夢魔が生きるオーバーロード   作:アルトリア・ブラック(Main)

2 / 18
時期的にはワーカー編の少し前です。


第1話『夢魔の憂鬱』

ーアーグランド評議国最奥ー

 

ツアーはマーリンとの話を終えた後、鎧を元の位置に戻し、意識を本体に戻す。

 

すると、近くにいたであろうリグリットが「どうだった?」と問いかけてくる。

 

「相変わらずやる気のない事だったよ、彼は」

 

「そうじゃな、あの夢魔は気まぐれな所があるからのぅ、調査には駆り出せそうか?」

 

「いや…あの調子じゃ動いてくれなさそうだ。多分、興味があれば動いてくれるだろうけど」

 

「困ったのぅ、もし、今回の敵がぷれいやーだとしたら彼奴に打って出て貰わなければ困るのだがな」

 

ツアーは鎧の方を見る

 

「彼は確かに気ままな者だが、えぬぴーしーだけでも派遣してほしいと頼んでみるべきだったかな」

 

マーリンが現在自らの塔の近くに待機させているNPCはかなりの高火力のえぬぴーしーだ。

 

だが、彼らはマーリンの許可がなければ出て来ない。

 

というか、警戒しているのだ。

 

「まぁ、彼奴のえぬぴーしーが出てくる時は彼奴も出て来るだろう。彼奴は人類を愛してはいるが、個人は愛しておらんからなぁ…人間国家が危機に陥らない限り、あの幽閉塔から出て来んだろう」

 

マーリンは実に分かりやすい人物だった。

 

人類という全体を愛してるが、人間一人ひとりという個人に関心なんてない。

 

 

 

 

 

 

〜マーリン〜

 

「ふわぁ…よく寝た」

 

ベットから起き上がり、体を起こすと

 

「マーリン。また寝ていたんですね!あれほど魔法について教えて欲しいと散々言ったのに」

 

目の前にいる少女にマーリンは顔をそらす。

 

「そうやって逸らして!バハルス帝国のフールーダ・パラダイン様がマーリンを呼んでましたよ!」

 

その言葉に嫌そうな顔を浮かべ

 

「…あのお爺さんもそろそろ諦めてくれたら良いのに、全く、数百年前から懲りずに魔法の探求を…アルトリアと違って才能はないのにねぇ」

 

その言葉にアルトリアが「努力してる人を見捨てるんですか?」と言ってくる。

 

アルトリア・キャスターはマーリンが作ったアーサーの血縁者であり、この幽閉塔周辺で唯一の人間である。

 

詰まる所、NPCではないので、かなり好かれている(マーリンよりも)

 

そんなアルトリアキャスターは人間でありながら、レベル100という強い人間だった。

 

「努力も何も、才能がなければ教えようもないじゃないか」

 

そう言って階段を降りていると、後ろからアルトリアが叱ってくる。

 

階段を降り、妖精たちが飛ぶ楽園を見ながら進む。

 

「さて、一眠りしたからボクも行くとするか〜」

 

この世界に来たかつての仲間に会うために

 

 

 

マーリンは久しぶりに幽閉塔から離れ、アルトリアと共にリ・エスティーゼ王国に着いた。

 

「やぁ、久しぶりだね〜イビルアイ」

 

「…そっちこそ、相変わらず変わらない見た目だな」

 

「そりゃ〜夢魔だからねぇ〜」

 

マーリンの軽快な言葉にイビルアイはため息をつき、アルトリアは申し訳無さそうにしていた。

 

夢魔であるマーリンは永遠とも呼べる時を過ごし、また、王国や帝国にあまり関わって来なかったため、マーリンの事を知る者は最早一部だけになってしまった。

 

イビルアイが冒険者組合に属したという話は聞いた故に、イビルアイと共に王国内を歩くことにした。

 

「…相変わらずこの国は変わらないねぇ〜むしろ、徐々に悪くなって行ってるんじゃない?」

 

マーリンの言葉にイビルアイが『…どこぞの夢魔が放置したからな』と返す。

 

「まぁ、そりゃそうだけど、あんまり過干渉されるのは嫌だろう?」

 

「…マーリンは帝国との話し合いの場も無視したりしますからね…」

 

両国の緊張状態を高めているのも、マーリンの所為だと言えるのだが、マーリンはお構いなしだ。

 

マーリンとアルトリア、イビルアイは王国内を歩いた後、近くの居酒屋に入る。

 

先を探していると…

 

「イビルアイ!用事は終わったか〜?」

 

大きな声と共に聞こえて来たのは大柄の女性(?)がいた。

 

「紹介する、数百年間引き篭もりだった魔法詠唱者だ」

 

イビルアイの言葉に酷いなぁ〜と言いながら、お酒を飲んでいると、大柄の女性ことガガーランからいろいろ聞かれたが、どれもレベルの低い話ばかり

 

途中から来た戦士長とやらの話では魔法詠唱者についての知識はないらしく、魔法についての話はからっきしだった。

 

そんな話の中、ガセフ戦士長がとある村で助けてもらった御仁の話を聞き、食べていたスプーンが止まる。

 

「マーリン殿?どうされた?」

 

「…今、アインズ・ウール・ゴウンと言ったよね?」

 

「あぁ、ゴウン殿のおかげで私は命拾いした。感謝してもしきれない」

 

「そうかぁ〜そう来たかぁ〜」

 

マーリンが椅子に寄りかかってため息をつくと、アルトリアが『マーリン?』と問いかけて来る。

 

古巣が来たのは知っていたが、こう来てすぐに陽光聖典を壊滅させているとは思いもいかなかった。

 

「今日はありがとうね〜お金はここに置いておくからよろしく〜」

 

そう言って立ち上がって去って行くマーリンを見て焦ったのか、アルトリアが『いろいろありがとうございました!!失礼します!』と元気に言って後ろに着いて来る。

 

 

 

 

 

 

街を歩きながらマーリンはこれからの事を思い、深いため息をつく

 

「…見つかるのも時間の問題だなぁ」

 

彼らは別に嫌いではない。

 

むしろ、仲間だったのだから会って話してみたいのもあるが…

 

「極悪ギルドだからなぁ〜」

 

後ろからアルトリアが走って来る気配を感じる。

 

「マーリン!!話の途中でいなくなるなんて、何を考えているんですか?蒼の薔薇様がせっかく時間を作ってくれたのに!」

 

その真面目な言葉にマーリンは頭を掻きながら

 

「ちょーと嫌なことを思い出してね〜さて、アルトリア 」

 

「うわっ!」

 

アルトリアをお姫様抱っこすると

 

「さてと!帰ろう!幽閉塔に!」

 

そう言ってその場から転移する。

 

 

 

 

 

 

 

幽閉塔・アヴァロンに帰還したマーリン達は今後のために備えて準備をする事になった。

 

マーリンはアルトリアと分かれ、塔を登っていた。

 

「はぁ…帝国には抵抗出来るだけの戦力を与えておくべきか…んー、王国も捨てがたかったケド…」

 

最近の王国は目も当てられないぐらい国力が低下している。

 

それは致し方ない。

 

「ハァ〜ツアー達に頼らないといけないかな〜」

 

幽閉塔は外界から入って来る者を遮断する能力がある。

 

引き篭もりになりたかったというのもあり、特定の場所に入ると、入ってきた者のレベルを強制的にレベル1にする能力がある。

 

八欲王の件以来、マーリンはなるべく外に出ないような生活を送っていた。

 

厄介なことに関わりたくない、というのが最もな感情だからだ。

 

「さてさて…しばらく静観しておくべきか否か…」

 

マーリンは塔から見える妖精圏を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

ーナザリック地下大墳墓ー

 

ナザリック地下大墳墓にとっての最重要事項は、この世界に転移して来る前までいた至高の四十一人の一人・マーリンの捜索だった。

 

その足がかりとしてリ・エスティーゼ王国内で騒動を起こす事にした。

 

(…あの人のことだから、自由に過ごしてるのかな?)

 

アインズは一人、玉座に座りながらそう考えていた。

 

マーリンさんはかなり自由気ままな人物で、ユグドラシル最終日まで残ってくれた友人の一人だ。

 

『最終日だからちょっと出掛けて来るね〜!』

 

そう言ってギルド外に出てしまったことから、別々に転移してしまった。

 

(…あの人がこの世界にいたとして…もう少し、連絡出来る手段があれば…)

 

アインズ・ウール・ゴウンとしての名が知れ渡れば、きっと彼も来てくれるだろうという甘い期待があった。

 

マーリンは魔法詠唱者ではあるものの、詠唱を噛んでしまうことがよくあり、近接戦もゴリゴリに行ける人物だった。

 

たっちさんが『魔法詠唱者なのに近接戦で殴って来るのってどうなの』と言っていたのを思い出す。

 

なので、魔法詠唱に至ってはスキップアイテムをよく買っては保存していた。

 

思い出に耽っていると…

 

「アインズ様、守護者全員揃いました」

 

アルベドの言葉を聞き『うむ』と言う。

 

この場にいる守護者達の中でデミウルゴスが至急お知らせしたいことがあると言われたので、王国から急遽戻って来たのだ。

 

「デミウルゴス、早速、報告をしてくれないか」

 

その言葉にデミウルゴスは『はっ』と言い、壇上に上がって来る。

 

デミウルゴスの表情は真剣で、アインズに頭を下げ

 

「バハルス帝国の調査をした際、喜ばしい情報が手に入ったのでアインズ様にご報告にまいりました」

 

「なんだ」

 

デミウルゴスは他の守護者達にも聴こえるようにする為か、少しだけ体勢を変える。

 

「バハルス帝国二代目皇帝を教育した者の名前がマーリン様と同じ魔法詠唱者だと断定されました」

 

その言葉に守護者達のみならず、その場にいるシモベ達全員が「おお!」と言ったような歓喜の声を出す。

 

(見つかったんだ!)

 

アインズも心の中で嬉しさのあまりガッツポーズをしていた。

 

「デミウルゴス、一つ問題があるのだけど、本当にその御方はマーリン様だと断定できるの?」

 

アルベドの質問にシモベ達は無言になる。

 

確かに、同姓同名の別人の可能性がある。

 

「それについては此方でも調査し、フールーダ・パラダインという魔法詠唱者にいろんな調査を行ったのだが、マーリン様と思しき御方のお側に仕えていたのは金髪の騎士、名をアーサーと言ったらしい」

 

アーサー・ペンドラゴン

 

マーリンさんが作ったNPCの一人であり、なおかつ、高火力のNPCだ。

 

「本人の可能性は十二分にあるな」

 

アインズの言葉にアルベドは何か言いたげにしていたが、早く迎えに行きたいと言う気持ちがあるため気づかなかった。

 

「デミウルゴスよ、マーリンさんであるか否かの調査を最優先事項とし、急ぎ調べるように」

 

「はっ!かしこまりました」

 

「………」

 

デミウルゴスはほんの少しだけしか喜んでいないアルベドを見て怪訝な目を向ける。




アーサー・ペンドラゴン
マーリンの作ったNPCであり、レベルは100
マーリンと共に異世界転移し、そこで生活していた。
幽閉の塔の近くで眠りについており、基本的に起きることはない状態。
有事の際のみにしか起きないため、その存在はマーリンとツアーしか知らない。
高火力のNPCとは彼のことである。

アルトリア・キャスター
マーリンの塔にいるマーリンの弟子であり、NPCではない。
アーサーとは血縁関係にあるため、レベルは100と高レベル
素朴だが負けず嫌いで努力家な、「どこにでもいる当たり前の少女」としての性質を保っている。
魔法の研究に明け暮れて、少年のように野原を駆け回る、おてんばで純真爛漫な元気っ娘である。

【幽閉塔・アヴァロン】
マーリンが八欲王との戦いの前に作り出した牢獄。
敵意を持って入って来る者は弾く仕組みになっており、この結界によって八欲王の攻撃を受けることはなかった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。