夢魔が生きるオーバーロード   作:アルトリア・ブラック(Main)

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闘技場の話まで少し時間かかるかな

今回は王国目線とモルガンの話があります。

モルガンの口調が安定しませんごめんなさい。

村正は日本語ですが、イビルアイたちが呼ぶ時は『ムラマサ』と表記されるのでご注意ください。

(…モルガンって一説によるとマーリンと恋人だったみたいな話見つけた…)


第15話『神と神話・②』

ークライムー

 

王国が魔導国に敗れてから王国内の空気は変わった。

 

クライムは内ポケットに入れていたマジックアイテムが震え、それを取り出した。

 

時計の名称は十二の魔法の力と言い、一日一回、セットした時刻になると魔法の力を発揮するのだ。

 

ただし、その恩恵に預かるには最低でも1日は時計を所有する必要があるので、借りたばかりのクライムには魔法の力は発動しない。

 

「ん?もう時間?早いね」

 

隣でぼんやりと青い空を眺めていた女性が声をかけてきた。

 

「そのようです」

 

クライムはその女性・ティナに答える。

 

「では、姫に声をかけてきます」

 

「いってら」

 

クライムは踵を返し、今まで後ろに守っていた建物へと向かう。

 

通路を通り抜け、奥の部屋の扉を叩く

 

輝かしいまでの美貌を持った姫・ラナーだ

 

「おい、小僧が来たぞ、もう時間だ」

 

仮面の下から聞こえてくる冷たい声にラナーが顔を上げ、クライムを真正面から見た。

 

「申し訳ありません。ラナー様、王宮に戻る時間になりました」

 

「そうですか、それでは行かなくてはなりませんね」

 

子供たちがえーと残念そうな声を出す

 

一行が建物から出た時、ちょうど場所が到着する。

 

「しかし、お前も大変だな、あんな孤児院を作ったりして」

 

「大変でしょうか?」

 

「ああ、結構いろんな人間に言われたんじゃないか?今のこのご時世にそんな事に出せる金はないって」

 

ラナーは顎に指をのせ、首を傾げる。

 

「そんな事はありませんでしたよ?お兄様はすぐに私のお願いを聞いてくださいました。それにこんなご時世だからこそ、子供たちを守らなくてはならないのです」

 

イビルアイはそうかと呟く

 

「はい。ご存知のように魔導国との戦いによって多くの死者が出ました。そのため親を失った子供たちがたくさん出てきました。ですから、そう言った子供たちを守るべく孤児院を立ち上げました」

 

「魔導国か…」

 

イビルアイの言葉にクライムは先日会った神人の件を思い出す

 

「失礼ながら質問よろしいですか?」

 

ラナーとイビルアイを見ると二人とも顔を見合わせる

 

イビルアイに質問したいのが伝わったのか、イビルアイは「なんだ?」と聞いてくる。

 

「先日…魔導国との戦争の前にいらっしゃった神人お二人の件はどうなったのでしょうか?」

 

アルトリア・ペンドラゴンとムラマサは神人であり、二人の力があれば魔導王も倒せるのでは?という希望の質問にイビルアイは首を振り

 

「ムラマサの方はともかく、アルトリア・ペンドラゴンの方は今後協力を仰ぐのは難しいだろうな」

 

「そうなんですか?」

 

ラナーからの質問にイビルアイは頷き

 

「アルトリア・ペンドラゴンの兄は帝国貴族だ。あの戦いで帝国が勝利を収めたとはいえ、魔導王の底知れぬ力に恐怖を抱いた帝国兵達は多く辞めて行った。そんな中、アイツの兄は先祖返りに近いからな、そう簡単に辞められる立場ではない上、下手したら魔導王と話すことが出来る唯一の存在かも知れないからな」

 

今後、魔導国と帝国が交渉をして行く上で帝国はかなり有利になるだろうなという言葉にクライムは「そんな…」と言葉を漏らしてしまう。

 

「お前の兄も散々嘆いていたんじゃないか?もう少し、マーリンとの関係を重要視しておくべきだったとか」

 

「よくご存知で」

 

ラナーの言葉に「ラナー様…」と苦い顔をする。

 

王族関連のことをアダマンタイト級冒険者とはいえ、そう易々言って良い情報ではないのだ。

 

ラナーはニコリと微笑み

 

「大丈夫ですよ、お兄様の独り言ですし、それにしても帝国はその辺りキチンとしてたんですね」

 

関心するような表情にイビルアイがため息をつく

 

「……あの夢魔は興味のない国が滅んでも絵画が一枚紛失した程度にしか見ないからな、ある意味貴重な絵画ですよと売り出した帝国は賢かったということだろう」

 

イビルアイは「あの夢魔は国を作る腕はあっても後悔も何も感じないから非人間なんだろうがな」と呟く

 

「イビルアイさんはマーリン様とはお知り合いなんですか?」

 

「…一方的な感じだがな…こちらからマーリンに会いに行く事は出来ないが」

 

「かの大魔法使い様が協力してくれれば、魔導国と交渉しやすくなるのにとお兄様言ってました」

 

その言葉に一同は静かになる。

 

「…良いチャンス。イビルアイ、あなたに魔道王は殺すことが出来る?」

 

イビルアイはため息をつき

 

「伝え聞く話が全て本当だとしたら、最早それは魔法詠唱者一人が持つ力を超越している。カッツェ平野であったことは、小僧が幻術で惑わされたと思いたいほどだ」

 

「アレは決して幻術ではありません!多くの死者が出ました…」

 

ラナーの顔が悲痛に歪む。

 

「その戦いに参加したのは26万人、死者は18万人に及びます。それに精神を病んでしまい、まともな生活を送ることが出来なくなった者達もいると聞きます」

 

「さて、ティナ、お前の質問に素直に答える。私では魔導王に勝つことは不可能だ」

 

予想は出来た質問に一同は何も言わない。

 

「やっぱり」

 

「まぁな、その召喚された化け物ぐらいなら、もしかしたらなんとかなるかもしれないが、やはり現物を見ないと断言は難しいな。そんな化け物を複数召喚し、操れる魔導王は正直…この世にあって良い存在ではない。神代の力の持ち主だ」

 

「魔導王個人の力ではなく、何かアイテムを用いての召喚の可能性は?」

 

「ありえる事はあるが、そうと決めつけるのも危険だ。マーリンが数百年前に魔導王が召喚したような化け物を創造したことがあるとあの婆から聞いたな」

 

「そうなんですか?」

 

「!」

 

クライムとラナーが驚く

 

「それは初耳」

 

ティナの言葉にイビルアイは深いため息をつき

 

「伝え聞いた話では、大陸の一部種族がその化け物によって消滅したという話も聞いた事がある」

 

「マーリン様は魔導王と同じ力を持っているんですね」

 

ラナーが感心したような表情をする。

 

「魔導王のように殺戮目的で召喚したのではなく、マーリンの場合は"興味本位"だからタチが悪いがな」

 

話していると小さな窓が叩かれる。

 

「そろそろ王宮です」

 

御者の声にラナーがゆっくりと身を起こす

 

「今日は本当にいろいろありがとうございました。ラキュースが戻って来たら、感謝と一緒に一度食事でもしたいと伝えてくださいますか?」

 

笑顔のラナーにイビルアイは「伝えておく」と言うと馬車が止まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーモルガンー

 

妖精圏内の城にてモルガンは結界の管理・運営をしていた。

 

その役割は600年ほど前に決めた。

 

結界の基礎や元を作ったのはマーリンであり、マーリンが死なない限り結界が崩壊することはないので、実質モルガンが管理しているのは妖精圏内の妖精達の管理・オベロンの監視・オーロラの管理だった。

 

特に厄介なのはオーロラの管理で、彼女を飽きさせないために毎日、低レベルの妖精を創るのは本当に面倒でしかなかった。

 

(…マーリンにやらせたら余計なものも創るからな…)

 

700年前にこの世界に転移して来たばかりはマーリンの事を創造主だからという理由で下手に出ていたが、今は余計な事しかしないマーリンは頭痛の種でしかなくなった。

 

「モルガン様〜」

 

妖精達の声に軽く手を振って幽閉塔の近くに行く

 

「……」

 

外の世界ではかつて自分達が所属していたギルドが敵に周り、世界を支配しようとしている。

 

「マーリン」

 

外から軽く声をかけると、幽閉塔の上の方からガタガタッと何かから落っこちた音がする。

 

「も、もモルガン!?君が来るなんて珍しいじゃないか〜(苦笑)」

 

「………」

 

露骨に狼狽えた素振りを見せるマーリンにため息を吐く

 

「…いつまで夢見ているつもりで?彼らはもう既に取り返しのつかない地点にまで来ているというのに」

 

モルガンの言葉にマーリンは無言になる。

 

「六大神の時のようにこの世界を知らないわけでも、八欲王の時のように荒波に飲まれることもないと言うのに、古い友人と向き合うのがそんなに怖いのですか?」

 

冷たいモルガンの言葉にマーリンは苦笑いしながら「辛辣だなぁ」と返す

 

「…彼を破滅させるのは本望ではないし、そんなことしたらアルベド辺りが黙ってないだろうし…かと言って本気になると…」

 

「まぁ、貴方が負けたら妖精達が世界に解き放たれ、オーロラもオベロンも好き勝手するでしょうね」

 

「……分かってるじゃん」

 

「アルベドの事を考えるなら、貴方の友人と直接話して他の部下も巻き込めば王国は少なくとも滅びるのが100年遅くなるぐらいでしょう?」

 

モルガンはマーリンに歩み寄り、胸ぐらを掴むような近さで

 

「今決断しなさい」

 

「……近い」

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