夢魔が生きるオーバーロード 作:アルトリア・ブラック(Main)
ーナザリック地下大墳墓ー
ワーカー達の殲滅は容易く完了したと思われたが、シャルティアが追っていたアルシェと言われる少女が第七位階魔法が込められた魔法のアイテムにより、強制的にナザリック外に転移させられた。
こんな事を容易く行えるのは同じプレイヤーしかおらず、御守り系統のアイテムを作るのは、ユグドラシルにおいて都市部をギルドにしていたプレイヤーの可能性もあり、アインズは厳戒態勢に入るよう命令した。
慌ただしく動く中、ナザリックの外壁近くにいたコキュートスから《伝言》が入る。
それは、アインズが最も望んでいた連絡であり、望みだった。
『至高の御方マーリン様がお見えになりました!』という報告
至高の四十一人の帰還はナザリック内を一気にざわめかせた。
しかし、同時に問題も起こっている。
アルシェという少女の逃亡。
その捜索をさせるため、至急アルベドに命令し、シャドウデーモン数体などを派遣させた。
「マーリンさんを至急、客間へ」
そばに仕えていたアウラに命じると「わかりました!」と言ってマーレを伴って闘技場から転移する。
「アインズ様。マーリン様がもし…万が一にも洗脳されていたらいかがされますか?」
アルベドが心配するのも分かる。
マーリンは確かに魔法詠唱者で攻撃魔法をある程度習得している。
それに、マーリンは魔法よりも近接戦がめちゃくちゃ強いのだ。
近接と魔法を組み合わせた攻撃でよくたっち・みーも引っかかっていた。
「アルベド、気持ちは分かる。だが、もし万が一マーリンさんが洗脳されていたとしたら、モルガンがそばにいる事がおかしい」
モルガンはマーリンが洗脳された場合、マーリンを殺すというトリッキーなNPCであり、ユグドラシル時代に調子に乗ったマーリンが洗脳系の魔法を使って見事にモルガンに半殺しにされていたのを思い出す。
「それでも心配ならばそばに付いて来てくれ」
「かしこまりました」
アインズは衣装を戻し、転移魔法で闘技場から転移する。
コキュートスに見つかってからは怒涛のような勢いだった。
まず、コキュートスに土下座のような敬意を示され、次はメイド達が続々とやって来て平伏すような形になって敬意を示してくる。
モルガンが『…本当に至高の四十一人扱いされていたんだな…』と小さな声で呟いでいるのが聞こえる。
「しばらくお待ちください!マーリン様!」
メイドの一人の言葉を聞き、席に座るとジュースやらなんやらいろいろ出してくる。
マーリンが適当に飲んだり食べたりしていると、モルガンも続いて食べたりしていたのを見てお腹でも空いたのか、妖精騎士トリスタンがねだり始める。
みんなで食べていると、その光景が微笑ましかったのかなんなのか、メイドの一人が泣きながらに喜んでいた。
しばらく待っていると…
「マーリンさん!」
その声と共に振り返ると古い友人のモモンガがいた。
「やぁ、モモンガ、久しぶりだねぇ〜」
立ち上がってそう言うとモルガンは座ったまま動かなかった。
その姿勢にそばにいたアルベドが眉間に皺を寄せているのを見て苦笑いする。
「本当に骸骨だねぇ〜(スルシャーナと見分けつかないな)」
「マーリンさんはそう変わらないんですね」
話をしながらアインズは対面に座り、マーリンも目の前に座る。
モルガンは相変わらず我関せず珈琲を飲んだりとしていた。
話を長引かせるつもりはないが、モルガンと妖精騎士トリスタンだけは伴って帰らないと妖精圏の戦力がガタ落ちしてしまう。
転移した流れを聞かれ、マーリンは今から700年前程に転移したという話をすると、流石にそこは知らなかったのかアルベドが驚いた顔をしていた。
「な、700年前ですか?」
「そうだとも、随分長い事生きてるよボクは〜」
「それは本当に長いですよね…だから、モルガンとトリスタンのレベルが上がってるんですね」
アインズは仲間の前だからと気にしていないのかすっかり、口調が崩れていた。
モルガンは転移前はレベル80だったが、今は数々の戦を乗り越えた関係で100まで上がっている。
そして、妖精騎士トリスタンも45とレベルが低かったが、今は95という破格のレベルになっている。
「…何回も死にかけたからな、大変だった…」
モルガンの言葉にアインズは苦笑いする。
「さてさて、話をするにしても、私としては転移した後のこのナザリック地下大墳墓を見て回りたいんだけど良いかな?」
その言葉にアインズは上機嫌に頷き、至急各階層を回る為の準備をするようにと各階層守護者に伝えていた。
マーリンはナザリック地下大墳墓内を見て回っていた際各階層守護者からは帰還した事に対しての感謝を述べられる。
その仰々しさにマーリンは適当に返しながら進む。
(…流石、700年前に転移して来たからだいぶ慣れたのかな…)
それとも、素の状態で行っても問題ないと思っているのだろうか
その点は全くアインズと打って変わっていた。
(…はー…魔王ロールなんてしなきゃ良かったかなぁ)
マーリンさんのように自由に生きられたら良かったのだろう。
しかし、今日、友の一人が帰還したのだ、悩みの種が一つ減ってくれるだろう。
そんな中、マーリンと共に玉座の間に来ると玉座の前でマーリンさんの足が止まる。
「マーリンさん?」
マーリンがその位置で止まれば、他の階層守護者達はその後ろで止まる。
唯一の例外はアルベドのみであり、守護者統括という地位にいる以上はアインズの隣にいなければならない。
「うーん。ボクはねぇ〜あまり時間がなくて今日はこのぐらいでお開きにしようと思うんだ」
マーリンの言葉にモルガンとトリスタンがマーリンの横に並ぶ。
「…お開き?ここには帰ってこないって事ですか?」
まさか、ここを捨てるなんて言わないだろうかと恐怖してしまう。
「一応ボクは此処とは違う拠点を持っていてね、こっちに移動して来るにしてもいろいろ片づけなければいけないんだ」
「あぁ、そういう事だったんですね」
拠点をこちらに移すにはそれなりに時間がかかるだろう。
捨てたわけじゃないとアインズは安心するが、先程からマーリンの目がアルベドの方に行っていた。
数回、横目で確認したのだが、アルベドは特段変わった様子は見られなかった。
「今日はとりあえず帰還させてもらうよ、ごめんね、みんなも」
そう守護者達に言うとデミウルゴスだけは複雑な顔をしていたが、また会いに来てくれると他の守護者も喜んでいた。
「じゃあね、また会おう」
そう言って転移魔法でその場所から居なくなってしまう。
マーリンは幽閉塔に意識を戻すと、深くため息をつく
「困った展開になったなぁ〜」
ナザリック地下大墳墓は人間を塵芥のようにしか思っていない。
それはマーリンとて特段思い入れがあるわけじゃない。
本の内容にはドキドキするが、本を書いた人間に興味がないように、人間という個人個人なんてあんまり興味がない。
かと言ってあそこまで人間を嫌っている訳でもない。
彼らの生き方は見ていて楽しい、それら全てを排斥してしまえば、それこそつまらない世界になるだろう。
「……モモンガだけ転移してくれば話は別だったんだろうけど」
マーリンは遠い花畑を眺めながらそう呟く
モモンガだけの単独転移だったのならあそこまで歪まなかっただろう。
モモンガにとってのナザリックは思い出という鎖に繋がってしまっている。
「……今の状況じゃあ、ツアー達じゃ勝てないなぁ…」
どう考えてもお先真っ暗な現状にマーリンはため息をつく
ー帝国・アヴァロン(二時間前)ー
アルトリアはアルシェと共に帝国を経由してアヴァロンに帰還した。
本当なら帝国の首都にアルシェを避難させるつもりだったのだか、念には念を入れ、アヴァロンのとある街に連れてくる。
本来ならば、アルシェのようなレベルの人間は向かい入れられる事はないのだが、今回ばかりは仕方ない。
アルトリアの他に人間が入って来たことに驚いた妖精達がどうしたの?と聞いて来たが、理由を付けて自室に入る。
「落ち着きましたか?」
アルトリアはココアをアルシェに渡す。
アルシェは一口飲んだだけで、礼を言って来る。
「…すまない。避難させてもらって」
「遠慮しないでください。それに、ここなら何があっても大丈夫です」
マーリンの結界内故に外側からの攻撃を受ければ崩壊するかもしれないが、オベロンの話曰く八欲王、つまるところレベル100の攻撃を受けてもマーリンが怪我するだけで済むとのことだった。
「……私は、一人で生き残ってしまった…」
アルシェの言葉にアルトリアは何も言わない。
言わない、というか言えなかった。
「…アルトリアの警告を受け入れていたらああならなかったのかもしれない…イミーナ…」
アルシェは涙を流しながら呟く
「……」
あの墳墓は魔の棲家だった。
マーリンがかつていた所であり、そして、同時にマーリンが警戒していた場所。
「……」
アルトリアの脳裏にマーリンに頼み、フォーサイトの面々をあそこから救出出来ないか考えたが…
(…無理だ…)
マーリンに頼んで上手く行った試しは生きている間はなかった。
「…すまなかった。愚痴を言ってしまって」
「…いえ、大丈夫です」
「それにしても、ここは随分不思議な所…」
「はい、マーリンの作った結界の中です。700年前からあるらしいです」
「…700年前からあるのか…それは凄いな、アルトリアの師匠は…」
アルシェは立ち上がり、深呼吸をし『助けてくれてありがとう。帰らないといけないんだ』と言って来る。
アルトリアはその言葉に伴い立ち上がる。
あまり、此処に部外者を入れてオベロンやオーロラに目を付けられたらたまったものではない。
オーロラはあまり外界に関心がないから問題ないが、興味を持ってしまったら厄介なことになる。
「これ、お返しする」
そう言ってルールブレイカーを渡して来る。
アルシェと共に外に出ると
「なんだ?終わったのか?」
「村正さん」
「外に行くなら一緒に転移して良いか?少し王国に用があってな」
その言葉にアルトリアは頷き、アルシェと共に転移する。
アルシェを帝国の歌う林檎亭へ送った後、村正と共に王国に向かう。
千子村正(現地人)
【レベル】85
【種族】人間
【詳細】
現地出身者であり、王国の一般家庭の人間だったが、魔獣に襲われ殺されかけた際に英雄級の実力を発揮。
現地では30レベル以上で英雄扱いされるが、村正の場合は40以上あり、現在はマーリンの結界内で鍛錬に勤しんでいる。
二重人格のようなところがあり、マーリンからは『士郎君』と呼ばれてある。
アルトリアと友人以上恋人未満の関係。
オーロラ
【レベル】70
【種族】妖精
【詳細】
300年前にマーリンがやらかして生まれた妖精。
彼女の本質は究極的なまでの自己愛。彼女が求めるものは他者からの称賛のみであり、その行為に善意も何もない。
オーロラにとって妖精國で一番愛される存在が自分では無くなることは災厄にしかならない。
故に妖精圏内の事で飽きたら外に出ようとする為、マーリンとモルガンから常に新しい妖精を作り褒め称えるようにしている。
現地レベルでは最強の分類ではあるが、自分で手を下したがらないので外に出ても討伐される運命にはあるが(討伐というか封印)
ただし、封印するとしてもとんでもない被害をもたらして封印されるのでモルガンからは害悪扱いされている。