夢魔が生きるオーバーロード   作:アルトリア・ブラック(Main)

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今回はマーリンが出てこない。

アルトリアと村正がメイン。


第7話『夢魔の弟子』

リ・エスティーゼ王国の首都に着いたアルトリアと村正は現地に見合った衣装を適当に来て薬師組合に向かった後に冒険者組合に向けて歩いていた。

 

村正とアルトリアの服装はどこにでもいるような街娘と市民のような格好をしていた。

 

いつも着ている服は決して悪くはないが、あの格好はどちらかというと派手なので結構目立ってしまう。

 

「特別珍しい薬草ありませんでしたね…」

 

アルトリアは少量買った薬草を魔法の袋に入れて腰に下げていた。

 

王国は非常に犯罪率が高く、普通ならば盗まれていてもおかしくないのだが、村正と一緒にいるアルトリアを狙おうなんていう愚かな者はいないだろう。

 

「しっかし、あの頃から何も変わんないな」

 

村正の出自はリ・エスティーゼ王国のどこにでもあるような家庭で生まれた。

 

特段裕福な家庭であったわけでもないが、それでも普通に過ごして行く分には問題のない家庭に生まれた。

 

そんな普通の彼が今こうしてアルトリアの横にいるのは、とある事情故にマーリンが助けたという経歴があったからだ。

 

「村正がいた時から少し良くなったと聞きましたが…」

 

アルトリアが気遣わしげに村正を見つめる。

 

「確かにアダマンタイト級冒険者が増えてからはな、あの頃は魔獣を狩る奴らが少なかったから結構酷かったぜ」

 

村正の家族は大陸の方から流れて来た魔獣によって殺されてしまった。

 

その際に火事場の馬鹿力というか、持っていながら発現していなかった能力が目覚め、生き残る事ができた。

 

「俺の家系が八欲王の超遠縁だって聞いた時ははっ?となったけどな」

 

正確に言うなれば八欲王が残した子孫が人間と交わり、人間の国家に移住したとマーリンが言ってたが、本当がどうかは分からない。

 

馬車が向こうの方からやって来るのが見え、アルトリアと村正は脇に逸れる。

 

相変わらず舗道されていない道は歩きにくくて仕方ない。

 

アルトリアと村正は冒険者組合に入ると、応接室に通され、そこで依頼の発注などを行ったりしていた。

 

村正やアルトリアがやれば問題のない任務もあるのだが、討伐するモンスターの大半は弱すぎて倒したところでレベルアップには繋がらない。

 

アルトリアは既に100レベルなので、実戦の訓練はマーリンの結界内で行った方が早いのだ。

 

それに、アルトリアと村正はマーリンの保護下に入った以上、何処の国にも属さない存在になっている。

 

故にワーカーに仕事を出しても構わないし、冒険者に仕事を出しても構わないのだ。

 

村正とアルトリアは人の域を超えている扱いなので、他国がイチャモンを付けて借り出すなんて事は出来ないのだ。

 

「今回の討伐のことなのですが、アダマンタイト級冒険者・蒼の薔薇様が意見を求めたいとの事で…お時間がある日に是非との事でした」

 

「時間がある日…私はいつでも大丈夫ですが、村正はどうですか?」

 

「俺は予定があるわけでもないし、別に彼方さんの都合で大丈夫だ」

 

「かしこまりました。至急、蒼の薔薇様に御連絡します。少々お待ちください」

 

受付嬢が頭を下げ、部屋から退出する。

 

アルトリアは出されたジュースを飲みながらボーとしていると…

 

「そういやぁ、蒼の薔薇に所属しているイビルアイには会った事あるか?」

 

「いえ、マーリンからの思い出話で聞くだけで会ったことはないです」

 

「そうか」

 

蒼の薔薇に所属しているイビルアイはかつて十三英雄に所属しており、マーリンからは『外で強くなるならイビルアイに稽古をつけて貰った方が良い』と言うのを過去に言われていたのを思い出した。

 

まぁ、その時の村正はまだ未熟でレベル45という英雄級だったので今会えばだいぶ違うのではと感じていた。

 

それから雑談などをしていると、ノックと共に受付嬢が入ってくる。

 

「蒼の薔薇様がもうすぐお見えになるそうです。もうしばらくお待ちください」

 

 

 

 

 

 

蒼の薔薇であるリーダー・ラキュースは友人であるラナーからの頼みで、マーリンの弟子である二人と話をしてほしいと頼まれてしまった。

 

いろいろ考えた末に、ダメ元で冒険者組合に大魔法使いのマーリンの弟子が来たら依頼についての相談をしたらあっさりと通り、話が出来た。

 

「でもどうして弟子の方なんだ?師匠の方ならイビルアイから呼べるだろ?」

 

ガガーランの質問に確かに、と思ってしまう。

 

「…あの夢魔は自分の興味がある時にしか姿を現さない。普段は何処かで籠ってるな」

 

マーリンは気まぐれで、興味のある事柄に関してのみ幽閉塔という所から出てくるらしい。

 

「…その点、弟子なら頻繁に出入りしているから話を付け易いな、特に最近、帝国や王国に来ているアルトリア・ペンドラゴンは話がしやすい上に実力もある」

 

「へぇ〜じゃあ、今回はその嬢ちゃんにいろいろ聞くのか?」

 

「その方が良いわね、確か、アルトリア・ペンドラゴンってマーリン様のお気に入りの弟子って話じゃなかったかしら?」

 

様付けしたラキュースにイビルアイが『アイツに様付けは寒気が走る』と呟く

 

「そのアルトリア・ペンドラゴンって魔法詠唱者か?なら一人で来るのか?」

 

「いや、大体王国に姿を見せる時は千子村正がいるな」

 

「千子村正って…?」

 

ラキュースが首を傾げる

 

「…お前は知らなかったのか?まぁ、あまり話題に上がらないからな」

 

イビルアイは聞き耳を立てられないよう魔法を周囲にかける。

 

「千子村正は八欲王の遠縁の子孫だな」

 

「は、八欲王って!御伽噺じゃないの…!?」

 

ラキュースが驚きのあまり立ち上がり、我に返り恥ずかしげに座り直していた。

 

「実在した奴らの名前だ。最後は他人の物を欲深く奪い合って全滅したと言われているが、子孫がいないわけではない。直系の子孫は法国によって管理されているが、千子村正の場合は超が付く程の遠縁だったから管理下には置かれていなかったらしい」

 

イビルアイの言葉を一語一句逃さないように聞くラキュースに苦笑いするガガーラン。

 

「その子孫って事は…かなり横暴…だったりする?」

 

恐る恐るといった様子で聞くラキュースにイビルアイは「いや」と答える。

 

その様子に安心したのか、ラキュースが胸を撫で下ろす。

 

「真面目で外道なことを嫌う人間だ。だから心配しなくても良い」

 

それから数時間後、ラキュースの元に冒険者組合からアルトリア・ペンドラゴンと千子村正がやって来て、会ってもいいという話になった。

 

ラキュースは失礼のない格好で会い、友人のために話をしようと席を立つ

 

ガガーランとティア・ティナは部屋に残り、ラキュースとイビルアイが彼らに会うことになった。

 

二人は組合が用意した応接室に通される。

 

アルトリア・ペンドラゴンと千子村正がおり、ラキュースはお待たせしましたと言って目の前に座る。

 

それから任務の話になり、アルトリアが真面目に対策方法を考えてくれることに申し訳なく思いながら、ラキュースは本題に移るべく話し始める。

 

「ラナー王女様が会いたいとの事ですか…?」

 

「はい、一度話したいと言われました」

 

アルトリアと千子村正は王族の願いでも断る力がある。

 

彼らは不可侵領域の人間で、どの国の政治にも加担しないと取り決められている。

 

故に表立っては動かないが、裏で彼らの意見を聞いたり少しだけ手を貸してもらうことは可能である。

 

彼らが積極的に動けばスレイン法国が黙っていないし、アーグランド評議国の竜王・ツアーも出て来てしまう。

 

「…私はあまり政治に詳しくなくて…私より師匠の方が良いと思いますが…」

 

「マーリンは政治とか関わりたくないって言ってるしな」

 

マーリンは王国に対しては関心がないのか、あまり見向きもしない。

 

「王国の繁栄に未来はないと思っているのか?マーリンは」

 

イビルアイの質問にアルトリアは『それ以前にあんまり王国の話をしないのでそもそも、関心がないのかも…』と呟いていた。

 

帝国随一の魔法詠唱者・フールーダが積極的にマーリンに指示を仰いでいるので帝国に関わらざるを得ないのであって、王国は一切彼らと連絡を取ろうとしないのでマーリンも連絡がないなら関わる必要無しと判断しているのだろう。

 

「お話だけでも良いので、一度王宮に来て頂けませんか?」

 

ラキュースの願いにアルトリアは「お話ぐらいなら」と言ってくる。

 

ラナー王女と会う日程が決まり、その日は王国の宿に泊まる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

ーレエブン候ー

 

「どいつもこいつもバカばっかりか!」

 

レエブン候は一人、執務室にて王国が抱える膨大な問題に頭を悩ませていた。

 

今回の会議に六大貴族全員が揃うわけではなかったが、それでも今回の会議は五大貴族が集まった。

 

それは、今後の王国の行く末の話になり、やはり王位継承の話になった。

 

相変わらず貴族たちはバカな話ばかりで、第一王子・バルブロに王位を譲ろうとしていたが、王の優柔不断な判断で今回も見送りになった。

 

「魔法への関心の無さもどうにかしなければならないというのに!!貴族の馬鹿共は権力闘争に明け暮れ…王子達は継承競争に…!!あぁ!マトモな頭を持つ者はいないのか!」

 

いくら戦士としての腕が立っても、それは所詮、人間国家内でのことでしかない。

 

それに、いくら英雄級扱いされた所で上には上がいる。

 

事実、王国からマーリンの元に行った千子村正は天性の才があった。

 

それら人物は大体は市民出身であり、貴族から出た人間は王国には一人たりともいない。

 

「貴族の中にいたとしても、魔法の教育機関が無ければ意味がないというのに!!」

 

バハルス帝国はその辺りキチンとしており、貴族の子弟の教育に必ずと言って良い程、魔法の教育がかる。

 

帝国貴族から二人も神人クラスが現れ、一人は帝国内にいるが、もう一人は大魔法使い・マーリンの元での勉学も相まってか、大半の魔獣は彼女に勝てないとされている。

 

事実、神人クラスが出れば外交関係で有利になる事は間違い無しだ

 

彼らは政治に干渉しないとしても、同じ人間国家なら秘密裏に派遣を頼む事だって出来るのだ。

 

その観点からすれば、王国はかなりの遅れをとっている。

 

「ラナー王女のおかげでやっと弟子まで辿り着けたというのに…!」

 

彼らに王国に対する良いイメージを抱かせなければ帝国にもっと遅れを取ってしまう。

 

アルトリア・ペンドラゴンがいかに政治に関わらないと言ったところで、彼女の親族が帝国にいる以上、協力されたらたまったものではない。

 

彼女の兄が今後の帝国の戦争に出て来てしまえば王国は半数以上が被害を被るだろう。

 

「レエブン候。王子がお呼びです」

 

「あぁ、分かった」

 

執事の言葉に答え、身なりを整え部屋から出る。

 

これから起こりうることにため息をつきながら歩き始める。

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