夢魔が生きるオーバーロード   作:アルトリア・ブラック(Main)

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第4話『夢魔の盛大なやらかし・①』

アルトリアはアルシェと別れた後、歌う林檎亭から出ると、転移魔法でアヴァロンに戻って来る。

 

「一人で出かけてたのか?」

 

話しかけてきたのはマーリンのNPCであり、アルトリアにしてみればもう一人の師匠のような存在であるオベロンだった。

 

「はい、マーリンはツアーさんと話したいことがあるそうで、遅れて帰って来るみたいです」

 

アルトリアはそそくさと工房に入り、道具を整理していると…

 

「…あの夢魔、最近よく外出してるな、モルガンが言ってたが、古巣がやってきたからって言ってたな」

 

オベロンはつまらなさそうにしながら工房の中を見ていた。

 

オベロンの姿は童話の世界から抜け出した様なメルヘンな王子服に身を包み、アゲハ蝶の羽を背に生やし、子供というには大きく、大人というには幼い不思議な容貌の男性になっていた。

 

いつもの黒い禍々しい服装ではないのを見てふと胸を撫で下ろす。

 

オベロンの性格は一言で言えば嘘つきであり、口にする言葉は何もかも嘘まみれで、本当のことは何一つ言っていないように見えるが、アルトリアは長い付き合い故に、彼の嘘を少しだけ見抜けるようになった。

 

「古巣には戻らない形で会話したいっていってました」

 

棚から魔法瓶を取り出してテーブルに置く、テーブルの端に置いてあった花瓶が落ちそうになる。

 

魔法で落とさないようにテーブルから下ろす。

 

「…転移してからだいぶ日が経ってるからな、向こうがどう出てくるか不安なんだろうな」

 

あそこは悪魔とかそういう奴らがゴロゴロいるし、忠誠も異常なほど強い奴らがいるからなと呟くオベロンにアルトリアは手を止める。

 

「その古巣ってどこに転移したのでしょう?」

 

「さぁな、転移前は湿地帯だった気がするが…、カルネ村っていう所の近くなんじゃないか?知らないが」

 

アルシェ達がむかったところはその近くである墳墓とのことだった。

 

「………」

 

おそらく、彼らは生きて帰れないだろう。

 

自分が渡した魔法の武器で何とかなってくれるかは分からない。

 

不安になっているアルトリアを見てオベロンは何か悪いことでも考えたのか、分かり易いように咳払いし

 

「モルガンが妖精達を連れてカルネ村近辺に行くって言ってたな」

 

「え?」

 

オベロンは置いてあった瓶を触りながらテーブルに腰をかける。

 

愉快そうな顔でアルトリアを見る。

 

「気になるなら付いて行きな、妖精達を連れて行くより知名度がある程度あるお前さんの方がカルネ村からでも警戒されないだろ」

 

「…マーリンからはあまり関わるなと…」

 

「あの夢魔は自分が関わりたくないからそう言ってるだけだ。お前さんはあの夢魔の弟子なだけで拘束力はねぇ、だから行っても良いと思うけどな?」

 

オベロンの言葉に少し悩むそぶりを見せたが、アルトリアは意を決して頷き、必要なものを持って外に出る。

 

誰も居なくなった室内にて、オベロンは嗤う。

 

「ついに来たか、しばらく暇だったが、これから楽しめそうだな〜」

 

オベロンはアーサーが起きていないことを確認し、笑いながら外に出る。

 

 

 

 

ーアインズー

 

アインズはマーリンが帝国の二代目皇帝と関係があり、以降は帝国に時々姿を見せるというのをフールーダから聞き、マーリンは帝国にいると判断し、マーリンが結構な国の創設に関わっているのを聞いて内心『流石友だ』と感心していた。

 

デミウルゴスはマーリン様を迎えるための前夜祭としてワーカー達を招き入れるという判断になった。

 

盗人達を招き入れるのは嫌だったが、マーリンは帝国関連のことになると出てくるとの事だったので多少手荒な真似をすることになった。

 

(…マーリンさんのことを考えれば帝国の皇帝と貴族達は守らないといけない対象なんだろうな)

 

マーリンが肩入れしている存在を殺してしまえば友を悲しませてしまう。

 

「マーリン様は評議国と帝国の中間あたり…この湖近くに幽閉塔・アヴァロンという領域を作り、そこで魔法の探究を行っているとのことでした」

 

デミウルゴスの言葉にアインズはそうかと頷く

 

早く会いたくなるが、マーリンはこちらの情報をまだ仕入れていない可能性が高いため、急ぎフールーダに伝えるように頼んだが、近年は帝国の皇帝に用があるだけで基本的に挨拶に来てくれないとのことだった。

 

(…あの狂人ぶりに嫌気でもさしたんだろうな…)

 

フールーダの魔法への思い入れは常軌を逸しているように見えた。

 

第十位階魔法を見せただけで発狂して、靴を舐めようとしてくる始末だったのを思い出す。

 

 

 

アルシェ達は墳墓内に入ってから怒涛の攻めを受けていた。

 

敵は低位のアンデット。フォーサイトからすれば恐ろしい存在ではない。しかしながら波状攻撃ともいえる襲撃に休みはない。

 

「魔力は温存しろよ!」

 

「分かっています!」

 

「十分理解している」

 

今後、何が待ち受けるか予想出来ない状況下において、対応能力に優れる魔法は簡単には使えない。

 

アンデットの猛攻撃でロバーデイクのアンデット退散という魔法が一日で使用出来る回数がわずかになってしまったが、その他の能力や魔力は温存できた、

 

「注意!後ろから足音複数!」

 

「アンデット反応!数六体!!」

 

イミーナとロバーデイクの声に緊張感が走る。前に並ぶ五体のスケルトン達が戦端を開かないのは、挟撃して一気に殲滅するがつもりだからだろう。

 

アンデット反応!右から四!」

 

「壁よ!?」

 

「違う幻術!」

 

壁を通り抜け、息を絶え絶えにその場に立っていると、地面が突然光る。

 

「各員注意!…ん?」

 

敵が居なくなり、辺りの様子が変わった。

 

「ここがどこだか分からないけど、今までとは雰囲気が違うわね」

 

確かにさほどの墳墓とは全く趣味が異なる。

 

「ここは…」

 

「知ってるのか?」

 

「似た場所を知っている。帝国の闘技場」

 

「言われてみれば…ならば奥はアリーナですね」

 

ロバーデイクが格子戸の方を指差す。

 

「だろうな、ここに転移したっていうことは…そういうことだらろうな」

 

 

 

 

 

 

ーマーリンー

 

モルガンと妖精騎士・トリスタンと共にアルトリアがナザリックに行ってしまったというのをオベロンから聞いてから、内心ため息をつきつつ、幽閉塔内に入る。

 

マーリンの指には『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』があった。

 

ギルドメンバーである証として、アインズが最終日に渡してくれたものだ。

 

これを使えば、ここから簡単にでも転移できるだろう。

 

「…うーん。一回入ったら逃げられないだろうなぁ…」

 

古巣は確かに思い入れはある。

 

仲間達が思いを込めて作った所だ。

 

シャルティアとかアルベドなんて思いの塊だろう。

 

マーリンは咲き誇る花を見ながら頬杖をつく

 

マーリンにしてみれば彼らはもうすでに500年前の知人であり、今はツアーやリグリットが友人だと思っている。

 

転移した世界にだいぶ慣れてしまい、今更、友人の一人が転移したと言えど思い入れは正直言ってない。

 

むしろ、アルトリアを含めた彼らの人生を見るのが最近の楽しみになっている。

 

「あー…マズいなぁこりゃ〜」

 

モルガン達がナザリック近郊に辿り着くのを見たとき、アルトリアまで同行しているのを

 

「…あれ?アレどこやった?あ」

 

破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)をアルトリアに預けていたのを思い出す。

 

「やっちった⭐︎」

 

盛大なやらかしに思わず笑ってしまう。

 

あれば神器級アイテムであり、ユグドラシルでは魔法を初期化するという効果を持った武器だ。

 

つまるところ、スキップアイテムを持っていないで詠唱している魔法詠唱者に向かって攻撃をすれば容易く初期化出来る。

 

スキップしても、当てられれば詠唱が最初っからになってしまう。

 

つまるところ、心底ウザい武器と言われていたのを思い出す。

 

そして、転移したこちらの世界ではその破壊的な力は最早、ワールドアイテムに近しい存在になっていた。

 

八欲王到来時にレベルダウンにレベルダウンを重ね、倒せる存在とまでになった八欲王の一人に短剣をブッ刺したらプレイヤーとアバターが分離したのである。

 

つまるところ、本体が出て来たのである。

 

結果的に八欲王の一人はそれで倒せたのだが、それを見たマーリンはあまりにも怖かったので工房の奥に封印、100年後にツアーから再び使いたいという申し入れを受けた際はツアーに渡して(ほとんどぶん投げて)貸し出したのだが、100年経つと効果が無くなったのか八欲王には使えなくなっていた。

 

その100年後に転移して来たプレイヤーについては使えたので、効果は恐らく100年経てば同じギルドの人間には使えなくなるだろうという結論に至った。

 

そして200年余りが経過し、すっかり忘れていたマーリンはモルガンやオベロンに渡すぐらいならとアルトリアに貸してしまったのを思い出す。

 

「これ、知られたらツアーに殴られるぞ〜!」

 

ツアーはマーリンの悪戯に対してかなりの確率でキレる。

 

本体で殴られた時はマジで死ぬかと思ったぐらいだ。

 

アルトリアが持っていると思い《伝言》をすればアルトリアから親友であるワーカーに渡ってしまったらしい。

 

「やっちった〜!どうしよ〜回収めんどくさい…はっ!」

 

一つ回収する方法を思い出し立ち上がる。

 

「夢魔の特権使うぞ〜!!」

 

そう声高高に言うと妖精騎士の一人が何独り言言ってんだ?と聞いてくるが無視して、塔から飛び降りる。

 




妖精騎士・トリスタン
【本名】バーヴァン・シー
【レベル】45(転移直後)→70(八欲王襲来時)→80(魔神討伐時)→95(現在)

【詳細】
マーリンが作ったNPCではあるものの、設定上でモルガンのことを母と慕っている。
退屈を何よりも嫌い、気に入らない者は身内の妖精であれ、フェイルノートでズタズタに切り裂いて殺す加虐心あふれる性格。
身内判定した者にはとことん甘える傾向にある。


【アルトリアが渡した御守り】
第七位階魔法である上位転移魔法が付与されている。
マーリンが100年前に大量に作って工房に放置してた。
幾つかは不良品として機能しないが、アルトリアが見つけてアルシェに渡したのだけは本物。
敵が第七位階魔法以上の攻撃を仕掛けた際に発動し、無条件で使用者とその周囲の人間を転移させる。
使用者から渡した人間の元にまで強制移動する。

【アルトリアが渡したルールブレイカー】
Fate作品に登場する破戒すべき全ての符
あらゆる魔法を初期化するチート武器
マーリンが八欲王との戦いで使用、八欲王の一人がアバターから人間として分離した代物。つまるところ、プレイヤー特攻武器
アインズに刺せば鈴木悟として分離するような感じ
欠点はあり、転移してから百年間しか使えず、マーリンは既に範囲外なのだが『怖いから持ちたくない』からという理由でアルトリアに預けてた
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