夢魔が生きるオーバーロード 作:アルトリア・ブラック(Main)
スレイン法国にて
漆黒聖典の第一席次は神官長達に報告を行ったあと、武器を持ち番外席次の元に向かっていた。
「それで?相変わらずあの夢魔は自由気ままなの?」
吸血鬼についての報告を行ったあと、番外席次は夢魔・マーリンについての話を振って来た。
リ・エスティーゼ初代王とバハルス帝国の二代目皇帝を育てた最強の魔法詠唱者にして、評議国のツアーとも交流関係のある人物だ。
「あの御仁の行動は特別意味がないと思われます。しかし、近年、バハルス帝国に行く事が増えている事からバハルス帝国が今後有利になって行くと思われます」
「それじゃあ、今度の戦も帝国側が勝つのは確定してるわね」
「はい、そうかもしれませんね」
「…それで?あの夢魔のえぬぴーしーは出て来てないの?」
「数百年前から一度も」
「…ハァ、有事の際にしか起きないとは聞いたけど…本当に何も無いとつまらないわ」
「………」
番外席次が唯一敗北を知った存在。
最強の魔法使い・マーリンが創造したNPCだ。
「そのえぬぴーしーの子孫が現れたのは知っていますか?」
「あぁ、あの女の子?あの女の子は確かに強いけれど、騎士じゃないじゃない。それに、まだ見習いと聞いたわ」
アルトリア・ペンドラゴン
神人に並び、神の血を覚醒させた者と呼ばれる逸材だ。
しかも、その実力は神にも匹敵する程だと言われている。
しかし、まだ見習い魔法詠唱者と周辺諸国から言われている。
それでもまだ伸び代がある分、法国は彼女に対して注意をしていた。
ーバハルス帝国ー
アルトリアはマーリンと別れ、アルシェの元に向かうことにした。
アルシェ・イーブ・リイル・フルトはかつて、同じ学院で勉強をした間柄だ。
貴族の出身の彼女とだいぶNPCの血が薄まりつつあったペンドラゴン家の令嬢として能力をフールーダから見込まれた為に魔法学院に入って来たのだ。
アルトリアが帝国魔法学院に入学し、魔法の勉強をしていた際に、あまりにも回りくどい勉強に着いて行けず、めげそうになった際にアルシェから励まされ、なんとか中退せずに今に至った。
13歳になる頃、アルトリアは先祖であるアーサー・ペンドラゴンの血を覚醒させ、一気に力を得た事からフールーダ・パラダインからマーリンの元に情報が行き、魔法を直接マーリンから教わる事になった。
他にも法国からの刺客を向けられる可能性などいろいろあったため、帝国から離れる事になったのだが
アルトリアはマーリンがアルシェを見たと言った歌う林檎亭に着くと、店の店員に『アルシェ・イーブ・リイル・フルトさんはいないですか?』と問いかける。
見た目が少女なのも相まってか、すんなりとアルシェ達がいるであろう二階に通された。
「アルシェ」
アルトリアは二階に上がった際にいた少女を見て声をかける。
「!アルトリア」
やってきた存在に驚いたのか仲間達の前だと言うのを忘れてこちらを見て来る。
「いつ帝国に…いや、師匠から聞いたから来たの?」
アルシェの砕けた言葉に驚いたのか、仲間達は少し離れて様子を見ていた。
「はい、マーリンが見たと言っていたので気になって来ました」
アルトリアが言いたいことが薄々分かったのか、アルシェは近況について話し始める。
「…私がワーカーになったのは家族の借金を返すため、それでも、今回の任務を機に辞めることにした」
妹二人を連れて家を出るということもアルトリアに伝える。
「…そう、なんですね…その未知の遺跡と言うのは本当に危険がないんですか?」
「ないとは言えない。危険かもしれないが、それはワーカーとして動く時から始まってた」
アルシェの覚悟ある言葉にアルトリアはふと、何かを思い出す
アルシェを見てあのマーリンは嫌な予感がしたと言っていた。
それに…
「その未知の遺跡ってどこにあるか分かりますか?」
「……ちょっと待ってほしい」
「はい」
アルシェは仲間達の方に行き、情報をアルトリアに言って良いかの確認を取っていた。
ある程度話がついたのか、アルシェと共に仲間達が来る。
「お話は聞かせてもらったぜ、自己紹介がまだだったな、俺は《フォーサイト》のリーダー・ヘッケランだ」
「アルトリア・ペンドラゴンです!!」
元気に頭を下げて来るアルトリアに「よしてくれ、神人クラスのお前さんに頭を下げられたら」と言って来る。
「それで、お前さんが聞いて来た遺跡についての情報だが、カルネ村っていう村の近くにある墳墓との事だ。あの遺跡については何か知ってるのか?」
「カルネ村近くの墳墓…」
マーリンの言っていた事を思い出す。
マーリンはカルネ村を救ったアインズ・ウール・ゴウンに関して良い思い出がないように言っていた。
『あんまり会いたくない相手がいる』
「…その墳墓についてなんですが、私の師匠が言っていたのを思い出しまして…」
「師匠って…あの大魔法使いの!?」
イミーナの言葉に驚くアルトリア
「イミーナ」
ロバーデイクの言葉にイミーナは「ごめん」と言って黙る。
「あまり良い思い出がないから行かない方がいいとよく言われました。何が理由でとは…あんまり深く聞いてませんでしたが…」
「それって、あの墳墓についてか?」
ヘッケランの言葉に頷く
伯爵からの依頼に不審点はなかった。
それでも、神人クラスのアルトリアからの忠告はかなりの重みがある。
しかし…
「…今回の任務は報酬が弾む…」
アルシェの言葉にヘッケラン達も頭を掻く。
「赤の他人が口を出してごめんなさい。でも、行くなら万が一のことがあったらあれだからコレを持って行って欲しい」
そう言ってアルトリアがポケットから出したのは、アルシェの目から見ても分かるぐらいの超級アイテムだ。
「こ、こんな凄いもの貰えない。それにこれは、神人クラスが持つことによって効果を発揮する代物じゃ…」
「大丈夫です。マーリンの工房には腐るほどありますから、使われないままのアイテムより使って貰った方がアイテムにしても嬉しいと思いますし」
アルトリアが渡したのは、マーリンがこの世界に来た際に持っていたアイテムであり、特殊な形をした短剣だった。
(…マーリンは工房にあると厄介だから持っておいてと言われましたけど…まぁ良いですよね…)
名前を確か、ルールブレイカー?と言っていた気はしたが、モルガンやオベロンに見つかると厄介なのでアルトリアが持つようになっていた。
「それと、コレも持って行ってください」
そう言って小さな御守りを渡す。
「そんな何から何まで…何も返せない」
「大丈夫です。命には代えられませんから、生きて帰って返してくれるだけで大丈夫です。それに、師匠は作るだけ作って放棄するような人ですし」
アルトリアはそう言って笑顔でアルシェを見る。
「とぅ!難なく侵入完了〜!!」
ツアーは目の前にやって来た存在をゆっくりと顔を上げてみる。
「寝起きのところすまない。ちょっと用があってね」
目の前にやってきた夢魔を見てため息をつく
「…君は、いつも突然やって来る、悪意しかないからそのうち殺さないと行けなくなるよ?」
ツアーの言葉にマーリンは笑いながら手を挙げ
「そんな怖いこと言わないでくれないか?ツアー、昔馴染みじゃないか」
「君のような自由気ままな人間を持つとこちらが苦労するよ」
「酷いなぁ〜同じ悪を討伐した仲じゃないか」
ツアーはマーリンのことは好きとは言わないが、嫌いでもなかった。
ろくでなしだが、悪と呼べる程の悪ではない。
めんどくさい相手だが、プレイヤーとして彼の見解を聞けるのはありがたい。
「それで?君がわざわざここに来るなんて何の用だい?八欲王の武器は貸さないが」
以前にツアーが数秒寝たタイミングで八欲王の武器を一つ盗み出した経験がある手前、マーリンの気配が近隣でする時は眠らないようにしている。
「八欲王の武器は要らないよ、それで、一つ問題があったんだけど」
「問題?」
「君が以前に話していた吸血鬼についての話なんだけど、それってこんな見た目をしていたかい?」
マーリンは器用に魔法でその吸血鬼を見せて来る。
魔法の無駄遣いとよく他の仲間達に言われていたが、マーリンがポンポン魔法を使うのはそれだけの魔力があるという事だ。
「あぁ、この見た目だが、知り合いか?」
マーリンは杖を叩き、画面を消すとため息をつく
「…そうかぁ〜やっぱり出会ってしまってたか〜」
頭を掻きながらウンザリとした声を出す。
マーリンは椅子を出すと、ツアーの目の前に座る。
「ボクの古巣のNPCだね」
「……なるほど、君が近年幽閉塔から出ているのを見て合点が言った」
マーリンはかつて【アインズ・ウール・ゴウン】というギルドに属しており、ユグドラシルではかなりの悪事を働いていたらしい。
その中でもマーリンは他のギルドを壊さない手前、悪質なちょっかいをかけていたとリーダーから聞いたことを思い出す。
「この吸血鬼の名前はシャルティア。100レベルのNPCで、多分殆どの竜王は相性悪いんじゃないかな?あの時にツアーが叩き殺してたらやれたと思うけど」
ツアーはのっそりと体を起こすと、マーリンに向き直る。
八欲王並みの悪ならば、世界のために壊した方が身のためだろう。
しかし、古巣となれば彼は協力してくれるだろうか?
答えは否、彼が先ほどから戦うことに関して億劫になっている。
つまるところ、やり合いたくないのだろう。
「君がそこまで戦いたくないのなら、仲介役を買って出てもらわないと困るよ、彼らは既に数人を殺しているかもしれないんだからね」
「それは分かってるよ、一番やりたくないのは向こうに行って話すっていう行為なんだけど…下手したらオベロンかモルガンが暴れそうで嫌なんだよ」
「じゃあ、あの騎士を起こした方が身のためじゃないか、君がいなくなっても彼らを止めてくれるんだから」
ツアーにとって、モルガン・オベロンの二名のNPCはハッキリ言って近づきたくないし、出来れば戦いたくないNPCだった。
唯一好感が持てるのは高火力NPC・アーサーだけだ。
「ところでオベロンは未だにだらけているのかい?」
「最近は特にやる気がないのか、妖精圏でくつろいでるよ」
「それなら良かった。彼の手綱、できるなら離さないでもらえるかな?」
「善処しよう」
【アルシェとアルトリアの関係】
かつて、帝国魔法学院にいた間柄
アーサー王の血の力を発現させたアルトリアはフールーダからマーリンへと情報が行き、アヴァロンにてマーリンから魔法を教わる事になった。
帝国魔法学院にいると思っていたアルトリアはワーカーとして仕事をしているアルシェの話をマーリンから聞いたので会いに行くために帝国に行った。
結果的にそれが…
【ペンドラゴン家】
アーサー・ペンドラゴンの家系であり、帝国に籍を置いている特殊な家
貴族位は伯爵家。アーサーと血が近いものはかなりの能力を持って生まれていたが近年、血縁は薄まりつつあり普通の人間と大差なかったが、アルトリアとその兄が特殊な事例として生を受けた。
鮮血帝の一斉粛清の際も『今後、アルトリアやその兄のように特殊な先祖返りが生まれる可能性が高いため現存』としている。
ちなみにアルトリアの親は鮮血帝の粛清対象だったが、アルトリアの誕生によって見逃された。