夢魔が生きるオーバーロード 作:アルトリア・ブラック(Main)
仕事故に短いのをお許しください。
リグリットの口調が安定しない…
ーケイー
王国との戦争は呆気ないぐらい簡単に片付いてしまった。
魔導王の力は圧倒的であり、皇帝・ジルクニフはマーリンに協力を仰げないかと直談判を続けていたらしいが、マーリンがノーリアクションなこともあってか、日夜頭を悩ませハゲそうなぐらい発狂していた。
そんなジルクニフとは違い、ケイは伯爵家の当主になり、昔と対して変わらない生活を送っていた。
皇帝からの招集がかかる日は大抵激務なのは目に見えて分かるが
「はぁぁあ」
深いため息をつき、執務室に用意したソファーに座る。
書類を投げると、執事が拾いながらいそいそと片付けていた。
「…あんの、クソ親父…引き継ぎとか適当に済ませやがって…」
悪態をつきながら項垂れる。
帝国貴族一概に言える事ではないが、伯爵家の当主になるにはかなりの段階と年齢が重要であり、ケイの場合は前者は済んでいようと後者は済ませていない。
年齢的に後二、三年なければ当主になれないのだ。
しかし、父はカッツェ平野での戦い以来、すっかり貴族としての矜持やら誇りをアッサリ捨てて息子である自分に当主としての仕事を投げ渡してきたのだ。
「旦那様。そう躍起にならず…先代は旦那様の事を信頼して任せられたのですよ」
「…どこがだよ、あの魔導王の力量を見て怖気付いて投げ渡して来たんだろ、適当に自分じゃ渡り合えないから神人であるお前にとか難癖つけて」
ソファーに深く体を預け、空を眺める。
(…大人しく属国化しても問題ねぇと思うけどな…)
アンデットの支配下に入るというのは相当抵抗があるのだろうか、属国の草案なんてまとめようものなら反逆者扱いである。
メイドが酒を持って来る。
目の前に軽食が並び始める。
すると…
「旦那様、アルトリア様がお帰りになるそうです」
「アルトリアが?これから?」
そう聞くと頷き「大広間でお食事のご用意をいたします」と言って来る。
魔導国の拠点とも言えるべき魔物たちの住む場所から帰還したアルトリアは、身支度を整え自宅に戻るべく転移魔法で自宅の目の前にいた。
「………」
実家に戻って来るのは何年ぶりになるだろうか
異母兄とは割と仲良い方だとは思う。
玄関の前に立ち、帰ってきた事を知らせるべくノックしようとすると…
「いつも何も言わずに入って来る癖に、今日はエラく遅かったな」
そう言ってドアを開けてきたのは異母兄であり、背丈が数ヶ月前に会った時よりだいぶ大きくなっていた。
「あ、久しぶりです。兄さん」
「おう」
そう言って家に入るとメイド達が出迎えて来る。
アルトリアは貴族のような身の振り方はあんまり好きではなかった。
しかし、貴族の令嬢として生まれた以上は仕方なかった。
「ただいま戻りました」
両親に挨拶すると、明らかにわかる猫撫で声に虫唾が走りそうになる。
「アルトリア、さっさと飯食うぞ」
兄の声に「はい」と言って階段を駆け降りる。
両親は絵に描いたような貴族で、子供の頃から上への羨望や下への侮蔑を表情に出さずとも心の中で体現しているような人達だった。
アルトリアが先祖の力を覚醒させた時は発狂モノだった、その後に覚醒したケイにも異常に喜んでいたが、アルトリアにはそれが不気味でたまらなかった。
兄と共に席に座ると食事を始める。
両親はここにはおらず、兄は黙々と食事を摂っていた。
「…」
浮かない顔をしていたアルトリアを見てため息をつくと、兄はナイフを持ちながら頬杖をつく
「…旦那様」
執事の言葉に『家族の前でしかやらねぇよ』と言う。
「帰ってきて早々で悪いが、あの夢魔は何か言ってたか?」
肉を食べながら言うケイに暗い表情をするアルトリア
「…マーリンとツアーさんが話し合ってました。魔導国の侵攻を止めるにはマーリンがいなければ話になりませんが…」
「…マーリンはやる気がないってことか」
「…はい」
暗い表情にケイはため息をつく、ある程度食べ終わると背もたれに寄りかかり
「…最近、皇帝陛下がストレスでハゲ散らかしそうでな、魔導国を嵌める算段でも考えてんだろうが…マーリンが頼りにならねぇと言っとくわ」
「……ケイ兄さん」
「ん?」
アルトリアはナイフとフォークを置く
「…もし、マーリンと魔導国が戦争状態になったら、どうしますか?」
アルトリアの暗い表情を見て、何かあったのかと執事は心配そうにしていた。
「…とうしたもこうもねぇな、俺は普通にここからトンズラさせてもらうだけだな」
ケイはデザートを食べながら呟く
アルトリアが何か言おうとした矢先、ドアをノックして来る人物がいる。
「旦那様。皇帝陛下から至急来るようにと連絡が参りました」
「ハァ?今から?」
「はい」
大袈裟にため息をついたケイは立ち上がり「行ってくる」と言って身支度を始める
アルトリアは急いで食事を食べ終わり、兄の側に向かう
「いってらっしゃい、ケイ兄さん」
「おう」
そう言って馬に乗って行くケイを見送る。
アルトリアは室内に戻ると、執事達がやって来て部屋の掃除が終わったと伝えてくる。
「ありがとうございます」
アルトリアの部屋はマーリンの結界に行ってしまった日からだいぶ使われておらず、使用人がこまめに掃除してくれてはいたが、それでも数年単位で戻って来ないと少しだけ塵があるのは仕方のない話だ。
部屋に入ると、キングサイズのベッドに座り、天井を眺める。
「……ここに帰って来るのは久しぶりだなぁ…」
ゴロゴロしていると、本棚に埃が積もった絵本を見つける。
「…なつかし」
その本は神話の話でフールーダ自身が書いたやたらめったら盛りに盛られたマーリンの武勇伝と、十三英雄の交流の話だった。
「『十三英雄と最強の魔法使いの物語』…もっと良い題名なかったのかな…」
ペラペラ見ながら盛られまくっているマーリンの性格にハァとため息をつく
(…パラダイン様にはマーリンがこう見えてたんだ…少なくともこんな紳士ではないのに…)
マーリンは十三英雄や六大神の一柱であるスルシャーナとも関係があったらしいが、少なくとも彼らからも良いイメージを抱かれて居ないのは事実だろう。
十三英雄の一人だったツアーから『悪戯の度を越した夢魔』とか言われるあたり
(…でも、ヒトを生み出せるから神って言ったら神なんだろうけど…神らしくはないんだよなぁ)
モルガンやオベロンを創り出せるのだから神なのだろうが
(…アウラさんとマーレさんが言うから本当に神様のような存在だったんだろうな…)
ナザリックに一度訪問した際の事を思い出す。
『このナザリック地下大墳墓を創り上げて、私達を創造した神様なのよ!マーリン様達至高の四十一人は!』と胸高々に言っていたのを思い出す。
アルトリアは絵本を横に置き目を閉じる。
ーツアーー
ツアーにとってプレイヤーは暴力の化身であり、何よりも強大な力を思うがままに振るうから嫌悪する存在でしかなかった。
そんなプレイヤー達のことを【竜帝の汚物】と呼んで嫌う竜王達は多かった。
「100年の揺り返しが起こった以上話し合いで解決出来るのなら一番だが…君のその素振りを見るに話し合いは上手く行かなかったみたいだね」
その言葉に対面で座っているマーリンが「そうなんだよね〜」と軽口を叩く
「しかし、君が古巣に戻るわけではなく、こちらに来て相談をして来るという事は多少何か得られたと思って良いのかい?」
マーリンはハァとため息をつき、映し出した青空を眺める。
「…まぁそう思っても良いかな、あのギルドはある意味八欲王のように大変なギルドだけど…まぁ、僕がいるから大丈夫かな」
マーリンはダラけながら
「まぁ、唯一の問題はNPCなんだけどね」
「えぬぴーしーかい?」
マーリンはウンウン頷き
「ぶっちゃけプレイヤーより難しいんだよね」
マーリンの言葉にツアーは無言になる。
六大神のNPCである魔神達も主がいなくなった事により暴走し始めたことを思い出す。
そう考えるとマーリンが死んだ場合、オベロンやモルガンが暴走する可能性を考えると本当に面倒だ。
(…マーリンを殺してあのワールドアイテムを回収することも計画に入れていたというのに…いや、マーリンが死にたくないが故に嘘をついている事もあるのではないか)
マーリンが嘘をついている事も考えたのだが、嘘をついた所でマーリンにとってメリットは一切ない気がした。
夢魔という性質上死ぬ事はないだろう。
「ところでツアー、エルフの王に関しては放置なの?」
彼結構害悪じゃない?という質問にツアーは頭を寝かせ
「…君ほど脅威じゃないから放置だよ」
「失礼だなぁ〜あのエルフと比べないでほしいよ」
「それよりもムラマサ君を連れて来て欲しいけどね、そろそろ」
「考えとく〜」
「……」
その言葉に項垂れる。
『十三英雄と最強の魔法使いの物語』
作者・フールーダ
マーリンを盛りに盛って書いた物語。
マーリンの性格とアーサーの性格がごっちゃになっており、アーサーの子孫であったアルトリアも一時期好きだったが、マーリンと対面した時ガッカリした。