規格外の風、その名はマルゼンスキー。   作:蒼井みこと

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ゴールドシップのメイクデビュー戦の影響は大きかった。
いつもトレーニングをサボっているウマ娘という悪名は消え去り、実はとてつもない才能があるウマ娘ではないか?という噂が学園内に知れ渡った―。
しかし、それと同時にゴールドシップにレースで負け、ショックから立ち直れず学園を去った者もいたようだ。
―そしてマルゼンスキーもまたスプリングSに向け、トレーニングに勤しむ―。



第7レース.異名を持つ者への代償。

新年、俺は今後のトレーニングについて考えていると部屋の扉が開いた。

 

 

「ん?あぁ、マルゼンスキーか。あけましておめでとう」

 

「ハァイ、トレーナーちゃん!あけおめー☆」

 

「新年早々、相変わらず元気だな。そういうところ、正直マルゼンスキーの好きなところだ」

 

「あらっ、いきなりプロポーズ!?お、お姉さんちょっとビックリ!」

 

 

 

よく親から元気にいることはとても大切だと小さい頃から耳にタコが出来そうなくらい聞かされてきたが、本当にそうだと思った。

 

 

「...ってあら、新年早々もうお仕事?感心するわね♪」

 

「君は会社の上司か....君にはとにかく楽しくトレーニングしてもらいたいからね。ガチガチにするのも俺自身嫌だからな」

 

「ウフッありがとう☆....あたしも、そういうところトレーナーちゃんの好きなところよ」

 

「え...?」

 

「あ、ああっ!なんでもないわっ♪き、気にしないで!!」

 

 

マルゼンスキーが珍しく慌てたように手をブンブンと振る。

 

 

「....しかし、トレーナーちゃんってあたしのために頑張ってくれてるのね。あたしも、お正月だからって食べすぎないようにしなくっちゃ!」

 

「トレーナーちゃんも頑張ってるけど、あたしも後輩ちゃんのために頑張ったことがあるの!特別に見せてあげるっ!きっとおったまげー間違いなしよ♪」

 

 

そういうとマルゼンスキーは机にテーブルクロスを敷き、コップを並べ始めた。

 

(手品か......?)

 

 

「いっくわよ~!.....せーのっはい!!」

 

 

マルゼンスキーは掛け声と同時にテーブルクロスを引いた。

...そう、彼女が俺に披露したのは一発芸『テーブルクロス引き』だ。

 

 

「じゃーん!テーブルクロス引き!!これ結構苦労したのよ♪これなら後輩ちゃんたちが盛り上がること間違いなしねっ!」

 

「お正月といえば『隠し芸!』これは欠かせないものよね~☆」

 

「隠し芸か、懐かしいな...よく小さいとき考えたもんだなぁ...」

 

 

俺は懐かしんでいるとマルゼンスキーはポカンとしていた。

 

 

「トレーナーちゃん、いま懐かしいって言ったけどいまでもテレビでやってるでしょ?」

 

「いや、もうとっくにテレビじゃ...」

 

「うそっ!?『隠し芸』ってテレビでやってないの!?お正月恒例じゃないのっ!?」

 

「あ、ああ....」

 

「...ま、まあね。後輩ちゃんたちを喜ばせるためにやるのが目的なわけだし懐かしいもへったくれもないわね!!うんうん....」

 

「..........。」

 

「な、何よぉその顔!」

 

 

こうしていろんなことがあったが正月も終わり、マルゼンスキーのトレーニングは本人の提案もあり少しハードになった。

正直、彼女は無理をしていないか?と心配になっていたが「ダイジョーぶい!」と答えているが...

 

 

「おぅお疲れ!!最近マルゼンちゃんさらにトレーニングに力入れてるなぁ!!」

 

「お、秋山か。...まあ頑張ってはいるけど最近無理をしてないかって心配なんだよな」

 

「あれ?お前がトレーニングハードにしたんじゃねえのか?」

 

 

...そんなことするわけないだろ。俺は俺なりに彼女が楽しんで走ることを重視しているから。

 

 

「俺、なんとなく嫌な予感してならないんだよな。...少し前にすげー悪い夢見たもんだからさ」

 

「まあ...確かにそりゃ心配だろうけど、俺は心配なんかしないな」

 

「どうしてだよ?」

 

「夢を見たからなんだって言うんだよ。それに、マルゼンちゃんがやるって決めたんならやめろとは言えねえしな。...ゴルシのやつ、見てみろよ」

 

 

秋山の指を差す先を見るとゴールドシップが自分の背丈よりも大きなタイヤを引きずって走っていた。

 

 

「うおおおおおおおおおっ!!ファイヤーーーーーーーーーーッ!!」

 

「す、すげえな...しかしなんでまた珍しくトレーニングを?」

 

「あいつさ、マルゼンちゃんと皐月賞に勝負するからって必死になってんのさ。」

 

「...珍しいな」

 

 

いつもならトレーニングしないゴールドシップがしっかりと励んでいるのを見るのもまたなかなか珍しい...

 

 

「よーしっ!ゴルシー!今日はこのあたりでお開きだ!!」

 

「なんだよオメーにしちゃあ珍しい心がけだな!」

 

「余計なこと言わなくていいんだよ!!

 

「まっいっか!んじゃあたしはこのタイヤ戻してから帰るからオメーも気をつけて帰れよー!」

 

 

そんななかマルゼンスキーもまたトレーニングの項目を1つ終えて帰ってきた。

 

 

「ふぅ!気持ちよかったわ!さ、トレーナーちゃん!次のトレーニングに行ってくるわ♪」

 

 

彼女は平気を装っていたが顔は見るからに疲れている、そんな感じかした。...そこで俺は今日のトレーニングは止めることにした。

 

 

「いや、今日は早めに切り上げよう」

 

「あら、どうして?まだ3つやり遂げてないわよ?」

 

「まあまあ、たまには休みなよマルゼンちゃん!せっかくこいつが休んでほしいって言ってるんだ、たまには息抜きしようぜ」

 

「そう...そうね!ならぁ.....2人とも、今日の夜空いてるかしら?良かったらゴルシちゃんも連れて遊びに行きましょ♪」

 

 

それを聞いた瞬間俺には嫌な予感がした。彼女がこう聞くということはどうなるかは検討が付いていた。

 

 

「いや待て、ゴールドシップは寮住みだから夜はまずいだろ...」

 

「ダイジョーぶい!いざとなればあたしがたづなちゃんになんとか言うわ!」

 

 

ーそしてその日の夜。

 

 

「イエ~イ☆皆ノッてる~?車だけに、なーんてね!」

 

「おぉ~ノッてきたぞ~!!もっと楽しんでいこうぜッ!!」

 

「うぅ...勘弁してくれ......」

 

「よぉアンタ.....マルゼンスキーによく振り回されてんのか.....?あぁ....気持ちわりぃ.......」

 

「よぉしっ!もっともっとかっ飛ばしていこうぜベイビー♪」

 

 

マルゼンスキーと秋山がはしゃいでいるなか俺とゴールドシップは限界を迎えていた...

 

ーそして翌日。

 

 

「まったくあなたたちは!マルゼンスキーさんも、危ないドライブはほどほどにって何度も言ってるでしょう!?」

 

 

普段のたづなさんから一時間ほどの説教が俺を含めた4人に襲いかかったー。

 

 

ーそしてスプリングS当日。会場は相変わらずの人並みだ...が、出走ウマ娘一覧を見るとなんと5人しかいなかった。

 

 

「おいおいずいぶんとGⅡレースにしては出走側が閑古鳥鳴いてるじゃないか...誰かに聞いてみるか....お、あの緑の特徴的な帽子姿は...」

 

 

観客席にはなんと、たづなさんがいた。

 

 

「お疲れ様です、たづなさん」

 

「えっ?...わ、ト、トレーナーさん!こんにちわ...マルゼンスキーさんの活躍が楽しみで来ちゃいました♪」

 

「ありがとうございます。...一つ質問したいんですがGⅡレースにしては出走ウマ娘が少ない感じがしますが...たった5人って...」

 

「そ、それは....」

 

 

たづなさんが言いたくないことを言おうとしている感じでこっちまで気まずくなってきた...とはいえ、この異常な光景は何か事情があるはずだ。

 

 

「朝日杯FSでのマルゼンスキーさん、ミホノブルボンさん、ナリタブライアンさんのレースが強く影響してまして...その中のスーパーカーと現在、名を轟かせているマルゼンスキーさんが出走すると聞いて出走取消した娘たちがいっぱい出てきてしまったんです...」

 

 

つまり、圧倒的なあの速さに絶望..".絶対勝てない"ということを悟ったってわけか...普通なここで残念がるだろうが俺の中には少なからず怒りが湧いていた。

 

 

「なんか、マルゼンスキーが悪者みたいですね」

 

「い、いえっ!別にそういうつもりで言ったわけじゃないんですっ!!」

 

「いえ、たづなさんが謝ることじゃないんです。...俺からしたらその娘たちに怒っているんです」

 

 

たづなさんがあわあわとしている。...この人には何も罪はないけど...

 

 

「多分今回のレース、すぐに決着がつくと思います。もしそうなったら...すみません」

 

「そ、それってどういう...?」

 

「すみません、そろそろマルゼンスキーのところに行かないといけないので....失礼します」

 

 

―時を同じくして生徒会室でも、緊急会議が行われていた。

 

 

「ふむ.....今回のスプリングステークスの件はかなり深刻なものだな」

 

 

シンボリルドルフは大きなため息をついた。

彼女にとっても予想しなかった事態でもあったため、どうするべきか悩んでいた。

 

「ここ最近はいろいろありすぎです...マルゼンスキーのメイクデビューから朝日杯FS三大ウマ娘の件といい...今回のウマ娘出走取消がなどと...」

 

「確かに私と他のウマ娘、ブルボンとマルゼンは有名になり過ぎた....だが、そんな相手にも果敢に挑むのがウマ娘じゃないのか?」

 

 

エアグルーヴも呆れているなか、ナリタブライアンもまた大きなため息をつく。

彼女もまたマルゼンスキー同様、似たようなことが起きレースが開催されなかったこともあるためストレスが溜まっいる。

 

 

「"レースに絶対はない"...それを忘れてしまっては困るな。ましてや勝てないからと出走取消するなど私としても好ましいことではない。.....明日朝礼で話すとしよう」

 

 

次回へ続く―。




今回はいかがだったでしょうか?蒼井 みことです!
マルゼンスキーのレース目標にスプリングSがあるのですが本来ならウマ娘がマルゼンスキーとの勝負を回避した、というところですが出走取消=勝負しても勝ち目ないにしてみました。
....おそらくそれであながち間違ってはいないかなって思いまして(笑)
次回はスプリングSについて書いていきます!
後、今回から次回の投稿日時について書きます!
次回は...11月11 日19時から!! 次回も、お楽しみに!
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