Starlines ZERO ~星歌の引き金~ 作:がじゃまる
3話目です
歌うことが好きだった。自分の歌で誰かを笑顔にするのが好きだった。
自分の中で一つのアイデンティティでもあった歌うこと。それを怖いと思うようになったのは……いつからだったか。
緊張感と期待感がせめぎ合う空間に満ちる、その時を待つ静寂が何よりも苦手だった。
だって、いつだってその直後に訪れるのは―――暗転だから。
「っ……」
ステージの端から会場を覗き、詰めかけた観客の様子に顔を引き攣らせる。
こんなにいるのか。今か今かとスクールアイドルの登壇を待ち望むそれらの熱気に反し、自らの肝はその熱を急降下させていくのを感じた。
「かのん、大丈夫デスか……?」
「…あ、うん……大丈夫。ちょっと、昔のこと思い出してただけ」
自らと同じ、華を模した衣装に身を包んだ友を視認し、一人じゃないと自分に言い聞かせる。
支えたいと言ってくれた友がいる。その友の夢を応援したいと思っている自分がいる。自分がここに立つと決めたのは、もうその想いを裏切りたくないからじゃないか。
(……いないか)
けどここに立つ切っ掛けをくれたのは一人だけではない。
再度会場を見渡してみる。母や妹、親友などの顔は散見できるものの、求めた者の姿はなかった。
(……せっかくなら、見ていて欲しかったな)
歩み始めてどれだけ経ったか。成果を渇望してどれだけ経ったか。
結果として目指した場所には到達した。求めていた成果も目の前にある。
けれど望み続けた景色とは……本当に、これだっただろうか。
「一先ずおめでとうと言うべき、かな。やったな、ケント」
「……おー、お褒めに預かれて光栄だよ」
巨大なモニターが並ぶ小規模な管制室に、スーツで着飾った専門家達の顔が並ぶ。
一通りの挨拶を終えたのか、群衆から抜け出た友が投げかけた称賛の言葉に、真坂ケントは決してその目と視線を重ねることなく返した。
「いよいよだな」
「……」
促される形で、同時に彼から目を逸らす形で中継映像を流すメインモニターに意識をやる。
映し出されるのは石造りの遺跡を眼前に、各国から選抜された調査団が突入前の最終チェックを行っている様だ。
ダイトに押され発表した研究結果とそれに伴う仮説は、一連の件についてご執心であったTPCの研究に大いに貢献することとなった。今回の調査はその最終局面だ。
場所は南太平洋、その孤島に存在する遺跡。元は海中に沈んでいたが、数年前に海底火山の活動により隆起してきたものだ。
アラスカ州、ユカタン半島、メルボルン、そして日本。巨人像の見つかった地点をそれぞれ点で結んで出来た四角線。その中央部に位置する島に遺跡が存在していた、と言うのがこの調査に踏み切った理由だった。
「……この遺跡、確か海中に沈んでいた間は周辺の島々に住む民族が聖域として扱ってたんだよな。ルルイエ、とかいう」
「ああ。そんなモンがあんな地点に存在してりゃあ、偶然で片付ける訳にもいかねぇだろ。……ま、俺はただ気付いたってだけで、そう言って押し切ったのは上の連中だが」
「だいぶ揉めたらしいぜ? 元々その民族の猛反発に調査を阻まれてた場所だからな。今回は結構、強引な手も使ったらしい」
「なんだそれ……国際平和維持組織が聞いて呆れる」
「まあそう言うな。それだけケントの出した成果を認めてくれてるってことだろ」
「……どうだろうな」
目を細め、ダイトに舵を切られてから今に至るまでに経た出来事を想起してみる。
疑念や嫉妬のような声もあった。けれどそんなもの以上に称賛の声を得た。それは敗者の烙印を己に刻んでから、ずっと渇望していたもののはずだ。
それを手にすれば、自分を肯定できると考えていた。劣等感と嫌悪感の中で作り上げた理想の自分になれるはずだった。
けれどどうだろうか。今この場所に立つ自分は……かつて描いたほど誇れる自分には思えなかった。
「なんか、不満そうだな」
「……さあ、俺自身、よくわからん。お前がそう見えるならそうなんじゃないか?」
理由は明確であったが、口にはしなかった。これでいい。これが正しいんだと反芻し、再度中継モニターに視線を固定する。丁度調査隊が遺跡の内部へ突入せんとする瞬間だった。
だがもう正直、この調査で出るであろう成果には興味はなかった。
だから頭は想像を斜めの方向へと傾ける。思い起こすのはこの調査に参加した初日のことだった。
路傍に放り捨てられていた新聞に印刷されていた、邪神や滅亡を掲げた予言。確かアレを唱える団体の起源は、今回TPCと揉めたという民族だったか。
そこまでの情報を羅列し、脳内のCPUは奇天烈なシナリオを生み出す。あの遺跡に踏み入ることこそが滅亡の引き金であり、これまで彼等が遺跡の調査を拒んでいたのはそれを回避するため……などと妄想し、馬鹿らしいと自らを皮肉るように笑った。
直後にその妄想が―――――本物の悪夢に変わるとも知らず。
「ギャpャzグ■■「■ンギャ「ンgガガ■ppp――!!!」
瞬間、世界を騒音が満たす。
発破により遺跡の入り口がこじ開けられた刹那、溢れ出した˝黒˝の群れは途端に中継映像を覆い、瞬時にそれを白と黒の砂嵐へと遷移させる。
「な……何があった! 返答しろ!」
複数の言語を用いて応答を投げかけるが、返ってくるのは断片的な調査員のものと思われる悲鳴と、何かの˝咆哮˝。
「は……?」
「なんだ……何なんだこれ―――はッ?」
突然の事態を理解する暇すら与えずに世界は揺れる。
体勢を崩し、後頭部へ走った衝撃。遠ざかる警報の音や友の声にようやく己の状況を理解した時には既に、意識は闇の底へと誘われていた。
「可可ちゃん、大丈夫…?」
「ハイ……大丈夫、デス。転んだだけデスので」
尻もちを搗く友に手を貸しつつ、帳が降りたかのように暗がりとなった客席を見回した。
混乱の声が渦巻いている。見た限りでは怪我人や会場の損壊等は確認できないが、このロクに明かりの無い状況で得られる情報がどこまで正しいのか。
客席にいるであろう家族や親友の無事を願いつつ、澁谷かのんは起き上がった可可と身を寄せた。
「地震……デスかね」
「多分、ね。こんな時に……」
蟠るどよめきの声がいつだかの景色と重なり、刻まれた失敗の記憶が蘇る。
震えた。振り払ったはずの恐怖が這いずり寄ってくる。いつもいつもいつも、奮い立たせた心を暗闇に落とすのはこれだ。
「かのんちゃん!!」
けどそんな暗闇だからこそ、ハッキリとまた光も見えた。
親友の声に導かれ見やった客席。そこには直前のものとまでは行かずとも、点々と並ぶ淡い光が自分達の立つステージを照らしていた。
「可可の、ペンライト……」
傍らから感嘆の声が漏れた。それもそうだろう。客席の人々が手にしている明かりは開演前に可可が配っていたペンライト……それが今こうして自分達を照らしているのだから。
「かのん! 歌いまショ……かのん?」
でもそんなこと、今の自分には些末なことでしかなくて。
「かのん……? どうしたのデスか?」
呼びかけられてもなお、固定した視線を揺るがすことはなかった。
「なに……、あれ……」
震える声と指先が向かうは、夜闇に並び立つ˝二つ˝の月。
何かを見据えるように煌めき、何かを狙うように瞬く、まるで何かの眼であるかのような錯覚を覚えさせた。
「これったらこれぇぇぇぇッ――――――!!!!」
何処からか叫ぶ声が聞こえた。そんな声に順ずる形で失われていた電源が復旧する。
同時に舞い戻った明るさは……直前のそれが錯覚でなかったことを証明した。
『ッッッ――――――――!!!!!!』
会場が、空間が、世界が揺れる。
地響きの音源は帳を背負い、復旧した電光を以てしてもその全貌を伺わせない。鳥類を思わせる嘴に、それとは不釣り合いにも思える強靭な手足。そして何よりも、視界を覆わんばかりの両翼が見る者全てに影を落とす。
昔CMか何かで見た映画広告がフラッシュバックする。自分達の認識を遥かに凌駕するような˝巨大生物˝の姿がそこにはあったのだ。
―――――
一拍遅れて上がった悲鳴の嵐。
関が決壊するかのように人々が流れを作って逃げ出す光景は、大凡現実のものとは思い難かった。
『ッッ――――――!!!』
突然明かりが戻ったことによる混乱なのか、巨大生物は人々などお構いなしに周辺の木々や街灯をなぎ倒し始める。
暴虐に破壊を尽くすその様は……まさしく、˝怪獣˝と呼ぶのに相応しい姿であった。
「っ…! ありあ……? お母さん!? ちぃちゃん!」
「かのん! そっちは危ないデス!」
「でも皆が……」
もうステージだのなんだのと言える状況ではなくなっていた。
親しい人の元へ向かおうとする者とそれを止める者。その手の作品ではテンプレとも言える描写ではあるが、いざ自分が当事者になってみると観賞時の感情など微塵も抱かないものだった。
「ッ! ちぃちゃ―――」
逃げ惑う人波の中で流される幼馴染の姿を見出し、手を差し伸ばそうとする。
だがそんな希望も寸刻の後に阻まれる。響いたのは鈍い殴打音。それは猛る怪獣の巨体を真横へと薙ぎ払い、あろうことか幼馴染の混じる群衆の真上へと倒れ込んだ。
『やれやれ……たかだか邪神の使いっぱしりが、随分な真似してくれるじゃないかい』
巨獣を薙ぎ払った者もまた巨獣……いや、巨人と呼ぶべきか。
帯状の羽衣を翻す金色の巨人は、その様や口調から女性的である印象を覚えるが……今はそんな感想を並べている場合ではない。
何故、どうして。
あの巨人の視線は、何か執念的なものを纏って自分を捉えているのだろうか。
『3000万年ぶりだねぇ……見たところ前と姿は変わってないようだけど、気に入ってるのかい?
「ユザ……レ?」
不明な言語の中で唯一聞き取れた単語がそれだった。聞き覚えの無い呼称だが、それは明らかに自分に向けられている。
混乱が更に加速した。自分はあの巨人のことを知らない。けれどあの巨人は、かのんの知らない自分を知っている。
『おや、思ったよりも早かったですねぇ。感心ですよカルミラ』
『久方ぶりの再開を祝したいところだが……まずはユザレの確保が先決か』
しかも巨人はあれだけではないのか。一体、また一体と姿を見せた巨人達は揃ってかのんへ視線を注ぐ。
『ヒュドラムに……ダーゴンかい。まさか生き残ったのはアンタ達だけだとか言わないだろうねぇ?』
『残念ながらそのようですよ。前回は我々にかなり大きな被害が出ましたからね。この分では、流石に貴方のお気に入りもおねんねしてしまったのでは?』
『馬鹿言うんじゃないよ。トリガーは来るよ。必ず、またアタシの前に……!』
『ともあれ、我等が一族の悲願を果たせるのは我々のみとなったことに違いはない……邪神本体が動き出す前に、カタを付けるべきではないのか?』
『ああそうだね。早いところエタニティコアを抑えて……トリガーへの手土産にしようかい!』
人間の脳で処理できる情報量などとうに超えていた。思考回路が一時的に稼働を止める。必然的に訪れるのは硬直だ。
そんな間にも世界は動かす時を止めてはくれない。カルミラ、そう呼ばれたであろう巨人は光線上の鞭を生み出し、間髪入れずにかのんへ向けて振り下ろした。
「きゃ―――ぅうッ……!」
ステージの端へと着弾したそれは小綺麗に整えられた装飾もろとも舞台を粉砕し、かのん達もろとも吹き飛ばす。
『小さいと狙いが定めにくいねぇ……でも今度は逃がさないよ』
「かのんちゃん! 可可ちゃん!」
続け様にまた同じ動作が繰り返されようとするが、その間に割って入った幼馴染の声。
「ちぃ、ちゃん……?」
「二人共こっち! 早く避難しないと!」
手を取られる形で可可と共に路地へ向かって駆ける。一先ずは幼馴染が無事あることに安堵した。
だが同時に違和も覚える。まるで自分達の視線を誘導するかのように、決して振り返ろうとしないのだ。
「ねえ、ちぃちゃん……お母さんと、ありあは……?」
「……」
返す言葉はなかった。ただ影を差した幼馴染の顔だけが唯一の答えとしてそこに存在している。
「ねぇ……嘘だよね? 嘘って言ってよ……!」
「逃げよう……じゃないと、かのんちゃん達も危ないよ」
「まって、まってってば……ちぃちゃ―――」
ぐしゃり。
繰り返し投げかける声にようやく返ってきたのは、何かが潰れる音。
「ぇ……」
散華した紅が降りかかり、急速にその温もりを失いながら頬を伝う。
焦点から少しズレた位置で黒い何かが蠢いているのがわかった。ぐちゃぐちゃと、それが動く度に何かを咀嚼する音が聞こえる。
『チッ……鴉かい。鬱陶しいのを寄越したものだねぇ』
『どうやらあちら様も学んでいるようですね。明らかに以前よりも投入されている戦力が多い』
何を貪っている。そもそもコイツはなんだ。今何が起きている。
いやそれよりも。
今の今まで自分の手を引いていたのは……誰だった?
『『『ッッッ――――――!』』』
けたたましい雑音を撒き散らし、空を覆う無数の黒が雨のように地上へと降り注いでは命を刈り取る。
―――――
地獄だった。地獄以外の何物でもない。
至る場所で上がる断末魔は命が奏でる最期の音。血塗られた死の協奏曲に包まれながら、かのんはただ、脱力し切った身体で膝をついた。
「は、はは……」
「かのん……」
理解したくない現実を前にすると、人は笑うのか。
何に対して何を感じているのか、それすらもわからない。
ただ一つわかるのは、この世界は夢も、友も、涙さえも、一瞬で否定する。どうしようもないくらい……理不尽だということ。
「……」
灯火が消える。
最早何も聞こえない。世界に満ちる全ての雑音が、渇いた歌声へと変わる調がした。
歌が奏でられていた。
光を消し、自己を消し、ただただ、意思を失った絶望が響く音色を染め上げている。
救いたいと叫ぶ声がした。
世界に呆れ、己さえも見失った者は、ただ一つ手放せなかったものへと手を伸ばす。
胸に抱える最期の願いを、光と共に天へと掲げ。
「ぅ……」
途切れた夢想、そして全身を軋ませる痛みが深層にあった意識を引き戻す。
直前の事態を思い起こしつつ眼を開く。暗い。地鳴りによって電源が落ちたのかと頭で考えるが、肌に走った冷たさは別の可能性を浮上させる。
「なん……だ、これ……」
現実として目の前に在ったのは後者だった。
真上には夜空が広がっている。天井がない。辛うじて確認できる壁や割れたモニターなども、暗転前に見たそれらとは著しく様変わりしている。
「ッ…! おい……ダイトッ!」
視線を落とせば、そこには殊更に凄惨な光景が転がっていた。
倒壊した施設の破片によって押し潰された研究員や専門家。その中で発見した友人の身体を抱き上げる。冷たかった。医学に詳しい訳ではなかったが、この状態が何を表すかなどわかりきっていた。
「…オイ、嘘だろ……」
TPCの研究機関であった周辺を見渡す。自分以外に命の気配はしなかった。
代わりに世界を闊歩するのは別な命。巨獣が大地を揺らし、蝗のような黒が空を覆っている。
燃ゆる炎の紅を彩る咆哮と悲鳴に、終焉の文字が頭を過った。
「っ……?」
愕然とそれを眺めていた視野の端に光が映る。引き寄せられるように歩み寄ったその場に佇んでいたのはひび割れたジュラルミンケースだった。
それが友人のものであるのはすぐにわかった。
あの日から中身が変わっていないのであれば、この光の正体は―――、
「なんだってんだよ……」
拉げたケースを無理矢理こじ開けた先にあったのはやはり件の神器。
だが以前友が見せてきた際のそれとは違う。所々に亀裂が入り、その隙間からは妙な熱を感じる光が漏れ出ていた。
「あ―――――がッ……!?」
手に取った瞬間に走った猛烈な頭痛。
割れんばかりのそれは封じ込められていた何かを開放するかのように、見知らぬ記憶を情報として流し込んでくる。
「ッ……、ッ……!」
自我すらも儘ならなくなるような滂沱が止んだ頃には、既に身体は動き出していた。
成すべきこと、果たすべき想い……その答えが、進む先にはあったから。
「……っぱ生身で来るような場所じゃねぇな」
辿り着いたのは全てが始まったあの大穴だった。
もう数百メートルは進んだだろうか。地球の内部圧力が直にかかるこの場に装備無しで踏み入るのは自殺にも等しい行為だったが、この際そんなことは関係なかった。
ここに至るまでの間、様々なものを見た。
辛うじて生き残っていた報道機関の中継映像を通じて見た現実は想像を遥かに凌駕したもので、突如として溢れ出した巨大生物や飛翔生命体の大群は世界各国へと広がり、文明を崩壊させてゆく。
ルルイエという名のパンドラの箱を開けた人類に降り降りかかったのは、文字通りの破滅だったというのか。
「……これも導きのままに、ってか」
遺跡突入前に思い浮かべた空想は恐らく正解だ。TPCと衝突していた民族も、恐らく言い伝えか何かでそれを知り得ていたのだろう。
だが過ぎてしまったものは今やどうしようもない。過去を悔やむよりも、これから何を成すかが今求められていることだ。
だから、ここへ来たのだろう。
「よう……2週間ぶりくらいか?」
目的の地点へ辿り着き、物言わぬ巨人の石像を見上げた。
各地で石像として発見されていた巨人が復活し、巨獣達と同様に世界を荒らしまわっている。その中で唯一、人類が初めて発見したこの巨人の姿だけは確認されなかった。
何故この個体のみが未だ休眠状態にあるのか……それも最後の
「思い出した……っつーべきなのかはわかんねぇけど、テメェ等が何者だとか、今起きてることだとかは何となくわかったよ」
神器を弄びつつ、巨人の足元に供えられた石板を見下ろした。
所々で劣化が進んでおり本来の機能はもう失っていると見て間違いないが、それでもまだ辛うじて生き残っている部分を読み上げてみる。
光トユザレ 闇ヲ封ズ 絶望ノ闇
闇ガ世界ヲ覆イシ時 巫女ノ奏デシ星歌ノ音色 全テノ生ヲ星ニ還サン
ソノ闇ヲ抱キシ 巫女ノ涙ヲ晴ラス者
神器ヲ以テ 未来ヲ築ク希望ノ光ト成ラン
「……ざっけんな」
何故既存の言語体系と合致しないそれを隔たりなく読み取れたのか、そんな戸惑いは最早なかった。
代わりにただ一つ、煮え立つものが腹の底から這い上がってくる。
「夢も未来も、友も俺自身も何もかんも失って切り捨てて、テメェ等が導いたままに進んできた……その果ての結末がこれか? ふざけんのも大概にしやがれッ!!」
地団太を踏む。敗北を連ねた道だったとしても、それでも一個体としての意志や感情を貫いた結果の道だと思ってきた。紛い也にも苦しんで、悩み考え抜いた果ての道だと思い続けてきた。
けどそれは作為によって敷かれたレールを進んできただけの、決められた敗者の歩み……何たる道化だ。
「けど、このままじゃピエロがピエロなりに抱いてた矜持まで消える。結局最後までテメェ等には逆らえねぇ、夢も何もない敗者のままだったけどよ…………それでも、
道化は最後まで道化のままだ。これから成すのも、全ては決められた予定調和の結末。そこに逆らう術はない。
「そっちの立てた筋道は通ってきてやったんだ……最期くらい、こっちの言い分も聞きやがれってんだ!」
だからせめてその中に、˝真坂ケント˝としての願いを通すために。
「示してみろよ……未来を築く―――希望の光ってやつをッ!!!」
掲げた神器に古の光が満ちる。
個体として零す最期の叫びがその光と呼応すると共に、
直前の話と温度差があり過ぎて酔いそう(自業自得)
話が割と訳わかんないと思いますがまだ解説ができる段階ではないのでご理解ください
一応次回で最後です