規格外の風、その名はマルゼンスキー。   作:蒼井みこと

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朝日杯FSは伝説の1ページとなった。
スーパーカー、サイボーグ、怪物の異名は瞬く間に広がり一部のウマ娘からは相手にしたくないと恐れられるほどとなる。
そんななか、もう一人の破天荒なウマ娘の伝説もまた始まろうとしていた―。


第6レース.不沈艦。

「おっ、お前ら来てくれたのかよぉ!ゴルシちゃん涙出ちゃうぜ~!!」

 

「とか言ってるが泣く気ねぇだろ!!」

 

「まあ~言葉の綾ってことよ!来てくれて嬉しいってことさ!」

 

 

ゴールドシップの調子は相変わらずのようだ。...しかし俺の頭にはゴールドシップがまともにトレーニングをしてるところをあまり見ないような気がする。

 

 

「ゴルシちゃん、メイクデビュー戦頑張ってね!応援してる♪」

 

「おうよ!アタシの実力見せてやっから目を離すなよっ!!」

 

「なあ秋山、ゴルシってトレーニングちゃんとやってんのか...?たまに見かけるけどトレーニングしてるとこ見たこと無いんだが...」

 

 

秋山は大きくため息を付く。

 

 

「ああそうさ、こいつはそもそもトレーニングなんてしねぇよ....稀にやる気になってくれることはあるけどな...何やってるのかと思えばルービックキューブガチャガチャしてたりなんか一人で将棋してたりよ。...ゴルシ選んで失敗したなってイダダダダ!!」

 

「おぉう聞こえてんぞおめえ、このゴルシちゃんを信用しねえってのかあぁん!?」

 

 

秋山の光景を見てクスクスとマルゼンスキーは笑っていた。...まあ大の男が女の子にやられてる光景見りゃそりゃ笑うだろうな。

 

 

「あーちゃんそんな心配しなくてもダイジョーぶい!ゴルシちゃんならちゃんとやれるわ、安心しなさい♪」

 

「まあ、マルゼンちゃんがそう言うなら......頼むぞゴルシ」

 

「まーかせとけって!んじゃ行ってくるわ~!!」

 

 

正直心配ってのは分かるが...マルゼンスキーが大丈夫と言うなら安心出来るだろう。

 

―そしてレース場。

 

 

「さあて、いっちょやってやろっかなー」

 

「ゴルシ...あんたトレーニングまともにしてないのに私に勝てるつもりでいるの?」

 

 

体を伸ばすゴールドシップに突っかかってきたのはアイタンリ。

それに続き他のウマ娘からも鋭い視線がぶつけられる。

 

 

「ゴルシはまともにトレーニングしてないのによくまあこんな大事なレースに出ようだなんて思ったわね」

 

「そうよそうよ!あたしたちはしっかりトレーニング重ねてきたんだ!」

 

「あんたみたいなウマ娘に負けるわけないわ!トレーニングもしないで遊んでるあんたを見てるとムカムカするのよ!」

 

 

アイタンリに続くようにゴールドシップをメタクソに言う娘たち。

...しかしゴールドシップはニタニタと笑っている。

 

 

「何ニヤニヤしてるのよ!!アンタは絶対私に勝てないってこと証明してあげるんだから!!」

 

「お前ら、さっき言ったこと後悔すんなよ?アタシは執念深ぇからな?」

 

 

―時を同じくして生徒会室。

 

 

「失礼します」

 

「エアグルーヴか。...ん?どうした、浮かない顔をして」

 

「それが...あのゴールドシップがメイクデビュー戦に出走したようで...」

 

「ほう...いやいよ動くか、あの娘も」

 

静かに笑っているシンボリルドルフと違い、エアグルーヴはため息を付いた。

 

 

「全くアイツは....何を考えているんだ......まともにトレーニングをしていないと聞いている...それでメイクデビュー戦など絶対が付くほど無理なものだ...」

 

「エアグルーヴ」

 

 

エアグルーヴを見るとシンボリルドルフの顔に笑顔が消えていた。

 

 

「前にも私は言ったはずだぞ。"レースに絶対はない"と。だが、イレギュラーなウマ娘がいることも事実」

 

「イレギュラー.....ゴールドシップのことでしょうか?」

 

「ああ。...彼女がまともにトレーニングに打ち込んでいないことは私にも情報が伝わっている。本来なら私からも注意したいところではあるが...」

 

「彼女のように元から素晴らしい能力を持っているからこそぶっつけな状況でも鍛練を積み重ねてきたウマ娘を超える者もいる」

 

 

―時は少しだけ経ち観客席へ。

 

 

「始まったな。...秋山、お前は自信あるのか?」

 

「まぁ~あるっちゃあるな。あいつみたいな変わったやつには俺も魅力を感じる...そうだな、あいつを言葉で表すなら....破天荒だな」

 

 

秋山の顔は自信に満ち溢れているようにも見えた。確かに、他の娘達が必死にトレーニングをやっているのを他所に遊んでいたから心配していたがもしかしたらやってくれるかもしれない。

 

 

「そうねぇ~ゴルシちゃんはアタシから見てもとても素晴らしい才能を持っているようにしか見えないわね。確かに他の娘たちから見ればムカつく関係かもしれないけど...それって逆に捉えるならゴルシちゃんからしたらそんなことする必要もないってことじゃないかしら?」

 

「そんなことって...それじゃあ走る基本とかが分からないんじゃ...」

 

「あれを見てみなさいな♪」

 

 

レースを見るとゴールドシップの走る姿は他のトレーニングをしてきたウマ娘とは違和感の無い、まるでトレーニングをしてきたようにもみえた。

しかし、ゴールドシップは後方をずっと走っている。

 

時を同じくしてレース中のウマ娘―。

 

 

(ハッ、見たことか!そんなもんよねトレーニングをしてないやつなんか!)

 

(何が言ったこと後悔するな、よ!笑わせてくれるわ!)

 

『ゴールドシップ、ずっと順位を変えず後方から様子を伺っています!これは何かが起こる前兆か!?』

 

(さあて.......そろそろ仕掛け時か?いや、もう少しだけ遊んでやるか)

 

 

「ゴールドシップの脚質はな...聞いて驚くなよ?"追い込み"だ」

 

「追い込み、だって?」

 

「ああ。追い込みは終盤まで最後方から走って最後の直線で一気に勝負を仕掛けるタイプだ」

 

「追い込みってホントにスゴいのよ♪あのBNWの一人、タイシンちゃんもそうだけど最後の加速は他の娘たちを圧倒しちゃうんだから!」

 

『さあ、レースもいよいよ終盤に差し掛かります!現在先頭を走っているのはアイタンリ!続いてイズカリ!ビウエラリズム!!』

 

(この勝負、私の勝ちね!)

 

(やっぱ大したことないじゃない!)

 

 

そんな他の娘たちが勝敗を確信しているなか、一人のウマ娘だけは違った。

 

「さあて、そろそろ決めるかッ!!」

 

 

ゴールドシップは最後の直線に差し掛かるといきなり加速し始めた。

 

 

「な、なんだありゃ....!?マルゼンスキーくらいのもんだぞあれは...!?」

 

「へッ、スパートを掛けたな!いけぇゴルシィッ!!」

 

「残り400よ!ぶち抜きなさいゴルシちゃぁんっ!!」

 

『おっとここで最後方から恐ろしい速度で先頭集団をゴボウ抜きしていくっ!!あれは....!?』

 

「えっ、嘘....!?なんで...!!」

 

「もう無理ぃ...これ以上は早く走れないよぉッ!!」

 

「アハハッ、オメーらはそこで指くわえて待ってろよ!さあてオオモノ捕まえてくっからよっ!!」

 

 

弱音を吐く者、戦く者、現実を信じない者が加速していくゴールドシップに抜かれていく。

 

 

(フン、いまさら加速したところでこの距離で私に勝つことはもう無理よ!もう3馬身は離れてるんだか.......ら.......っ!?)

 

アイタンリがそう油断しているうちに自分よりも背が高い者の影が目に移った。

 

 

「よォ、デケェ態度した奴に抜かれる気分はどうだいお嬢ちゃんよ?」

 

『ゴォーーールドシップ!!ゴールドシップが先頭へ躍り出たッ!!』

 

 

生徒会室―。シンボリルドルフが言っていることを理解出来ないエアグルーヴに続けて言う。

 

「トレーニングをしないこと―。端からすれば快くないものだろう。だがそれゆえにケガというものを知らない...そう、彼女を名前のシップにちなんで例えるなら....」

 

 

"不沈艦"だ―。

 

「不沈艦...?」

 

「ああ。私はあの理解の域を越えている才能に魅力を感じている...強いて言えば彼女...ゴールドシップは『天才』だよ」

 

『ゴールドシップ今、ゴールイン!!終盤の末脚は驚異的なものでした!!』

 

「よっしゃあっ!!」

 

「ゴルシちゃん!今のあなたとってもマブいわよ~!!」

 

「ま、マブい....」

 

 

 

散々ゴールドシップを貶していたウマ娘達は泣く者もいればショックで立ち直れない者もいた。

 

 

「なんでなんで!!今までいっぱいトレーニングしてきたのに!」

 

「なんでトレーニングすらしてないあんな奴に....!!」

 

「おうおう走る前までの威勢はどこいったよお嬢ちゃんたちよぉ」

 

「いいこと1つ教えてやんよ。トレーニングすりゃ勝てると思ったら大間違いなんだよ。努力は報われるってか?ハッ、アタシからしたらそんなもんただのおとぎ話なんだよ。努力うんぬん前に人を見下すとっから直す努力でもしなっ!じゃあな~!!」

 

 

ゴールドシップはレース場から去っていった。...しかし彼女の心の中はモヤモヤしていた。

 

(...と言ってもあいつらよりも、アタシはアタシなりに努力してんだよ.......!!あんなマニュアル通りにやってる輩にこんなとこで負けられっかよ!)

 

 

そしてウイニングライブも終え、ゴールドシップのところには仲間達が集まった。

 

 

「お疲れゴルシ!お前やりゃ出来るじゃねえかよ!ま、当然だよな!」

 

「あったり前よ!このゴールドシップ様をなめんなよっ!」

 

「最っ高だったわ!もしいつかあたしと走れるときが来たら...あの追い込みっぷり、あたしが体験させてもらうんだからっ♪」

 

「んなら、アンタのあのスーパーカーっぷり拝見させてもらうぜ!!」

 

「なあ秋山、お前皐月賞にゴールドシップ出走させるか?マルゼンスキーが出走するんだけど....いて!!」

 

 

秋山が高らかに笑い肩に強い力で手を置いた。...少しは加減しろっつうの。

 

 

「偶然だな、俺らも皐月賞出るつもりなんだよな。....なら担当ウマ娘と担当トレーナー...お互い勝負しようぜ!!」

 

 

こうして皐月賞にマルゼンスキーとゴールドシップ。俺と秋山との勝負が決定した。

...その前に来年のクラシック級3月にあるスプリングSが控えている。

しかし、今の俺にはマルゼンスキーにとって悲劇が起こることは予想もしていなかった―。

 

次回へ続く―。

 

 

 

 

 




今回のお話はいかがったでしょうか?ウマ娘madでYouTubeチャンネルがいい感じになってる蒼井 みことです!O(≧∇≦)O
作品の主人公はマルゼンスキーですが今回のお話はライバルポジションに当たるゴールドシップのメイクデビュー戦を書かせてもらいました!
本当は書くか迷いましたがライバルポジションのことも書くことは必要かなって思いまして!(笑)
そして今回登場したウマ娘アイタンリ、イズカリ、ビウエラリズムはアプリにも登場する所謂モブ娘のことです(笑)
ゴールドシップはトレーニングをするというよりは遊んでいるイメージが強いですよね?だから、現実と同じく努力をしている人はサボっている人を見ると不快な気持ちになることっておそらくよくあることです。それはおそらく作品に書かれてないだけでウマ娘でもゴールドシップに対し快く思わない娘もいるんじゃないかなって思い、ゴールドシップを貶すシーンを書きました。
しかし「天才はいる。悔しいが。」の通り、ゴールドシップは史実でも予測も出来ないほどの才能を持っています。なんせG1レースを勝っていますからね!
さて、次回はマルゼンスキーがスプリングSに挑戦します。そしてお正月のストーリーもアプリで育成を進めながら書いていこうと思います!
それでは、次回をお楽しみに!
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