それを知り、絶望するマルゼンスキー。それを知り、苦悩するシンボリルドルフ。
自身が走ることによって1部の人、ウマ娘を絶望させてしまうと思い、マルゼンスキーは-?
俺はマルゼンスキーと合流した。
...が、彼女の顔には笑顔が無かった。
「マルゼン...どうした、ずいぶん浮かない顔してるな」
「そりゃあ.....なんでこんなに出走する娘が少ないか、トレーナーちゃんだってわかってるはずでしょ...?」
マルゼンスキーには今回の異常な光景について原因が自身にあることを理解しているようだ。
「あたしのせいなんだわ....今回のレース、あたしが出なければ皆出走してたんだもの....」
「そんなことはない、君は君なりに楽しんでレースをするんだ。今回は君の好きなように走ればいい。いきなり全力ってのも悪くないぞ?」
「やあねぇ、それじゃ疲れちゃうじゃないっ!...ウフッ、トレーナーちゃんのおかげでスッキリしたわ。それじゃぁ、行ってきま~す♪」
そう言うとマルゼンスキーはレース場へ向かって行ったがその後ろ姿にはどこか悲しげに見えた。
―そしてレース場。もちろん一番人気はマルゼンスキー。パドックでも凄まじいほどの歓声が上がった。
(皆が見てくれてるこのレース....楽しく走らないと!)
マルゼンスキーは胸のうちでそう決めていた片側で、他の娘たちはどこか元気が無さそうだった。
「やっぱ出走したんだねマルゼンスキーさん...」
「私たちじゃ絶対勝てないって...だってスーパーカーって呼ばれてるくらいなんだし...」
「わたしも出走取り消しトレーナーさんに頼めばよかったよぅ.....」
(なんなのよ.......なんなのよ!!あたしがまるで邪魔者みたいじゃない...!!あたしが...あたしがみんなに何したってのよ.....)
ヒソヒソと話をしていたことが聞こえた途端、マルゼンスキーの心に怒りが湧く。自分は楽しく走りたいのにそういうネガティブな話を聞くとその気じゃ無くなってしまう。
『スタートしました!っと、おおっと、!!マルゼンスキー!スタートから他の娘達を追い抜き先頭へ.....こ、これはっ!?いきなりスパートを掛けているのか!?他の娘を圧倒し段々と距離を引き離しますッ!!』
(こんなの........あたしが望んだのはこんなお通夜みたいなレースじゃない.........皆楽しむつもりが無いのなら仕方ないわ.......)
「さっさとこんなレース終わらせるわッ!!こんなレースなんてつまらない!!!」
マルゼンスキーの他のウマ娘のレースへの気持ちの無さに怒りが頂点に達し、ターフを猛スピードで駆け抜けた。
自分はただ楽しくターフを走り、駆け抜けたい-。
なぜ、自分が出走するだけでなぜ皆はそれを嫌がるのか-。
『速い速い!!独走、いや一人旅も同然の走りだ!!スーパーカーはどこまで進化を続けるのか!?』
一部の観客の声がマルゼンスキーにさらに追い討ちを掛ける。
「にしても、マルゼンスキーが出るともう勝ちが確定しちまうからつまらねぇよな~」
(えっ.......?)
「ああ、あの娘はスーパーカーだよ。例えるならチューニングしてない車が元からハイスペックな車に挑んでるようなものだよ。そりゃ決着なんて走る前から分かる」
(やめて...)
「今回の出走取消が多かったのも元はといえばマルゼンスキーが出たせいで他の娘が怖じ気づいたからなんだろ?」
(やめて...あたしはそんなつもりは...)
マルゼンスキーにとって聞きたくない事が頭に入ってきた。
「出来ればGⅠだけにしてほしいよなぁ~GⅡとか勝つの分かってるのになんで出走するんだか。これじゃ他の娘の晴れ舞台潰してるのと同じじゃねぇか...」
「もう.....やめてっ!!!」
(あたしは....あたしはただ楽しく走りたいの....なのに........もう............!!)
『マルゼンスキー!今、ゴールイン!!またもや規格外のスピードを見せつけ圧勝!!彼女にかなうウマ娘は今後に現れるのか!?』
そんな実況を裏に1着を取ったマルゼンスキーはその場に崩れ、目からは涙が溢れていた。
「ほらな、こうなるの目に見えてただろ」
「こうなるなら来なきゃ良かったわ。マルゼンスキーのせいで推しの娘がボロ負けよ....邪魔しないでほしいわ!!」
そんなマルゼンスキーには歓声と同時に自身の存在を否定する声も聞こえていた。
「もう...........いやぁ........」
-ウイニングライブを終えたマルゼンスキーにはいつもの笑顔が無い。少し様子が変だなとは思ったが俺とたづなさんは彼女に話しかけた。
「お疲れ様、マルゼンスキー。今日も最高だったよ」
「あ、ああ...トレーナーちゃんか...」
「ホントですね!あの圧倒的な走り、きっとシンボリルドルフ会長も喜んでると思います!」
たづなさんは感激のあまりいつもの倍以上にはしゃいでいた。
「どうした、マルゼンスキー.....?」
「え!?ううん、なんでもないわよっ!さ、さあ、レースも勝てたし祝いにドライブ行きましょっ♪」
「あ、わたしは遠慮しておきますね....これからまだ少しお仕事がありますので...では、ここで失礼します。トレーナーさんも、マルゼンスキーさんもお疲れ様でした」
-俺はマルゼンスキーに乗せられてどこかに向かっている。...が、彼女が珍しく運転の荒さを見せない。
「....着いたわ」
そこは月が水面にキレイに移る湖が見える場所だ。
...しかし人の気配は全くないところだ。
「ねえ、トレーナーちゃん。......今日ね、レースしてる時あたしこれからターフを走っていいのかって悩んだの」
「そりゃあ....いいに決まってるよ。あのターフは君たちウマ娘だから走れる。......やっぱ何か悩んでるのか?」
「...もう嫌なのよ。あたし、悪者扱いされるのが......走っている時に聞こえたのよ。"他の娘の晴れ舞台潰してる"とか、"推しの娘の邪魔をするな"って」
マルゼンスキーは涙ぐんでいる。
「それは...その人たちの意見だ。君は君だ...確かに速すぎるところは人によってはアレかもしれないけど」
「それが嫌なのよッ!!今日はちょっとそれが嫌でムキになっちゃって...ホントはね、今日も人数は少なくても楽しく走りたかった」
「でも、出走する子達は皆あたしと走ることを拒んでたの...」
「それじゃまるであたしはお邪魔虫....これじゃ楽しく走れないし悪役になっちゃうくらいなら...走るのやめて、前の学校にいた時の方が楽しかったわッ!!」
「それは違うッ!!」
「...っ!?」
俺はマルゼンスキーの発言を否定した。
「君はなんで中央に来たか...なんで俺と契約したか覚えているか?」
「君は楽しくて走っている...前の学校の後輩の子たちは君が大舞台で活躍しているところを見たい...君はそれに応えるために中央に来たんだろう?」
マルゼンスキーの目からは絶えず涙が溢れている。
彼女にとって今の状況がいかに苦しいのかよくわかる。楽しくて走りたい...だがそんな彼女を悪者扱いする輩もいる。
「マルゼンスキー、人気者っていうのはファンが大勢いるなかに必ず快く思わない人も存在する。でもそれに君は負けてはいけない...楽しく走ることが君の理由じゃないのか?」
「それはそうよ....でも」
「そんな人達がいても俺がいる。それだけじゃない、秋山、ゴルシ、たづなさん、そして会長達がいる。...そんな応援してくれる仲間達がいるだけで楽しいって思わないか...?はは、ごめん。なんからしくないこと言っちゃったかな?」
マルゼンスキーを見るとそんな俺を見て肩を震わせてクスクスと笑っていた。
「フフフフ...なんからしくないこと言うじゃない、トレーナーちゃん.................そうね、そんなことでへこたれてちゃお姉さんとしてのメンツってのが立たないわね!」
「分かったわ、あたしもっともっと頑張って見せるわ♪...ありがと、トレーナーちゃん。そういう優しいところ、好きよ」
「.......っ!?」
俺の頬にマルゼンスキーはキスをした。
....いくら相手が学生とはいえ、大胆すぎるんじゃないか...?と、俺は自分でも制御が出来ないほどにテンパった。
「これはあたしからのトレーナーちゃんのお礼よ♪......これからも、あたしの走る姿、見ててくれる?」
「ああ、約束する......さあ、次は皐月賞だ。ゴルシも出るんだ。気を引き締めていこう」
「ええ、わかったわ♪」
次は皐月賞-。あの不沈艦の名を轟かせたゴルシもそうだがおそらく他の強豪も出走するはずだ。
次回へ続く-。
今回のお話、いかがでしたか?蒼井みことです!
早くもこの作品も8話目なんですね!?正直おったまげーです(笑)
さて、次回はとうとう皐月賞!スーパーカーと不沈艦がぶつかる激アツな展開をご期待ください!
それでは、次回もお楽しみに!