だろ....マルゼンスキー!!」
「何ボサッとしてんだよ!!早くいくぞ!!あたしに捕まってろ!!」
俺をゴールドシップが俺を抱えあげてマルゼンスキーの所へ走っていき、あっという間に彼女の元へ着いた。
「マルゼンスキー...!おい!しっかりしろ!!!」
「救護班!!急いでくれ!!早く!!」
「マルゼンスキー!マルゼンスキー!!」
「トレーナーちゃん....ごめん...ね、1着...取れなくて.....」
―。
「ハッ.....!!.....なんだ、夢か......!」
なんという悪夢だ...悪夢にしても現実味があった最悪なものだった。
「ど、どうしたのトレーナーちゃん!?酷くうなされてたけど...」
「いや、見たくない夢が.........え?」
寝ていた俺のすぐそばにマルゼンスキーがいた。
「うわっ!どうやって部屋に入ってきたんだよ!!ビックリしたじゃないか!」
「やあねぇ~、トレーナーちゃんったらこの間のお祝いのレスカご馳走になったときあたしに合鍵くれたじゃない♪」
マルゼンスキーはそう言うと合鍵をチャラチャラと鳴らしてみせる。
「あれ、それ君に渡したっけ....?」
「そ、そうよぉ~っ!忘れたの?あたしに何かあったときにってくれたじゃない♪」
マルゼンスキーは少し慌てていた。
そんなことあったか?と思ったがまあ良しとするか。
時計を見ると時間は10時に針が回っていた。
...幸い、今日は仕事が休みなのもあったから寝坊してもまあ大丈夫だった。
「そ、そうっ!トレーナーちゃん今日は休みだし暇よねっ!なら、良かったらあたしとドライブいかないかしら?」
「...は?」
「は?じゃないわよっ!」
「いや、ドライブってどういうことだ?まだ未成年だろ...?」
「んもうっ!いちいち細かいこときにしちゃダメ♪ま、早く着替えて外においでよ。あたし外で待ってるから!」
そう言うとマルゼンスキーは外に出ていった。
なぜ高校生が車を...?と疑問に思いつつ急いで着替えた。
そして外に出たとき見たこともない物があった。
「おいおいこれって.......!!」
そう、マルゼンスキーが乗っていた車は一般のそこらを走ってるものとは違う。
「トレーナーちゃあん!乗って乗って♪」
マルゼンスキーが乗っていたその車はランボルギーニ。それもウォルター・ウルフ・カウンタック...その扉もガルウィングという縦にドアが開く方式のスーパーカー。...本人もスーパーカーと呼ばれているのに。
「驚いちゃったゃでしょあたしのタッちゃん見て♪さあさあ!」
「おじゃまします.....」
乗った時に流れていた曲はユーロビート。...この地点で嫌な予感がした。
「シートベルト付けたわね♪バッチグー!さあて、かっ飛ばすわよ!!」
「かっ飛ばすって......うわっ!!」
いきなりのサイドターン、その後からの急加速.....これは。
(マルゼンスキー、運転荒い....!!)
「最ッ高~~~~~~♪トレーナーちゃんノってるぅ~♪」
「乗るもなにもスピード落としてくれ!!」
あまりの怖さに気付かぬうちに俺の目には涙が浮かんでいた。
「ダーメッ♪トレーナーちゃんもたまには息抜きが必要なの!お姉さんが遊びに連れてってあげるんだからもっと休日をたのしみなさいな!」
「頼むから...スピードを落としてくれっ.....!!」
そうこうしているうちに着いたのは遊園地。
「さあ到着っ!トレーナーちゃんお疲れ山!...トレーナーちゃん大丈夫?」
「これが大丈夫に見えるかっ!?」
「うんうん、それで結構毛だらけ猫灰だらけね♪さっ、行きましょ!」
マルゼンスキーに連れられ、色々なアトラクションで遊んだ...といってもなぜかジェットコースターばっかなような気がしたが。
「トレーナーちゃん、ちょっと手を繋ぎましょっか♪」
「え?あ、ああ......って、え!?」
「もう、そんなあたふたしなくていいでしょっ!少しくらいあたしのわがままも聞いてね♪」
マルゼンスキーと手を繋いだ。...しかしそのせいもあって周りからはそこそここっちを見られた。
「ウフッ♪あたし達まるで恋人みたいね♪」
「多分、周りからもそう見られてるんじゃないか....?」
「なら、お化け屋敷にでも.....あら?」
お化け屋敷の方を見ると残念ながら今は改装中で入ることができなかった。
「うーんまいっちんぐ...お化け屋敷定番なのにねぇ...」
「メリーゴーランドにでも乗るか?あれなら結構空いてるし」
「嫌よ、どうせならドキドキと爽快感あるものじゃないと!あたし徐行運転も嫌いだけど遅いものが嫌なのよ...あ!いいものみっけ!」
マルゼンスキーが指を差した先を見た。
「観覧車か?あれだって遅い乗り物じゃないか...」
「あれは別よ♪さ、早く行きましょ!!手を離さないようにね!!」
「ちょっと待てやばいってぅおっ!!!」
マルゼンスキーは観覧車のところまで俺の手を引っ張るようにして走りだした。
―そして気がついたときには俺は観覧車にマルゼンスキーと乗っていた。
「あら!お目覚め?受付に着いたときトレーナーちゃんったら気持ち良さそうに寝てたもんね!」
「それって俺気を失ってたからだろ!」
あんなバカっ速いもの体感したら誰でもそうなるはずだ。
「めんごめんご♪でも、今こうしてお姉さんと乗れてるなんて幸せでしょ?」
「近い近い!!顔が近いって!」
どういうつもりかはわからないがマルゼンスキーのスキンシップは大胆過ぎる...嫌じゃないけどさ。
「あら!トレーナーちゃんには刺激が強かったかしら?ごめんなさいね」
「い、いや別にいいんだ。気にしないでくれ」
「ウフッ♪ありがと。.....にしても、こうしてトレーナーと楽しい休息取れたのは生まれて初めてよ」
マルゼンスキーは外を見て呟いた。
「今まで一人で行ったりしてたのか?」
「まさかぁ、後輩ちゃん達とは何度か行ったわ。なんというか...異性の人と行ったのが初めてでスゴい新鮮な気分よ」
「ま、今までいろんなトレーナーがあたしをスカウトしてきたけど全部断ってきたってのもあるけどねぇ...」
マルゼンスキーはため息をした。その顔は心の底から笑っている感じには思えない、曇った笑顔だ。
「正直ね。あたし、トレーナーが担当として付くのが怖かったの」
「怖いってどういうこと?確かに男も多いのは多いけど...」
「異性として、じゃないわ。なんというか...あたし達ウマ娘に走ることに"目標"を立てる子が多いわ。三冠目指したり、ね...でもあたしみたいな子もいるはずよ」
「まあ、そうだろうな...中には負けても負けても走ることが楽しくて出走する子もいるだろうしな」
少なからずそういった子だっているはずだ...だが秋山からはこんなこと聞いたことがある。
『俺らトレーナーも大変だがウマ娘も大変らしいぞ?トレセンって学生達でも狭き門ってやつで、良い成績残せない、怪我が原因で故郷に帰っていくウマ娘もいるらしい』
「あたしはね、『トレーナー』の大半は自分の成績の事しか考えてない人ばかりだと思っているの」
「それは偏見じゃぁ...」
「ならさ....」
マルゼンスキーは俺の両肩に手を置いて顔を少し近づけてきた。
「なんでトレーナーの皆はあたしにビッグになろうとか三冠の事ばっか話してくるのよ!あたしからしたら嫌だし怖いのよ!!」
「どのトレーナーもそう!いろんなトレーナーからスカウトをしてきたっ!でも、どれもこれも三冠とかG1レースとか天皇賞とか成績のことばっかり!!あたし達ウマ娘のことを何も分かってない!」
感情を爆発さているマルゼンスキーのその目には涙が浮かんでいた。
確かに俺も似たようなことを思っていた。...俺だけじゃない、秋山も俺と同じこと考えていたな。
『なあ、俺思うんだけどさ。先輩トレーナーさんとかってめっちゃ成績のことばっか言ってるよな~』
『まあそりゃウマ娘の成績次第でトレーナーにも大きく影響するからな』
『でもよ、ウマ娘ちゃん達からしたら傍迷惑な感じしねえか?自分の将来を押し付けてるっつうか...』
『まあ確かに思うがでもそれがトレセン学園のルールみたいなもんだろ。.....まあ、俺は担当になったらその子には目標とかは強要しないよ。彼女達だって人権があるからな』
俺はマルゼンスキーの目の涙を拭いた。彼女には涙は似合わないから。
「確かにそうかもな。俺らにも評価みたいなものがあるからな、君たちも中央に来た以上、多少は受け入れなければならない。....けど」
「っ.....!」
「君がもし走ること、再起不能にレベルの怪我をしたり、そして俺と一緒にやっていくことが嫌になったら素直に話してくれ。俺は君に目標を強要するつもりもないし俺もそうなったら責任取ってトレーナーを辞める」
「辞めるって....なんでっ!?それじゃああたしの責任みたいじゃない!」
「違うッ!!」
マルゼンスキーは驚いた顔をしていた。俺の気持ちをぶつけるならここしかない、そう思ったから―。
「俺と君...担当トレーナーとウマ娘は二人三脚、いや一心同体と同じことだ。俺は君の楽しくターフを走る姿に魅力を感じたんだ。そして君のその気持ちは間違いなく誰にもない素晴らしいものだと俺は思ってる。そして君は君なりに楽しく走ることを忘れないようにするんだ」
「楽しく.....ウフッ、やっぱ君って変わってるわね」
マルゼンスキーは涙を拭いて笑顔を見せる。
「やっぱり君を選んでホントに良かった....これからもよろしくね、トレーナーちゃん....!」
この日、俺はマルゼンスキーのトレーナーへの気持ちを知ることが出来た。...そして俺の気持ちも彼女に届いたはずだ。
次のレースはG1・朝日杯FSだ。これも俺が決めたものじゃなく彼女に選ばせたことだ。
彼女はきっとこれからも楽しく走ってくれる、俺はそう信じた―。
次回へ続く―。
今回のお話、いかがだったでしょうか!蒼井みことです!✨☀️
個人的に今回のストーリーは元から少し重めに作ろうと考えていましたが思ったよりも重くなった(笑)
さて、次回はG1レース朝日杯FSです!
果たしてレースの結果はいかに!?
次回も、お楽しみに!