夢魔が生きるオーバーロード 作:アルトリア・ブラック(Main)
4月に入ったら忙しくなるので、それまでに打てる範囲で打ちたいです
ーマーリンー
ケイが帝国に戻ったのを見送り、マーリンは幽閉塔から花畑を眺めながらこれから起こる事を思い出し、ため息をつく
この世界に転移したのは今から700年前ほど、自分にはNPCがいたから良かったというか、転移前から変わらない性格のおかげなのか、なるようにしかならないと身を任せていた。
だからこそ、プレイヤー関連のことには関わりたくなくて八欲王の到来の時はモルガンから酷く嫌われたものだ。
「幽閉塔を作るのも大変なんだよー…」
スルシャーナに出会い、ツアーに出会い、いろんな出会いがあったからこそ今に至るが、マーリンは個人的に自分の身の安全と世界を絵のように眺めるのが好きだった。
だからこそ、王国や帝国などの人間国家を建国する手伝いをしたりもした。
まぁ、実質王を作るだけ、それらがどうなろうと知らないし、罪悪感も正直湧かなかった。
人でなしなのは理解しているが、美しい絵なら見ていて損はないのだ。
「…人類全体がナザリックの支配下に入る、なんていうバッドエンドは見たくはないけど…うーん。ナザリックを止める程の戦力はいないしなぁ…」
300年前にオーロラという妖精をやらかして誕生させてしまった際は、一時的に竜王達との戦争になりかけた。
(…あの時はツアーがなんとか宥めてくれたけど、あの時のツアーの殺気は未だに忘れられない…)
ツアーから『何かするなら、それが本当に良いことに繋がるのか考えてから行動してくれないか?』と怒られたのは記憶に新しい。
それに、アーサーを起こして戦いに挑めばそれはそれで足止めにもなるだろうが、唯一の欠点がある。
アーサーを起こせば自動的に現れる《災厄》
現時点でその《災厄》を止めれる存在はナザリックにいるのだが、対ナザリック戦になった場合は最悪だ。
(…一時間ぐらいの戦闘なら来ない…かな?そこら辺は本当に分かんないんだよなぁ…)
ユグドラシルプレイヤーというのは良い意味で最悪だ。
八欲王との戦いで離脱したのにも、その《災厄》があったからこそ離脱したのだが
「ふー、考えるのはやめよ!さてと…とりあえずは…」
と、また思考の中に入ってしまった自分にため息をつく
「………様子見しよ、ケイは幸いにもナザリック側にいるから大丈夫だとして…アルトリアは王国に行ってるのか…んー…まぁ、あんな国だから大丈夫だろう!うん!」
マーリンはこれから起こることを考え始める脳味噌にストップをかけ、椅子に座る。
そして、考える事を辞めた。
ーリ・エスティーゼ王国宮殿ー
王国の宮殿は帝国の宮殿と比べて質素な方であり、確かに豪華なのには変わりないのだが、装飾一つ一つ見ても財政に余裕がないのは見て取れた。
『…王族の方々と会って、今後の話をして行くにしても…帝国みたいに魔法学院を作るのは無理だと思うんですが…村正はどう思いますか?』
《伝言》での会話をしていると、村正が『話を聞くだけだ』と言われてしまう。
そう簡単に人は、王国は変わらないというのは理解している。
アルトリアと村正が通された場所は、豪華とはいかないがそれなりに装飾もされており、綺麗な部屋だった。
「こちらで少々お待ちください」
白金の全身鎧を着込んだ兵士に言われ、部屋に通されてすぐに入って来たのは王女と第二王子と貴族らしき人物だった。
王女・ラナーを見たとき、アルトリアは強烈な程の気持ち悪さに襲われる。
アルトリアは妖精眼という眼を持っており、嘘や悪意を見抜く能力がある。オンオフ出来るものではない為、無条件に見えてしまう。
レエブン候と名乗った貴族と白金の全身鎧を着込んだ兵士(クライム)を見た時は何もなかったが、ラナー王女を見た時だけは強烈な気味の悪さに襲われた。
あそこまで悪意のある人間は見たことがない。
【精神異形種】というのは彼女のためにある言葉だと感じる。
アルトリアは失礼にならない範囲でラナー王女を見ないように視線を外す。
「アルトリア、大丈夫か?」
村正の声かけにハッとなり「大丈夫です」と返す。
王子とレエブン候が話して来たことはアインズ・ウール・ゴウンに対しての対策と、今後の王国の未来のために、少しでも良いから支援して欲しいと言われた。
「支援…ですか」
アルトリアの兄は帝国貴族の人間である為、兄の不利になりかねないことは言えない。
しかし、王国に恨みがあるわけでもなく、出来るなら双方が幸せになるならその方が良かった。
「支援…つってもなぁ…帝国がやって来たことを今後王国がやるとして、俺たちは大した協力は出来ないな」
「…帝国は、昔から学院があるので、それを王国に導入するとなれば…」
導入するとなれば今の王国の現状では上手くいって50年後、下手をしたら100年以上後になってしまう。
アルトリアも村正もそこまで長生き出来るわけでもないし、王国の現状は正直悪いところだった。
「第3位階魔法があんまり出回っていないのを見れば…少なくとも、そこら辺まで王国貴族の子供達に教育しないといけないと思います」
アルトリアの真面目な言葉にザナック王子が『魔法詠唱者に教えるとして、帝国規模まで行くには如何様にすれば良い?』と問いかけてくる。
「…うーん。現状だと数百年は掛かると思いますし…」
真面目に考えるアルトリアに対し、村正は咳払いをし
「まぁ、その前に王位を継ぐことが先決なんじゃないのか?」
魔法学院の話を通すにしても、王位に就く人間が第一王子ではまた平行線だろう。
というかむしろ、第一王子が王位を継承すれば帝国は本格的に滅ぼしにくるだろう。
そうなれば最も容易く滅びるのが明白だ。
「………」
アルトリアは兄のこと、師匠・マーリンのことなどがあり、これ以上の提案は思いつかなかった。
「レエブン候。陛下がお呼びです」
そこで話し合いは終わり、アルトリア達は席を立つ。
アルトリア達は王宮から出ると、徴兵されて集まってくる兵士達が見えた。
「…戦争、本当に始まるんですね…」
アルトリアの声に村正は兵士の方を向き
「…今回の戦争は少し遅めの戦争だったから、ある程度兵士達にも余裕があるな」
兵士の一人が家族と抱き合い、兵士専用のテントの方に向かう。
その背を見送る家族は泣かないように健気に息子を、時には夫を見送っていた。
「…どうして、王国は何回も帝国と戦争をしてるんでしょうか…どうして、同じ人間なのに殺し合って」
魔法学院を卒業してから戦争を知ることなくマーリンの下に行ってしまった為、戦争関係にあまり関わらなかった。
それに、アルトリアは帝国や王国周辺にいる異形種を狩っていたりもした。
アルトリアからしてみれば同じ人間同士で殺し合っているのが不思議でしょうがないのだろう。
「…戦争なんて実際は上の権威のために下を死なせてるモンだからな、実際、悲しい思いをしているのは下の人間だけで、上の人間は陣地に座って命令してるだけだしな」
戦争なんてどっちも悪だよと言いながら去って行く村正。
アルトリアは兵士を悲しげに見つめながら村正の後に続く
数歩歩いた後、アルトリアは空を見上げる。
「…マーリンは、これからどうしたいのでしょう。私は…どうしたら…」
兄のいる帝国を守るか、赤の他人しかいない人間国家を守るか、答えは出ない。
ただ一つだけ、彼ら兵士が無意味に死んでいく姿はこれ以上見たくなかった。
「………」
アルトリアは遠くの方から呼ぶ村正の元に走って行く。
【アルトリアの能力】
・妖精眼
嘘や悪意を見抜く眼であり、オンオフできるモノではない為言葉の裏表を否応なく察し、例え善意でついた嘘でも裏があると分かってしまう。
帝国で暮らしている際には問題はなかったが、王国に来た際にあまりにも裏表のある人間ばかりで居心地が悪かった。
(クライムやレエブン候に対しては悪意がなく、話す分には問題なかったが、ラナーに関しては本当に気持ち悪かった)