夢魔が生きるオーバーロード   作:アルトリア・ブラック(Main)

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第5話『夢魔の盛大なやらかし・②』

「外に転移したの…?」

 

アルシェ達フォーサイトは闘技場の中に入る。

 

「なら、飛行の魔法で逃げられ…」

 

「とあ!」

 

アルシェの言葉を遮るように、掛け声と共に貴賓席があると思われるテラスから飛び降りる影が一つ。

 

六階建ての建物に匹敵する高さから飛び降りたダークエルフの少年だった。

 

「挑戦者が入って参りましたあ!」

 

握った手に持った棒のようなものに声をかけると、何倍にも増幅された声変わり前の声が闘技場内に響く

 

「挑戦者はナザリック地下大墳墓に侵入した愚か者達四人!そして、それに対するのはナザリック地下大墳墓の主!偉大にして至高なる死の王、アインズ・ウール・ゴウン様!!」

 

ダークエルフの声と同時のタイミングで、向いの鉄格子が持ち上がる。

 

「おおっと!セコンドには我らが守護者統括・アルベドがいるぞぉ!!」

 

その後ろから付き従うように歩く女性を見た瞬間、フォーサイトの誰もが息を呑む

 

「申し訳ない」

 

アルシェが口を開く

 

「私のせいでこんなことになった」

 

これから行われる戦闘は恐らく、フォーサイト始まって以来の激戦だろう。

 

もしかすると死者が出るかもしれないほどの戦いに

 

「いやいや、この娘っ子は何を言ってるんですかいなって」

 

「ですね、皆んなで決めて選んだ仕事です。貴女の所為ではないですよ」

 

「そーいうことよ、気にする必要なんてないわ」

 

ヘッケランとロバーデイクが笑いかけ、イミーナが最後にアルシェの頭を撫でる。

 

「……」

 

アルシェはここに来る前に友人から貰った御守りを握りしめる。

 

自分と正反対の友人

 

神の血を覚醒させ、アルシェが魔法学院から退学する少し前に大魔法使い・マーリンの元に行った友人。

 

アルトリアがいれば、この絶望的な状況も打破できるのだろうか

 

答えは否

 

アルトリアとアルシェの間には明らかな壁がある。

 

絶対に越えられない高みにアルトリアはいる。

 

神と会うことを許された存在なのだ。

 

そんな特別な人間からお情けとはいえ、高位の魔法が付与されているであろうアイテムを貰えるのは奇跡に近いだろう。

 

「さて、まずは無理だと思うが対話してみるか」

 

ヘッケランの言葉に我に返る。

 

ヘッケランは真摯な態度で礼儀正しく一礼をした。

 

「ますば謝罪をさせて頂きたい。アインズ・ウール・殿」

 

「アインズ・ウール・ゴウンだ」

 

「失礼、アインズ・ウール・ゴウン殿」

 

アインズは立ち止まると、その先を待つように顎をしゃくる

 

「この墳墓にあなたに無断で入り込んだことは謝罪いたします。許して頂けるのなら、それに相応しいだけの謝罪金として金銭をお支払いしたい」

 

暫しの沈黙が流れる。それからアインズはため息をつく

 

「お前達はあれか?家に置いてあった物にウジが湧いた時、殺すのではなく外に優しく解放するようなことをするのか?」

 

「ウジと人間は違います」

 

「同じだよ、私にとってはな、いや…ウジは産みつけた親蠅が悪いと言えなくもないが、お前達は違う、金銭欲というくだらない欲望を満たすため、この墳墓に足を踏み入れた」

 

「いや、実はやむ得ない理由があり…」

 

「やめろ!」と強い口調で遮られる。

 

「嘘を口にして私を不快にするな」

 

「もし、許可があったとしたら…」

 

その言葉に初めてアインズが押し黙る。

 

 

 

 

マーリンは自らの分身を作り、ナザリックが転移して来たてあろう草原地帯を探していた。

 

夢魔という種族と五百年間の研究で本体とは別離することが出来るようになった。

 

つまるところ、分身がやられても本体になんらかの影響を与える事がない。

 

リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの指輪を指にはめる。

 

モルガンと妖精騎士トリスタンがナザリック周辺に辿り着いたという話を聞いてから探しているのだが、一向に姿が見えない

 

《伝言》でモルガンに聞けば真反対の方にいるらしく、そちらに向かおうとしたのだが…

 

「…なんかやってるな…」

 

嫌な予感というのは当たるもので、ナザリックの中から血生臭いような匂いがした。

 

「ふぅ…何を恐れてるんだか私は」

 

この体は本体ではない、つまるところやられても少し痛いぐらいで死に直結することはない。

 

しかし、彼らとの思い出の場所は同時に自分が向き合わなければならない問題で嫌だった。

 

(…安定したニートライフを満喫したいのに〜)

 

アルトリアと合流するために歩き始める。

 

ルールブレイカーを無くしたと言ったらツアーから本気で殺すよ?と言われたので意地でも回収しなければならない。

 

 

 

 

 

ーナザリック地下大墳墓近辺ー

 

アルトリアはモルガン、妖精騎士トリスタンと共に墳墓の近くに着く。

 

巨大な城壁のようなものが見えて来てモルガンは『…やはり、ナザリックね』と言って来る。

 

(…ここが師匠のいた場所…)

 

とても嫌な気配が満ちている。

 

とてつもない程の死の匂いがする。

 

「………」

 

アルトリアは杖を握り締めてモルガンの後ろにいた。

 

「緊張してるの?」

 

妖精騎士・トリスタンの言葉にハッとなる。

 

「え、えっと…まぁ」

 

そう答えると妖精騎士トリスタンは笑いかけて来る。

 

「確かにこの世界で生まれたアンタには此処は堪えるかもしれないわね」

 

「…ハァ」

 

モルガンが深いため息をついてガッカリしたように肩を下げる。

 

「どうしました?」

 

アルトリアの言葉にモルガンは頭を押さえて「マーリンの分身が来るそうだ」と言って来る。

 

師匠にしか出来ない荒技であり、大抵そういうことをする時はマーリン自身が警戒しているからだ。

 

モルガンは『あれだけ嫌だとか言ったから私が来たというのに』と文句を言っていた。

 

 

 

 

 

 

荒い息でアルシェは呼吸を繰り返す。

 

周囲の草や木が揺れるたびにびくりと身を震わせる。

 

周りは森であり、光の届かない場所は多い

 

仲間達と別れた後、アルシェは必死に空を飛んで逃げていた。

 

《飛行》の制限時間が経過してしまったのだ。

 

ゆっくりと地面に足をつけ、そのまま崩れ落ちるように座り込む

 

「イミーナ、ロバーデイク…嘘つき」

 

これだけ時間が経ったのに二人から連絡が来る気配も無い。

 

やはり、逃げられなかった。

 

いや、分かってはいたことだ

 

「はぁ…」

 

首の力を抜き、頭を後ろに傾ける。

 

そして目を大きく見開いた。

 

アルシェを見下ろす人物がいた、その人物は両足を樹に付け垂直に立っているのだ。

 

「鬼ごっこは終わり?ほら早く逃げないと」

 

「《飛行》!」

 

アルシェは魔法を詠唱すると、逃亡を開始する

 

アルシェはひたすらに逃げる。

 

そしてどれだけ飛んだか、アルシェは絶望を直視していた。

 

見えない壁にぶつかる。

 

「これは…」

 

「壁よ」

 

真後ろからの声に驚き振り返る。

 

「何か勘違いしているようだけど、此処はナザリック地下大墳墓第六階層。つまるところは地下よ」

 

「…これが…?」

 

アルシェは世界を指し示す。

 

「さて、逃げないの?」

 

「逃げられるの?」

 

「無理でありんすね」

 

「そう」

 

アルシェは杖を両手で握りしめ、少女に飛びかかる。

 

「はいはい、ご苦労様」

 

決死の突撃を行うアルシェに、少女はつまらなさそうに言葉を投げかけた。

 

「じゃあ、これであなたの逃走は終わりでありんすぇ、最後に泣き崩れ無かったのが残念でありんすが」

 

死にたくない、そう願ってもきっと自分は此処で終わるのだ。

 

少女がアルシェの体を掴んだ瞬間…

 

「きゃっ!!」

 

アルシェの懐にあった御守りが少女を吹き飛ばし、次の瞬間、目の前の光景が変わる。

 

「わっ!!」

 

次の瞬間には誰かの上に落ちたような感覚になる。

 

恐る恐る目を開けると、そこにいたのはアルトリアで、アルトリアが下敷きになっていた。

 

「!アルトリア…?」

 

「その声は…アルシェですか?」

 

アルトリアの上から退く

 

あたりを見渡してみればそこは、墳墓の前にいた。

 

夢だと思った。

 

まだ、あの悪夢の下にいると思った。

 

しかし、アルトリアがいるのを見ればどう見ても墳墓の外に出れたらしい。

 

呆けていると、アルトリアの近くにいた不可思議な格好をした騎士風の女性がアルシェが握り締めていたお守りを見る。

 

「なるほどー…アルトリアの話にあったワーカーになった友人って貴女のこと?」

 

御守りを見たもう一人のローブを被っている女性がこちらを向く

 

「…お前、運が良かったな」

 

アルシェが握っているモノが第七位階魔法の中にある《上位転移》という力が込められていたらしく、話を聞くにはレベル90以上の者から攻撃を受けた際に強制的に転移させる為に大魔法使い・マーリンが作ったオモチャの一つらしい。

 

そのほとんどはガラクタ同然だったが、アルトリアが見つけて渡したものだけは本物だったとのことだった。

 

つまるところ、アルシェはアルトリアによって命を救われたことになる。

 

「アルトリア、アルシェを連れて避難した方がいい、墳墓内の動きがおかしくなっている」

 

「は、はい!」

 

転移魔法を使って帝国に逃げようとすると…

 

「ま、待って欲しい!イミーナ達がまだ中に…!」

 

アルトリアに握られた手を持ちながらアルシェが叫ぶ

 

仲間も助けて欲しいというような言葉にローブを被った女性は冷たい言葉で一言…

 

「もう助からない、諦めろ」

 

「っ!!」

 

「…アルシェ…」

 

アルトリアは何か言おうとして、アルシェは首を振り

 

「すまない。我儘を言った」

 

そう言ってアルトリアに『魔法の邪魔をしてすまない』と言う

 

「アルトリア」

 

その言葉にアルトリアはハッとなり、悔しそうな顔を浮かべながらアルシェと共に転移魔法を使ってその場から掻き消える。

 

「あれ?アルトリアは?」

 

入れ違うようにマーリンがやって来て、モルガンは頭を抑える。

 

ホント、この夢魔は場の空気を読まない。

 

「…先程、友人と共に転移魔法で帝国に帰還した」

 

「えー!じゃあ、入れ違いじゃないか!此処は私も帰って…」

 

「覚悟しろ夢魔」

 

「ぐぇっ」

 

マーリンをつかみ、ナザリックの方を指差す。

 

「分身体なんだから逃げるな」

 

その言葉にマーリンは項垂れながら「分かったよぅ」と返す。

 

城壁の上に見覚えのある影が見える。

 

「マーリン様!!」

 

マーリンは見上げると、そこにいたのはコキュートスであり、何故彼が地層にいるのかは分からないが、守護者に見つかってしまった手前、覚悟を決める。

 

 




次は今更の設定を投稿した後に本編再開します。

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