規格外の風、その名はマルゼンスキー。   作:蒼井みこと

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スプリングSの異常な出来事はあまりにも大きい出来事だった―。
そしてマルゼンスキーの異常な速さでの噂がますます広がり"スーパーカー"と呼ばれる裏では他のウマ娘の晴れ舞台でも圧倒的な実力で勝利を取ってしまうことから"舞台壊し"と囁かれる。
しかしその事態を黙ってはいない"皇帝"、シンボリルドルフとトレセン学園―。
控える皐月賞―。朝日杯FSを超える伝説の1ページが開かれようとしていた―。


第9レース.待ち構える大レースの予感―。

スプリングS終了後、数日後の朝礼にて。

 

 

「皆に、悲しい知らせがある。しっかりと最後まで聞いてくれ」

 

 

シンボリルドルフの話に全生徒が耳を傾ける。

 

 

「先日開催されたGⅡ、スプリングSのことについてだ。このレースにて、たくさんのウマ娘が出走取消についてだがその原因は皆も知っているはずだ。気持ちは分からなくもはない。......だが、だ!!」

シンボリルドルフは怒りに任せるように演台を強く叩いた。その音は響き1部の生徒は怯える。

 

 

「皆はなぜレースに出走するのか、なぜトレーニングをしているのかを改めて考えなくてはならない。"レースに絶対はない"。いかなる相手でもそれを『敵』として見るのではなく、共にターフを走る仲間、ライバルとして今後とも各々のレースに向けてトレーニングを励むように!!」

 

「そして、自分は本当に速いのか...もし相手に劣っているのなら何が足りないのか...勝つことが全てではない、そういう事を負けて学ぶのも大切だということを忘れないでもらいたい」

 

このシンボリルドルフの言葉は的を射ていると俺は思った。

マルゼンスキーが出走したスプリングS...この異例な出来事はニュースでも大々的に報道された。

そもそも出走取消の理由が『マルゼンスキーが出走すると聞いて』だとそのウマ娘のファンからすればたまったもんじゃないからだ。捉え方によってはレースから逃げたも同然、トゥインクル・シリーズに身を投じている彼女達としては恥じるようなこととも言える。

...しかし、彼女達の言い分も分からないわけではない。相手はターフを駆け抜ける『スーパーカー』と言われ全戦全勝のウマ娘が出走する、となれば自身がマルゼンスキーの栄光のための礎になりかねないからだ。

 

-そして昼の屋上。

 

 

「なあ、今回のこの事件...マルゼンちゃんが原因だってのは本当か?」

 

「人聞き悪いこと言うなお前も...まあ確かにマルゼンスキーが出走すると聞いてってのは本当らしい」

 

「ま、そりゃそうだよなあ......相手は『スーパーカー』、挑むのは生身のウマ娘...勝てるわけないよな」

 

 

...こいつもまたマルゼンスキーを何だと思ってるんだ。

 

 

「おっと、機嫌損ねちまったか。ごめんな、でもさ....俺は出走取消した娘の気持ちも分かるぜ?」

 

「...マルゼンスキー、あの後かなり悩んでいたんだよ。なんでもレース中に観客側から他の娘の晴れ舞台を潰してるやらなんやらって聞こえたらしい...」

 

 

それを聞いた途端、秋山は飲み終えた缶コーヒーの感を強く握ってへこませた。

 

 

「...それってよ、俺から言わせてもらえば誰だって平等なもんだと思うがね。マルゼンちゃんだってデビュー戦のとき誰かに潰されてたかもしれねえしゴルシだって同じだ。朝、ルドルフ会長が言ってた"レースに絶対はない"。これはマジだと思うぜ?強いやついるから出走取消にするとか何考えてんだよって話だよ」

 

「ああ...出走取消した娘の中にはその件で走る事を辞めた娘もいるらしい」

 

「まあそりゃそうだろうな。それで担当ウマ娘がいなくなったトレーナーだっているだろうよ。...ケガとかでなら分からなくもないがレースから逃げるってのはさすがにアウトだろう?」

 

 

話している途中、副会長の声で俺を呼ぶ声が校内放送で流れた。

 

 

『シンボリルドルフ会長が呼んでいる、至急生徒会室へ来るように』

 

「お、会長からさっそく呼び出しだぞ?」

 

 

―そして生徒会室。中々入ることが許されないその部屋の奥に王者の風格を持つ"皇帝"の名を持つ生徒会長、シンボリルドルフがいた。

 

 

「わざわざ手間をかけさせてしまい申し訳ない、マルゼンスキーのトレーナー君」

 

「いえ、気にしないでください。......スプリングSの件、ですか?」

 

 

それを聞くとシンボリルドルフは軽くため息をつく。

 

 

「...ああ。今回の異例の事態は初めてだからな...まさか私達ウマ娘のなかにレースから逃げる者が出てくるのはさすがに私としても遺憾なことだ。...ところで、トレーナー君。君に1つ聞きたいことがあるんだ」

 

「なんですか?答えられる範囲ならなんでも答えますよ」

 

 

こうしてシンボリルドルフといるといくら高等部とはいえ俺たちトレーナーよりも格上の存在だ。

ましてや、会長。風格が違いすぎてこっちが怖くなってくるくらいだ。

 

 

「何、そんな難しい質問ではないから安心してくれ。私が聞きたいこと....それはなぜ君は彼女、マルゼンスキーを選んだのかだ。...答えられるかな?」

 

「俺は彼女の楽しそうに走っている姿...人間としての考えだろうけど本来の『ウマ娘』として生きている姿に惹かれたんです。よく他の娘も...それだけじゃない、トレーナーも重賞ばかり狙おうとしている...そんな肩苦しい事を考えずに走るあの娘ならって...俺、正直彼女達をあれしろこれしろと目標を無理矢理立てるようなことをしたくないんです」

 

「つまりは、私達ウマ娘を自由に走らせたい、と?それは、端からすればトレーナーの仕事を放置しているようにも聞こえるが...違うのかな?」

 

「違います。...俺、マルゼンスキーをいろんなトレーナーがスカウトしているところを見ていたんです。しかし、彼女は全てを断ってきました。...そして彼女から本当の気持ちを聞いたんです」

 

"あたし、楽しくて、気持ちいいから走っているだけなのよ。"

 

「だから俺もそれに答えたい。もしこの考えが他のウマ娘やトレーナーの反感を買うことになっても...彼女、マルゼンスキーを最後まで支えてあげたいんです」

 

「そうか......フフッ、確かにこれならマルゼンスキーが君に付いていこうとしたのもうなずけるな...」

 

「そんなトレーナー君に、私からお願いしたいことがあるんだ、聞いてくれるか?」

 

 

シンボリルドルフは腕を組み、静かに俺に歩み寄る。

 

 

「彼女を...マルゼンスキーをこれからもトレーナーとして見守ってくれ。誰が異論を述べようが、私は......君の考えを肯定する。...君のようなトレーナーがこの学園にいること、誇りに思うよ」

 

「ありがとうございます....!」

 

 

この考え方は絶対に変えるつもりはない。次は皐月賞...あのゴールドシップも出走するなら、多少ながらトレーニングもハードになるだろう。

でもマルゼンスキーならやってくれるだろう、俺は...

彼女を信じているから―。

 

 

―そして放課後、俺は今日のトレーニングを休みにして喫茶店で打ち合わせをした。

 

 

「あらトレーナーちゃん、ずいぶん洒落たサ店覚えてるじゃない♪てっきりデートのお誘いかと思ったわ!」

 

「まだそんなこと俺とできる年頃じゃないだろ...」

 

「ガビーン!てっきり乗ってきてくれると思ったのにぃ......ま、いっか☆それでそれで、ゴルシちゃんに対応するためのトレーニングって?」

 

 

俺はマルゼンスキーに今後のトレーニングについて説明した。

ゴルシの脚質は追い込み、あっちは終盤の直線で一気に仕掛けてくるから主にスピードとスタミナ面のトレーニングをすることにした。

おそらくあの終盤のスピードは間違いなくマルゼンスキーと同じレベルのものだろう...いや、もしかすればそれを超しているかもしれない。

今まで以上にスパートとに力を入れないと最後に抜かれる可能性が高い。

 

 

「へえ~...いいわね♪あなたとならどんなトレーニングでもいけるわ!それと...トレーナーちゃん、あなた...あたしを担当した当初からずいぶんトレーナーらしくなってきたわね」

 

「....もしかして嫌かな?」

 

「そうじゃないわ。他のトレーナーと違ってあーしろこーしろ!みたいなのがなくてあたしの事をトレーニングでも必ず気にかけてくれるし、無理のないトレーニングを組んでくれる...おかげであたしも頑張れた気がするの」

 

 

トレーナーらしい、か。...まあそうかもしれない。

確かにこの仕事に慣れたかもしれないが所詮は新人トレーナーに過ぎない。おそらく尾崎トレーナーなら鼻で笑うレベルかもしれないけど...

 

 

「俺は君の調子とトレーニングをしてみての感想を聞いて組んでるからね。無理なトレーニングをさせないで思いっきり楽しんで励むようにする...これが俺のモットーだからさ」

 

「ウフフ♪そういうところ、そういう女の子への優しさがお姉さんをドキドキさせちゃうんだぞっ!」

 

「い、いや別に変な感じで考えてないよ!ただ俺は君に楽しく走ってもらいたい。それだけさ」

 

「ウフッ.....ありがとう、トレーナーちゃん♪」

 

 

 

―そして待ちに待った皐月賞。予想通り強豪のウマ娘達が勢揃いしていた。その中にマルゼンスキーと同じく逃げで有名なトリックスター、セイウンスカイ、世紀末覇王と呼ばれたテイエムオペラオーがいる...

その中には前回の朝日杯FSの2人にもいるが、危険なのはやはりゴルシだ。

 

 

「マルゼン先輩、今日はゆるっと勝たせてもらいますよ~♪」

 

「ウフッ望むところよ♪」

 

 

その中にゴールドシップがマルゼンスキーに肩を組む。

 

 

「おおっと、このゴールドシップ様がいること忘れんなよっ!」

 

「ええ、お互い楽しいレースをしましょっ!」

 

 

新たな伝説が、今始まる―!!

 

次回へ続く―。

 

 

 

 

 

 




今回のお話はいかがだったでしょうか!蒼井みことです!
YouTubeでも段々動画も見てもらえるようになってモチベーション上がりまくり!....だけど小説についてお知らせがあります。

私の小説『規格外の風、その名はマルゼンスキー。』の投稿期間が今まで1日置きだったのですが動画編集などの関係もあり少し遅れてしまうこともあることをお知らせします。
今回も投稿が遅れてしまって申しわけないです(´;ω;`)
次回はついに皐月賞!強豪のウマ娘達とスーパーカー、不沈艦の熱いレースにご期待ください!
それでは、次回もお楽しみに!!
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